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南郡の後始末

五人の男達に依って引き出された糜芳は、地べたにそのまま押し付けられて肩を落とし、その頬は地に擦り付けられている。


「(^。^;)待て待て待て!無茶をするな!放してやれ♪」


さすがに北斗ちゃんは観ていられない。慌てて、その肩を放す様に五人に命じた。彼らもキョトンとしながらも、反射的に鞏志を観る。


鞏志は(あご)をシャクって、監察官殿の言う通りにする様に、指図する。五人は二人の命に従い、手を離して、彼の上体を支えて起こしてやり、最後にホコリを叩いて(はら)ってやった。


糜芳が頭を上げると、そこには鞏志と兄・糜竺、そして見馴れない若僧が不動明王の如くに立ちはだかっている。


「(-公- ;)兄上…申し訳御座らん、勘弁して下さらんか?」


糜芳は情けない程に鼻水を(たら)しながら、目の前にいる兄の袖に(すが)る。糜竺はそんな弟を観て、後ろ髪を引かれる想いでは在ったが、事ここに至ってはもう助けてやる事も出来ない。


「(;´□`)駄目だ!お前は私の言葉を軽んじて、何度も裏切って来たじゃないか!今度ばかりは容赦は出来ない!」


「(-公- ;)兄じゃ…」


糜芳は少々自棄になっており、その恨めしい顔を鞏志に向ける。


「(-公- ;)貴様という奴は…拾ってやった恩を仇で返しおって!そんな奴は地獄に落ちるぞ!地獄の炎で何度も焼かれるだろうよ!」


鞏志は顔を背けると想わず吐息を吐く。


「(゜Д゜#)貴方という人は…あれ程、私が切々と諫言したのに、全く心を入れ換えず、民を顧みなかった!けれども貴方は元々は忠勤に励む御方だった筈です…だから実力行使はしたくなかった。貴方の兄が困り果てているのを観るに観かねて手伝ったまでだ!」


鞏志はその信念をぶつけた。彼には過去、主君・金旋を討ち取った負い目があるので、同じ(てつ)は踏みたく無かったのである。


「(-公- ;)糞ったれが!!」


糜芳は口汚く鞏志を(ののし)った。


それを静かにその円らな瞳で眺めていた北斗ちゃんは平常心で観ていられない程の(いきどお)りを心に感じて、深い傷を負っている。彼には優し過ぎるゆえの戸惑いがあったのだ。


けれども、この様子を観ている限りにおいては、自分が断を下さねば事は収まらない事も理解していた。


「( ;・∀・)叔父上…貴方は取り返しの付かない事をして来たようですね!だから僕は言いたく無い事を言わねばならないのです。貴方はこの南郡を危機に陥れた…」


「…ここに何万人の民や兵士が居るとお思いか!彼らの命が貴方の振る舞いに依って、なし崩しに消えて行くのは看過出来ません!ですから僕は敢えて断腸の思いで断を下します…」


「…貴方は首だ!せめてその命はお助けいたそう。これは貴方の兄・糜竺叔父に対する僕の計らいであり、僕の命を助けてくれた母上(糜婦人)に対する感謝の記しです…」


「…でなければ、貴方は即刻、斬首でしょうね?糜竺叔父や亡き母上に感謝する事ですね…僕の言える事は以上です!貴方は成都にその身柄を送り、父上や諸葛丞相にその身を委ねますゆえ、余計なお手向かいはせぬ様に、いいですね?」


北斗ちゃんはそう断言した。


周りの皆は驚きの表情でその場の空気感を感じている。特に当事者の糜芳は驚きの(まなこ)を彼に向けた。


「(-公- ;)なっ!貴方は…劉禅君か?そうなのか?なぜここに?どうして?」


糜芳はその事実に混乱をきたしていた。


「(*´□`)そうだ!阿斗様なのだ…この馬鹿たれが!可愛い甥に迷惑をかけるとはお前は本当にダラシの無い奴よ!せめて阿斗様の御恩情に感謝申し上げる事だ!良いな?判ったな?」


糜竺は断腸の思いで一気に(まく)し立てた。


「(-公- ;)…兄じゃ! ハッ!そうじゃ!阿斗様、私はけして裏切っては居りませぬ!虞翻の誘いにも乗りませんでした…私は裏切り者では無いのです!」


糜芳の最期の足掻きであった。彼には最早、自分の不始末のその根底にある事実さえも、しっかりと掴めていなかった。頭が混乱してしまい、在らぬ事を口走っているだけだったのである。


その有り様は、正に糸を切られまいとするカンダタのそれであった。


北斗ちゃんはそんな叔父上の情けないすがりに涙が止めどなく溢れてきた。情けでは無い。そんな叔父上の態度が悔しかったからである。


「( ;∀;)そんな事は承知している!貴方に言われなくても判っているのだ!だからこそ、貴方は都に護送される事で済んでいる。呉の手引きをしていたのならば、さすがの僕でも容赦は出来ない!」


「(-公- ;)…阿斗様!」


「( ;∀;)叔父上!貴方には出来得るならば、違った形でこの僕を観て欲しかった…亡き母上の代わりに、叔父上達に僕は立派な成長を喜んで欲しかったのだ…残念だよ!本当に残念だ…」


「(-公- ;)…」


糜芳はその言葉に想わずブワッと大粒の涙が溢れていた。そして彼は項垂れて、地に両手を着き、最早、何も言葉を発しなかった。




糜芳の沙汰が無事に済んで、彼が再び牢に連れて行かれると、糜竺叔父が北斗ちゃんに歩み寄ってガシッと抱擁してくれた。


「( ω-、)まだ若い身の上で、さぞかしお辛かったで在ろう…これも私の不徳の致す所です。申し訳御座いませんでした。」


糜竺はそう涙ながらに労うと、抱擁を解き、(かしこ)まってその場に膝を折ると、(こうべ)を垂れた。


「(;つД`)何を為さるのです!叔父上…」


北斗ちゃんはそう言うと彼を抱き起こそうとするが、彼は頑なにそれを拒絶して、膝を丸めて畏まっている。


「( ω-、)若君…この糜竺、断っての願いが御座います!どうかお聞き届け下さいます様に!」


「(;つД`)何だ!どういう事か?」


北斗ちゃんは話の展開に着いて行けずに想わず尋ねた。


「( ω-、)こうなってしまっては、私は罪人の縁者です!たったひとりの血の繋がった弟なのです!せめて今後の身の振り方を一緒に考えてやらねば成りません…」


「…それも陛下の裁定の結果かと存じます!ですから、その前に彼の陳情と共に、(わたくし)めの責任も、陛下や丞相にご裁可頂かねば成りませぬ…」


「…つきましては、この私めに弟の護送を委ねられ、共に成都にその身を返して、ご裁可に身を委ねまする。心残りは貴方様と皆の事です!我が儘な私めをお許し下さいます様に…」


糜竺はそう告げると、嗚咽を漏らした。


北斗ちゃんは説得を試みたが、無駄に終わった。彼の意志はとても強く変えられるものでは無かったのである。


「(〃´o`)=3 判った!許す…がしかし、貴方に頼んだ役割はどうするのだ?誰が担うと言うのだ!」


北斗ちゃんは心情を理解したものの、まだ彼を引き留める手立てとして、その責任感に訴える様な物言いをする。


北斗ちゃんには糜竺叔父の気持ちは判るものの、彼の罪の意識がな辺に在るのかは、良く理解出来なかったのである。


此れは北斗ちゃんが、儒教精神を未だに良く理解出来ていなかったからだと言えるのかも知れない。けれども、糜竺はその辺りの用意は既に出来ており、端から覚悟を決めていたらしかった。


「(*´□`)あぁ…その事ならば、既に伝書鳩を成都の丞相に送っておきました。私の代わりに役に立つ男を寄越す様にと!」


「なっΣ(´□`ノ)ノ…何だってぇ~」


北斗ちゃんが驚くのも不思議は無い。余りにも用意周到なその覚悟に驚きを禁じ得なかったのである。


『( ;∀;)叔父上は端から覚悟を決められていたのだな…予め詰め腹を切る様なものだ…そんな事とは露知らず、僕はまだまだ甘ちゃんだった!大人の男の覚悟とはこんなに重いものなのだろうか…』


彼はそう感じて止まなかった。そしてふと気づくと、今さらではあるものの尋ねる事にした。


「( ・∀・)叔父上、ひょっとして此れは爺ぃ~や馬良、伊籍も承知の上か?」


「( ω-、)無論です!私の覚悟をどうやら傅士仁殿に見破られていた様です…夜中に呼び出されまして、私も身の回りの整理をしていたものですから、驚きましたが、同行しました…」


「…すると総督や馬良殿が伊籍殿と共に、何やら試しながら、待っておられたのです。総督は私の覚悟を知って涙しておられた。他の皆も同じく涙してくれた…」


「…そうして私の我が儘を認めて下すったのです!ですから私も既に代えの者を丞相に頼んだ事は正直に申し上げました…すると総督は私に鞏志殿の事を再度、尋ねられたのでした…」


北斗ちゃんは然り気無く鞏志の方を振り返る。残念ながら彼の存在に関してはすっかり失念していて、かなり無防備な状態に陥っていた。


しかしながら、鞏志は目の前で繰り広げられた事柄に、真摯に向き合い、目を見張りながらも、その(まなこ)に大粒の涙を溜めて、只ひたすらに観入っていたのである。


そこには何か策謀を巡らしたり、(おもね)ったり、腹に一物ある様な仕草は欠片も無かった。心あるひとりの人としての真心が見える表情があるのみであった。


「…彼は過去のしくじりを後悔しております。若気の至りとはいえ、主君を殺めた事にとても後悔の念を抱いて生きて来ました。ですから、弟の問題に介入する事に躊躇していた様です…」


糜竺はそう告げながら、鞏志を振り返る。彼は何も語らず、敢えて成すがままに聞き入っているのみであった。


「…ですが、やはり彼は動かねば成らないと悟った様で、弟の諫言に乗り出してくれました。でも結果はあの通りで、弟の耳には最早、届かなかったのでした。総督は最期に私にこう尋ねました…」


「…鞏志は信ずるに値する男なのかと!私は申し上げました。私ならば信じます…と!すると閣下は大きな口を開けて豪快に笑い、髭をゴシゴシとしごくと、判った!お前の言葉であれば信じよう、そう仰られたのです!」


糜竺の話はそれで終わった。


北斗ちゃんはやおら鞏志を振り返る。彼はいつの間にか畏まって膝を折り、両手を着いて叩頭(こうとう)していた。


「(゜Д゜#)…若君・劉禅様とは存じ上げず、数々の御無礼…平にお許し下さい!"あんた"呼ばわりはさすがに不味かったと思っております!ご容赦を!」


「( ・∀・)…あぁ、それは良い!僕も演技をしていたのだからな♪貴方を疑って済まなかった。貴方も色々と御苦労されたのだな!人は話を聞いてみなければ判らぬものだ。了解した!許す!そして私も謝る!この通りだ♪」


北斗ちゃんも頭を下げる。鞏志はさすがに困ってしまい、オドオドしている。どうやら本当に良からぬ御仁では無さそうであった。


「( ・∀・)良し!僕は決めたぞ♪」


北斗ちゃんは急にまた閃いてしまった如くに大きな声で宣う。二人は何事かと想わずその円らな瞳に観入っていた。


「(*´□`)(゜Д゜#)何事ですか?」


「(*゜ー゜)" ああ…あのね♪僕が今日からここの南郡城の太守兼城主になる事にする…どう?なかなか良いアイデアだろう?」


「(*´□`)!!何ですとぅ!!」


「(゜Д゜#)…ほぇ~凄っ!!」


二人は驚きの顔を拭えない。そんな二人を横目に眺めながら、彼は堂々と先を続けた。


「( ・∀・)だってさぁ…ここの跳ね橋、気に入ったんだよね♪それにここに居れば、安全だ!ここは要塞だからね!公安や江陵とのトライアングルを築くのにも、僕なら過分無い立場だろう♪それにここを建て直すのには時間が掛かる!」


「(*´□`)ですが!」


「( ・∀・)まぁ聞いてよ…叔父上♪将来的にここは南下する拠点にも為るからね!疎かに出来ない♪しかも虞翻の狙う城のひとつだ!まずはここの綱紀粛正と戦力、兵糧の増量を見込む!なぁに、政の中心は鞏志に任せ、軍事の采配は張嶷に委ねるから、僕は今まで通り遊軍だ!これでどうかな?」


聞くまでも無く、北斗ちゃんは英断していた。


彼が決めたら梃子でも動かない事は、糜竺も承知の上だったのである。鞏志もその行動力に驚きを禁じ得なかった。

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