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一難去ってまた一難

さてこちらは再び、国境付近の関羽総督陣営である。関羽は突然、兵に声を掛けられた事で意識をそちらに向けた。それは彼が準備に声を掛けた配下で在ったのだから然もあらんといった所である。


「(*`艸´)どうした?何か問題でもあるのか?」


「(>_<)はい!閣下…河の流れが尋常では無く、網を張る所では在りませんぞ!」


「(*`艸´)何?どれどれ儂が観てやろう♪」


以前の関羽であれば考え無しに一喝し、怒鳴りつけるくらいの事はしたものだが、若君とのふれあいを通じて彼は物事の本質がひとつでは無い事を感じ取っていた。


もしかすると、自分が想いも依らない不足の事態もあり得るのではないか?…という事である。だからこそ、彼はその本質を自らの眼で見極めようと考えたのであった。


「(*`艸´)ふむ…確かにこれは不味いな!おい、馬良お前も観てみろ?」


不意に総督から呼び掛けられた馬良は咄嗟に振り向くが、直前の彼は東の雲の切れ間から見えるどす黒い空模様に何か嫌な物を感じていた。


だから関羽に声を掛けられた時に、直ぐに身体が反応して、歩み寄る。関羽総督は両手を腰に当てて、長江の河面(かわも)を上から覗き込む様に見つめていた。


「(。◝‿◜。ღ)閣下…どうされました?」


「(`艸´ღ;)あれだ!」


総督閣下は眼下を見つめながら、長江の河面を指差しながらそれに応える。馬良はその指し示す指の先をなぞる様に視線を傾ける。


「(ღ ◝‿◜ ღ;)アッ!!これは…」


長江の流れは彼らが気が付かない間に勢いを増し、いつの間にか波のうねりも激しくなっていた。その水嵩(みずかさ)も心なしか増している様に見える。


「( ◝‿◜ ;)…閣下、この荒れ様では罠など張るのは諦めた方が宜しいですな…というよりは最早、呉が攻めて来る事も無い可能性すら在ります!」


「(*`艸´)ん?そらまた極端な判断だな…その根拠はな辺に在るのか?」


「( ◝‿◜ ;)…優秀な漁師でも波の高い日には漁を控えると申します。これはその状況を既に超えておりましょう!さらに…あれを御覧下さい!」


馬良は東の空の彼方を指差しながら、振り向き(ざま)に関羽の眼を見つめる。関羽も馬良の只為(ただな)らぬその表情を窺うや、その指の先を見つめた。


「(;`艸´)何と!…確かにそうかも知れんな!」


「( ◝‿◜ ;)…でしょう?これは嵐が来るかも知れません!しかもあんな(まが)々しい、どす黒さは近年観た事が在りませぬ、これは撤退すらも考えるべきかも知れません!」


「(;`艸´)ウヌヌ…しかしそれは出来ぬ!」


「( ◝‿◜ ;)…なぜです?ここで暴風雨に飲まれると我々も只では済みませぬ!皆の命が掛かっておりますぞ!」


「(*`艸´)=3 しかし…儂は若君に約束したのだ!必ずここを死守するとな!それに江陵は…否、江陵の民は守らねばならぬ、それが我々の御役目なのだ…」


関羽も肝の太い男であるから、そう簡単には動じない。馬良も長い付き合いであるから、そこら辺の閣下の剛毅さには舌を巻く。否、尊意を持ってさえ居た。


しかしながら彼の欠点は、心に念じている事以外に意識を転ずる事が、直ぐには出来ない点にあることも心得ていたのだった。


馬良は自分の言い方が甘かった為に、本来伝えるべき真意が、彼には伝っていない事に気がつき、想わず溜め息を漏らす。


『やれやれ…( ◝‿◜ ;)私とした事が!』


馬良は改めて顔を上げると、閣下に相対(あいたい)して再び説得を試みた。


「(。◝‿◜。)閣下!私の言葉に不備があり、誤解を与えたようです。閣下の(げん)は至極ごもっとも!しかしながら、今回為すべき事は、最早ここには御座いません!」


馬良の真摯な物言いは、関羽に少なからず疑問を感じさせた。彼は情況の変化に応じて対応を変えなければ、却って後手に廻る…否、逆効果に成り兼ねないと(くさび)を打ち込んでいるらしく観える。


『ふむ…(*`艸´)☆ どうやら儂の見えていない景色が、馬良には見えているらしい。この男には何度も助けられているのだ。ここは儂も真剣に向き合わねばな…』


彼は馬良にしっかりと向き合い、

「(*`艸´)話しを聞こうか?」と言った。


馬良は今度は安堵の吐息をつく。


「(ღ ◝‿◜ )閣下!敵の(きょ)を突くのは戦の常道であり、我々も仕掛ける事もありますが、物事には程度の問題があります…」


「…これから嵐が来て、自分達の身が危うい時に、わざわざ強行して来る者が居りましょうか?我々の敵は呂蒙という侮れぬ男です。私が彼の立場であれば、潔く撤退するでしょうね…」


「…それに彼らの最大の武器は、何と言っても軍船です。幾ら陸路を取って攻め寄せるにしても、本拠地の建業(けんぎょう)から蜀呉の国境まで、兵を運ぶには使わない手はありませぬ。何しろその方が、効率良く一度に多くの兵を運べますからね…」


「…彼らは恐らく建業から江夏(こうか)までは船で移動し、江夏から陸路を取ったのだとすると、これだけ早く国境まで接近されたのも頷けるというもの。そして船乗りとは人一倍、天候を気にする者でもあります…」


「…そんな彼らからしてみれば、その異変に気がつかない筈が無く、その恐しさも身に沁みて判っておりましょうから、とっとと撤退に入るかと!未だに我々が誰一人として敵の存在を認知出来ぬのも、その辺りに原因があるのではないかと愚考する次第です!」


『(;`艸´)そうかも知れぬ…』


関羽も理路整然とした馬良の説諭に納得がいく。確かにその通りだ。そして彼がいみじくもそう判断した時を見計らう様に、再び赤兎馬が、「ブルルルル…」と嘆いた。関羽はそれを眺めていて、馬良の真意にようやく気がつく。


「(*`艸´)馬良♪お主の言いたい事がようやく判ったぞ!我々の今為すべき事は、呉と争う事では無く、江陵の民を救う事なのだな?お前は若君ならそうする…そう言いたいので在ろうが…」


「(。◝‿◜。ღ)閣下♪御明察です。仰有る通りかと!」


「判った!(*`艸´)皆、聞けい♪嵐だ!間も無く嵐がやって来るぞ!今やっている作業は中断じゃ!取り急ぎ一旦、江陵まで引く、良いな?」


こういう時に関羽の咆哮は便利に働く。皆、一斉に手を止め、その意図を理解すると手分けして片づけに入る。


「(*`艸´)我々の方針はこれより、江陵の民の避難に切り換える。軍船を担当する者は、帰り次第、準備に入ってくれ♪ひとりでも多くの民を救うぞ!」


「「「おぉ~!!!」」」


皆もいよいよかと却って士気は高くなる。


例えその身が兵という、戦いに特化した者達であったとしても、敵とはいえ人を殺すよりは、身内を自然の脅威から守り抜く事の方が何百倍、否、何千倍も嬉しいものである。それは彼らが血の通った人で在るからに他為らない。


こうして関羽軍3万は国境付近からの離脱と撤退を決めた。そして総督の緊急司令により、狼煙台の兵達も、全ての兵がこれを放棄し、江陵城への撤退と民への支援に廻される事となったのであった。


赤兎馬を御しながら、関羽はチラッと然り気無く、馬良を眺める。


『(*`艸´)本当に対した奴だ♪この儂には替え難い稀有(けう)な男よ!』


彼は馬良の機転に感謝していた。


『ღ(。◝‿◜。)♡閣下の判断に(くも)りは無かった。やはりいざ決断された時の行動力には微塵も迷いが無い!未だ底の見えぬお人よ♪大した者だ☆彡』


馬良自身もそう想い感謝していたのだった。


関羽と馬良のこの絶妙な連携により、彼らが無事に江陵に着く頃には、ちょうど若君からの伝書鳩による一報を受け取った伊籍が、伝礼の者を発しようとしている矢先であった。


それほど彼らの判断は的確で在ったと言えよう。そして伊籍も一報を受けるなり、直ぐに江陵に緊急事態宣言を発し、南郡城宛に伝書鳩を飛ばし、避難民の収容に向けた準備を依頼した。


そして残存兵も一部を残し、全てを民の避難誘導に充てたのである。この判断に総督は大いに気を良くした。


「(*`艸´)良くぞやった♪」


そう言って伊籍を称賛したのである。その上で、彼は皆を鼓舞する。


「(*`艸´)皆、喜べ♪我らが伊籍殿が既に道を作って来れているぞ!我らも追い着け!追い越せだ!誰一人として見逃がさぬ様に、漢江河畔の民達をきっちり避難させるぞ♪」


関羽はこの流れを壊す事無く上手く利用して、兵達の士気を更に高めた。出撃以降、その緊張を強いられて来た兵達には、戻って来るなり申し訳無いとは想うが、その彼らにここで今一度エールを送った事になる。


勿論、兵達だって馬鹿ではないから、それくらいの事は心得ているし、尚且つ彼らもやる気満々である。その理由は『尊い命を救う』事にある。


そして、それは自分達の親や縁者を救う事にも繋がる行為なのだから、踏ん張りも効こうというものである。兵達は総督の意気高揚に大いに気を良くして、大歓声を上げた。


「「「伊籍殿♪万歳!!総督閣下♪万歳!!民を守れ!死なせるな!張り切んぞ!!おぅ~おぅ~おぅ~♪♪♪」」」


そんな兵達の様子を見るにつけ、関羽も彼らを頼もしく感じた。伊籍も馬良も同様である。


「(*`艸´)…儂も出撃する。馬良、お前は残って伊籍と一緒に采配を頼む!」


「そんな…(((ღ(;◝‿◜ ღ)閣下、私も一緒に行きます!私にも出来る事が在りましょう♪」


「(*`艸´)ღ))) 否、伊籍殿も御高齢ゆえな、若いお前にしか出来ぬ事も在ろう…」


「…((((ღ`艸´;)おっと、老師!言葉のあやですからご容赦下さい…」


「ウォッボン( =^ω^)♪」


伊籍も話しの流れからその機微は判っているらしく、ご機嫌なままである。関羽はホッとしながら、先を続ける。


「…(;`艸´)ღღ)) これは決して軽んじては成らぬお役目である!なぁに心配致すな、どうせお前の事だ、若君との約束を気にしておるのだろうが、今は非常時である。儂は無茶はせぬよ!これはお前と儂の男同志の約束である。必ず守るゆえ、お前はここを頼む…良いな?」


「ღ(。◝‿◜。)♡判りました!そういう事ならば私はここに残ると致します!」


「それで良いのだ(*`艸´)♪頼んだぞ!」


「(((ღ(。◝‿◜。)承知♡」


「メლ(* ^ิ౪^ิ)ლ それでしたら、自分が一緒に行きますぞ!」


「うん(*`艸´)??」


関羽が振り向くと、そこには周倉が立っていた。あの(まさかり)男である。


「何だ(*`艸´)?お前戻っていたのか!御役目の方は大丈夫なんだろうな?」


「メლ(* ^ิ౪^ิ)ლ へい♡呉の本国は、暴風雨の影響でそれどころじゃあ、在りません!ありゃあ相当な被害が出ますな…ゆえに緊急避難といった所です。心配しなくても皆で引き上げて来ましたから、脱落者は出ておりません!」


「(*`艸´)))) なら、良いが…その調子では戻ったばかりであろうが?少し休め!」


「メლ(* ^ิ౪^ิ)ლ?? 閣下!誰に言っとるんです?この周倉、閣下のお側でこの(まさかり)を奮うのが本来のお役目…たまには好きにさせて貰いますぜ!」


周倉は被労の色すら見せず、健康そうな肌黒い胸筋をピクピクさせながら、大口でゲラゲラと笑う。関羽は未だに山賊の時の癖が抜けないこの男に、呆れた様な顔を向けた。


「(〃`艸´)=3 判った!判った!たまには良かろう♪昔の様に、一緒に暴れるとしよう!但し、今回は人助けだ!来るからにはきっちり働いて貰うから覚悟しておけ♪」


「メლ(* ^ิ౪^ิ)ლ あいっ♪判っとります!任せておくんなさい♪」


周倉は(まさかり)を担ぐや鼻歌を歌いながら、関羽に続いた。


「ε-(^ω^= )やれやれ…最近の若い者は…」


伊籍はその背中を見送りながら、そう宣う。


「ღ( ◝‿◜ ;ღ)老師、判ってやって下さい…閣下もそういうおつもりでは…」


「(^ω^= )判っておるわ♪わしが言っておるのは人を山汁にした事じゃわ…気にしておらぬよ、ホッホッホ!」


伊籍はその言葉遊びを愉しむかの様に、その存在感をここに示した。


「で? (((ღ(^ω^= )軍師殿…この先のご采配を願いますかな?」


伊籍は然も楽しそうに演じ続ける。同じするなら踊らにゃ損!損!という訳である。馬良も溜め息混りにそれに付き合う。


「若者からは、何と (((ღ(。◝‿◜。)?」


「ああ…(((ღ(^ω^= )この江陵は一時避難をさせるには十分な広さじゃ…一旦、ここに皆を収容し、大洪水をやり過ごす。その上で然るべき日を選んで、南に移住させるそうじゃな♪」


「成る程…(((ღ(。◝‿◜。)♡周倉殿の口振りでは、呉も暫く戦どころじゃ無いようですからな!備蓄が功を奏しましょう♪」


「(^ω^= )若は、おいおいこちらに来られるじゃろう♪弎坐殿が戻られるまでは、怪我人は華侘先生に頼みたいとの事じゃ…それは先程、わしも頼んで来たわい!」


「で… (((ღ(。◝‿◜。)先生は何と?」


「ああ…(((ღ(^ω^= )快諾下すったわ…心配いらぬよ♪」


「(((ღ(。◝‿◜。)♡それは良う御座いました♪」


馬良は、若君が判断を誤る事無く、撤退した事に安堵していた。しかも、こちらの心配をする程の念の入れ様である。


その精神状態がこの積み重なる難局の繰り返しにも、全く動せず、正常に機能している事の(あかし)で在ろう。


『( ◝‿◜ ;ღ)ここに来て、若君の存在が如何に大きかったかが如実に判る…あの人が居なかったらこんな咄嗟の切り換えも出来たかどうか分からない。しかも前もって準備していたからこそ、取り掛かるのに躊躇も無い…』


『…それは物の準備もさる事ながら、皆の意識の変革を図れたからだ!あの大会は遊び心を通じた皆の和合の促進のみでは無かったのだ。直ぐに行動に移せる気構えをも浸透させるものだったのだな…』


馬良は今さらながらに、太子の若さに似合わぬその用意周到さに舌を巻いていた。彼の考える力とは?その発想力とは?何なのだろう…その奥の深さは底すら無いのではないか…そう想えて為らなかったのである。


この馬良の考えには、実は彼の主観が既に入っている。それが太子の存在をより大きくしている。自分の評価とはこうして他人の頭の中でその存在力を大きくして行くものなのだろう。


実際には、北斗ちゃんも只の人であり、決して未来を見透せる力がある訳ではない。彼はただ、自分で想い疑問に感じた事に対して、それが無駄かどうかなんてつまらぬ検討をする前に、自分の信念の赴くままに行動して来ただけであり、それが今、功を奏した。それだけの事である。


端的に表現するとそう言う事に為るのではないだろうか。それが若さゆさの発想で在ったとしても、彼は常々人の命の尊さを大事にし、人々にやり甲斐を持たせる事に留意して、行動して来た。


称賛されるべきは、彼の果たした成果では無く、彼のその姿勢にこそあるのだが、なかなか目に見えないものは他人の評価には繋がらない様である。


けれども皆、頭ではまだ判っていなくても、その心では、既に感じ取っていたのではなかろうか?だからこそ皆、自然と行動に移せた…この結束はそうやって産み出されたと言えるのかも知れない。


いよいよ彼方のどす黒い雲はこの江陵地帯にも掛かりつつある。雲の切れ目から放たれた稲光りがピカッと射し、ゴロゴロと大きな音を轟かす。


『(。◝‿◜。;)急がねば為らん…』


馬良と伊籍は手分けしての受け入れ準備に取り掛かるのだった。

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