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【番外編】楼琬の旅路③転機

「こんな所にお客さんとは珍しい事だこと♪たんと召し上がれ!」


全白の奥さんは快活で切符の良い、謂わば肝っ玉母さんである。炊き出しも無事に終わり、皆が嬉しそうに帰って行くのを満足そうに眺めていた。


女将さんは旦那の連れに気づいて、早速、声を掛けて来た。まだ炊き出しが残っていたのだろう。彼女は反射的にそれを差し出す。


「かぁちゃん、この方はオレっちの大事なお客さんだ!通りすがりの御方じゃねぇ♪」


全白は誤解を解こうと、慌ててそう告げた。すると女将さんは呆気らかんと愚痴を溢す。


「あら、そうかい?そりゃあ悪かったね!うちの旦那は困ってる人が居たら、放っておけない性格(たち)でね♪また連れて来ちゃったのかと想ったのさ!あんたもそう想うだろう?」


「そのようですね♪」


楼琬もその言葉に(ほだ)されて、そう同意した。


「かぁちゃん…」


全白は尚も訴える。すると女将はクルリと旦那に向き合い頷く。


「判ってるよ♪お客さんだろう?あんたにしては偉く可愛らしいお客さんじゃないか!」


女将さんはカラカラとおおらかに良く笑う。


「じゃあ早速、中に入っとくれ!旦那の大切なお客様じゃあ、腕によりを掛けないとね♪」


彼女はそう宣うと、二人の背中を押す様に中に招いた。この女将に懸かっちゃあ、人はおろか馬もひれ伏す。


いつの間にか田単号は彼女に引かれて馬屋に移動し、ひとまずその口に人参を突っ込まれた。


「後でたんと食わせてやっから、しばらくそれで過ごしておくれ♪」


そう言って微笑む。


田単号は嬉しそうに人参に噛り付き、夢中となった。




「こりゃあ旨い♪」


女将さんの振る舞う食事は、楼琬の舌を唸らせる。


「そうでしょ?うちのかかぁの腕はピカイチですからなぁ~♪」


全白も嬉しくてついつい饒舌になる。


「褒めても何も出ないよ♪」


女将さんはカラカラと笑い、その場は和やかな空気に包まれる。女将さんも褒められて嬉しいに違いない。


その表情は終始、晴れやかだった。やがて食事も終わり、男二人になると、全白は酒を進めたが、楼琬はやんわりと遠慮した。


すると全白は可笑しな事を言う。


「あっ♪そうか!まだ酒は早いんでしたな?」


どうやら彼がまだ成年に達して無いのだと、思い込んだらしい。楼琬は苦笑しながらそれに答えた。


「否…そうじゃ無いんです!僕は下戸で元々呑めないんですよ♪」


そう言いながら、彼は胸元から茶葉を取り出して、反対に全白に勧めた。


「これはね、親友から貰ったお茶です。本当に美味しいんですよ!如何です?ご一緒に♪」


楼琬は、旅の出会いで新しい絆を築く時のために、秦縁のお茶を持って来ていた。


「へぇ~お茶ですか!そんな高価な物をオレっちなんかが宜しいんで?」


全白は却って恐縮そうに遠慮している。


この当時はお茶は高価な贈答品であり、庶民の手の届く物では無かったのだろう。けれども楼琬は気にする素振りさえ見せずに即答した。


「何を言ってるんだい?君と僕とはもう友じゃあ、ないか♪遠慮はいらない!一緒に飲もう♪」


するとたちまち全白はその瞳を輝かせた。


「本当ですかい!ならどうしてもひとつ旦那にお願いがあるんで♪」


「何だい?」


「かかぁにも飲ませてやりたいんす!今のオレっちがあるのは、かかぁのお陰なんで♪」


全白の気持ちはその姿勢に如実に表れる。彼は両手を擦り合わせるように、懇願している。


そこに溢れる愛情の深さは、見る者の心を揺り動かすには十分過ぎた。


『何だ?大した奴じゃん♪こりゃあ、お見それしたねぇ…』


楼琬は伴侶に深い愛情を注ぐ全白の心に感心した。だから今度も即答した。


「構わんよ♪お茶は大勢で飲む方が愉しいし、旨いからね!」


「本当ですかい?」


全白は頬を緩めた。


「勿論さ♪早く呼んでおいでよ!」


楼琬がそう言うと、全日は「かあちゃん、かあちゃん!」と声を掛けながら、一目散に跳んで行った。


その後姿を眺めながら、楼琬は『夫婦っていいな♪』と少し羨ましく感じていた。




「私なんかがご一緒しても本当にいいのかい?」


夫に急き立てられるように合流するなり、女将は訊ねた。楼琬は気さくに応じた。


「えぇ…勿論♪お気兼ねなく!茶は愉しむもの。皆で飲むと一段と美味しさが増します♪」


すると女将は嬉しそうに笑った。


「じゃあ、遠慮無く!私が一緒だと旨みが増すかねぇ♪」


全白は女将さんの積極さにたじたじである。そして申し訳無さそうに楼琬を見つめた。彼は笑顔で答えた。


「そうですよ♪その通りです!」


そう言って、二人を見つめ返す。二人共、満面の笑顔でこちらを見ていた。


やがて湯が沸いたので、楼琬は二人の前で茶を入れてみせてやり、湯飲みに注いでやる。二人はその間、興味津々で食い入るように見ていた。


「熱いから気をつけて!どうぞ召し上がれ♪」


楼琬がそう声を掛けると、二人とも瞳が輝く。けれども全白が前傾みになるや否や、女将が訊ねた。


「ちょっと宜しいかしら?」


「何ですか?」


楼碗は微笑みを絶やさない。すぐに食いつく勢いだった全白は、顔を真っ赤にしていた。


「うちらは茶なんて初めてだからねぇ~♪どうやって飲むのさ?所作とか難いもんがあるんだろう?」


理由(ワケ)を聞けば成る程、仰る通りだ。けれども今ここでそんな事を語っても詮無い。


それに彼自身、形式に(こだわ)るのは好きじゃなかった。茶なんて堅苦しく飲むもんじゃない。その想いがそう言わせた。


「アハハ♪確かに!でも女将さん♪お茶は気楽に飲むのが一番です。それに堅苦しい想いをさせるためにわざわざ呼んだんじゃありませんよ!どうぞ気兼ねなく味わって下さい♪」


そう言うと女将は喜んだ。


「そうかい?じゃあ、頂くとしようかね♪ねぇ、あんた!」


「そうさなぁ!頂くとしよう♪」


全白も同意して、二人とも顔を見合わせるとニコリと笑った。


そしてフーフーと冷ましながら、二人共ゴクリとやるなり、目を輝かせる。


「こりゃあ、旨い♪」


「ほんと、美味しいねぇ♪」


どうやら二人とも気に入ってくれたようで、続けてゴクゴクと飲み干す。楼琬は気を善くしてお替わりを注いでやった。


「そりゃあ、好かった♪僕もこれが好きでね、心好く歓待して下すった細やかなお礼です。少し置いていくので、二人で愉しんで下さいね♪」


楼琬も同意を示す。彼はそう言って、袋を差し出す。


「滅相も無い!」


二人は一旦、固辞したものの、楼琬の強い勧めにやがて折れた。


「そうかい?そういう事ならいただくよ♪」


女将は宝物のように袋を抱き締める。女将の嬉しそうな表情を眺めて、全白も改めて謝意を示した。


美味しい茶が結ぶ縁は尊い。程好く肩の力が抜けたせいか、雑談の花が咲く。


たわいも無い会話の中からも、得るものは在るものだ。


「へぇ~あんた、偉いねぇ~♪」


女将は感心している。


旅の目的を訊ねられた楼琬は、この人たちならと話してみる事にした。彼が人材発堀のために旅に出た事を知ると、女将は褒め、全白は口を挟んだ。


「それで旦那は許昌を目指しているんですな!ならそれは無駄足じゃないかなぁ…」


彼は諭すように楼琬に告げた。全白に他意は無く、あくまでも助け舟のつもりである。


勿論、楼琬も判り合えた後だ、何か事情があると察して素直に耳を傾ける。


地に根付く者の言葉は馬鹿に出来ない。これは彼が道行く旅で学んだ事だった。


「へぇ~それはどういう事だい?詳しく知りたいな♪」


楼琬の姿勢に全白は気を好くした。彼は理由(ワケ)を話す。


「来る道中に話した様に、民はほぼほぼ中央に移住させられ、辺境や田舎の地は移民で(まかな)われています!」


「あぁ…君は確かにそう言ったね?」


楼琬も同意を示す。


「つまりですな、当然の事ながら有能な者は既に取り立てられており、今さら許昌を目指しても無駄足かと!」


成る程…それもひとつの見方だと楼琬は想った。効率性で謂えば、(すこぶ)る悪いには違いない。


けれどもその意見を入れるにはひとつ大きな問題がある。それは「ならばどうする?」という代案の提示であった。


そこまで言うからには、全白も彼を路頭に迷わす事はしまいと、思い切って楼琬は訊ねてみる事にした。


「確かにそうだね!でも僕も若君のお役に立ちたいんだよ。何か別の方法があるなら聞かせてくれないか?」


これは特に楽をしようとか欲しがりから出た言葉ではない。あくまでも現地で行う情報収集の一環であり、参考にする材料の上書きである。


判断するのは彼であり、その前提となる根拠も最新である事が望ましかったのだ。


一方の全白も、軽口を叩くだけが能じゃないのは重々承知の上だった。彼も表面には出さないが、彼なりの覚悟をしていた。


彼は許員を目指すというこの若者が好きになり、後手を踏ませたくなかったのだ。全白は女将に告げた。


「かぁちゃん♪例の物をここへ!旦那に差し上げてくれ♪」


それを聞いた女将はたちまち顔を曇らせる。


「でもあんた!あれは大切な物なんじゃ?」


妻の訴えに夫である全白は清々しい顔で答えた。


「今まではそうだった!でももう必要が無い。かぁちゃんも判るだろ?オレらの救い主は既に目の前に居なさる。それに荊州の若君様は頼りに成ろう。何しろこの旦那を見れば言うに及ばずだ!」


全白には最早、後悔は微塵も無いのだろう。彼は自信満々にそう告げた。


女将もそれを聞いて安堵したのか、「判ったよ♪」と言って木簡を持って戻って来た。


それは全白の手を経て、楼琬に手渡された。彼は訊ねた。


「これは?」


「オレっちはね、旦那♪(いず)れ、ここを離れて余所に移るつもりです!でもその時は身拠りの無い彼らを連れて行きてぇんです。オレらがここを離れたところで、誰も困らない。旦那にはオレっちの夢を話したでしょう?」


全白の問い掛けに楼琬は答えた。


「あぁ…彼らに職を探してやるんだったな!」


「左様で!でもここじゃあ無理だ。だからオレっちは、時たま通り過ぎる旅人に訊ねては、各地に散らばる賢者の居所を記して来たんす!それがこれで♪」


全白は道を示してくれる賢者を探していたらしい。そしてその大切な木簡を役立ててくれと言うのだ。


楼琬は恐れ入ってしまった。


「おぃおぃ…待ってくれ!そんな事を聞いたら貰えないよ♪」


彼は固辞した。けれども全白は頑なに差し出された木簡を突き返す。


「もうこれは旦那のです!好きに使って構わない。けどただとは言いません。オレっちが大切にしていたものを旦那に差し上げたのは、もう目的を達したからです♪」


彼は堂々とそう宣うや、その瞳を楼琬に向けた。


「へっ!まさかとは想うが、この僕かい?」


楼琬は驚く。


そういえば、全白は先程、救世主は目の前に居ると言った。何かの比喩表現かと思いきや、まんまだった事になる。


「旦那は聡明な御方だ。話してると良く判る。それに旦那!あんたは南海の恩人だ♪知力と武力のみならず、その行動力は称賛に値する。今だって遥々この地まで来て居なさる。そしてオレっちの処置の仕方も見事でした♪つまりです!あんた立派な賢者だ♪」


全白はそう言ってニカッと笑った。


彼が初めて見せた悪戯っぽい目付きだった。その時に楼琬の脳裏には、自分の身近に居る悪戯小僧の顔が浮かんだ。


彼は想わず溜め息を漏らす。


若君ならば、頼る者をけして退けまい。楼琬は覚悟を決めた。


否… 覚悟には覚悟で応えるべきだと想ったのである。


彼は木簡を握りしめて突き出すと、「そういう事ならこれは貰うぞ!」と言って、そのまま(ふところ)に収めた。


彼なりの覚悟だった。


全白の顔はみるみる輝く。


「だ、旦那!それじゃあ♪」


「うん♪全白!君の覚悟はしかと受け取った。僕が劉禅君に紹介状を書いてあげよう♪荊州は今はまだ発展途上だが、これから先は中華の中心地として生まれ変わる事だろう!少なくともこの僕はそう信じている。だからこそ後ろを振り返る事なく、前だけを見て進む事が出来るのだ。これがこの僕と若君の絆だと言ったら、君は信じてくれるだろうか?」


楼琬は熱く語り終えた。


「勿論です♪オレっちは旦那を信じた。旦那の信じる若様の事も信じます!」


全白ははっきりとそう答えた。


「あんた!良かったねぇ♪」


女将は長年の夫の夢が叶う事を知り、喜びの余り抱きつく。その目には涙が溢れていた。


全白も女将を優しく抱き締めながら、「有り難う、有り難う…」と言って、その涙を拭ってやる。


楼琬はその光景がとても眩しく感じられて、心の中が温まっていくのを自覚していた。


『喜びを分かち合う人がいる…』


何て素敵な事だろう。彼はその時に素直にそう感じたのだ。




あくる日の朝、楼琬はさっそく行動を開始した。


「お前をこんなに早く手離す事になろうとはな…」


彼は(カゴ)の中で愛らしく鳴く、クリンクリンとした丸い目を見つめた。


「少し出番が来るのが早かったが、宜しく頼むぞ♪」


楼琬はその足首に小さく巻いた文を括り付け、その胸を撫でる。


「クルル…」


彼はまるで楼琬の気持ちを察した様に、(さえず)る。そして次の瞬間、彼は主人の手を離れて、バサッバサッと翼を棚引かせながら、大空に向けて飛び立ち、やがて彼方へと消えた。


楼琬はしばらく見送った後に、早速その事を伝えてやろうと、足早に母屋に帰る。すると女将さんが朝の支度をしていた。


「やぁ〜おはようございます!昨日はご馳走様でした♪おや!ご主人は?」


楼琬はキョロキョロと辺りを見回す。


顔を上げた女将は、恐縮そうに「とんでも無い!」と言って、茶の礼を述べた。


楼琬は却って藪蛇(やぶへび)だったかと、頬を初める。


すると女将は「あぁ!旦那だったね…」と言って、咄嗟に思案しているようだったものの、すぐに決心して彼に告げた


「うちの旦那は貴方には心を開いているようだから、怒らないでしょう♪うちの人は朝、陽が出る前から、それは毎日のように出掛けて行って、亡くなった方々の埋葬をしているのです。それが日課で、もう始めてから随分と経ちます。あの人は私にも優しい人ですが、人が困っていたら放っておけない性分でね、それは貴方もお判りの(はず)…」


そう言って、女将はチラリとこちらを覗く。


「そのようですね…」


楼琬もコクリと頷き返す。彼は顔には出さないが、内心驚いていた。


過疎の中で亡くなったその亡き骸を、実際に彼も道中埋葬して来た。なかなか出来る事では無い。


なぜなら、その数が尋常では無いからだ。人として誰しも気の毒には想う事だろう。その中で心ある者は、せめて埋めてやろうと想うに違いない。


けれども、いみじくも楼琬がそうだったように、その全てを同じように埋葬してやる事など出来ようか。


大勢で取り掛かれば是非も無いが、人ひとりの力など高々知れている。それを毎日欠かす事なく実践している男が居た事に、彼は衝撃を受けたのだ。


『恐れ入った…』


楼琬はこの時、全白の別の一面を見た気がして、益々彼に好意を持った。


「お話は判りました♪そうですか…安心しました!」


楼琬はそう答えた。


「えっ?お客さん、貴方まさか!」


女将は勘良くそう呟いた。


目の前の若者も道中偶然に遭遇して、彼らを埋葬してくれたと想ったのである。


そしてその勘は実際当たっていたが、彼は特に何も言わなかった。替わりに「じゃあ、お待ちします♪」とだけ答えた。


高々、一組の心中した遺骨を埋葬しただけで「はい、そうです!」とも言えまい。そもそもあの行為は、彼の心がさせた善意である。


楼琬には全白が吹聴を嫌った理由(わけ)が判る気がした。




しばらく後に全白は戻って来た。とても晴れやかな顔をしていた。


彼は咄嗟の事で、楼琬の存在を失念していたのだろう。或いは長年苦楽を共にして来た妻に、早く伝えたかったのかも知れない。


彼は開口一番、「かかぁ!喜んでくれ♪逐に満願成就したぞ!」と言った。そして妻を抱き締めた。


女将は「良かったねえ~♪あんた!」と背中を優しく叩いた。


その瞬間に全白は我に返り、「こりゃあ、旦那…どうも!」とバツの悪そうな顔をする。楼琬と目が合ったのだ。


「そうか…それは良かった♪きっと御霊も成仏する事だろう!」


彼はそう言って、全白の善行を称えた。咄嗟に彼は女将を見つめる。


「あんた、ごめんよ!私が話したの…」


女将は夫に謝った。すると全白は被りを振った。


「否…旦那なら良いんだ!それにオレっちも嬉しくてな♪ついつい口に出しちまった!」


全白はそう言って妻を責めなかった。そしてふと気づいた様に楼琬に訊ねた。


「今朝は端の村まで行って来ました。あの心中した夫婦を埋葬してくれたのは、やはり貴方でしたか!彼らに代わって礼を申します♪」


「否…人として当たり前の事をしただけです。目に入ったからには何とかしてやりたかった。せめてもの償いです。本来ならば、あぁ成る前に何とかしなくては!これは為政者の責任ですからね?」


楼琬は暗に魏王を非難している。けれどもそれは仕方無かった。


為政者の責任は国を正しく導く事であり、民を守り、その道を示す事にあるからだ。


全白もいみじくも「そうですな…」と言った。そしてこうも付け加えた。


「償いですが…でも人には出来る事と出来ない事があり、肩肘を張らずにやれる事から片づけて行かなければ為りません。ですから、どうか旦那も思い詰めないで下せぇ~♪」


全白は彼なりに楼琬を気遣う。楼琬も頷き、同意を示した。


「そうだな!そう在るべきだろう。でもな、全白!生憎(あいにく)とこの僕もうちの若君も欲張りでね、全力を尽くすのみだ。それに我らはけして不可能だとは想っていない。手の届く物には必ず手を差し延べる。それが僕らの誓いなのさ!そうだ、君に朗報だ。既に若君に文を送った。いずれ近いうちに返事が在ろう♪」


楼琬はそう言って微笑んだ。

【次回】[番外編]楼琬の旅路④信頼

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