表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/307

一期一会

江陵艦隊は襄陽城に到着すると、太守の呂常(りょじょう)に接触する為、龐徳が呼び掛けた。龐徳は曹仁の手紙を呂常に読ませたので、呂常は直ぐに手続きに入ってくれる。


彼にしてみても、民を我慢させて来た経緯が在るのだから、安全な取引為らば、渡りに船である。そしてまさしく読んで字の如く、民を船に移乗させての渡りに船なのであった。


但し、彼は龐徳への襄陽城の引き渡しは拒んだ。これは龐徳を信用していない訳ではなく、歳老いたとは言え、老いて益々盛んと述べて、襄陽城の守備を担うと宣言したのである。


呂常曰く、この太守の(みことのり)は、魏王から命ぜられたもので在り、その命が優先すると言うべきものであった。その替わり、龐徳には襄陽城の民の安全を計り、届けて欲しいと願い出たのである。


龐徳はまだ魏国に来てから間がなく、その人となりに拘わらず、残る兵との連携に不安があった。呂常はその事を懸念し、自分が残ると決めたのである。


それに龐徳だって曹仁の傍に居た方が、活躍の機会もあるというものだ。そこら辺りをしっかりと計算した上での老獪な判断だったというべきだろう。


勿論、龐徳も強行はしない。彼には呂常の気持ちが良く判ったので、彼の民達を預かり、道中の安全を期す事を誓ったのである。


北斗ちゃんは魏人の色んな気質に触れて、その一人一人の素養と覚悟に感じ入っていた。


考え方の違いは在れども、自分の成すべき事をちゃんと理解して、自分に恥じない行動を取っているのだ。


『(٥°ᗜ°)大した者だ…伊達に11年間も太守の地位にある訳ではない…今こそ慕われている自分の立場を利用するか!なかなかこの辛い状況で出来る判断では無かろう…』


『…恐らく曹仁将軍は、彼のこれまでの功績を讃えて、楽をさせてやりたいとの配慮からした気配りであったのだろう。龐徳殿だって同じ理由に違いない…』


『…それを判って断っているのだ!お互いがお互いを想い、心を運び合う。魏国にもそういう心意気の在る連中がいるのだ♪それが判っただけでも、今回のこの援助は正解で在ったと言えるのかも知れない…』


北斗ちゃんはそう感じていた。彼はこの襄陽城にも食料と医薬品の供与を忘れなかった。龐徳から樊城の様子を聞いていた呂常は、喜んでこの申し出を受諾してくれた。そして太子へ礼を述べた。


「(´_ _)(かたじけ)ない♪」


「ε- (´ー`*)困った時はお互い様です♪またお会いする事も在りましょう。お身体御自愛下され♡」


二人は互いに挨拶を交わし、別れる。


取って返した江陵艦隊は、宛城近辺の河畔に襄陽の民を降ろす事に成功すると、龐徳にも別れを告げる時が来た。すると龐徳は寂しさを拭い去る様に先に口を開いた。


「(҂٥°ㅂ°)…坊ちゃん!世話に成りやした♪本来こんな事を言っては、不味いんすが、あっしはあんたや(ひげ)殿にゃ~惚れましたぜ♡有り難う御座いやした♪」


龐徳は今でいう所の渡世人の様な側面を持っており、義理人情に厚かったというべきで在ろうか?今回の事ですっかり対蜀好戦派から、親蜀路線に鞍替えした感があった。


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)なぁ…龐徳、僕に仕えてみないか?」


北斗ちゃんは駄目元(ダメもと)で尋ねてみる。龐徳は一瞬、嬉しそうな笑みを見せたが、急に真顔になるとこう告げた。


「(҂٥°ㅂ°)…坊ちゃんもそれが無駄な勧誘だって事は、判ってる。そうですな?」


彼はまるで確認する様にそう述べた。


「あぁ…(•• ;)まぁね♪君は曹仁将軍にも惚れている様だからな…」


北斗ちゃんも素直にそう応えた。事実、彼は土壇場までは声を掛けようか迷っていたのだ。


でも自分はまだ見掛けは(ワラベ)の様な者だから、甘さを時には見せてしまっても良いのではないかと考え、駄目元で誘ってみたのである。


龐徳はそれを聞くと安心した様に言葉を続けた。


「(҂٥°ㅂ°)✧あっしも貴方に過大な評価を頂き、素直に嬉しい。ですがこの世の中、仁義は大切にせにゃあ成りません。仮にもし貴方にもっと早く出逢っていたら、あっしは貴方に仕えたかも知れませんな!」


龐徳はそう言い切った。


北斗ちゃんもこの言葉が嬉しかった。


自分を慕って幕下に参じると言われて、嬉しくない者など居ないだろう。けれども同時に複雑な気分も味わっていた。


『(;꒪ö꒪)…もっと早く出会っていたら、君は僕に失望したに違いない。何しろ、あの体たらくだったからね!』


今更、そんな有名な出来事は、この中華広しと言えども、知らない者はいないのだから、龐徳もそれは承知の上で言っているのだろうが、それだけ劉禅君の馬鹿っぷりは万民の知る所なのであった。


今回、遂に馬脚(ばきゃく)(あらわ)した事で、この噂がどこまで浸透するのかは、まだ判らなかった。けれども、少なくとも魏国という最大の仮想敵国に知られた事が、どれほど大きな意味を持つ事かは、明々白々であった。


本来、警戒されない方が、この先の計画を進め易い事は確かなのだが、例え知られたとしても、やるべき事に変わりは無い。北斗ちゃんは改めて気持ちを新たにしたのだった。


「( ๑•▽•)⁾⁾ こちらこそ有り難う…これ以上は無い褒め言葉だよ!お達者にね♪」


北斗ちゃんも答礼を行う。


「ええ…貴方も! ⁽⁽(°ㅂ°٥҂)縁が在ったらまた会いましょうぜ♪」


「ああ…ღ(◕ 0 ◕*)そうだね♪曹仁殿にも宜しく言って下さい!」


二人はこれで別れた。


龐徳は下船して陸に上がる。すると、その頭の上に咆哮が降って来た。


「(*`艸´)ღ⁾⁾ 達者でな!また会おう♪」


関羽であった。


龐徳はそれに答える様に、拳を突き上げた。⁽⁽ღ(°ㅂ°٥҂)


こうして、北斗ちゃんを始めとした江陵艦隊の救出作戦は幕を閉じた。彼らは、人命救助に寄与した事に誇りを感じながら、一路、江陵城に凱旋するのだった。




江陵の近効には臨時の波止場が設けられている。北斗ちゃんや一部の者達はそこで降りる。大型船は当面の役割を終えた事で、元あった場所に隠すらしい。


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)こんな大型船…いったいどこから持って来たんだい?」


北斗ちゃんはいみじくもそう尋ねた。ところが傳士仁は返す刀でこう告げた。


「(´°皿°)✧若はわしを信用しとるんでしょう?」


単刀直入である。ゆえにズシりとその言葉が胸に刺さる。


「勿論だとも…✧(°ᗜ°٥)」


「εღ(´皿`*)♡では聞かんで下さいや…こんなヤバイ物、知る者が少ない程に漏洩(ろうえい)も防げるというもんでしょう?…」


「…わしと費観と乗組員とは"桃の種"という名の秘密結社の一員です。大型船の技術はこの盟約の中で秘匿致します。その方が良いのですよ!」


傅士仁は蜀が魏や呉に対抗する為には、必ずこの大型船が役に立つと踏んでいる。彼にとっては、今回この船をわざわざ持ち出したのにも訳があったのである。


勿論、いっぺんに大勢を運ぶ事が出来れば、往復する回数が減るし、荒れた河でも安定感は抜群である。


けれども、その技術力を仮に魏に見せつける事が出来ればどうだろう?相手もこちらを警戒して決して(あなど)る事は出来なく成るだろう。


太子の今後の計画を軌道に乗せる為には、出来る限りの時間稼ぎが必要である。その為には、相手の攻撃姿勢は前以て、なるべく削いでおく方が良いに決まっている。


そう言う事なのであった。


当然その為には、相手にその技術力が奪われない事が前提となるのだから、隠し場所には気を使うし、知恵を絞る必要もあった。だからこそ、こんな怪し気な秘密結社を(こしら)えたのである。


『ε-(❛ᴗ❛ و)僕を信じて、国のためにそこまで考えてくれていたとはな…』


北斗ちゃんは感動していた。だから費観にも再度質問する事は無かった。


『(〃´o`)=3 しかし…"桃の種"とはね!傅士仁の奴、いまいち命名のセンスは無さそうだな…』


北斗ちゃんは、そんな事ならこの僕に名付け親に成らせろとばかりに溜め息を漏らしたのだった。




彼らが江陵に帰還して数日が経った頃、ようやく漢江の流れも穏やかになり、水位も安定して引く気配に転じた為、江陵や公安砦からは民が解放されて、一路南郡に用意された新たな住まいへ移る事に為った。


北斗ちゃんはこれを機会として南郡に移住するも良しとしたが、やはり民にとっても氾濫の危険は在るにしても、住み慣れた地を完全に離れるのはなかなか難しいらしい。


落ち着いたら戻って来るという者が大半であった。南郡までは歩く事になるが、皆一様に解放された気持ちからその表情は明るい。怪我や傷病などで歩けない者には、馬や荷車が供出されて、移動手段として充てられる事に為った。


北斗ちゃんも、行列を為して出立していく民を見送りに出る。その傍らには弎坐と華佗先生が寄り添う。


「( ๑•▽•)先生♡この度はお力添えを頂き、有り難う御座います♪お陰様で皆、健やかに旅立つ事が叶いました。感謝しています♡」


彼も久方振りに華佗先生に会う機会に恵まれて、その顔には喜びが溢れていた。


「なぁに…(*´▽`)わしは忙しいくらいが嬉しいのよ♪わしの望みは、貧しさから医者に掛かれん人々を治す事じゃからな!結果として役立てたなら大いに結構♪それに今回は弎坐が良く頑張っておったからのぅ~わしも触発されるものがあったわぃ♡」


先生はそう言って、弎坐の頭を撫でてやっている。彼は顔を真赤にして照れていた。北斗ちゃんも、そんな弎坐に優しい眼差しで語り掛ける。


「( ๑•▽•)弎坐♪お前も有り難う…良く頑張ってくれたね!僕も色んな民の口から君の評判は聞いていたんだ。皆、親切で熱心な先生だと口々に褒めていた…」


「…僕は自分の事の様に嬉しかったんだ。君のひたむきな努力は端から見ても判っていたが、実を結んで良かったね♪本当に頑張ったね(•• ๑)♡」


北斗ちゃんは熱い眼差しで弎坐を見つめた。彼は照れを通り越して、目が潤んでいた。それが恥ずかしいのか、(しき)りに袖口でゴシゴシと拭う。


「フォッフォッ♪(*´▽`)良かったのう♡こやつは御主に褒められるのが何よりの目標だったからのぅ…報われて良かったぞい♪」


華佗先生は、ここぞとばかりに本人の気持ちを推し量る。弎坐は堪え切れずに、遂に泣き出してしまった。(´•̥ ω •̥` )


北斗ちゃんはそんな彼を優しく抱き締めてやる。すると、彼は小さな声で呟く様に、こう答えた。✿(っ˘ ³(﹡ω﹡*)✿


「ღ(-ω-*)北斗ちゃんのお陰だよ…だから頑張れたんだ♪あちきの方こそ有難う♡」


彼は甘える様に頬を擦り付け、しばらくその温もりを感じていた。




道行く人々は、皆、三人に会釈したり、手を振ったり、「有り難う♪」と言葉をかけてくれる者も居る。


皆、彼らに助けて貰った事を感謝し、喜んでくれているのだ。そして何よりも、これは彼らが民にとって身近に感じられる存在と成った証でもあったのだろう。


青臭いと言われるかも知れないが、北斗ちゃんは皆の前で日頃から、『民の幸せを第一とする』と(はばか)る事なく公言して来た。そして自らもその筋を曲げぬ努力をその行動で示して来た。


上に立つ者が、率先してその姿勢を示していれば、やがては周りの者達にもそれは徐々に浸透して行くものだ。そんな彼らの民を想う姿勢がここに来て少しずつ花開きつつ在ったのかも知れない。


「お兄ちゃ~ん(*^-゜)v♡」


不意に聞き覚えのある可愛らしい声に、北斗ちゃんは振り返る。あの診料に来ていた女の子だった。彼女は、母親におぶられた背から、可愛らしいお手々を精一杯振りながら、こちらを見つめている。✿(◍˃ᗜ˂◍)ノ⁾⁾✿


傍に行ってやりたいが、その行列は遠くそれはとても困難であった。北斗ちゃんはピョンピョン飛び跳ねながら、大きな声で言葉を掛ける。♬«٩(*^∀^*)۶»♬


「元気でね♪୧(୧◕᎑◕๑)お母さんを大事にするんだよ~♡」


そう言って大きく手を振ってやる。


「うん♡ヾ(@>▽<@)ノ判った♪」


女の子はそう答えながら、手を振り返す。母親は感謝する様に会釈を返した。(*ᴗˬᴗ)⁾⁾


「お兄ちゃん(◍˃ᗜ˂◍)ノ✿じゃ~ね~✿」


女の子は無邪気にそう言いながら、手を振り続けた。北斗ちゃんもそれに応える様に、行列が見えなくなるまで手を振り続けるのを止めなかった。❥❥⸜(ू•◡•)໒꒱ʓ৸ʓ৸♪(❛ᴗ❛ و)و˚˙


こうして、江陵城から南郡に向かう民達の移動は、つつがなく進んで行ったのである。


「(*´▽`)わしはもうしばらくここに残りたいが、そうしても宜しいかのぅ?」


華佗先生はおもむろにそう呟いた。


北斗ちゃんは満面の笑みを浮かべながら、それに応える。


「( ๑•▽•)⁾⁾ 勿論ですとも♪先生には僕もまだまだ教わりたい事がありますし、弎坐も同じ気持ちでしょう…」


弎坐も反射的に頷いた。(*ᴗωᴗ)⁾⁾


「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ それに何より、先生は民に親われています。民が先生を手離す事は無いですからね…僕のこれはエゴかも知れませんが、先生にはずっと居て欲しいと願っています!だから先生が居たいだけ、居て下さい。 こちらこそ、宜しくお願いします♪」


華佗は、その事にははっきりとは応えなかった。只一言、「(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ 有り難う♪」と述べるに留めたのである。


「殿下!(ꐦ•" ຼ•)そろそろ朝儀のお時間です…皆様、お待ちですから直ぐにお越し下さい!」


潘濬(はんしゅん)であった。彼は曹仁との交渉以来、ますます北斗ちゃんの信頼を勝ち得ていた。


彼の周りには臆せず意見を述べる臣下が数多く(つど)う。それは彼が決して皆の意見を無視せず、聞く耳を持ち、必ず意見を闘わせる事で、より良い方針を打ち出す事を目指していたからである。


信頼された者は、自信を持ちより自分の責務を全うするべく努める。彼も正しい目線で物言を判断して正当な評価を与える。そして必ず日々の中で声を掛けてやり、談笑に及ぶ。


こうする事で、彼らの健康や悩みなども自然と把握出来るし、何よりも相互理解が可能となるのである。北斗ちゃんは曹仁将軍と出会ってから、より一層…自覚に目覚めた様であった。上に立つ者の覚悟と責任という事に、真険に向き合う努力を始めたのだった。


「(˶• ֊ •˶)潘濬、判った!直ぐ行く♪」


彼はそう答え、先生に拝手すると、やおら駆け出した。問題は山積しているが、心は軽く穏かだった。 ┌(*>A<)┘ ♪♩✰

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ