大救出作戦
撤退を始めた頃はまだ然程の影響も無かった風が、公安に着く頃には段々と強くなり、空もどんよりとして来ていた。
『(◕ 0 ◕;)…張翼の進言を聞いて正解だった。危なかったな…』
北斗ちゃんが張翼と傅士仁を引き連れて到着するや費禕が出迎えてくれる。
「(⊹^◡^)若君!お帰りなさい♪」
「(((ღ(◕ 0 ◕*)費禕♪で!準備は出来ているのかい?」
「(⊹^◡^)ええ♪勿論!費観が若の近衛3千と共に先に行っております…弎坐もやるべき事があるとかで、一緒に先に行かせました。こちらは南郡城と連携を密にしての避難勧告も済んでおり、公安一帯の救助も進行中です♪」
「ღ(◕ 0 ◕*)御苦労様♪そうか…弎坐も張り切ってるんだな♡判った♪ここらも被害を受ける可能性大だからな…頼む!」
「(⊹^◡^)ええ♪承知しています!張翼…貴方も頼みますよ☆彡」
「ღ(。-_-。)ええ…当初の手筈通りに♪」
「(((ღ(◕ 0 ◕*)じゃあ二人とも頼むね♪傅士仁は一緒に来てくれ!」
「εღ(´皿`*)勿論でさぁ♡ワシが居ないと始まりませんからな♪」
「(◕ 0 ◕;)だねっ…判った!頼むね♪」
二人は騎馬したまま手綱を返し、その足で長江に向かう。江陵に向かうには馬よりは船が早い。風が出てきた。どす黒い雲もだんだんと近づきつつある。
『(◕ 0 ◕;)大丈夫かな…陸路を選択した方が良かったか?』
北斗ちゃんは思わず空を見上げる。彼方の曇天からは丁度、稲光りが煌めき、轟音がけたたましく鳴る。
「(◕ 0 ◕;)急ごう!」
彼は傅士仁にそう声を掛けた。二頭の馬が進む行く手には、やがて長江が見えて来る。日頃、断崖の上から眺める景色には趣があるが、曇天の今は少なからず色褪せて見えた。
二頭はそのまま、断崖から河に沿うように続く坂道を駆け降りて行く。するとやがて波止場が見えて来た。
「こ、これは…Σ(´□`ノ)ノ」
北斗ちゃんは驚きの余り、傅士仁を振り向く。彼はニヤニヤ笑っている。
『こいつ…ღ(*◕ 3 ◕ღ)何か知っているな?』
北斗ちゃんは余所見をした為に、危うく停泊中の船に飛び込みそうになり、慌てて手綱を引いた。
ここは長江に設けられた公安波止場である。そしてそこには、未だかつて見た事も無い様な巨大な船が二隻停泊していた。
「(((ღ(・・*)やぁ~若君♡いらっしゃい♪お待ちしておりました!」
そこには費観が迎えに出ていた。そして「驚いたでしょう(((ღ(・・*)?」と言った。
「ああ…ღ(◕ 0 ◕ღ;)驚いたなんてもんじゃない!」
これは何だ…と尋ねようとした矢先に、傅士仁が口を挟んだ。
「若…εღ(´皿`*)空模様からすると、とっとと出発した方が良さそうです。後程、ご説明致します…」
「判った!そうしよう(◕ 0 ◕ღ*)♪」
大型船の先頭は、傅士仁が若君を伴い、そのまま乗船する。二隻目の操船は費観が担う。やがて二隻の船は、波止場を離れて、長江を進む。
「(((ღ(´皿`*)皆♡、ようやくその成果が陽の目を見る時がやって来たのだ!!元気良く行こう♪声を出せ!」
傅士仁は水兵達に声を掛ける。
「「「おぉ~!!!」」」
水兵達はその指示を合図に、一斉に声を合わせながら、櫂を漕ぎ始めた。「エイホ!エイホ!」とその掛け声は小気味良く響き、気持ちが良い。後に続く費親の船もやや遅れて「エイホ!エイホ!」と掛け声が聞えて来る。
二隻の船の掛け声は、互いを励ます様にやがて輪唱となって、江陵に向かう船上は、その賑やかな掛け声と共にその士気を増す。長江の流れにすっかり乗った両船は、恐しい速さで下って行った。
『凄いな…ღ(*◕ 3 ◕ღ)こんな船があるなんて、正直たまげた。しかも、皆のタイミングがきちんと合って、寸分の狂いも無い。よく訓練されているな♪』
北斗ちゃんは、ますます驚いた様にその様子を見入っていた。
「どうです (((ღ(´皿`*)?若君、こいつらなかなかやるでしょう?」
傅士仁はドヤ顔でそう話し掛けてくる。北斗ちゃんも手に汗を握りながら、それに応える。
「ღ(◕ 0 ◕*)やるなんてもんじゃない!いったいこれはどうなっているんだい?」
「ああ…ε(´皿`*)この大型船はですなぁ、ワシが内海を往復していた頃、培った船を原型にしておりましてな、列記とした軍船ですわ!中型船と似た構造をしておりますから、扱った事のある者なら、操船可能と言えるでしょう…」
「…しかしながら、そのずう体が大きい分、早めの判断が要求されます。元々半分の水兵はワシの子飼いですから心配いりませんが、半分は新兵ですからな…勿論、ベテランについて訓練はさせておりますが、今回ぶっつけ本番の連中です。さぞや良い経験と成りましょう♪」
傅士仁はそう説明を終えるとケロッとしている。
「へ?(◕ 0 ◕ღ;)それって大丈夫なのかい…」
北斗ちゃんは却って心配になってしまった。
「大丈夫ですよ…(((ღ(´皿`*)♡ワシの配下が鍛えたんですからな!大船に乗ったつもりで…おっと!既に乗ってますな♪ガハハハハッ!」
傅士仁は酒落が効いていると想ったらしく、妙に納得して大笑いしている。
『大丈夫なのかな…(◕ 0 ◕;)』
北斗ちゃんも想わず苦笑いする他無い。
けれども、傅士仁は信用の置ける男だから、彼が太鼓判を押すなら信じる。それで良いのだ♪それに大型船は何の問題も無く進んでいる。後は時間との勝負だった。
「ღ(◕ 0 ◕;)それにしても、こんな船…いつの間に造ったんだい?」
北斗ちゃんは素朴な疑問を口にする。
「ああ…ε(´皿`*)一隻は元々、在りましたよ!ワシが呉に対抗して造った奴ですから♪もう一隻は、ワシの造った船を参考にして、船大工に造らせたものです。ごくごく最近仕上がった新造船ですな!」
「ღ(◕ 0 ◕;)それって、かなり費用掛かったんだろうね?」
「否、全く ε(´皿`*)!…と言いたいところですが、些少ですな…木材は至る所にふんだんにありますからね♪一隻はワシの完全なオーダーメイドですし、もう一隻は技術を学びたい船大工と取引しました。ですから、費用は心配ありません!」
「でもその技術…ღ(◕ 0 ◕ღ;)他国に流出すると、不味いんじゃ?」
「(((ღ(´皿`*)あ!それも心配ありません。二人共、ワシが召し抱えて、両船に一人ずつ乗ってます♪」
「ღ(◕ 0 ◕*)あっ、そう♡なら安心だね…」
「ε(´皿`*)若!まぁ、ワシのやる事に手抜かりはありませんから、大船に…いやはや'`,、('∀`) '`,、ハハハ…また言ってしまいました♪」
傅士仁はそう言うと、再び豪快に笑う。状況に関係無く、騒がしい男である。それにしても、費観はいつの間にそんな技術を磨いていたのだろう。彼の口からはそんな事、一言も聞いた事が無かった。
「あぁ…(((ღ(´皿`*)そいつはワシのお手柄でしょうな♪」
聞いた端からこの男の手柄話になっていく。
操船技術どころか船まで造ってしまう。まるで超人の様なこの才には呆れてしまう。
『味方にしておいて良かった…(◕ 0 ◕;)』
北斗ちゃんでなくとも、そう誰もが想うに違いない。
「ღ(´皿`*)費観殿は、元々この荊州に居た方ですから、長江には慣れ親しんでいます。蜀に移住した後も黄河で船の操船には慣れており、中型船までなら扱えると言うので、公安砦の引き継ぎの際に、大型船の所在と操船マニュアルを差し上げた次第です…」
『成る程…ღ(◕ 0 ◕ )手廻しの良い事だ!確かにこの男の手柄に違いない。しかし、人とは付き合ってみないと判らぬものだな♪』
北斗ちゃんはそう想った。
『(((ღ(◕ 0 ◕*)♡この作戦が済んだら、費観も称さねば成らんな♪」
彼は頼もしい男達に感心していた。
その時、ついにポタポタっと雨が頬に当たる。
『ღ(◕ 0 ◕;)とうとう降って来たか…』
覚悟していたとはいえ、想わず身体に緊張が走る。
「若君!ღ(´皿`*)念のため、船内にお入り下され…慣れぬ者は、屋外に居ると、咄嗟の反動に耐えられず、流されますゆえ、危のう御座います!」
北斗ちゃんは異を唱えたいところだが、"慣れない者"である事に間違いはなかった。彼は未だ船には乗り合わせた事が無かった。
「判った!ღ(◕ 0 ◕ღ;)そうしょう♪但し…今はだ!」
北斗ちゃんは迷惑を掛けぬ様に引き下がり、船内に入った。
「やれやれ…ε(´皿`*)困った事だ。さすがの若君も、陸の上では万能でも、水の上では勝手が違うようだからな…このワシでも、当初は物の役に立たなかったのだ。推して知るべしというところだろう。足手まといにだけはさせぬ様に、手を尽さなければな…」
傅士仁はそう想った。
本来であれば、船に乗った事が無い者を、ぶっつけ本番で乗せる事など在り得ない。しかも取り残された者や流された者を救助する側なのだから、乗るだけでは済まない。
場合によっては、荒れ狂う波間に飛び込まねばならないのだ。傅士仁は念のため、若君に船に乗った事があるかを問うた事がある。
「(((ღ(◕ 0 ◕ღ*)やだなぁ傅士仁♡あるよ♪」
北斗ちゃんは喜び勇んで速答した。彼はそれで安心してしまったのであるが、後々ひょんな事からその鍍金が剥がれる。
「何ですと?Σ(´皿`*)船に乗った経験とは…孫婦人に連れ去られそうになった時の事なのですか?幼子で、しかも手を引かれたまま??」
「うんღ(◕ 0 ◕ღ*)♪そう…僕は自信を持って言えるけどね、それ以外の乗船経験は無いな…」
「あんたねぇ…ε(´皿`♯)そんなん自慢にも成りゃあしません!どの口が言いますか?まさかとは想いますが、泳げるのでしょうな…」
「えっ!ღ(◕ 0 ◕ღ;)泳ぎって何?」
これには皆、絶句してしまった。泳げない者が、救助なんて出来る訳が無い。むしろいの一番に、要救助者に成り兼ねない。
しかしながら、良く良く考えてみれば、超絶丸々肥えていた若君の過去に、泳ぎの経験が在ろう筈が無い。
しかも当時の拠点である南郡城には、河が近くに無かった。一夜漬けで無駄な悪足掻きをしようにも、さすがに河が無ければどうしようもない。ところがである…どんな苦境に立たされても、めげないのが北斗ちゃんの良いところなのである。
「(((ღ(◕ 0 ◕*)良い事、想いついちゃったもんねぇ♪♪」
北斗ちゃんは早速、傅士仁に告げる。
「Σ(((´皿`;)何ですとぅ~!!南郡城の鉄壁のお濠で水練をするですとぅ~!!」
「(((ღ(◕ 0 ◕*)うん♡我ながら良いアイデアだろう♪」
「((ღ(´皿`;)まぁ…確かに。それしか手は無いですな!そんな水練聞いた事…在りませんが、若がそれで良いならやりましょう!」
こうして北斗ちゃんの挑戦が始まった。それから毎日お濠で水練の日々である。これは実際にやってみて判った事だが、この人ダイエットで痩せた時に、かなり趙雲に鍛えられていたお陰で飲み込みが早く、運動神経が発達していた。
そこで直ぐに水練はマスターしてしまった。二日と掛からなかったのである。
『(((ღ(◕ 0 ◕*)やったね♡これも長年、筋肉を酷使して来なかった賜物だな♪』
脳細胞の経年劣化とは違うのだから、この場合…ちと違う気がするのだが、まぁ御本人がそれで気を良くしているので、ここはひとまず良しとしておこう♪
「((ღ(´皿`;)それにしても驚きましたな…あんた上達半端無いっすな!いいでしょう♪これでいざという時には、船には乗せましょう…しかし息つぎの呼吸法、普通は苦労するんですがね?何でそんなに上手なんです?」
「(((ღ(◕ 0 ◕*)うふふ♡それは簡単だよ♪タライに張った水の中に、思いっ切り顔突っ込んで、息をどんだけ止められるかを競う遊びをね、昔から超得意としてんだよね♪これでは未だかつて誰にも負けた事が無いな♡」
「((ღ(´皿`;)何ですか?それ…。まぁ、いいでしょう。何にしても水中で息が続くなら結構な事です!但し、お濠と違って河は流れが有りますし、尚且つ出動の時には氾濫した状態ですからな…無理はせぬ様に願いますぞ?貴方は指揮だけ取ってくれたら宜しいのですからな…」
「(((ღ(◕ 0 ◕*)うん♡判った♪迷惑は掛けないから心配しないでね♪」
こうして水練は合格出来たのであるが、結局、事前に船には乗れず仕舞いであった。
『((ღ(´皿`;)…若君の感覚はよう判らん…』
傅士仁は、世の中の高貴な方は皆、こんな変人揃いなのかと、内心呆れていた。
実は北斗ちゃんの挑戦はこれでは終わらず、その後も続いていたのだが、兵の鍛練や大会の準備などに奔走していた傅士仁や他の者たちも知らない間に、彼の飽くなき挑戦はまだまだ終わっていなかったのである。
彼は大きめの板を準備すると、それをお濠に浮かべて、その上に乗る訓練を始めた。朝から取り組んだその鍛練は、昼食を挟んで夕刻まで続く。
残念ながら何度か板の上には乗った物の、立ち上がってバランスを取ろうとするとバッシャンという水飛沫と共に濠に落ち込む。その繰り返しなのであった。
『(;◕ 3 ◕)ღ意外に難しいな…』
彼は翌朝も諦めず取り組み始めた。そして何度も失敗を繰り返すうちに、段々とコツが掴めて来たのである。彼は遂に櫂を持ち込み、板の上に乗ると、その櫂を漕いで自由にお濠を進み始めた。
『(*◕ 3 ◕)ღウフフ…やったね♡これならなかなか様に為ってるだろう♪』
彼は得意気にほくそ笑む。但し、あくまでお濠の静水の上での話である。彼は調子に乗ってひとりで遠出して河に出ようとも想ったが、それは辞めた。
さすがに皆、忙しく働いているのに、自分だけ持ち場を放棄して不在にする訳にもいかず、尚且つ、何か在った場合取り返しがつかず、皆に迷惑も掛ける。
『(;◕ 3 ◕)ღ)))仕方ない…今の所はここまでだ!やるだけの事はやった…』
彼は一旦、その取り組みを中断する事にした。それでもたった数日間で水練を覚え、持ち前の息つぎの能力を再認識して、静水の上とはいえ、立ち乗りで櫂を漕ぐ事に成功したのであるから、常人の為せる技では無かったというべきだろう。
そんな経験を踏まえて、彼は今回船に乗り込み本番を迎える事に為ったのである。