信頼と告白
「( ;゜皿゜)…殿!少しお話が…」
傅士仁は言い澱む。それは北斗ちゃんが、今まさに劉闡と部屋を出掛かった刹那の事であった。彼はわざわざ手を挙げて声を掛けたのに、「否…」と呟いて躊躇している。
『( -_・)うん?ははぁ~ん♪』
こういう時に不思議と勘が働くのは、彼自身もよく判っていない…第六感とも謂うべき何か?で在ろう。彼は、傅士仁が何か伝えておきたい事が在るが、それは皆に大っぴらに公表出来ない秘匿さを兼ねた物だと感じたのだった。
北斗ちゃんは傅士仁の傍に歩み寄って、自分の耳を右手で指すと、クイクイと手招いた。傅士仁は北斗ちゃんの右耳に手を充てると口許を近づけて、ゴニョゴニョと囁いた。北斗ちゃんは直ぐに反応して、「(^。^;)それは誠か?」と尋ねた。
「( ;゜皿゜)はい!残念ながら…」
「(^。^;)判った!よく話してくれた。十分考慮すると約束しよう♪お前は心配しなくとも良い!僕を信じるのだ!良いな?」
「( ;゜皿゜…勿論!心得ております♪」
「( ・∀・)皆、悪いがこの事は暫く秘匿する。いづれ近い内に判る事だろうから、今は我慢してくれ!傅士仁を責めぬ様に!」
「(*゜ε´*)承知しました!」
「(*^∀^)判っております♪」
「(^-^…??」
「(*゜ー゜)では劉闡殿!参ろうか?」
「御案内致します、( ゜д゜)ノ♪」
北斗ちゃんは案内を受けながら、部屋を退出した。後には、三人が残された。
「(*^∀^)傅士仁将軍!ではさっそくですが、書簡をまとめていただきましょうか?」
「(*゜ε´*)では私は引き継ぎをお願いします!」
二人は何事も無かったかの様に、淡々と手続きに入る。その姿勢は事務的であり、冷静で在る。
「( ;゜皿゜)…君達は気にならないのかな?」
「(*^∀^)ん?あぁ…秘密のお話の件ですか?否、特には!殿が仰有っていたでしょう!いづれ判るから…と!殿は必要で在れば、必ず伝える方です!その殿が待てというなら何年でも待ちますよ♪それだけの事です♪それより書簡はこれだけですか?」
「( ;゜皿゜)…あぁ!そうだ…頼む。」
「(*゜ε´*)まぁ…そう言うこってす♪殿が言うからには今は憚りが在るのでしょう?我らは仁義は守りますから御心配には及びません!それよりも引き継ぎに掛かりましょうか?」
「( ;゜皿゜)…あぁ、判った!私も肝に命じよう…」
「(*゜ε´*)まぁそれが良いでしょうな?チーム北斗ちゃんにようこそ♪将軍!若君の事をくれぐれも頼みます!」
「( ;゜皿゜)…ああ♪任せておけ♪」
傅士仁は、二人の若君に対する信頼の厚さに改めて驚いている。そして若君の彼らに対する信頼もだ!この主従の絆の堅さは何だ?彼はそんな強い絆を今まで観た事が無かったので、心底驚いていた。
費禕は既に書簡を括りながら、懸命にその文言を頭に叩き込んでいる。もう他の事には全く感心が無い様で在る。完全に書簡の解読に没頭していた。
費観は費観で、もう公安城の防衛の事に頭を切り換えていて、テキパキと傅士仁のやり方を学んでいる。
『( ;゜皿゜)…大した連中だな…』
傅士仁はそう感じていた。そして自分もいずれそう成るのだろうな?…そう思いを巡らすのだった。
一方の北斗ちゃんと劉闡は部屋を出ると、そのまま廊下を進み、太守・劉璋の自室に向かう。
「何が誠で…残念なのです?」
劉闡は尋ねる。北斗ちゃんは振り向く。
「( -_・)…そうだな貴方にはその権利が在るだろうから、そろそろ伝えても良いだろう。その前に言っておくが、これはあくまでも彼の配慮だと想ってくれ!傅士仁は君に何と言っていたかな?」
「( 。゜Д゜。)と申しますと??」
「( -_・)…自分は汚名を甘んじて受ける、貴方は父親に孝を尽くしなさいと言ったのだろう?僕もそれを聴いて気がつかなかったとはまだまだ甘かったな♪人が自分の汚名を甘んじて受ける時には、それに勝る共劣らない問題を抱えている物だ…」
「…僕が傅士仁と直に話をする前ならば、それは反撃の機会を窺っているのだと誤解のひとつもしただろうが、彼は何というか外見に騙され勝ちだが、心は思いの外ピュアなのだ。となるとそれは損得勘定では無かろう。鯔のつまりは、貴方と貴方の父親に対する彼なりの配慮なのだと僕は思った…」
「…すると案の定だ!彼は告白したのだ!彼が僕を信用していなければ、打ち明けはしなかっただろうが、僕はどうやら短時間の間に彼の心をグッと引き寄せる事が出来たのだろう…」
「…これから言う事は君にとっては少し酷かも知れないが、知らないと一生後悔するだろうから伝えておく!心して聴いて貰いたい♪心の準備はいいね?」
北斗ちゃんはそう言うと、劉闡の返答を待った。けして焦らす訳ではないが、気持ちを強く持って欲しいという彼なりの配慮だった。
「(^o^;)…ええ言って下さい!このままで良い訳がない。今は父の傍には僕しかいない。兄がいれば少しは気持ちが楽だったのかも知れない。でも兄も陛下の為に成都で励んでおられる…」
「…それは一重に我々の立場を楽にする為だと私は考えている。兄の為にも私が気を強く持って向き合うしか道は無いんだ。覚悟は出来てます。貴方の言う通りだ!知らないで後悔するよりいい…」
劉璋の嫡男の劉循は奉車中郎将として成都に留め置かれ、蜀の為にその身を捧げて奉仕している。それは忠誠心という依りは、父や弟の身の安全を守る為で在ろう。
彼は劉備の入蜀に際して、落鳳破で最後まで張任と共に抵抗した。気骨ある人だったのである。因みに落鳳破とはあの龐統士元が亡くなった場所で在る。
「(^。^;)…判った。では伝える。君の父親はまもなくその寿命が尽きる。その表情には死相が窺えるそうだ!傅士仁は北方の匈奴族の血が少し混じっている…」
「…そしてその一族は、代々シャーマンの家系なのだそうだ!だから始めて在った時には無かった死相がはっきりと判ったのだそうだ。そこで君に父親との時間を作ってやりたかったのだろうな?」
北斗ちゃんはそこで口を閉ざした。後は劉闡本人の問題だ。彼がとやかく言うべき事ではない。
劉闡は暫く無言のまま歩みを進めていたが、心の整理が多少は進んだのだろう。それに答えた。
「(^o^;)…教えて頂き有り難う御座いました。深く心に刻んでおきます!」
彼はそう述べると頭を下げた。
そして続けてこう告げた。
「まもなく父のお部屋です♪ここでお待ち下さいませんか?面会の儀、許可を得てまいります!」
「( -_・)…あぁ、頼む!」
劉闡はスッと静かに歩みを進めた。
北斗ちゃんはやり切れない想いでそれを眺めていた。彼は戸を叩くと、中から声が掛かって、やがて戸口の中に消えた。
するとそれと入れ替わる様に、ひとりの男が戸口から出て来た。それは医師の様で在った。
髪は長く、恐らく問診や処方に邪魔なのだろう。キチンと髪を結わえて、背中の後ろで結んである。面長で、もう在る程度の歳は入っているだろうに、背中が曲がる事も無く、その表情も若さを保っている。
とても身嗜みに気を使うらしく、地味な中にもその髪には飾り留めを付けており、その腰の辺りには、恐らくは蛇柄の革ベルトを纏っていた。
『( -_・)…可笑しな奴だな☆ミ』
北斗ちゃんはそう感じていた。
彼はすれ違う時に、頬を緩めて、フッと笑んだ気がした。
「( -_・)少々お待ちを…!」
北斗ちゃんは無意識に彼を呼び止めていた。
彼は特に驚くでもなく、優雅に振り返ると、
「(。-∀-)何か??」
そう答えた。
その表情には感情その物が無いのか、のんべんだらりとした様を感じさせた。
北斗ちゃんは声を掛けたものの、その得たいの知れない雰囲気に気味の悪さを感じていた。それはこれだけキチンとした身嗜みからは想像出来ない気持ちの悪さだった。彼は少々後悔していたが、声を掛けた以上はやむを得ない。
「(*゜ー゜)先生は太守のお医者様ですか?」
「(。-∀-)…そうだが?何か…」
「(*゜ー゜)太守はどこがお悪いのでしょう?」
「(。-∀-)…貴方は?」
「(*゜ー゜)…"私"はこの荊州に、本国から派遣された監察官です!丞相揮下のね♪だから何でも話して宜しい!」
「(。-∀-)…そうですか?こう言った憚る事は、普通は代諾者にしか喋らぬものですがね?まぁ…いいでしょう。太守は長くてあと数週間というところですかな?明朝に亡くなられても、私はけして驚きませんがね♪では御機嫌よう…」
「( -_・)…先生、貴方の御名前は?」
「(。-∀-)聞いてどうします?私はもうここには来ない♪たった今、クビに成りましたからな!まぁ、いいでしょう…答えますよ♪」
彼は溜め息混じりにこう答えた。
「私は仲翔と申します♪まぁもうお会いしないとは想いますがね?では(。-∀-)♪」
彼は背中を見せたまま手を挙げると、手首をフラフラさせながら、歩みを進めて去っていった。
『(^。^;)胡散臭い奴…』
北斗ちゃんはそう想っていた。世の中には医者とひとくちに言っても、色々なタイプが居るのだな…彼はそう想いながらその背中を見送っていた。