それぞれの課題
新たな相棒と寝食を共にする事に成った北斗ちゃんは頭を抱えている。キュキュ君は四六時中、気儘にキュキュと鳴く。そして時折、バタバタバタと翼を棚引かせる。
それが鷹の習性…もとい鳥全般に渡る習性なのだから、仕方ない。人が七癖を持っているのと大した違いは無いのだ。要はそれが許容出来るか出来ないかの差である。
『(^。^;)…まじでウザイんですけど!』
彼は神経集中を削がれる為、想わず溜め息を漏らす。さすがに三晩ほど寝てみて、ガサガサ云うし、暗闇で光るその瞳は獰猛で怖い…((( ;゜Д゜))
しかも意識すればする程に、その存在感が感じられて寝つけないのである。当の御本人は『(゜∈゜ )キュ?』と至って素知らぬ仕草である。
結局…その翌朝には北斗ちゃんは音を上げた。散々ぱら文句を垂れられた傅士仁は、仕方なく妥協案を示した。
「ε- (´皿`*)仕方在りませんな♪夜は良いでしょう…こいつが常に傍に居れば、刺客の手からは守れると考えたんですがね、お気に召しませんか?」
「(O.O;)…あらそうなの?そりはすんませんニャ♪でも寝れないと日々の活動に支障が出るからね、悪いね!」
「ε- (´皿`*)否、少しずつ慣れて下さい♪ワシら匈奴の血を引く者とは違い、馴染みが無いのですから、仕方在りませんよ♪では今夜から適当な時間に引き取りに来る事にします!」
傅士仁はそう答えると引き上げ様とした。その背中に北斗ちゃんは声を掛ける。
「(*゜ー゜)…傅士仁ちゃん、今日も訓練を実施するのかい?」
傅士仁は振り返るとやれやれという顔をする。
「ε- (´皿`*)ハァ、やりますが何か?」
「(。-∀-)くれぐれもお手柔らかにね♪壊滅させないでおくれよ!」
「ε- (´皿`*)えぇ…そのつもりですが、こればっかりは相手次第ですからな♪まぁ、極力気をつけましょう?」
傅士仁はそう言うに止めた。結果は彼にも何とも言えない。なんせ今のままでは使い物になるかどうか極めて怪しいのだから、手を抜く訳にもいかなかった。
「(〃´o`)=3 頼む!」
北斗ちゃんもそれ以上は告げなかった。傅士仁に任せると決めた以上は、彼を信じて委ねる他在るまい。人との信頼関係の構築はそういった些細な事柄から始まるのだ。
『(* ̄◇)=3 フゥ~…それにしてもコヤツが厄介な存在である事には違いは無い…』
北斗ちゃんは横目で然り気無く彼を眺める。大地号は『(゜∈゜ )キュキュ…』と再び鳴く。彼にはそれが『Ψ(`∈´)Ψ…ケケケ♪』と小馬鹿にしてる様にしか聞こえなかった。
『ε- (´ー`*)こいつの問題も頭は痛いが、訓練や伝書鳩の件も未だ解決をみていないし、漢江の氾濫の手当てもまだ不充分だからな…』
つまり問題は山積しているのだ。まぁ南郡城の梃入れは始めたばかりなのだから仕方ない事ではあるが…。
特に訓練については先程、いみじくも傅士仁が述べた様に進んでいない。しかしながら、こればかりはそもそも一朝一夕で為し得る事ではないのだから、当たり前である。
北斗ちゃんでさえ、ダイエットを兼ねたトレーニングメニューをこなすにあたっては、長い期間を要している。彼には自ら進んで行うやる気があったから、まだその進捗も効率も良かった。
けれども今まで上の統制が弛み、散々ぱら身体がナマクラに成ってしまっている彼らこの城の兵達にとっては、気持ちでは理解していても、身体が着いて来ないに違いない。
何事も前向きに為れるか為れないかで、その進み具合にも、成果にも、違いは出てくるものだ。
傅士仁も戦士である以上、人を鍛える事に関しては、それに特化したスキルは持ち合わせているのだろうから、今直ぐに仕上がるかどうかという事を、引き合いに出しているのではなかろう。
要はその姿勢に手を焼いていると、考えれば、彼の話しにも納得は出来るというものである。
『ε- (´ー`*)何かやり甲斐を引き出せる様なアイデアは無いものだろうか?』
彼は想う。
『(〃´o`)=3 無いよなぁ…そんなものがトントン拍子で出て来る訳がない、打出の小槌じゃ在るまいし…』
彼は想わず大地を見つめる。
「(。-∀-)なぁ♪…大地お前はどう思う?」
彼は反射的に語り掛ける。しかしながら、当然彼は答える事は無い。キョトンとするのみである。
彼は畜生であるから、人間様の悩み何ぞは関係がない。どこ吹く風と、バサバサッという音と共に翼を畳み直し、キュキュと鳴いた。
「ε- (´ー`*)だよなぁ…お前も判らんか?」
北斗ちゃんはそう呟きながら、彼の胸を擦ろうとして、また嘴でツツかれる。
「(ノ_・、)あ痛た!」
彼は凝りずにまた目から火花が飛び散った。
「アハハハハハハ…(;´Д⊂)」
学習能力の欠如に気づいた彼は少し恥じ入る。
心持ち大地は呆れた様な顔に見えた。
そんな時だった。不意に関平が顔を出す。
「(*^-^)おはよう御座います!」
彼は精悍な顔つきに少々疲労の色を滲ませている。それもその筈で、縻兄弟を州境まで送り届けた後に、昼夜兼行で舞い戻って来たのであるから。
「((゜□゜;))あれ?」
北斗ちゃんも驚いている。彼は関平が縻兄弟を州境まで送り届けた後に、そのまま江陵城へ戻ると聞いていたのだから、それはごく自然な反応であった。
「( *゜A゜)何かあったのかい?」
北斗ちゃんは彼に向き直ると、席を勧めた。
「(;^-^)有り難く!」
彼は素直にそれに従う。本音を言えば最早、立っているのもかなり辛かった。
北斗ちゃんも腰を降ろす。
「(;^-^)実はご相談がありまして…」
関平はそう切り出した。
「( -_・)ん?はは~ん…そう言う事か!糜芳叔父から何か聞いたんだな?」
「Σ(^-^;)ど、どうしてそれを…なぜ判ったのです?」
関平は若君の勘の鋭さには敬意を評するものの、こうズバリ指摘されてはさすがに驚く。
北斗ちゃんはフフンとほくそ笑むとそれに答えた。
「(*゜ー゜)いや…実はさ、関平!君が護衛を買って出た時に僕は想ったんだよね、ほら君の父君と僕の叔父は折り合いが悪かっただろう?だからね、君の事だ、何とかわだかまりを解消しておきたいのじゃないかと閃いたのさ…」
「…まあ、僕の穿った見方かも知れないが、もし仮にそうなら、その機会を作ってやろうと想ったんだよね…で彼と話しが出来た!違うかい?」
「(*^-^)ハハ…敵いませんな!まあ、そんな気持ちが無かったと言ったら嘘になりましょうが、無理にそんな事をするつもりは無かったのです。私が護衛を買って出たのは、せめてもの贖罪の気持ちからです…」
「…ここに罪を犯した者が居ます。そして日頃から折り合いが悪かった者が居る。若君もご承知の様に、喧嘩は一人では出来ませんからね…相手が居て始めて成り立ちます!もしかしたら、私の父も彼を追い詰め過ぎたのかも知れない…」
「…そう想ったからに他成りません。そうしたら、若君は、彼が悔いているのをお認めになり、出立前に私に囁かれた。しばらく進んだら、彼の枷や荒縄は解いてやって欲しい…道中、少しは楽だろうから、と!」
「( ・∀・)ああ…そうだったな♪それでお前はその約束を果たしてくれたんだな?」
「(*^-^)ええ…そうです。5kmほど行ってから解いてやりました。そうしたら、彼が私に話しがあると言うのです。だから私は、父に伝言があるなら、承りましょう!と答えたのですが、彼はそうじゃないと言いました…」
「…貴方と少し話しがしたかったのだと言うのです。ですから、私は承諾しました。行軍は縻竺殿に任せて、彼と二人切りで檻に入り、差し向かいで暫く、のんびり話す事が出来たのです♪」
関平は引き続き糜芳から聞いた奇想天外な彼の半生について、太子に切々と語った。とても丁寧に、そして欠落が無いか吟味しながら、糜芳が誤解を受けぬ様に配慮さえしているその姿勢は、北斗ちゃんに正しくその事実を伝える事に成ったのである。
そして彼は、若君の琴線さえも揺り動かす事に成功したのだった。真心を持つ者にとって、この話しは少なからず衝撃を伴うものである。北斗ちゃんも話の途中辺りから、その眼には大粒の涙を溜め、やがてそれがツーっと頬を伝う。
【水の皮袋】【塞翁が馬】の話しを経たその話しは、ようやく決着に向かった。特に叔父が関平から貰った皮袋を、然も大切に抱え握り締めていた最後の下りでは、嗚咽を漏らした。
関平は語り終えた時に、とても清々しい表情をみせた。それはけじめを果たした男の顔だった。北斗ちゃんは関平を労い、礼を述べた。彼はこの若者の中にも秘めたる熱い情熱を感じていたのである。
「(人´∀`*)判った…御苦労様でした♪良くぞ知らせてくれたね…知らなかった事とはいえ……否、皆までは言うまい。今更言っても、叔父の怠惰に依る不始末が変わる訳ではないからな!でも…」
「…話しを聞いていると、これで良かったのかも知れないとも想えて来るのだ。元々、叔父自身が認める様に、彼にはここの地位は向いて無かったのだろうからね。せめて今後は心健やかに過ごせるのならば、その方が余程、精神的には安らぎを得られるに違いないのだ…」
「…ただこれはひとつの教訓にも成り得る話しだった。叔父の事は僕からも改めて承相に減刑をお願いしてみよう♪本当すまないな…貴方も温かい食事と十分な睡眠を取り、身体をしっかりと回復してから、戻られると良ろしかろう…」
そこで北斗ちゃんは端と気づいた様に、握り拳を口に充てると、ゴホンと咳込む真似をした。そしてやおら関平を見つめ直すと、こう命じた。
「(。-∀-)念のため言っておくが、これは命令である。昼夜兼行も有り難いが、そのまま帰る事は罷り為らん!それでは僕が総督からお叱りを受けるからね♪」
彼はそう宣うとニヤニヤしている。関平はそれを聞いて、こちらもニコッと返す。
「(*^-^)拝受致します♪本音を言いますとね、眠いし、腹も減って困っておりました…お気遣い下さり感謝致します!素直に従わせていただきますよ☆ミ」
彼はそう言うと、再び拝礼してから退いた。疲労困憊だが、その心は晴れやかだった。"来て良かった"そう関平は感じていたのである。
『ε- (´ー`*)話しを聞いてみない事には、人の心の内とは判らないものだな…そして真実とは見極めない限り、厚手の衣を身に纏っている様なものなのだ。そのまま鵜呑みには出来ないし、これからますます見掛けに惑わされる事の無い正しい目を養わねば成らない。その為には、もっと自分の心の内面を磨く事だ…』
北斗ちゃんはそう想った
「(。-∀-)お前もそう想うだろう♪」
彼は大地に声を掛ける。
大地は心無しかタイミングばっちりに「キュキュ(゜∈゜ )♪」と鳴く。北斗ちゃんはそれに気を良くして、再び胸を撫でようとするが、再び嘴でツツかれる。
「ギャン(。>д<)!」
彼は再び眼から火花を飛び散らせた。
「( ̄^ ̄*)ワッハッハハ♪」
突如、大袈裟に笑うのは戸口に佇む仮面の男である。彼は肩を揺らしながら然も可笑しいと身体全体で表現している。
「(*´ー`*)あ♪子龍来ていたのか?」
北斗ちゃんは喜び勇んで走り寄り、趙将軍に跳びつく。彼もそれに応えて軽々と抱き留める。その様子はパッと見ると、木にしがみつくふくよかなコアラである。
「(。-∀-)子龍♪その仮面はどうしたんだい?」
北斗ちゃんは尋ねる。仮面と言っても大仰な物では無く、両目が隠れるくらいの代物である。
大年の方ならお判りになるだろうが、喩えるならば、『仮面の忍者・赤影』の様なものである。最近ではマスク・オブ・ゾロって映画も在りましたな。
「あぁ…( ̄^ ̄)念のための用心です♪私はほら…」
「(^。^;)病床に臥せっているんだったね…」
「( ̄^ ̄)左様…」
北斗ちゃんは想わず苦笑いする。三日前に派手に旗めいた『趙』の旗はいったいどうするつもりなのか…。子龍はそれに気づいたかどうかは定かでは無いが、「( ̄^ ̄)旗は旗ですから…」と宣った。
彼に言わせると、旗差し物で威嚇する手など、およそ人が軍隊と呼ばれるものを手にした時から、良く使われる手なのだそうだ。だから自分はその存在さえ、見咎められなければ、万事問題とは成らない。それが彼の主張なのであった。
「( ̄^ ̄)心配しておりましたが…鷹とは仲良くやっておるようですね。それは良かった。」
彼は何か誤解している様だ。けして仲は良くない。
「否…( ̄^ ̄)、それは恐らく愛情表現ではないですかな…」
子龍はそう教えてくれた。鷹匠とは、元々手に革の手袋を巻いて鷹を扱う。ツツかれる事など 想定内という事の様だ。
「おや( -_・)?でも傅士仁ちゃんはそんなものは着けてなかったけど…」
「( ̄^ ̄)ああ、彼の手は甲も平も皮膚が分厚く、鷹にツツかれたくらいでは、こそばゆいくらいのものでしょう…縻竺殿は付けていたでしょう?」
「( -_・)ああ…そう言えば!」
彼はいみじくもその瞬間を想い出す。手の平に包帯を巻いていた様に見えたのは、その事かも知れなかった。
「ε- (´ー`*)確かに…」
「( ̄^ ̄)でしょうな♪我々武将は毎日の様に剣や槍を奮っています。つまりはたこが幾重にも重なり、やがて鋼の手となるのです…」
「…高々、鷹に嘴でツツかれたくらいで音をあげるとは、さては若君、あれから剣技の習練をサボっておいでになるか?いけませんぞ!貴方が宮中の奥で、のんびりと構える君主をお望みならば、こんな事は申しません…」
「…けれども貴方は残念ながらそういうタイプでは在りません。父君や曹操殿のように、戦場でお過ごしになるタイプだと推察致します…」
「…そうであれば、剣技は疎かにしてはなりません!貴方自身の、そして貴方の大切な人々を守る糧にきっと成るのですからね♪」
趙雲は真険な眼差しをこちらに向けている。しかしながら仮面のままなので、少々可愛らしく強調された瞳が愛らし過ぎる。北斗ちゃんは誤解を受けない様に失笑を抑え込んだ。
「判った(。-∀-)!肝に命ずる事にする。確かにここの所、忙しさにかまけて習練出来ていないのだ!これからは毎日サボらず時間を作る事に致そう♪」
おやっ待てよ…北斗ちゃんは想った。ここにも何かヒントが隠されているような気がしたのである。
「(。-∀-)♪ところで子龍、来たのは伝書鳩の事かしら?」
北斗ちゃんは尋ねる。
「( ̄^ ̄)えぇ…そうです♪若君は御存知無かったのですね?費禕が既に伝えている物とばかり想っておりました。今、お時間宜しいかな?」
「ヽ(´∀`●)えぇ…無論です。お手を煩わせて申し訳ない。宜しくお願い致します♪」
彼はその指導を仰ぐ為に、護衛兵の中から予め選抜してあった10人を呼び、それから2時間近くに渡る指導を受けた。
そして趙雲は、鳩と準備が整ったら再び指導に来ると言い残して帰って行った。皆、それぞれで役割分担を担い、準備に入る事になったのである。
『( ・∀・)ノ良し♪やり方は判ったから、まずは鳩の厩舎と、肝心の鳩を集めなきゃ為らん!ふむ…待てよ?何かここにもヒントが在る様な気がするな…』
北斗ちゃんはそう感じていたのだった。するとそこに再び傅士仁が入って来る。北斗ちゃんはこの絶妙な、出入りの繰り返しに辟易して来る。
「(* ̄◇)=3 有り難い話しだが、どうも今日は出入りの多い日だな…」
彼は想わず苦笑いする。
「(〃´o`)=3 で!どうした?」
彼は微笑ながら声を掛ける。
『人の話しは聞け!』これは自分で先程、戒めた言葉なのだから…。
「ε(´皿`*)いやはや…若君すみません!今日も壊滅しました…」
「何!(。-∀-)あれほど頼むと言った筈だが?」
「ε- (´皿`*)否、それがワシでは無いんですわ、ワシは御要望通り手加減しました。壊滅させたのは張嶷殿です!」
北斗ちゃんは驚く。
「Σ(´□`ノ)ノえ?あのアッサリ君が??」
「ε- (´皿`*)ええ…そうなんですわ♪あいつ身掛け通りのアッサリ君ではありませんぞ!割と情熱的なスパルタ君ですな☆彡」
「( *゜A゜)まじでぇ…」
北斗ちゃんはまたまた驚く。
『σ(゜Д゜*)こりはとんだ計算外だぞ…やられた。さては趙将軍は知っていたな?』
北斗ちゃんはふとそう感じていた。人の内面を理解する事の難しさに彼は改めて触れて、益々、己の精進に邁進しようと心に固く誓った。