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待ち人来る

そんなある日の事、ひとりの男が江陵城にやって来た。彼の名を劉色(りゅうは)、字を子初(ししょ)という。彼は直ぐに太子に面会を申し出ると、北斗ちゃんは喜々とした表情を浮かべて、その面会に応じた。


「⁽⁽(o'д'o)これは太子殿下…ご機嫌は如何ですかな?」


「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ 一日千秋の想いで君を待っていたんだ…悪い筈が無いよ♪」


「⁽⁽(o'д'o)それはどうも♪」


「( ๑•▽•)で!丞相は何と?早速話してくれないか?」


北斗ちゃんは待ち切れないといった仕草を隠そうともせずに単刀直入である。


「(o'д'o)…はぁ、河川工事の件は許可されましたが、それはもう伊籍殿からお聞きに為ってますよね?」


「( ๑•▽•)⁾⁾ まぁね…でもその他にも色々と計画を書き連ねてあったんだけど、それはどうなったのかなぁ?」


「⁽⁽(o'д'o)はい!その事ですがね…丞相は太子様が何か誤解をされている節があるので、拙者を寄越した次第でして…この件は拙者に一任すると申されました!」


「(´°ᗜ°)✧誤解って?どういう事かな…」


「⁽⁽(o'д'o)まず貴方様はこの荊州の我が勢力範囲をどこからどこまでとお考えなんです?」


「(´°ᗜ°)✧そらぁここ江陵と公安と南郡だろう?」


「ε- (o'д' o)ふぅ…やっぱり!誰から聞いたんです?」


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)誰って…えっ!誰だっけ?えぇ…違うの??」


「「⁽⁽(o'д'o)違います!南郡の下に荊州四郡が在り、さらにその下には交州という州が御座います!無論その全てが我が国の領地では御座いません…」


「…四郡のうち呉に近い長沙郡と桂陽郡は呉領、武陵郡と零陵郡は我が国の領地です♪そして交州は士燮(ししょう)という者が治める地ですが、現在は呉に従属しております!」


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)否、郡や州は無論、承知しているが…武陵や零陵は呉に占領されたんじゃ無かったっけ?」


「⁽⁽(o'д'o)正確には武陵全体は占領されてはおりません。本城を失っただけです。元々四郡共に我らが呉から貸し与えられた物ですが、その後南郡と江陵を得ております…」


「…我が君が蜀を占領後に、呉に近い長沙・桂陽・零陵を返還する様に孫権殿に求められましたが、我が君はそれを拒否されました…」


「…業を煮やした孫権殿は、呂蒙に命じて三郡を攻め取り実行支配に漕ぎ着けた為、関羽殿が迎え討ち、我が君も奪い返すべく参戦為されました…」


「…ところが漢中の張魯が曹操に敗れた為、蜀が危うくなると、我が君は呉と争うのは得策では無いと考えて、電撃的に和睦を結び、その証として長沙と桂陽を返還した次第…」


「…以来武陵と零陵は我が国の領地なのです!もはや借り受けたとかそういう問題では在りませぬ。我々の領地とみて間違いは在りませぬ!」


「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ちょっと待ってくれ?元々借り受けたなら借地なのだろう?可笑しくないか?」


「⁽⁽(o'д'o)本来、荊州四郡は我が君が占領した物ですが、呉の周瑜と連携した事、呉から兵を借りた事などから、呉に領有権を主張されたものであり、そこは元々双方の解釈の違いが御座います…」


「…我が君・関羽・張飛・趙雲将軍がそれぞれ四郡を下しており、周瑜殿は罠に掛かり負傷された為、大した手柄はあげられておりませんからな♪」


「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾しかし…ちと納得がいかんぞ!」


「⁽⁽(o'д'o)今何時だと想っとるんです?戦時なのですぞ!奪い奪われる…これは当たり前の事です!元々の解釈の違いは在れども、一旦戦争が起きて奪われ奪い返した時点で、和睦した際の条件なのですからな!」


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)ちとエグい気もするが、それで和睦したなら…まぁそうなのかもな!一応は納得しよう♪でないと話が先に進まん…」


「⁽⁽(o'д'o)それが宜しいかと!そもそも同時期に魏も四郡を狙っていたのですからな…まぁ話がややこしく成りますからこれ以上は言いませんが…」


劉巴は元々零陵郡の出身である。そして劉表に仕えていたが、曹操の南下で劉表の息子がその支配下に下った時に、曹操に従った。


そしてその意向を受けて、四郡を掌握に動いていた時に、劉備に四郡を攻め取られた事で、逃げ場を失い魏に帰国出来なくなってしまった。


彼は劉備に配下に成る様に説得されたが、それを潔しとせずに断り、交州の士燮の許に逃げて仕えた。


その後意見の食い違いから交州を離れて益州の劉璋に身を寄せたが、その益州も劉備に占領されてしまったので今度こそ行き場を失った。


仕方なく諸葛亮の勧めも在って、劉備に仕える事になったのである。彼にとっては何ともやり切れない選択であった。


そんな訳で彼は今でも劉備が好きでは無い。けれども劉備が四郡を占領した際には、彼は少なくともその場には居たのだから、確固足る生き証人として四郡の領有権は劉備に在ると想っている。


彼にとっては余り嬉しく無い真実だが、現実は受け入れなければ成らなかったのである。


「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾事情は判ったが、なぜ皆その事を僕に言わなかったのだろう?」


「(o'д' o)さぁ…知りませんな?拙者に関わりの無い事です!既に御存知と想っていたのでは在りませんかな?…」


「…判り兼ねます。まぁ、想像の翼を広げるならばですが、武陵と零陵は呉領に隣接すると共に、交州にも隣接しておりますから、難しい土地かと…」


「…零陵は確か関羽総督の命で今は費詩(ひし)が太守を務め馮習(ふうしゅう)呉班(ごはん)が将軍として詰めている筈です!」


費詩(ひし)は字を公挙(こうきょ)と言い、益州出身の政務官である。


馮習(ふうしゅう)は字を休元(きゅうげん)と言い、荊州南郡出身の軍人である。


呉班(ごはん)は字を元雄(げんゆう)と言い、兗州陳留郡出身の軍人であった。


「✧(•• ๑)あれ?そうすると、武陵は誰が治めているんだい?」


「はい?⁽⁽(o'д'o)何を今さら…貴方が傅士仁将軍を解任され、劉璋親子を江陵に移したのでしょう?その後釜として、費禕を太守に費観を城主兼将軍に任命したとお聞きしましたぞ!」


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)え?ちょっと待っておくれよ♪あれって公安砦の事だけどな…」


「はい?⁽⁽(o'д' o)あ~た今さら何を…まさか公安砦って武陵郡に在るって知らないんじゃ?」


「Σ(°ᗜ°´٥)ええっ!まじで!知らないよ…」


これにはさすがの劉巴も絶句した。絶句したのだが、直ぐにその溜め息と共に丞相の言わんとした事を理解した。


『( ˘͈ ᵕ ˘͈ )劉巴…良く理解しておいてくれ♪太子は鋭いし、その閃きも常人の及ぶところでは無いが、まだ何と言っても青い…』


『…どこか抜けている所があるのだ!しかしながら、そのカリスマ性は我が君を凌ぎ、その叡知は私を近い将来凌ぐに違い在るまい…』


『…人手が足りない我が国にとっては、天帝が与えたもうた素晴らしき贈り物と謂える。なぁに、足りないところは、我らで補えば良い!それだけの人材は荊州にはいるのだからな♪』


『ε(o'д' ;)成る程…青いね♪何かに突出して秀でている者は、どこか間が抜けたところがあるというからな…了解!早速、擁護しときますかな…』


劉巴は気にした風も見せずに言葉を返す。


「ε-(o'д' o)まぁ…いいでしょう。結果オ~ライですからな…貴方もあそこが重要地点だと認識した上で、彼ら二人に任せたんでしょうし、丞相も想い切った任命に驚いておられたが、先見の明があると仰有っておられた。だから追認されたのです♪」


北斗ちゃんは劉巴の説明を聞いていて、冷や汗が流れるのを感じていた。恐らくやって来た事に間違いは無かったのだろう。


現にその結果として皆が納得して付き従い、その手腕を認めてくれている。それは誇りに想って良いのだろうが、彼にはどうも東西南北の理解度がいまいち足りて居なかった様である。


『Σ(°ᗜ°´٥)やっべぇ~じゃん♪こりゃ迷子の子羊もんだねぇ~在らぬ所で馬脚を露すとはこの事だな…』


反省だけなら猿でも出来るという極みに達した北斗ちゃんは動揺を隠せなかった。まだまだお子ちゃまな所を如実に感じた瞬間だった。


けれども、そんなまだまだ足りない所がある太子に接した劉巴は、馬鹿にするでも無く、よくぞそんな調子でここまでやれたと逆に感心していた。


それに親の劉備と違って、この子には素直さと真面目さと人を思いやる心があると判って、頼もしさを感じていたのである。


しかも自らの非を正し、未熟さを認め、間違っている事には食って懸かる気概がある。これなら皆が彼を盛り立て様と、一心に尽くす気持ちも判るというものだ。そう想っていたのだった。


「⁽⁽(o'д' o)さて…それを踏まえてですが、貴方のプランではわざわざ益州に流すルートを取っている河川の計画を、そのまま武陵内に造りあげても良いのでは無いかと考えます…」


「…問題はいずれにしても交州を通らねば、南海に到達するルートは取れないって事に成りますが、そこは交州太守の士燮と交渉するより無いでしょうな!それは任せて頂けますかな?」


劉巴には何か考えがある様だ。北斗ちゃんは直ぐに許可を与えた。


「✧(•• ๑)勿論、貴方に考えがあるなら任せよう♪これは外交の問題になる…僕は外交はどうも苦手な様だ!それが先日良く判った!いったいどうする気なのかそれだけ教えておいて貰えると助かるが…」


「はい!⁽⁽(o'д'o)それは勿論♪なぁに事は単純です♪但し簡単では在りませんがね…」


「…士燮と交渉するのは骨が折れますが、幸いな事に拙者だけで取り組むよりも二人で事に当たれば可能でしょう♪友人の許靖(きょせい)と取り組むつもりです…」


許靖は字を文休(ぶんきゅう)と言い、豫州汝南郡平輿県の人である。彼も一時期、劉巴同様に士燮の許に身を寄せていた事があったのである。そして共に益州に渡った仲でもあったのだ。


「( ๑•▽•)✧良し!じゃあ頼む♪とにかくルートさえ確保出来れば良いからね!取引はこの際、可能な限りの条件を飲もう♪」


「⁽⁽(o'д' o)あぁ…それは問題無いかと!士燮はとにかく独立心が在る奴でしてね…独立を保証してやれば、協力すると想いますよ!後は呉の従属からどうやって脱け出すかを模索するだけですからな…」


劉巴は簡単に宣うが、それが一番難解な事である事も認識していた。


「⁽⁽(o'д' o)貴方の目的は、南海貿易に参画する事にあるのでしょう?恐らく傅士仁辺りが持ってる技術力なら可能だと考えた…違いますかな?」


劉巴は鋭く切り込んで来た。それはいみじくも、太子の閃きをズバリ言い当てていた。当然、北斗ちゃんは驚く。


「Σ(´⸝⸝• •⸝⸝ ;)えっ!!えぇぇ…ニャンで?ニャンで判ったのん♪」


「⁽⁽(o'д' o)そらぁ…貴方のお役に立つ為に、わざわざ遠路遥々、ここ荊州に戻って来たのですからな♪そのぐらいの勘が働かなくてどうしますか?」


劉巴は何を今更…といった呈で、特にほくそ笑む訳でも無く、あくまでも涼しい顔でそう宣うと、その交渉手順を惜し気もなく、あっさり明かす。


「⁽⁽(o'д' o)これは貴方の目的が、海洋貿易と踏んでいたから用意出来た発想ですが、ならば交渉は一段と楽に進みましょう。相手にもそのルートを逆手に取り、利用させてやれば良ろしい…」


「…要はギブアンドテイクですな♪それならば相手からの人材支援や資金援助すら期待出来ます!そしてその貿易を糧として、相互に利益を分かち合えますし、いずれは良きパートナーとなる事が出来ましょう…」


「…貴方ならば、恐らくそこまで考えていたのではありませんか?なぁに、拙者の目は節穴ではありませんぞ!どうです?違いますかな♪拙者もなかなかやるでしょう?」


劉巴はそう説明を終えると太子を見つめた。


『驚いたな…(°ᗜ°٥)』


北斗ちゃんはそう想っていた。彼がこの発想に想い到ったのは、何も今に始まった事ではない。幼い頃、眺めた事のある地図には、地名が書き記していない空白部分が在った。


子供はそういう些細な事に敏感であり、疑問を持つものだ。例えその子が頭が良かろうが悪かろうが、関係無くである。




大人はこういう時に、子供の好奇心を潰す様な態度を取ったり、その言動を規制してはいけないし、ましてや『うるさい!』などと、無視してもいけない。


子供たちの興味を育てる様な、気の利いた言葉を掛けてやれれば上出来だろう。そこまで出来なかったとしても、子供と一緒に考えてやれば良い。それだけで良いのだと想う。


子供は質問に答えてやったり、一緒に考えてやる事で、その時に子供なりに頭を巡らす。その癖がつく事が重要らしい。


『寝る子は育つ』というが、『考える子も育つ』と言った所であろうか。




幸いな事に、この時彼の傍に居た孫婦人は聡明な方だった。彼女は孫権の妹で在り、劉備の二番目の正妻である。


荊州から劉備が去る前にはもう離縁させられて、呉に戻ったという事だから、幼き阿斗にとっても荊州に居るひとときの想い出と為った出来事で在ろう。


孫婦人は阿斗に聞かれてこう答えた。


『✿(◍˃ᗜ˂◍)ノ⁾⁾フフフッ、阿斗や♡お前は利発な子だ事♪これはねぇ…海なのよ♪✿』


『”(•• ๑)母様(ははさま)(うみ)ってなぁに?』


阿斗は再び尋ねる。


孫婦人も優しく答える。


『✿(◍˃ᗜ˂◍)ノ⁾⁾フフフッ、海はね…広いの♪どこまでも続いているのよ♡青くてね、まるで今日のあの青い空の様だわっ♪阿斗も大きくなったらきっと観れるわ♪男の子はね…船に乗って海原を漕ぎ出して、初めて一人前の殿方なのです♡お前も必ず海の男に成れるわよ♡✿』


言っている事は弱冠、孫家の家訓が入っているかも知れない。何しろ江東は太平洋に面しているから、船の知識は深かっただろうし、青い海の先にも憧れが在った事だろう。


それでも孫婦人のこの優しい言葉は、いつまでもいつまでも阿斗の心の奥底に、母の優しさと共に残ったのである。


彼女はその後も続く阿斗の質問に、いつまでも優しく付き合ってやったのだった。もしかすると、孫婦人が劉家に残したこれが一番の宝物だったかも知れない。




『(´⸝⸝• •⸝⸝)⁾⁾ 懐かしいにゃ…母様♡』


北斗ちゃんはしばし想い出に浸っていた。彼が海に憧れを持った初めての経験と為ったからであった。それ以来、彼は海に出て"一人前の殿方"に成る事に憧れを抱き続けた。


馬鹿と言われようが、お構いなしにその夢だけは持ち続けていたのだ。その事が今回の"閃き"を生んだのである。


「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾そうだ!劉巴♡良く判ったな♪貴方とは気が合いそうだ!僕もこの件はお前さんに全権を委任するから、宜しく頼むよ♪必ず士燮(ししょう)殿を説き伏せて欲しい!頼んだよ♡」


北斗ちゃんは、そう言うと満面の笑顔を見せた。

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