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真夜中の邂逅

その日…晩になると、北斗ちゃんはさっそく動き始める。一台の馬車にニ騎の馬で公安の城門を静かに抜けると、一路江陵に向かった。


同行者は馬車の中には太守親子。二騎の馬には、それぞれ北斗ちゃんと傅士仁将軍が騎乗している。公安城には後の二人を残し、費観に兵権を委ね、太守代理として費禕を残す。


さっそく対抗策の構築かと思いきや、そうでも無い。太守親子の身柄を江陵に移すのは、北斗ちゃんの精一杯の人情であった。今、江陵には華侘先生がいらっしゃるのでその身を委ねるつもりだ。


孝の道を説きながら、このまま太守を死なせてしまっては、片手落ちであり、劉闡にも申し訳が立たない。まずは人命が優先である。


そして傅士仁には関羽将軍に頭を下げさせて、和解をさせる予定である。仲は北斗ちゃんが取り持つ。対抗策の準備はそれからの事であった。


夜中を選んだのは当然ながら、この移送を隠す為である。念には念を入れたといった所だろう。予め、北斗ちゃんは傅士仁から紹介させた信頼の置ける配下を先行させて、関羽将軍と繋ぎを取らせてあるので、夜中では在るが受け入れ態勢は磐石である。


静かな暗闇の草原の道には、蹄鉄の響きと車輪の回転する音色が兒玉(こだま)する。後は時折、強くなる風の流れる音のみである。


北斗ちゃんも傅士仁も、懸命に前だけを見つめて先を急ぐ。頼りとなるのは満天の星と月明かりのみであった。


やがて辺りが松明(たいまつ)(あか)りで明るさを増す。江陵の城が近づいて来た(あかし)である。視界に城門が入って来るとようやく彼らはホッと胸を撫で降ろす。


緊張で張り詰めていた意識が徐々に解けて、気持ちの余裕が戻って来る瞬間である。


夜中だというのに、城門は開き守備兵たちも必殺の態勢を整えている。辺りを警戒し、一瞬の隙も見せない構えを築く。


この当たりは関羽将軍の訓練が良く行き届いている。松明が燃え盛り、時折、輪唱する様にその火花が飛び散り、パチパチと騒ぐ。


城門前では関羽将軍と馬良、伊籍、そして華侘先生も温かく迎えてくれた。


北斗ちゃんはポンと両足を真横に広げながら、飛び跳ねる様に下馬すると、彼らの前にそれは見事に着地する。


「は~い♪10点満点~(*`▽´*)♪」


その瞬間、兵たちからはドッと笑いが巻き起こる。既にその人気は絶大である。彼らも優しい北斗ちゃんが戻って来た事が嬉しい様である。


「( ・∀・)将軍♪皆さん、こんな刻限に出迎え痛み入ります♪有り難う!華侘先生もすみません♪」


「( =^ω^)ホホホッ♪構わぬ構わぬ!病人が優先じゃて!ではさっそく太守殿はこちらで引き取る。後はよしなにな!」


「(*゜ー゜)感謝します♪」


「( =^ω^)なぁに♪それお前たち手を貸しなさい!」


華侘先生の掛け声で、看護方の人達が総出で太守を引き取っていく。劉闡は北斗ちゃんや傅士仁にペコリと頭を下げながら、それに着いて城門を潜る。


「( *´艸`)若君、無事で何よりです♪」


「( ・∀・)爺ぃ~♪夜中にすまないね!それに馬良、伊籍も有り難う♪」


「(‘∀‘ )(^ω^= )否、大した事では在りませぬ♪」


「( *´艸`)皆、出迎えると訊かなくてな!皆、若がそれほど大切なんですな!」


「(*゜ー゜)ププッ♪皆、過保護過ぎるよぉ~でもとても嬉しいよ♪有り難うね♪♪」


再び兵たちのドッとした笑いが響き渡る。


それを後ろの方で静かに眺めていた傅士仁は、この若君の人気の高さと、彼を囲む人々の表情の柔らかな笑顔に、驚きと優しい気持ちを感じていた。


『( ;゜皿゜)この御方は不思議な方だ♪いつの間にか周りの人の気持ちをグッと鷲掴みにしてしまう…そして周りの人々を笑顔にする。だから自然とこの人の周りには人が率先して集まるのだな…本当に凄い方だ!』


彼は改めて、この若い太子を信じて着き従った事を、幸甚の極みと感謝していた。そして出会いとは摩訶不思議なものと思い至っていた。


「( *´艸`)さぁ♪寒い中です!このままだとお風邪を召される。中にどうぞ( ゜∀゜)つ♪」


関羽将軍は優しく声を掛けて太子を労い、帰着を歓迎する。そしてふと傅士仁を目に留めると、声を掛けた。


「( *´艸`)士仁♪おぬしも御苦労だったな!後でゆっくり話そう…」


その微笑みは、以前の関羽とは明らかに違った。傅士仁はその驚きに感極まっていた。


『( ;゜皿゜)…人とは変われる者なのだな…一番影響を受けているのはこの方と私の二人かも知れぬ…』


そう感じたのだった。


皆、肩を抱き合いながら笑顔で城門を潜る。最早、この時点で二人のわだかまりも氷解していたと言ってよかろう。


北斗ちゃんを中心とした化学変化は、こうしてその影響力を徐々に浸透させて行くのである。

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