門前の小僧習わぬ経を読む
北斗ちゃんの意気高揚策であった大会の開催は大きな波と成って皆を包んだ。大会が終わった後もその前向きな取り組み姿勢は皆の心に深く浸透して善き化学反応と成って、その結果、切磋琢磨する者が格段に増した。
ここ南郡城でも毎日の習練を欠かす者が無くなり、傅士仁の懸念も今や杞憂と為りつつ在った。さらに土嚢に至っては、民にもその取り組みの意義が広がり、皆が作りあげては役所に持参する様に成った。
これを受けて、鞏志も新たな方針を献策した。彼は土嚢を積み上げた上でその外側から長い城壁を造りあげる事を献策したのである。
「(。-∀-)それは構わないが、余り堂々とやり過ぎると、魏から橋頭堡と誤解されて、却って刺激し、在らぬ攻撃を招くのでは無いか?」
「(゜Д゜#)民にとっても命には変えられないから、漢江が氾濫すれば避難はするでしょうが、彼らだって生まれ育った地が守れるなら守りたいと言うのが本音なのでしょう。その意識が土嚢の献上という行動に現れているのでは無いでしょうか?」
鞏志の言っている事は正論である。北斗ちゃんも彼の言っている事は感情論としては判るし、民の気持ちも判り過ぎる程に判る。しかしながら、彼の言っている事は、北斗ちゃんの懸念の答えには為っていなかった。
「₍₍ (̨̡ ‾᷄⌂‾᷅)̧̢ ₎₎…駄目だな。僕の懸念の解決策が伴っていない限りは許可出来ない。第一、漢江の端から端まで城壁を築くなど現実的じゃない。どれだけの期間と人・物・金が掛かると思ってる…万里の長城を築く訳にはいかないんだよ♪」
「(゜Д゜#)…そうですか、確かに。いいアイデアだと思ったのですが…判りました。再考致します!」
「(*´ノ0`)それさぁ、逆に掘ったらいんじゃね?逆もまた真成りだよ♪僕も素人だから良く判らないけど、河の水の増水って詰まる所どこから来るんだい?」
「(゜Д゜#)そらぁ、雨季の雨とその雨水が溜まった山から流れて来る増水でしょうな!それが土砂と共に崩れて勢いを増します。」
「(っ´▽`)っ))♪だったらさぁ、川の水を分けちゃおうよ♪そもそも漢江って長江の支流なんだろ?そのまた支流を造っちゃえば?勿論、期間は長く掛かるに違いないけど、それを為し得たら、二つのメリットが在る…」
「(゜Д゜#)あ!成る程…氾濫を防ぎ、生活用水と田畑の用水路が出来ますな…」
「(*゜ー゜)あくまで理論上はね…僕は素人だから、詳しい事は判らない。でもいずれにしても長い期間の工程に為るというのは判る。だから今はやめだ。理由は二つある。」
「(゜Д゜#)承りましょう♪」
「(´ー`*)まず一つ目は民に在らぬ希望を与える事だ!彼らは城壁工事や水路工事をやろう物ならそれを希望に感じて逃げ遅れるかも知れない…」
「…雨季が近い今、それは在らぬ誤解を招き、未曾有の死者が出たらどうする?二つ目はお前さんにも判るだろうが、間に合わないって事だ…」
「…河の氾濫て一瞬で人や物を呑み込むんだろう?それに関して言えば、今出来る事は余り無いな♪」
「(゜Д゜#)判りました…では当初の予定通り、土嚢を量産して時間稼ぎをし、民を避難させる事に致します!」
「(✿✪‿✪。)ノそれがいいね♡…あっと!ちょっと待ってくれ!お前さんのお陰で面白い事をひとつ想いついたぞ♪」
「(゜Д゜#)何でしょうか?」
「(。-∀-)♪建築に専念させている志組の一部を別の仕事に充てられるかい?」
「(゜Д゜#)まぁ進捗状況は悪くないですからな…」
「(。-∀-)じゃあ♪ひとつ尋ねた上で、出来るの為らば、策がある…」
「(゜Д゜#)拝聴致しましょう♪」
「(。-∀-)♪船やいかだを造る技術は持ち合わせているかい?」
「(゜Д゜#)ああ…それなら二人程、その分野に長けた者がおります!」
「( ・∀・)それは都合が良いな♪その者達を至急、江陵と公安に廻し、人足も一部割いて、小船やいかだを組み上げてくれ!」
「(゜Д゜#)避難用ですか?」
「否…(^。^;)どちらかと言うと、救助用だろうな…」
「(゜Д゜#)それならば中型船の方が良いのでは?」
「(。-∀-)フフッ…中型船なら十分あるだろう♪」
「(゜Д゜#)どういう事です?」
関羽総督は太子を信用していたから、行動の自由を妨げる事は無かった。北斗ちゃんは江陵に十分過ぎる程の中型船がある事を知っていたのである。
「(。-∀-)小船やいかだは操作技術に慣れさせて、その技術を持つ者の裾野を広げさせる事にある。漢江汎濫の予兆には努めるとしても、有事の際にこちらの体制がどうかはその時の状況次第という事になる…」
「…我々が抑え込まなきゃ成らない敵は、何も漢江だけに非ず。魏や呉の駿動にも気をつけねば為らないのだからな!」
「(゜Д゜#)承知しました。そういう事ならば、造船もさる事ながら、操作技術に詳しい者を集めて、講習を行わせましょう。どちらにしても我々の操船技術も造船力も呉には到底及びませんし、魏にさえ劣る懸念が御座います…やって損はないかと!」
「(*゜ー゜)そうだね…頼む!僕は明日にも総督に会って来るから、しばらくまた君と張嶷に南郡は任せるぞ!」
「(゜Д゜#)承知しました…では!」
鞏志は話しが終わると飛ぶ様に引き上げていった。
「(。-∀-)張嶷と傳士仁を呼んでくれ!」
「はい!」
取り次ぎの兵も飛ぶ様に居なくなる。やがて、張嶷と博士仁が共に入って来る。二人は若君に拝礼すると、腰を据えた。
北斗ちゃんは鞏志との会話を二人にも伝えた。その上で明日総督に会いに行くからと、張嶷に留守居を命じた。
「(´▽`)そう言う事ならばお任せを!」
彼はとても物判りが良い。日頃は至って冷静なアッサリ君なのである。
「(。-∀-)お前さんは私と共に来てくれ♪」
「ε(´皿`*)承知しました♪しかし若君、相変わらず精力的な事ですな…」
『(*゜ー゜)フフッ…まぁ僕は遊軍だからね♪腰が軽く無いと務まらないからさ!時に君達は船には縁が無さそうだが、この機会に習得してはどうか?」
「Σ(´皿`*)ガッハッハ♪♪騎馬民族は船には縁が無いとでも?見縊って貰っては困りますぞ!ワシは変わり者ですからな…」
「…アムール河での河下りや内海での漁船も扱った事があります!中型船くらいまでなら、余裕で操船出来ますぞ♪それに中型船の建造すら可能ですな♪凄いでしょう?」
「あ!(´▽`)僕も小船やいかだの操船は出来ますよ♪いかだなら造った事も在りますもん!」
「( ☉д⊙)何だってえ?そんな事は早く言え!」
北斗ちゃんも驚きの展開である。まさか身近な二人が、そんな器用な事が出来るとは想いもしなかった。二人共、顔を見合わせて「ε-(´皿`*)御主もか?なかなかやるのぅ…」「(´▽`)兄貴こそ♪」とじゃれ合っている。
「(*゜ー゜)それにしても、お前たちがそんな事に興味を持った由縁は何だい?」
北斗ちゃんは想わず尋ねる。二人はほぼ同時にこう答える。
「「(´皿`*)(´▽`)魚で~す♪」」
二人共、答えが同じだった為、また顔を見合わせて、笑い転げている。
『(〃´o`)=3 やれやれ…』
北斗ちゃんは想わず溜め息を漏らす。
二人は引き続き、魚の話に華が咲いて、ケラケラ笑いながら語り合っている。
「(´▽`)あの魚旨いっしょ?」
「ε(´皿`*)そうだな…ワシは煮込みが好きなのだ♪」
「(´▽`)焚き火で炙っても旨いっすよ♪」
「ε(´皿`*)じゃあ…今度試してみよう♪」
これぞまさに、好きこそ物の上手為れ…とでも言うべきであろうか?
『(。-∀-)張嶷はとにかく食いしん坊なんだな…鳥は捕えて食うわ、魚は釣って食うわ…こいつひょっとして、何でも食うのかな?逞しい奴!!今度、機会があったら聞いてみよう!』
北斗ちゃんはそう想った。
翌朝、早々に出立して来た北ちゃんは、博士仁を伴い、江陵に向かっている。彼の肩の上には、大地が留まり、佗んでいる。大地は時折、キュキュと鳴く。
「ε- (´皿`*)若、どうやら飛びたがっている様です♪離してやっては?」
「"£(。・"・)そうだな♪来い大地!」
北斗ちゃんが右腕の肘を張る様に、水平に持って行くと、大地は器用に腕に移る。その上で、勢いよく離してやった。
大地は大きく翼を棚引かせ、大空に舞い上がると、彼らの上を時折、旋回する様に着いて来る。
「ε(´皿`*)随分と馴れたもんですな?」
「(。-∀-)うん♪何となくコツが判ってきた気がするんだ。何でも経験してみるものだな…勿論、教えられる事も多いが、自分で実践を通じて習得するものも多い…」
「…これは僕が今まで宮殿の中でね、如何に温々と育って来たかって事さ!ここ荊州に来てからは、特に見聴きして理解するものの、何と多い事か!」
「ε- (´皿`*)そうでしょうな…太子様とはある意味、籠の中の鳥の様なものですからな…まぁそれだけ自由が無いって事ですがね?お察し致しますぞ!」
「ううん…(((-ω-。)考えようによっては、人より日々新鮮に生きられる。皆が当たり前の様に感じていて、既に一喜一憂しない様な普通の常識でも、僕にとっては未知との遭遇だったりする…」
「…だから日々愉しいし、日々勉強だな♪書物で得た知識しか無く、それを現実に眼の当たりにした瞬間の感動は、何事にも変え難い喜びさ♪傅士仁!僕はね、ここ荊州に来て良かったと切実に感じているんだよ♪」
北斗ちゃんはそう語った。
傅士仁は、幼い頃から野山を駆け巡り、自然の中で泥だらけに為りながら遊んだ経験があるが、恐らくこの太子にはそんな経験は無いに違いない。
彼は赤子の頃より、敵対者から逃がれる父親に付き従って、色々な所に流れて行ったものの、常に従者に守られて過ごして来た。
その有り様は、たった一人っきりの後継ぎを決して怪我をさせない様にと、かなり過保護に育てられたのだろうから、そんな経験する機会は無かったに違いない。
特に太子には血を分けた兄弟と呼べる肉親は居なかった筈なのだから…。
傅士仁は、若者が殊更に仲間との固い絆や団結力を重視するのが、何となくではあるが、判る気がした。
『ε- (´皿`;)お寂しかったに違いない…そう言えば、太子はたったひとりで行う事の限界をお示しに為った事が在ったな…』
だからこそ、彼は自ら率先して事に当たり、その効果を示した上で、皆を巻き込む。時にはそこにやり甲斐すら持たせて、愉しみながらやらせる。
一人が二人に…そして三人に為り、やがてそれが十人、百人と増えるに連れて、足し算が掛け算にもあり得る。そんな事をその経験から学ばれたのだろう。
実際、彼は先の"大会"を通じて、沢山の人達にその意義と達成感を植え付ける事に成功している。
「ε-(´皿`*)太子のこの影響力が、やがて更なる進化を遂げて、より多くの人々にその培われた影響力を与える事が出来るようになったならば、将来きっと大きな華を咲かせるに違いない…』
彼はふとそう想ったのである。まだ傅土仁にも、この先の未来は正直、判らなかった。けれども、そこにはきっと自分もまだ見ぬ景色が広がっているのかも知れない…そう想えたのだ。
『ε(´皿`*)自分に出来る精一杯の事をしてあげたい…』
彼は改めてそう感じていた。但し、そんな彼の想いを太子が知ったなら、恐らくこう言うに違いない。
『(´。•ㅅ•。`)そうじゃ無い♪僕も君も、互いに高め合うんだ!そうすれば、自ずと、より良い景色が眺められるに違いないのだ♪』
傅士仁はそんな想像に耽りながら、太子の横顔を見つめる。
太子は頭上に広がる澄み切った青空を見上げながら、両手で輪を作り、その間から、空に雄大な翼を広げて飛ぶ鷹の勇志を眺めていた。
彼にはそれが、何かを掴み取ろうとする若君の強い意志に想えて為らなかったのである。