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信頼の証

関羽将軍の同意は得られた。今後は彼と共にこれからの事を二人三脚で進めて行く事に成る。懸念材料は沢山ある。山積していると言っても良いくらいの物だ。それをこれからひとつずつまず解決していかねば成らないのだ。


北斗ちゃんはまず、関羽将軍に間諜の強化を提案した。それはいみじくも彼が感じていた相手の事を知る事に繋がるものである。そしてちょうど良い事には、彼の許には信用のおける手練れが手に入っていたのだからこれを生かさない手は無かった。


「(*゜ー゜)まずは魏と呉の主要人物についての状況を知りましょう♪」


「( *´艸`)ふむ…しかしこの儂に掛かれば、誰も相手に成らんと想うがなっ…ガハハハハ♪」


『(^。^;)このお人はまだそんな事を言っとるのか…あんたひとりで戦うんじゃ無いんだっつ~の!』


北斗ちゃんはまたまた端緒から(つまず)くのかと想わず溜め息を漏らす。するとそれに気がついたのか、関羽将軍は笑って答えた。


「( *´艸`)若、心配要りませぬ!判っておりますから♪まぁ儂が100人も居れば安泰ですがな…ガハハハハ♪」


「(^。^;)…あ~ビックリした♪そう言ってくれて良かったですよ…」


そう答えたものの一抹の不安は残る。しかしながら、矜持の塊で在る将軍に逐一、念を推すのも(はばか)られる事も事実なので、ここは理解してくれたと信じて、先に進む事にした。


『(^。^;)要所要所の大事なとこだけ念を推す事にしよ!…協力する以上は相手を信じなければ始まらない♪』


北斗ちゃんはそう考える事にした。


「( *´艸`)…しかし問題も在りますぞ!魏の方面は順調に情報が取れますが、呉の方はサッパリです…」


「((゜□゜;))何ですって?それは何故です!」


「( ;´艸`)それがどうも妨害工作の様でして、放った間者が誰ひとりとして戻って来ませぬ…」


「( ゜д゜)…で何か対策は講じたのですか?」


「( *´艸`)無論です!強者を募ってやりましたが、今度はまるで要領を得ないのです…どうも儂の配下は武闘派が多く情報収集は下手な様です。かと言って馬良の放つ奴らは軒並み全滅ですからな…」


「(^。^;)それって両方ペアにして送り着ければ良いのでは?」


「( *´艸`)おぉ!そうですな♪それは気がつかなかった♪さすがは若君…頭が柔らかい!」


『(^。^;)こりは取り敢えず主導権握って正解かも!豪快なせいか細やかな対応は下手なのかもな…』


北斗ちゃんは関羽将軍を説得出来た事に感謝していた。それにしてもこの程度の事なら、馬良辺りが気がつきそうなものだが、何故なのだろうか?


『(*゜ー゜)こりゃあ馬良にも確認しなきゃ成らんな…』


彼は頭の片隅に入れておく事にした。


「(*゜ー゜)それではこの件は役割分担しましょう♪将軍の間者は引き続き魏の情報を集めて下さい!呉の方は私の間者にやらせましょう。彼らも元身内の内偵は不味かろうと想うのです!その代わりと言っては何ですが、あの(まさかり)男!何て言いましたっけ?」


「( *´艸`)周倉ですかな?」


「(*゜ー゜)あ!それだ!周倉殿を貸して下さい♪まぁ念のためですが、せっかく助けた奴らを早々に死なせる訳にもいかないですからね?」


「( *´艸`)若もお優しい事ですな!間者など使い捨てでしょうに…あ!否、すみません…命の尊さでしたな♪」


関羽将軍は慌てて口に蓋をした。


「(*゜ー゜)差し障り在りますかね…日頃は鍛冶屋なんだから、構わないでしょう?」


「( *´艸`)あぁ…周倉は儂の言う事には従います!全く問題は在りませんな!でも恐らく杞憂でしょう…あいつらは儂の見立てでは、かなりの強者です!問題無いと思いますね…」




「( `ー´)…全く問題在りませんな!」


北斗ちゃんが呉方面の偵察依頼をすると田穂はキッパリとそう言い切った。


「(^。^;)なぜだ?管邈(かんぼう)は斬られたのだぞ?」


「( `ー´)…あの方は頭目ですが、元々は文官向きの御方です♪勿論、剣の腕はそこそこ無ければ務まりませんが、我々青州兵崩れの荒くれ者とは比較に成りませんな!どちらかと言うと我々の頭脳なのですよ♪」


「(^。^;)え?そうなの…」


「( `ー´)えぇ…あの御方は管寧(かんねい)様という徐州でも指折の学者さんの嫡男です!我々とは頭の出来が違いますな…だから満寵様が頭目にしたのですよ♪あの御方はとても優しいので皆が慕っております!だからこそ、降伏は必然だったと言えますな♪勿論、貴方様のお優しさも引けを取りませんがね!」


田穂はそう言うと笑って承諾した。


「( `ー´)今度その周倉様にお引き合わせ下さい!助けに成る者は素直に受け入れる♪これも我らの柔軟な所でしょうな!」


「(^。^;)判った!頼む♪」


管寧(かんねい)とは徐州三傑のひとりであり、この時代の学士であるが、一風変わった人物としても名を馳せていた。曹操から再三、都に上って仕える様に要請を受けても、それを断り続けて隠棲を決め込んだのである。まぁ、極端な言い方をすれば変わり者である。


ちなみに後の二人は華歆(かきん)邴原(へいげん)である。この二人は、曹操の要請を素直に受け入れて出仕した。そしてその才能を発揮して、出世街道を歩んだ。特に華歆は大出世を遂げるのである。


「(*゜ー゜)ところで、皆、青州兵崩れという事であったが、お前たちは徐州の者では無かったのかい?」


「あぁ…( `ー´)青州兵とは青州の兵という事では在りません。その多くは黄巾族の残党で、各地に跋扈(ばっこ)していたのをひとつにまとめた曹操様の謂わば近衛集団です…」


「…この青州兵も外聞を気にして付けられた、謂わば仮の名ですな!勿論、それだけに限らず、山賊出身の者も居ますよ!各謂う私はその口ですな…」


「あっ(*゜ー゜)!そうなの?それは知らなかった…」


「( `ー´)気にしないで下さい!知らなくて当たり前ですから…」


彼はそう言うと、「大船に乗ったつもりで居て下さい…」そう自信に満ちた表情を浮かべた。




関羽と北斗ちゃんの話し合いは二日目に入り、この打合せには、関羽の軍師・馬良も呼ばれている。初めて会ったその日に、将軍の治療を観て吐いてしまったあの方である。


馬良はそもそも、そんな重大な会見が行われているとは知る由も無かったから、初日の会見を終えた北斗ちゃんの来訪を受け、初めてその事実を知る所と為ったのである。


その際に、会見への参加を要請された彼は、急遽、関羽将軍に面会した。そして明くる日よりこの会合に参加する事を正式に表明したのだった。


馬良は、『馬氏の五常』と(うた)われた、荊州の名門一家の四男で、字は季常(きじょう)と謂う。眉毛に白い毛が混じっていた事から、白眉(はくび)とあだ名されていた。


この兄弟は皆優秀で、高い教養と知識を兼ね備えていたが、その中でも馬良が抜きん出て優秀だった事から、その才が抜きん出ている人物の事を評して『白眉(はくび)』と呼ぶように成ったという事である。




(ちな)みに、この兄弟には全員の(あざな)に『(じょう)』という一字が入っているので、『馬氏の五常』と呼ばれているのだ。


そして『()』という一字は大抵の場合、四男を表す風習があった。因みに長男は『(はく)』、次男は『(ちゅう)』、三男は『(しゅく)』で表す。これは兄弟の長幼の序を表す表記であり、これを排行(はいこう)という。


日本にも似たような風習はあって、『太郎・次郎・三郎…』と考えて頂ければ判りやすいかも知れない。要は『1・2・3・4・5』と同じ感覚である。


この排行が必ずしも全てに当てはまるかは定かでは無い。我が国でも長男に三郎とか、付ける人だっている。例えば身近な人物では、織田信長は嫡男だが三郎である。因みに日本では排行の事を仮名(けみょう)という。


仮名の例えで考える場合に、嫡男が三郎って変じゃ無いかと想うのが自然であるが、法則を逸脱している場合に多く観られるのは、先祖に太郎・次郎が多くて紛らわしかったり、尊意を持って避けたりする場合があるからだそうである。


けれどもこの様な法則を知っておくと、この物語でも出てくる『陸遜(りくそん)』は字が伯言(はくげん)だから長男かな?とか『司馬懿(しばい)』は字が仲達(ちゅうたつ)だから次男かな?とか想像が出来て、中国の歴史や文学が依り面白く感じられる事、請け合いである。是非試して頂きたい。


さて、話を戻そう…(^。^;)




馬良は、関羽将軍を籠絡(ろうらく)させたこの董斗星という若者に、急激に興味を惹かれていた。だから呉の陸遜と名乗る男の事を聞かれた時にも進んで協力を申し出たのである。


「陸遜ですか…あれは厄介な人物ですよ!剣の腕は抜群であり、なかなかの男前です。あの呂蒙が一目置くのですから、きっと頭も切れるに違いありません。総督閣下の"儂が居れば~" はお聞きになりましたか?成る程、体験済なら話しが早い。明日から私も会合に参加しましょう!きっと潤滑油くらいの立場には成れるかも知れません…」


彼はあくまでも控え目に、協力を申し出てくれた。


間者壊滅の話に関しては、自分のミスであるとしか言わなかった。彼はなかなか洒落た物言いをする男だが、人を悪く言ったり、責任を押しつける様な言葉は一斉、口にしなかった。


『(*゜ー゜)その性格は尊敬に値するな…それさえ推さえておけば、彼とは良い関係が築けそうだ!』


北斗ちゃんは頼もしい味方をもう一人見つけて、少し肩が軽くなった様に感じていた。




「(*゜ー゜)将軍の方は(つな)ぎが取れましたか?」


「あぁ…( *´艸`)問題無い。趙累(ちょうるい)からその旨、報告を受けている!」


「あ!将軍の小飼いの将の一人で信頼出来ます!」


馬良が早速フォローに入る。北斗ちゃんは頷く。


「では…(*゜ー゜)相手の事を深く知るのは、これから先にひとまず譲りましょう。但し、呉方面で当面、気をつけねば成らない人物は、呂蒙(りょもう)虞翻(ぐほん)陸遜(りくそん)…この三人である事は推さえておきましょう!宜しいですね?」


「待って来れ!( *´艸`)陸遜とは誰だ?」


関羽は宣う。ここですかさず馬良が耳打ちする。


「ふんふん…( *´艸`)成る程、判った!儂が会ったら切り捨ててくれる!」


「(*゜ー゜)将軍!ぶっそうな事を言わないで下さい。少なくとも公式の場ではお控え下さい。まあ、後はお好きにどうぞ!」


北斗ちゃんはくれぐれも念を押した。相手は闇打ちしてくる様な輩ではあるが、こちらも謀報で動いている引け目はある。しかしながら、管邈(かんぼう)の件は、少なくともこちらの領地内で起きた事であるから、個人的には許せない気持ちもあった。


だが、こういった事は互いに間者を送り込んでいる以上は、境界線のこちら側とかあちら側とか、詮議しても始まらないのだ。こちらだって、敵状視察中に逃がれるためには、必死で抗うかも知れないのだ。


そう考えれば、陸遜が一方的に悪いとも言い切れない。 言わば三国にとって、この荊州一円そのものが、紛争地帯と言っても過言では無かったのである。


『(^。^;)それにあの時点では魏と呉の間者同士が、我々の領内で争った事に成るからな…細かい話しではあるが…』


彼はその話しは一旦置く事にした。恐らく時間的余裕はまだあるだろうが、方向性は直ぐにも決めておかないと、作戦行動の着手から完了までだって、物によっては時間を要するのだ。早く済ませておくに越した事は無い。


次の課題が彼らを待っているのだ。それに今日からは当時者の馬良も居る事だ。まずはこの話しを机上にあげて済ませておきたい。


「(*゜ー゜)次に狼煙台の事について結論を出しておきましょう!」


北斗ちゃんはそう口火を切った。


実はこれについても昨夜に馬良には伝えてある。彼は驚き、青ざめてしまった。再び自分に非が在る事を認めた。そして関羽自身も、その死角については報告を受けてたまげている。


長江の河岸には山が連なり、所々に波止場は設けられているものの、陸地伝いに進軍して来るのには、かなり骨が折れるのだった。


それ(ゆえ)に河を船で進んで来る事を想定していて、見張り台の陸地側への意識は、(ほとん)ど向けられていないと言って良く、しかも山々に生茂る樹木が邪魔となって、月の光が陸地側まで届かないため、どうしても死角が出来るのである。


地図を立体的に見るという、可笑しな行動をする北斗ちゃんならではの新発見である。


彼はここで、やむを得ず種明しをする事になった。誓約をした以上は、彼らをいつまでも欺くのは仁義に(もと)る。彼は、関羽とその軍師・馬良の胸に留めて置く事を条件として、彼らにひとつの秘密を打ち明けたのである。


「何じゃと( *´艸`)!趙雲の奴が秘密裏に来ておるのか?それは真か!」


「ええ…(*゜ー゜)但し、僕の往路・復路を守るためですけどね!これは丞相も董允殿も承知の上です!何か在れば、丞相に責任を取らせる羽目になりますので、くれぐれも秘匿して下さいね…まあ僕の立場と同様ですが、彼は大物で顔も知られていますから、公の立場では堂々と振る舞う事は出来ないのですから…」


ここで馬良が、妙な反応を見せる。


「僕の立場と同じとはどういう事でしょうか?」


『( ;´艸`)!!』


すると関羽将軍は思い切り焦った表情を見せる。顔の表情を()まめに動かして、(しき)りに北斗ちゃんに合図してくる。どうやらウインクがしたい様だが、上手く片眼が閉じないらしい。


『やれやれ…(^。^;)』


彼はその律儀さに、想わずほくそ笑む。


「(^。^;)将軍、いいんだ!馬良は信が置ける男だ。僕が直接、面談してみて、それが良く判ったのだ。但し、まだ二人の胸の内だけに止めてくれ!後は僕が直接会って信が置ければ、その都度仲間に引き入れる。僕の幕僚は、三人共承知して連れて来ているから心配無い♪」


馬良は秘密と聞いて、想わず生唾を飲み込んだ。


「(*^ー゜)馬良、僕は太子の劉禅だ!宜しく頼むよ♪」


北斗ちゃんはウィンクした。彼はとっても上手に出来たようだ。


「え~(o゜Д゜ノ)ノ!!」


馬良はどこから出たのか判らぬ様な、素っ頓狂な金切り声を出すと、見てるこちらが気の毒な程、目の瞳孔(どうこう)が開いていた。


関羽将軍は、若君と二人切りの秘密で無くなった事をとても残念そうに(なげ)いていた。

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