対峙
"馬脚を露す"等と良く使われるが、まさに露見の瞬間であった。まだ龐徳相手なら、幾らでも誤魔化しは効いたで在ろうが、相手は曹仁であり、満寵である。
特に曹仁は関羽が太子を可愛がっているのを良く知っていたので、直ぐにピンと来た。そもそもこんな坊主に、事も在ろうにあの関羽が交渉を委ねるのも可笑しな事であった。
しかしながら、それが太子・劉禅君ならば全く意味は違って来る。現実的に有り得る話しなのだ。
ところが、そのお坊ちゃまは、船の縁から上半身を出しているだけだが、どう見ても肥えている様には見えないのだ。
「; ー̀дー́ )ᵎᵎどう想う?」
「ええ…(º言º;)でもそう言ってるんですから、そうなんでしょ?」
「; ー̀дー́ )ᵎᵎだよな…」
「ええ…(º言º;)」
…とこれまた微妙な反応なのであった。
本来で在れば、当人を目の前にして失礼にも程があるが、そう言われても仕方が無い程に、彼の評判は対外的に良くなかった。
そりゃあ宮殿の奥の院で、食っちゃあ寝、食っちゃあ寝して肥え太ってしまい、自分ではまともに歩けない等と外聞宜しく無い話しが、真しやかに流布していては、然も在らんと言った所で在ろう。
しかも、少なくともこれが先日までは事実だった訳で、自分の不徳…身から出た錆びで在ったのだから、言い訳の仕様も無いのであった。
北斗ちゃんはその雰囲気から、『このまま冗談で済まないかなぁ~(ღ◕ 0 ◕*)??』等と考えなくも無かったが、それではせっかくの善意を示した根幹を疑われかねない。
やはり、暴露された上は、真摯な気持ちで誠意を以て事に当たろうと心に決めたのだった。
「( ๑•▽•))⁾⁾ 如何にも僕が太子の劉禅です♪董斗星とは、世を忍ぶ仮の姿…どちらでも好きな方をご自由にお呼び下さい!」
彼は既に開き直った。太子とバレた以上は、少しまともな所を見せておかないと、体裁が悪い。
「( º言º)…やっぱり太子のようですよ!」
「; ー̀дー́ )ᵎᵎそうだな…」
「(*º言º)子供なら慈悲の心が在っても、無理は無いかと!」
「良し!* ー̀дー́ )ᵎᵎそういう事なら、大丈夫だろう…」
曹仁と満寵は相変わらず、ブツクサ相談しているのだが、北斗ちゃんは、妙に鼻が利く上、耳も良いので、駄々漏れである。
『失敬な!⁽⁽(੭ꐦ •̀Д•́ )੭*⁾⁾ この僕が只の子供で無い事を見せてやる!』
彼は少々おかんむりである。口を尖らせて、ブツブツ文句を呟いていた。その時である。曹仁が、決心したのか声を掛けて来たのだった。
「* ー̀дー́ )ᵎᵎもし、宜しければそちらにお伺いして、取り決めを話したいが?」
「(•• ๑)それは構わないけども…雨の中、こちらも無理を推して来てるんだ!早く民の避難を始めたいんだけど?」
「; ー̀дー́ )ᵎᵎまぁ、待ってくれ!我々の大切な魏の民を一時的にとはいえ、委ねる事に成るんだから簡単にはいかぬ、それに我が城の占有権を維持せねば、安心して退避出来ぬよ?」
言ってる事は概ね理解の範疇である。助けて貰う分際で、少々ずうずうしい気もしないでも無いが、こちらも善意で来ているのだから、仕方在るまい。
彼らは直ぐに小船で渡って来た。いざ交渉となると、厄介な事も出て来る。彼は念の為、潘濬を呼び出した。
彼は法規には明るい筈だ。国法を作りたいくらいなのだから、ここで少しは役立って貰っても罰は当たるまい。さっそく、大型二号船からは、潘濬が渡って来た。
「殿下♪(ꐦ•" ຼ•)私に何用で在りましょう?」
彼はキチンと拝礼して臨んだので、曹仁も満寵もいよいよ間違いないと確信した様だ。目の当たりにした太子・劉禅は、想いのほか、ガッシリとした体格をしていた。
そして言われてみれば、確かに肥えていたかも知れないという面影もまだ僅かに残っていた。
「”(•• ๑)悪いが、証書を作成してくれないか?後々不備があると困る!」
「(ꐦ•" ຼ•)⁾⁾ お安い御用です!勿論、助言しても宜しいのでしょうな?」
「ああ…( ๑•▽•)۶ その為に呼んだんだから、頼むね♪僕は何せ、実践不足だかんね…正解が正解である事をいちいち確かめなければならないからね…」
「(ꐦ•" ຼ•)⁾⁾ 殿下であれば、早晩、追い着きましょう。何の心配も入りませんな!」
潘濬は然も当然と言わんばかりに言ってのけた。挨拶を済まし、彼が席に着くと、いよいよ会談が始った。
曹仁はまずその計画について尋ねた。
「* ー̀дー́ )ᵎᵎ民を御身に委ねるとして、どうするおつもりか?」
「う~ん…(ꐦ •̀Д•́ )⁾⁾それは貴方の対応次第になりますね?それにこちらは貴方の本国の地理に明るくない。ご希望があれば聞きましょう…」
「…例えば宛城に近い河畔に船を着けて、そこからの経路はそちらに委ねるとか、我々に出来る事は、そのくらいのものです…」
「…後、船に移乗させ次第、食事は皆に振舞えますし、怪我した者や病気の者には、治療と薬の投与ぐらいは行えます…」
「…そんな所ですかな?勿論、望めば貴方達や兵達も、送って差し上げますし、せっかく積んで来た食糧や医薬品も供与します。それで如何です(˶• ֊ •˶)?」
太子・劉禅の言葉には一切の迷いは無かった。まだ坊主に毛が生えた程度の若者から、出た提案とはとても想えなかったが、常日頃から、目が行き届いていないとそこまで考えが及ばぬ事だろう。
誰かに言わされているんじゃない、自分の言葉を選んで発しているのだ。曹仁にはその事が手に取る様に判ったのである。
『将来…; ー̀дー́ )ᵎᵎ侮れぬ厄介な存在になるやも知れぬな…』
彼はそう想ったのだった。でもそんな事は今は関係がない。そんな事は御首にも出さずに彼は答える。
「* ー̀дー́ )ᵎᵎ否、そこまでやって下さるとは…とても有り難い事です。ではそれでお願いしましょうか?勿論、諸経費等につきましては、はじける限りははじいて頂き、請求して貰いたい。必ず支払うで在りましょう♪」
「(•• ;)否、そんな事は…」
…不要と発言しようとしたら、潘濬が手で制した。
「殿下!(ꐦ•" ຼ•)ღ⁾⁾ それは駄目です。食糧も医薬品も船も人件費でさえも、貴方の私有物ではありませぬ!これ全て国の財産であり、その権限は陛下に帰すべき物です。ぞんざいに扱うべき物では無いのです!」
確かにその通りだ。言っている事に間違いは無い。しかしながら、困った時はお互い様なのだ。明日は我が身かも知れないじゃないか…北斗ちゃんはそう感じていた。
でもこの男の言う通りなのだろう。
なぜなら、糜芳叔父は国庫を私有物と考えていた為に、自分が処断したからである。けれども彼の場合は、一族を上げてその財産を劉備の決起の為に提供したので在り、その後も事在る毎にその財政基盤を支える為に、裏で稼ぎ捲って国庫を潤して来た。
その自負が元々在っただろうし、長年のその貢献度から強く為り過ぎた増長がさせた行き過ぎた行為だったのであって、事…自分に関して言えば、帳簿を引き継いだだけで、財政全般に何の寄与もしていない。
『( ω-、)(-公- ;)勉強なさい!』
二人の叔父の言葉をいみじくも想い出す。北斗ちゃんは溜め息を漏らした。
「判った…( ๑•▽•)۶ その通りだな!曹仁殿はそれで宜しいのですな?」
「* ー̀дー́ )ᵎᵎ無論だ!施しは受けぬよ。それでは次に相見える時に、正々堂々と戦えぬ!貸し借りは抜きで願いたい…」
曹仁は正面切ってそう答えた。堂々とした立派な男である。
「閣下!(ꐦ•" ຼ•)ღ⁾⁾ それはちゃんと証書に書き記して宜しいのですな?」
潘濬は畳掛ける。せっかく感動的な男同士の約束に水を差す。けれども彼を呼んだのは自分であり、助言を求めたのも自分なのだから仕方ない。
「フフッ…* ー̀дー́ )ᵎᵎ太子はなかなか優秀な男を傍に置いて居りますな!宜しい、記すであろう。男に二言は無い♪」
「(ꐦ•" ຼ•)ღ⁾⁾ 判りました、では当然、署名もしていただけるのですな?」
「くどい!; ー̀дー́ )ᵎᵎ否、すまぬ…勿論だとも、するであろう。これは敢えて断言して置く。義兄を始め、幕僚連中の中には、敵との約束は反故にして当たり前という風潮が漂っておる…」
「…でも儂はスカン!もし万が一、支払いの段になって、躊躇したり、現物返却で質を落とす様な事があれば、儂の財産を叩いてでも、必ず返すであろう…」
「…それが、無償の慈しみの心で助けに来てくれた太子へのご恩返しというものだ。それで宜しいかな?」
「(ꐦ•" ຼ•)⁾⁾ 感服仕った!貴方こそ真の人物で在りましょう♪」
潘濬もようやく感心したと言わんばかりに溜め息を漏らした。
「* ー̀дー́ )ᵎᵎところで…人々の救済についてはそれで納得いただけたと思うが、城と国境の所有権の問題はご配慮頂けるのであろうな?」
曹仁は譲れない点として、その問題を俎上に載せた。
「( ๑•▽•)۶ 勿論!それは誓約しますが、せいぜい半年から一年といった所でしょう…無論それ以前に復興出来次第でしょうが、魏国程では無いにしろ、我々の土地も被害を受けておりますからね。当面の間は協定通りにやるべきでしょう…」
「…これにはそちらも我々の国境を侵さないという条件は当然付きますが、それを守って頂けるのならば、樊城も襄陽城も決してその間、攻めぬと誓約しましょう…勿論、国境も侵しません♪」
「何と!; ー̀дー́ )ᵎᵎ襄陽もか?」
「ええ…(❛ᴗ❛ و)˚まぁ、ここで協定が設立次第、許可を得て、襄陽の民も救いますよ!但し、これは念のため、申し上げておきますが、この荊州に乱立するのは我々だけではありません…」
「…片手落ちと言われるかも知れませんが、この協定の範囲は、魏と蜀の二国間での拘束だという事をお忘れなく!」
北斗ちゃんは、暗に呉には気をつけよ…と言い含めた。
「* ー̀дー́ )ᵎᵎ勿論、承知しておる。話は判った!せいぜい気をつけるとしょう。我々も二城を完全に空にする訳にも参らんのでな…今、本国にも救援を要請しておるわっ!残留者も居るだろうから、儂は残るつもりなのだ…」
「…お互いに自国の防衛は自国で責任を持つとしよう。今回の救援の事は借りて置く。宜しく頼む♪儂の立場で言える事では無いが、個人としてはこの事は生涯忘れないだろう…」
これで話し合いは終わった。曹仁と北斗ちゃんは互いに署名し、その証人として満寵と潘濬が署名した。
これで魏蜀協定が設立した。これは荊州だけに適用される部分協定であるから、他所の紛争には適応されない。
彼らにはそれ以上の権限は与えられていないのだから、妥協案とも言うべきものであった。
それでもこの未曾有の天災により、蜀側が歩み寄った事により設立した協定は今後の魏との関係改善に一石を投じたのである。
双方の動きはここから活性化する。宛城には早速、使者が立てられ河畔域の安全地帯に受け入れ所が作られ、そこを経由して宛城へ。
そしてそこからまた他所に避難出来るルートの構築要請が行われたのであった。曹仁は残留する兵と、民を守る兵とに澄み分けを行い、守城は当面、満寵に委ねる。
そして襄陽城には、龐徳将軍を配置する事に決めた。曹仁は民の河畔から宛城までの引き取りが完了するまでは、河畔で民を守りながら、過ごすと決めた。
行動力に長けた男である。伊達に東奔西走して来た訳では無かった。
樊城からは、民がどんどん大型船に移乗していく。大型船が満員に成り次第、中型船にも次々に乗船をさせて行き、皆、ひとまず目指すは宛城である。否、最寄の河畔と言うべきかも知れない…。
会談終結の後に満寵は関羽や馬良に陳謝を行った。(*º言º)⁾⁾ そして城に残った兵を鼓舞する。
北斗ちゃんは約定通り、樊城にも食料と医薬品を降ろしてやる。満寵は感謝の言葉を述べて、船が去り行くまで皆と共に手を振っていた。
「(;`艸´)若!申し訳御座らん…儂とした事が!」
関羽は口を滑らした失策を陳謝する。馬良も力及ばずと申し訳無さそうだ。
北斗ちゃんは笑顔で被りを振って、優しい言葉を掛けてやる。
「( ๑•▽•)۶” あんね♪終わった事を悔いても仕方ない…前向きに考えようよ♡僕は結構、曹仁将軍が好きになったな♪あの人は凄いよ!勿論、爺ぃ~の方がもっと凄いけどね♪」
「o(T艸T o)…若!!」
その言葉に関羽が感動した事は言うまでも無い。曹仁も龐徳もそれを観ながら溜め息を漏らす。この若き太子の人を惹き付ける魅力とはいったい何で在ろう。
彼らでさえも、いつの間にかその魅力に惹き込まれてしまっている。そしてその割には、本人には全くと言って良い程に自覚が無いのだ。
『* ー̀дー́ )ᵎᵎ…不思議な若者だったな♪自然と人が集う人物などなかなか出逢う事はない!魏王(曹操)がそうだが、ここにも居たとはな…』
曹仁はそう想いながら、眺めている。この若者が、この先…彼らの敵に為る日が必ずやって来よう。その時まで彼が現役で居られるかは判らなかった。
けれども彼は今後、この若き太子に注目しようと心に決めていた。波間に揺蕩う江陵艦隊は一路、宛城近辺の河畔を目指して進む。雨はまだまだ止む気配は無かった。