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日進月歩

ニつ目の課題である、兵の人員などの数値化の問題については、時間を要する事から、馬良が伊籍の力を借りて取り組む手筈となった。今日は事前の下打合せをする事として、本格的には明日以降の着手となる。


北斗ちゃんはまだ本格的な数値が揃っていない今、必要が無いらしく、体よく追い払われてしまった。部下達の言わば、配慮である。急に暇になってしまった北斗ちゃんは、華侘先生のところに顔を出すが、既に今日は店閉いした後であった。


『然も在らん…(^。^;)もう夕暮れ刻だかんね♪』


彼は将軍と馬良との打合せの後に、伊籍を訪ねて、再び打合せを敢行したため、今日は終日の缶詰め状態となっていた。


『( -_・)そう言えば皆、今日はどうしていたのかな?』


弎坐は朝から華侘先生の手伝いだと言っていた。費観と費禕はどうしていたのかは、北斗ちゃんも把握していた訳では無い。


特に指示が無い時には、「身体を休めろ!」「自由にしろ!」と言ってあるので、いちいち気に留めていた訳じゃない。誰だって自由は欲しいだろう。


『そう言えば…( ・∀・)田穂にも、周倉殿を紹介せねば成らなかったな?』


北斗ちゃんは今度は、その足で鍛冶屋まで歩いてみる。すると店は既に閉まっていて、店の前には建て札が立っている。


【しばらくの間、都合により休業致します!】


それを見た北斗ちゃんは、想わず驚く。


『おやおや…(^。^;)♪一体全体、これはどうなっているのだろう?』


彼はたった一日、部屋に籠って会合に集中していただけなのに、その…時の経過で藪から棒に動いた歯車が、彼の想っていた以上に外界の時の経過速度を早めている様な感覚に、陥らされる事になったからである。


『(^。^;)関羽将軍が気を利かせてくれたのかしら?』


彼は元来た道をテクテクと戻りながら、そう想った。次に彼は、田穂の所にわざわざ出掛けた。案の定、彼はもうそこには居なかった。


留守居と管邈の世話を任された三人だけを残して、既に北斗ちゃんの諜報部隊は呉方面に向かっていた。彼はその三人に事の次第を尋ねた。


すると、こんな解答を得たのである。関羽将軍が自ら、周倉殿を連れて来て紹介してくれた。彼は帰り際に、「( *´艸`)励めよ!そして死んでは成らんぞ♪」と言ったらしい。


それに応えた田穂は、コクリと頷き、「若君の期待に応えますよ( `ー´)♪」と言って、その足で南下に入ったという事だった。


『やれやれ…(^。^;)有り難い事だが、皆動きが早過ぎるぞ…』


北斗ちゃんは、内心は嬉しいのに、想わず苦笑いしてしまった。彼は仕方なく帰宅の途に着く事にした。そんな時に、彼は成都で無為に過ごしていた日々を不意に思い出す。


あの頃は如何に自分が為すべきかなど考えもしていなかった。ところが荊州に来ると決めたあの日から、自分の考え方や行動は目まぐるしい程に変化していた。


自分は元より、こうして周りの人達にさえ、その意識は浸透し始めている。彼の行動が徐々にではあるが、知らず知らずの間に、周りの人達にも影響を与える様に為って居たのだ。


それが証拠に、こうして何も言わなくても、周りの人達も、自分で考え、行動し始めていたのである。


『(^。^;)もはやこれは後戻りは出来ないと言う事に成るな…』


彼は改めてそう思い、気を引き締める事にした。北斗ちゃんが帰宅すると、弎坐だけでなく、費観や費禕まで座り込んで何やら懸命に()ねている。三人三様に器の中の練り物を練っている様だ。


「(-ω-*)あ!若君♪お帰りなさい☆彡」


「(*^∀^)♪(*゜0゜)♪お帰りなさい☆彡」


「( ・∀・)あぁ…ただいま♪いったい何をしてるんだい☆彡」


「(*^∀^)あぁ♪今日は終日時間が空いたので、弎坐と一緒に我々も、患者さんの治療のお手伝いをしておりました♪」


「(*゜0゜)フフッ♪その時に、華侘先生から解熱剤と腹痛薬の作り方を習ったので、この際、作って置こうと思い立ちまして、こうして練っております♪」


「( ・∀・)へぇ~それはいい考えじゃないか?丁度、僕も備蓄を考えていた所なんだ♪いったい誰の腹案何だい?」


「(*^∀^)♪(*゜0゜)♪せ~のせっ☆彡それは弎坐殿の考えで~す♪」


「( ・∀・)へぇ~弎坐♪素晴らしい案じゃないか?やるねぇ~♪」


弎坐は(-ω-;)少し照れた様に顔を赤らめながら、懸命に練り物を捏ねている。北斗ちゃんはその姿勢に既に驚いている。


今までの彼なら得意満面に成りそうなものだが、褒められても、(うつむ)いて、只ひたすらに薬剤を練り込んで行く。これを観ていて感銘を受けない訳がなかった。


『( ・∀・)弎坐も成長している。そして彼自身も、この二人に、その行動によって影響を与え始めているのだ!』


北斗ちゃんはそう感じていた。けして自分が稀有(けう)な存在でも無いのだ。人は誰しもその行動により、人に良い影響を与える事が出来るのだ。


それは別に意識してやるものでは無くて、その真摯な姿勢に人が心を動かされて、自然と行動に移していくものなのだと北斗ちゃんは想った。彼は弎坐を再び褒めた。


「( ・∀・)弎坐、なかなか出来ない事だ!偉いぞ♪そして僕は嬉しいよ!」


弎坐はようやく手を置いて、北斗ちゃんに振り向いた。そして辿(たど)々しいながらも、その言葉に気持ちを込めた。


「(-ω-;)あちきは宮中に仕える時から宦官です。だから、只ひたすら陛下や太子に(かしず)き、身の周りのお世話をする事で、一生を終えるものと思っておりました…」


「…けれども、若君と一緒に荊州に来る事になり、来なければ、恐らく見る事の出来なかった様々な物を観て、考えも及ばなかった色々な出来事を体験しました…」


「…若君は旅の始めに言って下さった。この旅は無礼講だ!皆、仲間なのだ…僕の事は北斗ちゃんと呼んでくれ!と。あちきは嬉しかった。今までそんな事を言う人は居なかったし、このあちきの事も差別しないで、ちゃんと接して、見ていて下さる…」


「…そしてあの誘拐事件です。あちきは見捨てられる事も半ば覚悟していました。けれども若君はちゃんと助けに来て下さった。そしてあの命を賭けた執刀です。大きな精神的不担が掛かる中、それに押し潰されそうになりながらも、若君はそれに懸命に抗って、あの人の命を救いました…」


「…あちきはそれを目の当たりにして、感動しました。人一人の命を救う事が、どんなに大変な事かを思い知り、それが出来る若君の存在がとても大きく見えたのです。そして自分の無力さも同時に感じたのでした…」


「…でもそれで諦めちゃダメなんだという事は、それまでの若君の行動を見ていて判っていましたので、あちきも、まずやってみようと想ったのです♪あちきは、まだまだこれからですが、もし今回の事が素晴らしい事であるならば、それは若君のお陰なのです。けしてあちきの成果ではありません!」


弎坐はそう述べると再び(うつむ)いてしまった。聞いていた三人は感動していた。


人の心の変化の有り様も垣間見える、その言葉の端々には、嘘偽りの無い真実が込められている。そして彼がそう想い至った経緯も生々しく、その辿(たど)々しい言葉の中には、彼の苦脳とその心の変化が、まざまざと感じられたからであった。


彼は再び練り物を()ねている。


「( ・∀・)僕も一緒にやろう♪」


北斗ちゃんはそう言うと、三人の輪の中に自然と入って、自分も薬材を混ぜ始めた。


こうして四人の薬作りは夕食まで続くのでした。四人とも、終日懸命に働きましたので、その日の晩ご飯はさぞかし美味しかったに違いありません。




翌朝は北斗ちゃんにしては目覚めが遅かった。駲れない打合せを、終日に渡って繰り広げたせいかも知れない。なぜならば、彼にとっては初めての経験だったからである。


『(^。^;)頭を使うともの凄く疲れるんだな…』


彼は思った。


『今後はやむを得ぬ事情が無い限りは、打合せは手短に済まそう(´ε`;)ゞ…』


彼はそう心に固く誓った。彼は、いつも通りに朝げをきちんと摂ると、その後、管邈(かんばく)を見舞う。今朝は顔色も良く、峠ももう越した様である。念のため、今が一番大事な時だからと、引き続き自重する様に促しておく。


合間に少し時間が出来たので、昨夜やり残した分の薬剤を作ってしまおうと、練っていると、弎坐が入って来た。


「あ!(-ω-*)おはようございます♪おや…朝から 続きですか?あちきがやりますんで、若君は仕度に 掛かって下さい!もうすぐ二人共来ると思いますんで!」


「ああ…( ・∀・)そうだな!ついつい手が出てしまうようだ♪昔は見て見ぬ振りを決め込んだものだが、その反動かね?」


「(-ω-;)そんなんじゃ有りませんよ…若君の熱い気持ちかと!でも時と場合によります。医者の不養生はいけませんぜ?」


「( ・∀・)♪お前の言う通りだね…気をつけると約束しょう!」


弎坐は若君が自分を一人前に見てくれる事が嬉しかった。これからも前を向いて、懸命に努力しようとそう思えた。そこに丁度、二人が入って来る。


「「おはようございます!!」」


「( ・∀・)ああ、おはよう♪悪いな!少し待っててくれ!すぐに着替える…」


「ええ…ご心配なく!隣室に控えております!」


二人は一旦、引き下がってのんびりと待つ。彼らにしてみても、若君が連日、計画遂行のために動いてくれている事は承知の上である。


荊州防衛のためには、まずこの江陵城の一致団結が不可欠である。そのために人を巻き込み、説得して共に行動を起こす事が大前提となるのだから、どうしてもその尖兵である若君の負担は尋常ではない。二人はそれを良く心得て居たのであった。


「やあ~( ・∀・)お待たせ♪」


北斗ちゃんは、身動きの取り易い服に着替えると、二人に声を掛けた。


「(-ω-*)いってらっしゃいませ♪先生にはあちきから伝えておきますから、安心して下さい♪」


弎坐の言葉は頼もしい。


「( ・∀・)頼む!!」


彼はそう応えると出発した。城門の近くには、既に三頭の馬が用意してあって、互いに馬に乗るや、出発する。目指すは公安城である。北斗ちゃんは昨夜タげを共にしながら、三人には予定を伝えてあったのである。


昨日の会合により、それぞれが課題とした、当面の目的に邁進する。


関羽将軍は魏の牽制をしながらの教練である。


馬良と伊籍は当面、狼煙台の死角と弱体化を防ぐため、人材の選抜と研修、ローテーションの作定と秘密の仕掛けを施す。それと併行して数値化への取り組みである。


田穂と周倉は部隊と共に呉の情報収集に迎っている。これが呉の動きや人材の情報を知る事に繋がるだろう。


趙雲は南郡と公安に目を光らせており、陸道の改修工事に余念が無い。呉に陸路を踏ませないための秘策がなにやらあるようだ。


そして北斗ちゃんは、関羽将軍の許可が降りたので、早速、公安城の掌握に向けた第一歩を踏み出す事にしたのである。これは元々費観と費禕との話し合いの中で、事前に策定済の事であったから、動き始めれば事は早い。いよいよ始動である。


三頭の馬は一路、公安城に向けて駆け出している。


「(*゜ロ゜)若君!ちゃんとアレ、中に着込んだんでしょうな?」


「( ・∀・)うん♪せっかく爺が(あつら)えてくれた鎧だかんね!似合うと良いけどな♪」


「(*^∀^)否、違いますって!必要にならん方がいいんですって!」


「( ・∀・)あっ!そっか♪だね!」


北斗ちゃんは茶目っ気たっぷりにそう応える。一応、味方の城であるし、いきなりブスッとはいかないだろうが、念のための用心である。関羽将軍の親心というものだろう。


「( ・∀・)僕は着いたら、すぐに士仁に会うから、お前達は身内の情を前面に出して、上手く大守親子に会ってくれ!予定通りにな♪」


「(*゜ロ゜)ええ、任せて下さい!」


「(*^∀^)こっちは費観頼みですからな!若君こそ、気をつけて下さいよ…」


「あぁ…( ・∀・)丈丈夫!お互いにベストを尽すとしょう♪」


馬達は出発前に飼い葉をたっぷり与えられているので、御機嫌良く走る。彼らの会話等、どこ吹く風である。彼らはその後も、互いを励ます様に声を掛け合う。そうこうしている内に、やがてその視界に公安城が見えて来た。


三人は自然と、丹田に力を込めて、遠目にその姿を眺めていた。


いよいよ目的の、その第一関門である。

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