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物壮んなれば、則ち老ゆ

【物壮んなれば、則ち老ゆ】


ー 栄枯盛衰という言葉がある通り、一生勝ち続けることは出来ない ー


で在るならば、誰かに勝つことを目指すのではなく、精一杯自分の力を出し切るだけでいいと云う意味です。

「(´艸`υ)何ですと?中型船を供出しろ…ですと?」


関羽総督は驚いた顔を見せる。馬良や伊籍も目を見張った。皆、その存在その物を今の今まで忘れていたくらいだったので、その存在を若君が知っている事にまず驚き、なぜなのかにまた驚く。


一方の北斗ちゃんは澄ました顔で「うん♪」と応える。彼にしてみれば、何を驚く…といった具合だろうか。


「(・艸・; )その話…どこで聞かれたので?」


関羽は相当な動揺振りである。そしてあくまでも(とぼ)けようと無駄に(あが)く。


『フフフーン♪(◉ε◉*)あくまで(とぼ)ける気なんだな?無駄な事を…』


北斗ちゃんは想わず溜め息を漏らす。


「( ☌ω☌)爺ィ~♡聞いた訳じゃない…見つけたんだよ(¬∀¬)♪僕の鼻を(あなど)ると危険だよん!」


「・゜・(;´゜艸゜)ゞ・゜・ぁゎゎ…」


「*ゞ(∇≦* )閣下…さすがに若君の鼻には敵いませんな!ここらが潮時かと!!」


馬良は織り込み済みと一転、関羽を諭す。


「(〃´艸`)=3 フゥ~やむを得ませんな…認めましょう。しかし若の鼻がそれ程、効くとは想いませなんだ。あれは元々この荊州という地域の特殊事情を想定しての準備です!…」


「…無論、呉の水軍や魏の城攻めに使用する為に長い時間をかけて準備したもので、江陵兵は今でも訓練に使用しておりますからな…」


「…但し目立たぬ地で細々とやらせていたので、さすがに気づくとは想いませぬよ!ところで中型船を供出して何を為さる?」


「٩(๑❛ᴗ❛๑)۶勿論、来るべきその時に向けた準備さ♪」


「あぁ…(˘˙౪˙˘๑)漢江氾濫時の救出作戦ですかな?」


「うん♡✩(*´˘`*)さすがは伊籍殿!仰有る通り…」


「(*`艸´)しかし、あれは軍船ですぞ!敵への備えとして準備したものを、取り上げられてはさすがに困ります…」


「否、(o-∀-o)お待ち下さい閣下!若君の言う事にも一理在ります。軍の務めは国防ですが、則ち国とは何ぞや?国とは民です。漢江の氾濫の際、我々の持つ力が役に立つので在れば従うべきかと!」


「(˘˙౪˙˘๑)さすがは馬良殿じゃな…総督閣下、そう言う訳じゃから、若君の言葉を前向きに検討してやってはどうかな?」


「ふむ…(・艸・* )民を理由にされては儂も翻意するしかなかろう!判った、協力致しますぞ!」


「フフ…٩(ˊᗜˋ*)و 爺ぃ~そう言ってくれると想ったよ♡でも安心してくれ!民をまず安全に避難させるのは既定路線だ。殆んどの民はその段階で助けられる。でもね、自然の脅威とは図りしれないものだと聞いている…」


「…必ず想定外の事は起きるものさ!そのくらいのつもりで準備しないと危ういだろう?遮断されて逃げ遅れた者達を救うのがその主たる目的となる。僕は誰一人として死なせたく無いんだよ…」


「若…(*´゜艸゜)」


関羽は無論の事、馬良・伊籍の働き掛けもあって、中型船団は太子の緊急発動で動ける様になった。北斗ちゃんは完全に取り上げて、自分の管轄に置くような事はせず、引き続き総督を信じて預ける判断をしたのだった。


「ほぉ~(˘˙౪˙˘๑)小型船やいかだの準備までするとは念が入っておりますな…」


「民は勿論だが、皆の命を守るためさ!どの極地点でも、誰かひとりでもそこに居れば、人・物・技術が揃う様にして置く。

・*✧:.◝(⁰▿⁰)上に立つ者がそういう意志を示し、準備を整えてやれば、民や兵の意識も(おの)ずと上がる。それが狙いかな?…」


「…それに物造りへの興味は高まるし、その経験が今後様々な工夫となって寄与する事になれば、公民共に喜ばしい。少なくとも魚くらいは獲れるようになって、生活の足しくらいには成るだろうから、やる価値はあるだろうよ!」


北斗ちゃんは面白可笑しくまとめたものの、その表情は真険そのものである。


「(o-∀-o)ゥフフ…判りました!そう言う事なら、手の空いている者には協力させましょう。私も一度取り組んでみますかな?」


馬良もそれに快く答えた。


「(˘˙౪˙˘๑)ホッ、ホッ、季常(きじょう)殿はまだお若くて宜しいのぅ…羨ましい限りですな♪」


「(o-∀-o)機伯(きはく)殿、冷やかさないで下さい、御身だってまだまだ溌剌(はつらつ)としております。肌だってまだツヤツヤしているじゃありませんか?」


「(˘˙౪˙˘๑)ホッ、ホッ、世辞は良い…若君お気張りなされよ!」


「(*つ▽`)っ)))ええ…老師!有り難く♪」


北斗ちゃんも応える。


「(・艸・♯ )ではこれで話しは決まったな…若、そろそろ種明かしをして下さらんか?船団の保有をなぜ知りました?」


関羽は話しが決着をみた後も、この件に拘っている。軍とは機密保持を棟とする。瀬戸際の所で言えば、味方は仕方無いにしても、敵、即ち呉や魏にその情報が漏れる事は回避せねば成らないのだ。


彼は軍事の最高司令官なのだから、神経過敏と言われようが、情報の出所は確認せねば成らなかったのだ。極端な話し、太子が御存知だという事実はこの際最早、重要ではない。


彼には既に最高機密でさえも知る権限があると、関羽自身は想っているのだから…問題は漏れ出た所在なのである。


「(っ´▽`)っ)) ああ…それね!」


北斗ちゃんは涼しい顔で事も無げに宣う。


「簡単だよ♪原因があるとすればだが、それは爺ぃ~、ꉂ (๑¯ਊ¯)σ 貴方さ!」


「え、えぇ~、`(艸゜`*)儂ですか?」


関羽は若君の言葉が信じられず、驚いている。「そんな馬鹿な事が…」と言わんばかりである。


「((*´ゝз・)ノ゛種明かしと言う程のものでは無い…」


北斗ちゃんはニマニマとほくそ笑んでいる。


「焦らさないで下さい!何です、儂のどこが悪かったのです Σ(艸゜;/)/?」


立場上、彼は焦らないでは居られない。


「それはね…(`-д-;)」


「それは(´艸`;)?」


「いいかい o(‾◡◝*)?物を造るという事はさあ…それなりにお金が掛かるでしょ?つまりそういう事!」


「「あ~!成る程♪」」


馬良と伊籍はさすがに判ったようだ。


「(・艸・; )何だ!何を言ってる、お前達判ったのか?」


関羽は不思議そうに二人を見つめる。二人は反射的にコクリと頷く。


北斗ちゃんはニマニマしているだけで、最早その先は(だんま)りを決め込んでいる。けっきょく見るに見かねた馬良が、機転を効かせた。


「(〃^∇^)o彡☆ 閣下、帳簿ですよ!貴方は太子を信用されたから、行動の自由と自由な閲覧をお認めになったでしょう?幾ら極秘裏に進めた計画でも、帳簿にはその事由を記載しない訳にはいきませぬ…」


「…何しろ財政は、これ全て陛下の財産、そして国の費用ですからな…若君は貴方の許しを得た上で、帳簿を御覧になり、その事実を知ったと言うべきでしょう…」


「…ですから、その出所もその方法も、あくまで規定に乗っ取った上でのものですから、全くと言って情報漏洩の怖れは御座いませぬ。心配無いかと!」


「(˘˙౪˙˘๑)そうじゃ、そうじゃ!しかし若君はさすがに政務を疎かにせず、ご立派な事ですな?」


「(〃´∀`)o_まぁそういう事だから、爺ぃ~漏洩は無い。心配しなくても良いぞ♪」


三人にトントン拍子に釘を刺されて、関羽はやる瀬無い。


「ああ…( ノ艸-、)」とだけようやく呟く。何の事は無い事であり、騒いだ分、けっきょくは自分の愚かさを露呈する事になってしまった。




江陵のメンツは知らない事だが、この中型船建造には、莫大な費用が掛かっている。帳簿は元々糜竺が管理していたものだから、馬良などは実際、閲覧しているかも怪しい。


しかしながら、内政の責務を担っていた伊籍には隠せないだろうから、この老師は知っていたのだろう。が!口を固く閉ざして黙っていたのだ。総督の意図を知っていたからだろうが、何食わぬ顔で、今ですら、惚けてしまい素知らぬ顔だ。


『喰えない老人だな…(′ – ′)』


北斗ちゃんは想う。彼は南郡城で糜芳が隠してあった帳簿を発見した時に、それが始めて理解出来た。


江陵城側の帳簿は一見すると、パーツに分かれた費用を全て足し上げなければ、その全容は見えてこない。それはそうだ。その都度、買い上げた材料に対する経費の計上だからである。


けれども歳入した側は、何に対して拠出したものか、明確に記載してある。糜芳叔父は良くも悪くも帳簿を(いじ)った形跡は無く、自分が散々ぱら飲み食いした物まで、あからさまに書き込んでいる。


それを見た時に、北斗ちゃんですら想わず苦笑いしたものだ。余りにも馬鹿正直なのである。もしかすると、元々劉備の決起には糜氏がその財産を全て拠出したのが始まりであるから、彼自身には、"自分の金"という認識しか無かったのかも知れない。


自分の家計簿を(いじ)くり廻す人は居ないからだ。陛下も恐らくは、糜氏一族の財政的保護に感謝していただろう。何しろパトロンだからね。


となると、引き続きその財政管理を任せてあったとしても不思議は無い。とどのつまりは、糜竺・糜芳両叔父は、歳出側と歳入側とに別れて、蜀の財政基盤を管理(牛耳るとも言うが)していた事になる。


『ワッハハハ…(๑>◡<๑) ɭ ɿ兯ん♡』


その財政の年間予算計上や自分(太子)の年間のお小遣いの額を見るにつけ、彼は再びほくそ笑んだ。そして同時に苦笑いもせざるを得ない。


彼のお小遣いは当に使い切られ、赤字計上となっている。しかもその計上たるや予算の倍に近い。宮殿に於いての浪費のツケで在ろう。


『こりは叔父にとってはこの僕も、金喰い虫の厄介者だったかもね…(◞‸◟ㆀ)ショボン』


彼は冷や汗がダラダラと流れ落ちていくのを感じた。


『いやはや…翻意した僕を董允が涙を流して喜ぶ訳だな…参ったね!』


彼は改めて、自分と真摯に向き合い、一念発起して、今在る自分に感謝していた。


『それにしても…(′ – ′*)』


彼は想う。


『糜芳叔父はなぜこの帳簿を残して行ったのかな?持って行く猶予は十分にあった筈だから、わざと残して行ったとしか想えない。彼がそう想って無かったとしても、糜竺叔父が持って行けたろう。にも拘わらず、今僕の手元にある…これはどう考えれば良いのだろうか?』


彼はその辺りの事が今ひとつまだ判然としない。


『まあ、帳簿だけで何とかなるもんでも無い。肝心の財産がどこにあるかは謎のままだし…否、否、何言ってんだ?そんなもん成都に決まっている。余りこの僕がまだそこまで深く考えなくても良いのかもな…ひとまずは、歳相応に、再度お小遣いの補正予算を組んで貰おう…(๑´▿`๑)♫•*¨*•.¸¸♪✧』


彼は財政管理の難しさに改めて顔を歪めた。その時、彼はふと疑問が頭をもたげる。


『否、まさかね…(′ – ′;)』


彼は直ぐ様その疑問を否定する。


彼の疑問とはこうであった。


『叔父は、将来国を引き継ぐ事に成るであろう自分に、財政基盤の何足るかを伝えようとしたのでは在るまいか?』という事であった。特に財政無くしては何も進まぬ…という事をその心中に深く刻みたかったのかも知れない。


『もし仮にそうであっても、今の僕にはまだ判らん!』


彼はそう想い、否定したかったのだ。


実際、糜兄弟の考えは当たらずとも遠からず…そう言った所で在ろうか。まず糜芳が帳簿を残した意味とは複雑である。自分が罪を犯して財政管理が出来なくなった事。


財政管理を引き継ぐ相手として、兄・糜竺は少し心許無い事。なぜなら糜芳にとっては兄も"使う側"だったからである。彼はどうも、まだ若い太子に自分の代わりを担わせるつもりだったようなのだ。


つまり糜芳の帳簿を残した意味とは、『将来、糜一族の後継として、かつ、国家の元首として、財政に重視し、それを活かす様に意識付けする…』そういった狙いがあったようである。


一方の糜竺はその考えに異論を投じている。彼の考えとは、『将来の国家元首として、財政の何足るかを学ばせる…』という範囲に留まっている。どちらにしても、叔父達の期待が若君に向けられた事は確かな様であった。


北斗ちゃんはそんな彼らの想いを知ってか知らずかこう感じていた。


『この荊州で財政に明るく、教えを乞えるであろう人物は、恐らく伊籍を於いて他には居るまいよ!もし仮にそうであるならば、しばらくの間この帳簿を彼に委ねても良い。その引替えとして、彼に師事し、自分を高めたい…』


彼が結果としてその(くらい)の着地に落ち着いたとしても、現状ではやむを得無かろう。そしてこの後、彼は実際に帳簿の管理を伊籍に委ねる。


但し、伊籍も太子に寄せられた信頼ゆえに引き受けはしたものの、石橋を叩いて渡り、決して他の者には公にせず、太子と良く相談した。


こうして将来的には財政基盤でさえ、一人前に担う術を持ち始める北斗ちゃんであるが、まだこの時はその端緒にようやく立ち始めたばかりであった。




関羽総督との約束を取り付けた北斗ちゃんは、江陵での話し合いを終えて、引き揚げようとしていた矢先の事である。


バタバタ…バタバタ…江陵城に一羽の伝書鳩が降り立ったのであった。


それは風雲急を告げる出来事の始まりと成るのである。

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