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団結と連動

彼のいまいちな笑みの背景にはどこと無く、不安定な悩みが感じられる。言う事は成る程…その通りなのだが、解決策の中身はまだ提示された訳では無かった。


此れでは手札を見せた事には成らないと言って良い。それは本人も判っているし、真剣に聞いている三人にもそれは判っている。


だから、ひたすら姿勢を正して、若君の話の続きを待っていた。


『(^。^;)弱ったね♪大風呂敷を広げたのは良いが、この先を今言う羽目になるとはね…理解して貰えるかしら??』


北斗ちゃんは少々、この考え方の中身を捕捉してからでないと、反撥を受け兼ねないと危惧していた。でもこうなっては言わざるを得ないかも知れない。後は彼の決断のみである。


「(*゜ー゜)…ちと此れは今言うべき事か未だに迷っている!でも確かにこんな真夜中に集めたのは僕の意向だから、言わないと始まらないよね♪だから批判は甘んじて受けるつもりだ!納得出来なければ正直に言ってくれて良い!」


北斗ちゃんはそう前置きをした上で、皆を眺めた。皆も真剣に相槌を打つ。彼に従うと決めた面々に、ここまでは揺るぎは無い。何でもまず耳を貸して聴かねば始まらない。皆、それを理解していた。


「(*゜ー゜)…皆、覚悟はいいようだね♪では僕も覚悟を決めよう!これは奇抜な考え方だから、今は理解出来なくとも良い!但し、いずれ理解しておけば良かったな…そう想う日が必ず来ると断言しても良い。難しい選択だけどね♪」


北斗ちゃんはいつになく歯切れが悪く、また前置きが長い…それはこれから言う事を、彼自身も言い淀んでいるからだった。今どきこんな考え方をする人は恐らく皆無に違いない。


それだけ北斗ちゃんと周りの人の考え方の支点がずれており、それが相容れない要因と成って居たのである。下手をすれば一笑に伏されて仕舞うに違い無かった。


「( ・∀・)奇抜な考え方だけどね♪今の三國の形勢を考えるにどこが一番有利だと思う?」


「( *´艸`)そらまぁ…魏でしょうな!それはこの前も話した筈ですが?」


「(*゜ー゜)あぁ…そうだったね。あの時に北伐をやると約束したんだったな!」


「( #´艸`)まさか…今さらしないと言うんじゃ無いでしょうな?」


関羽はその刹那、眼光に火花を散らせた様に見えた。


『(^。^;)アハハまじで言い辛いにゃ…』


話を蒸し返そうとしている北斗ちゃんにしてみれば、この威嚇はかなり辛い。でも言わねば成らない。


「(;゜∇゜)…今の我が国の戦略は呉と和し、魏を叩く!これが我が父・劉備や丞相・諸葛孔明の方針だよね♪」


「(‘∀‘ )そうですな…その為に丞相の隆中策を容れたんですからな…」




『隆中策』とは孔明が出廬(しゅつろ)した際に劉備に献策した計で、我が国では『天下三分の計』として有名である。


しかしながら、この策の目的は天下を三國に分けて均衡を計り、國を納めるというものでは無い。その先が在り、均衡を計るのは一時的な策だ。


まずは地盤を持つ事から初めて、闘える勢力に成った暁には、天下を目指しましょうというのが孔明の出した答えだったのである。


ところが、三國の形勢には成功したものの、現実は厳しい。三國の当時の人口比率から換算しても、魏・呉・蜀の比率は5:3:2くらいの割合である。


蜀の比率は甘く見積もって2だから、正確にはもっと少ない可能性もあった。当然の事ながら、人口の比率は、兵力の比率にも影響を与える。ほぼ同比率と観て良い。


そうなってくると、3~4倍にあたる魏國に対して単独で北伐をするなど、普通の感覚で言えば論外であり、頭が可笑しいのかと疑われても仕方無いくらいのものである。


恐らく当時でも、有識者の中ではそんな論調が当たり前であり、まともな感覚で在ったのだろう。蜀の反戦論者の中にもそう言う根拠で反対する者も居たで在ろうと思われる。


勿論、先に書いた様に、蜀の国民が劉備を受け入れたのは、その人徳からであり、漢の復興をさせる為では無い。そういった温度差の違いで反対する者も当然居た。


ところが劉備に近しい、特に軍務関係者にとっては、『漢の復興』『北伐』は既定路線であり、それに反対する者は、反抗勢力であり異端者であった。


つまりは『建国理念』の問題であるのだ。


漢室を潰し、國を私物化しようとしている曹操に対抗する為に、わざわざ拮抗する為の力を得たのであり、それが為せないならば、そもそも國など興す必要が無かったという、強い信念に基づく建国なのだから、『北伐』しないなら無駄な努力になる。


そう言う事なので在った。


強い(いきどお)りと信念に基づく劉備には見えていないかも知れないが、当時の有識者としては、垂涎(すいぜん)の存在であった諸葛孔明ほどの人物が、そんな事が理解出来ない訳が無い。


それでもそんな不可能に近い事を実際手掛ける由縁は、劉備という人の気概に惚れて尽力しようと誓ったからだと想われる。


つまりはやる方もあらかた、無理は承知で取り組んでいるのだ。それを判っててやるのと、その勢いに流されてやるのとでは、かなりの違いがある。


知っていて損は無い。後で後悔しても遅い…そう太子が考えていても何の不思議も無いで在ろう。




北斗ちゃんはなまじその才覚が芽を出してしまったが所以に、その(きわ)どさに気がついて、(いきどお)りを感じていたのだった。


「(*゜ー゜)で!今は、確かに三國を形成し、互いに睨み在っている訳だけど、まだ形成からそんなに時間は経ていない。我が国に至っては、まだ高々5年しか経過していないんだ…」


「…だから三國最弱と言えるし、そもそも父上が、國その物の完全掌握をまだ果たせて居るのかどうかさえにも疑問は残る…」


「( #´艸`)若君それは言い過ぎですぞ!兄者は…」


「(*゜ー゜)爺ぃ~僕は手札を切っている最中だ!碁で言うならば長考の途上である。文句は言い終えてから幾らでも聞く!話を遮らないで欲しい…いいね!」


「( ;´艸`)しかし!…判りました。従うと誓ったのですからな…最後までお聞きしましょう☆ミ」


関羽は渋々、その勢いを止めた。


「(*゜ー゜)曹操がまだ攻勢を強めないのは、赤壁の敗戦を引き摺っているからだ。だから積極的には攻めて来ない。ただそれだけなんだ。今は國の建て直しが先決と言った所だろう♪そして呉もそんなに時間が経って居ないのに、攻勢を強めて来るのは…」


「…魏が動けないのを理解していて、今の内に我々を滅ぼし、吸収すれば、北と南を二分する拮抗勢力に成る事が出来る絶好の機会だからさ!実際、その屋台骨はまだ盤石とは言えない筈だ…」


「…何しろ魏ほどでは無いにしろ、自国決戦で在った赤壁の合戦で、国土は荒れ、兵も民も疲弊している。むしろ休ませ、復興しなきゃ成らない時期に無理推しして来るのだから、絶対に失敗は出来ない筈なんだ…」


「…だから相手の力を分散させて、取り込もうなんて、奇計を弄して来るのだ。相手の力を削げば、それだけ自国の負担は少なくて済むからね…」


「…そこで我々の戦略だが、前に爺ぃ~には話したが、我々は戦力を温存し、國をまずは豊かにする事!こちらからは面と向かって攻撃は行わない事がまずは重要と成る…」


「…相手の隙を衝くにも戦力とそれを支える兵糧と兵器、そして精兵が居なければ無駄となる。まずはそこからと言える。相手が今回の様に仕掛けて来た時には、なるべく()なす事が肝要だ!」


「( ;゜皿゜)ノシ 若君!その論調で在れば、逆もまた然りなのでは?魏が動けないなら、我々も呉と決戦し潰すのです♪」


「( *´艸`)…」


「(‘∀‘ )傅士仁殿!まだ話の途中ですぞ!それにそれは駄目です!条件が違う!」


「( ;゜皿゜)…すみません、でもそれはなぜです?」


「(‘∀‘ )…若君宜しいですか?」


「(*゜ー゜)馬良は判ってる様だから…どうぞ!」


「(‘∀‘ )有り難く♪…では御言葉に甘えて説明しますが!呉は我々の倍は兵力が居ます。これが一つ。そして彼らは荊州の分裂を計って来ました。つまりはこの第一段階で上手く事が運べば、兵力を削ぐ事が無く南郡を手に入れられます、これが二つ…」


「…そして何より彼らの策は一朝一夕で考えられた浅い物では在りませぬ。周瑜(しゅうゆ)が存命中に構築した中華二分の計に沿っており、彼らはその強みである海軍力を使って、長江を船で突き進み、荊州と益州を奪うという目論見が在ります、これが三つ…」


「…それに引き換え、その逆を行おうにも、山国である我々益州族は、陸軍力では彼らには負けませぬが、如何せん移動力としての船が絶対的に足りませぬ。さらには海軍力では、かなり呉軍には劣ります…」


「…河で兵の輸送をする方が、その速度足るや早い事は間違いない事実です!何しろ、何も無い平地を進める訳では在りません。山在り谷在りですし、何より船は疲れませんが、人や馬は疲弊しますから休息も必要ですからね…」


「…だからそのまた逆も然りとはいきませぬ!さらに奴らのやり口を観ておりますと、まずこの荊州を攪乱出来るか否かで作戦の成否を計り、上手く行けばそれに乗じるという二段階の作戦を取っています…」


「…つまりは上手く行かなければ、撤退も見込めるのです!それに引き換え、我々には相手を攪乱出来て、動揺させるだけの策がまだ在りませんから、一度実力行使に及ぶと、もう後戻りは出来ませぬ。これがその理由です!」


「(*゜ー゜)さすがは馬良軍師♪その緻密な論理思考は健在ですね?白眉の有名も然も在らんと要った所です♪感服致しました…」


「…皆、今の説明で良く判っただろう?逆は無いし、相手の二番煎じを模倣しても先駆者には敵わぬ!しかも我々の準備がまだ行き届いて無い点も、ご指摘の通りだ…」


「…呉を倒す際には可能な限りはその強みである海軍力を封じなければ、勝てぬ!つまりは魏とやり合う準備と、呉を相手にする準備とは違うという事だね…」


「…そこで話を戻すが、今回の呉の戦略の端緒をまずは潰す事だ!そこに全力を注ぐ。そのために出来る事をする事だな♪呉も見込みが無いとすれば、時期尚早と今回は引くに違いない…」


「…そうすれば新たに我々荊州方の弱点を見出ださない限りは、当面仕掛けて来ないだろう?そうすれば我らにも準備と策を練る時間が得られるという訳だな…今回の我々の狙いはそこに見出だす他に無いだろうな♪」


北斗ちゃんは説明を終えた。当面の戦略のみだが、これが承認されないと、具体的な去なす策も計る事は出来ない。彼は皆を見回して、その反論を待つ事に為った。


「( *´艸`)…若君の意見は判った!確かにそうかも知れぬ!だが儂が先日言った地理的優位さや人材の輩出力の問題も忘れないで下され!その答えは出たので御座ろうか?」


「(‘∀‘ )私は若君の意見には賛成致しますな!無理が無く、理に適っております♪それで当面の時間稼ぎと成るならば良しです!」


「( ;゜皿゜)私も若君の意見に賛成です!但し、相手の想う様に仕掛けたり、引かれたりするのは良く在りませんぞ…」


「…相手の思う壺に嵌めず、多少の嫌がらせ程度でも宜しいが、仕掛けた分の意趣返しはせねば?その方が相手にも多少なりとも苦手意識が生まれます!そう想い込ませる事は大事かと♪」


「(*゜ー゜)(おおむ)ね賛意を得られて助かる。無論、やるからには考えはあるから心配するな!まぁそうは言っても、前人未到の挑戦に成るからね?まだ僕も不勉強な面も在るさ♪」


北斗ちゃんの戦略はまだ未完成である。それは彼自身にも自覚は在った。しかしながら、元々大いに非常識な目標なのだから、これが正解という物が在る訳でも無い。


少しずつ相手の優位さを崩して揺さぶりを掛けるほか弱者の取る道は無かった。そのための準備期である。確実に目標達成を図りながら、随時、相手の気勢を削ぐ事に尽力する事が今後の目的と成るのだ。


「( ・∀・)じゃあ、今後の方針はそういう方向にするとして、当面の鬼退治の作戦に入ろう♪」


北斗ちゃんはそう高らかに宣言した。


いよいよ呉撃退の作戦に入る事に為る。

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