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ダイエットは明日から?!

「(-ω-;)と、董允様お連れいたしましたぁ…」


宦官は董允の指示通り丞相である諸葛亮を連れて来た。


諸葛亮は陛下から国の根幹を担う政務を任されているし、逐次政務と平行して、軍事の指示や法務も担っているから裁きもこなさなければ成らず多忙を極めている。


ゆえに太子の世話までしている暇は無く、董允に任せっ切りであった。但し、董允が厳しく諫言しても、全く聞く耳も持たずに遊び呆け、指南している先生まで勝手にクビにするなど目も当てられない太子の態度に頭も痛めていた。


そんな時に起きた昨日の顛末である。阿呆な太子でもいずれはこの国の皇帝になる方なのだから、緊急かつ速やかに、やむを得ず指揮を取ったが、無事と判ればこれ以上関わっている暇は無かった。


しかしながら、昨日の出来事の事もあるので、来ない訳にもいかない。董允がわざわざ呼び立てる事は稀であるし、宦官はかなり血相を変えて騒ぎ立てているので、何か在ると考えた次第である。


何しろ厠の上から落ちて、肥溜めの臭いクッションがあったとはいえ、下手をすると頭を打っているかも知れないのだから、容態が急変したとしても可笑しくはない。


一応、あの後に医師にはみせたし、幸い五体満足だと報告を受けたため引き上げて来たのだが、お陰で大層な時間を浪費してしまい、昨夜はあれから徹夜して彼は全く寝ていなかった。


またぞろ時間を取られるのは惜しい所ではあるが、関わった以上はやむを得なかった。


『まさか死にはしないだろうが…』


諸葛亮も日頃から頭を痛めていた存在ではあるが、太子である事に代わりは無く、殊更に無碍な態度も取れなかった。念のため説得に応じ、多忙な最中を押して、結局はやって来た次第である。


彼が太子の部屋に入ると、劉禅君と董允が頭を突き合わせて、何やらムニャムニャ話し込んでいる。彼らは宦官の復命の声でようやくこちらに気がついた様だった。


「董允!丞相殿のお出ましだ♪」


董允は太子の言葉に振り返る。諸葛亮は二人の表情を眺める。これは彼の癖であり、相手の表情からまずその場の状況を把握しようとする。外交経験の長い諸葛亮はその方法で、常に相手よりも先を見越して、主導権を握って来たのであった。


しかしながら、これはいったいどういう事なのだろう?董允はほくそ笑んでいるし、若君は観た事も無い様なキラキラした瞳でこちらを見ている。


数多の強者達を次々にマウントして来た諸葛亮も訳が判らず、この光景からの状況把握に手を焼いていた。ゆえに苦虫を噛み潰しながら、反応を待っている。


「(-ω-;)??」


宦官も訳が判らない。彼は太子様が記憶喪失にでも成ったかと心配していたのだが、先程とは打って代わり、しっかりした言葉や態度に見える。更に不思議な事に、董允様の反応が真逆になっている事にも理解が及ばず、頭が混乱していた。


「おい!宦官のお前、御苦労だった…もう良いから下がって休め!」


「(-ω-;)☆??」


彼は太子の一言に驚きを禁じ得なかった。今まで『御苦労様』等と言われた事が無かったから、感極まった。馬鹿や阿呆などと陰口を叩いていた事を後悔したのである。


「(-ω-;)ハハァ…何か在ればお呼び下さい!」


だからそう返答するのがやっとで、そそくさと退出したのだった。


「さて…丞相殿!多忙の折にわざわざ呼びつけてすまない、時間が惜しいだろ?ボケッと突っ立ってないで、早く入ってここに座ってくれ!」


劉禅はそう話し掛けると、わざわざムックリと太鼓腹を抱えながら立ち上がり、丞相のために椅子を引いてやって、手招きしている。


諸葛亮もその一言一句が驚きであり、新鮮で在ったから、不思議な生物を見る様に、言われるがまま腰を掛けた。世話を焼き終えると、劉禅もノシノシと歩いて席に戻る。その有り様はその言葉の切れとは解離していて、相変わらず鈍い。


諸葛亮は想わず董允の顔を見つめた。董允は相変わらずほくそ笑んでいる。董允も若君を馬鹿にしていた急先鋒であった筈なのに、この180度打って代わった態度はいったい何なのだ?諸葛亮は(いぶか)しげに彼を観ていた。


「丞相!さすがの貴方も驚いた様ですな…私も先程までその口でしたから、お気持ちはお察し致します…」


董允はそう呟くと、ニヤニヤ笑っている。諸葛亮はもはや訳が判らず、想わず振り返り、太子を見つめた。若君は至って真面目な顔をして、大きく溜め息を吐くと、彼の疑問の表情に応えた。


「僕から話そう…」


劉禅はそう告げると、董允を見つめる。彼は相変わらずほくそ笑んでいたが、急に真面目な顔をして、相槌を打った。


「丞相、僕はね…」


彼は董允に告白した事を繰り返し述べた。その言葉はいたってまともであり、筋も通っている様に思われた。諸葛亮も驚き、目を見張った。そして時には目を点にしながら聞き入っていた。


「…とまぁそう言う事だ!まずはこのプニプニした体型を何とかせねば成らん♪併行して学びと義務の履行だな!丞相にも何か助言して貰えると助かるのだが?」


諸葛亮は少し眩暈(めまい)がしていた。これは彼が寝ていないからでは無く、かなりショックを受けた結果に依る物であった。しかしながら、この馬鹿だ阿呆だと蔑まれていた太子様が一念発起する時が来ようとは…少し感動もしていたのである。


「そうですな…まず体型の改善ですが、こればかりは一朝一夕には参りますまい。地道な運動と食の改善をする他無いでしょうね。後、学びの師ですが…前の先生はもう居りません。かなりショックを受けた様で辞職しております…」


「…ですから新しい師をさっそく手配致しましょう♪そして職務の事ですが、まずは実績をお見せ下さい。太子様の御言葉を信用しない訳では在りませんが、まともな対応が出来ると判断する成果が無い事には取り組ませる訳にも参りませぬ…」


「…間違いでも在れば、実践では取り返しがつきませんので、私に試させて下さい。その結果次第では大いに活動していただきましょうか?それで宜しければ喜んで!私にも異論は御座いませぬ♪」


「よし♪こちらもその条件で良いぞ!まずは仕事をニ、三、寄越してくれ!」


「否、ひとつ今ここで聴いていただきましょうか?答えに依ってはその仕事をまず貴方様にお任せ致します!如何ですかな?」


「お前さん、仕事が多忙なのにそんな悠長な事をしていて良いのかな?」


「ええ…まぁ。二三日徹夜すれば追い付けますから…(-∀-`;)」


「(^。^;)丞相…それは遺憾ぞ!お前は少し食べて休め…」


「大丈夫です…お気に為さらずに!ではまずはこの問題を解かれませ…宜しいですな?」


「あぁ…いつでもどうぞ(っ´ω`)っ♪」


「では…実は先頃、馬超という強者を陛下がお召し抱えに為りました。この者は(きん)馬超と言って名門・馬氏の後継であり、涼州にこの人在りと言われる程の剛の者です…」


「…さてここからが問題なのですが、この者の存在を知った荊州を守る関羽殿が、儂と馬超とどちらが強いか?雌雄を決したい、ついては勝負させろ!と手紙を寄越しました。そこで悩んでおります…太子様ならばこれをどう対処なされますか?」


諸葛亮は説明を終えると鋭く斬り込んで来た。その返答に依っては考えようという事らしい。種を明かせば、彼は別に悩んではいない。既に関羽殿への返書は(したた)めて、ちょうど胸許に入れて在ったのだ。


返書を使者に渡す前に、お呼びが在ったため、ちょうど持っていたのである。


劉禅は悩んでいた…関羽とは父・劉備の義兄弟であり、一騎当千の強者である。劉備・関羽・張飛の三人は後漢末、黄巾(こうきん)の乱を憂いて桃園の誓いを結び義兄弟となっていた。


あの有名な『生まれた日は違えども、同年同月同日に死せん!』という苛烈な誓いである。その関羽殿と錦・馬超はどちらも強き者であり、どちらも父・劉備にとっては大事な将である。


恐らくはぶつかり合ってもそう簡単には決着すまい…。特に関羽殿はプライドの高い御方。そして馬超殿も諸葛亮の言では名門の御曹司であった方だ。プライドは高いに違いない。


となると必然的に、どちらが負けても恨みは残るし、尚且つ決着するまで何度でもやり合おうとするに違いないのだ。関羽殿は劉備軍の主力が蜀に地盤を置いている今、荊州の江稜(こうりょう)を守る最後の砦…そんな事をしている暇は無いし、互いに傷つけあっても不味い事に成ろう。


しかも魏の曹操や呉の孫権とガチガチの臨戦態勢である今、味方同士でいがみ合っていてどうする?敵に利する様な物ではないか…馬鹿らしいにも(ほど)がある。


つまり普通に考えるならば、この勝負はやらせぬ方が良い!馬超殿はまだ恐らく存ぜぬ事だろう。諸葛亮程の英邁(えいまい)な丞相がそんな事に気づかぬ筈が無く、闘わせまいとまず考える。そして関羽殿のプライドをくすぐる様な甘い言葉で返書すれば済むと考えるだろう。


結果は上々!関羽殿は『さすがは丞相!儂の事を良く判っておいでだ♪』などとおだてに乗るに違いない。そしてほくそ笑む事だろう。


『やれやれ…( ´-ω-)y‐┛~~たぶんそう答えれば、ここは大正解なのだろうけど、そう判っちゃうとそのまま答えるのもつまらんな…さてどうしてくれようか??』


劉禅はそう考えながら、横目でチラッと董允を見る。董允も『若君頑張って!』と祈る様な面持ちで見つめていた。


『全く(´~`)…そんな真剣に観ないで欲しいね♪昨日までは散々ぱら馬鹿殿で見棄てていた癖にさぁ…いきなりハードル上げよってからに!(;´∀`)プレッシャー掛かるにゃあ…さてどうしてタモタモ♪』


彼は頭をフル回転させる。自分が何でこんなにも頭の回転速度が早いのか、自分でも気味が悪い。もしかすると、今まで使わなかった分、永年の磨耗が無いのかも?と想い至る。つまり経年劣化してないって事になるだろう。


諸葛亮を同じく横目でチラッと眺めると、フフンといった具合で、如何にも小馬鹿にしている様に見えなくもない。まぁ確かに…サボってた輩にはちょうど良い具合の対処の仕方かも知れない。


『いやぁ…それも僕の卑屈な思い込みかもな…丞相は割と真剣に向き合ってくれているのかも…さてどうしよっかな(^。^;)?』


劉禅こと北斗ちゃんは決断に迫られていた。


彼はいったいどう答えるので在ろうか?


期待の答えは以下次号…お愉しみに♪

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