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ピュティアスとダモン

若君も田穂もアダムの出で立ちに固まって居る。余りにも想像を絶する変わりように我を忘れて眺めていた。


するとアダムは突如構えて突進する。そして若君が日頃鍛練に使っていた大木に体当たりしてそれを薙ぎ倒してしまった。


北斗ちゃんは両頬を抑えながら目が点になってしまった。田穂もその迫力に唖然としている。


「ネッ♪(ღº ㅿºღ๑)(スゴ)いっしょ?本来(ホンライ)はこの(ヤリ)一斉(イッセイ)()くね♪それで相手(アイテ)はお(シマ)いよ!」


アダムはそう言ってケラケラと笑った。


迫り来る敵兵をひと固まりの集団となって盾で塞ぎつつ、その長い柄の槍で盾の隙間から一斉に突くのである。


そして肉弾戦になれば、今まさにアダムが演じて見せたように集団タックルを相手にぶちかます。


想像しただけでも実際に阿鼻叫喚の絵図が脳裏に描けるから恐ろしい。北斗ちゃんは心蔵が凍る想いがした。


「じゃあ、ღ(º ㅿº๑)ღ 一丁(イッチョウ)やるかい?」


そこに畳み掛ける様にアダムが声を掛けて来る。北斗ちゃんは驚き、呆れた。冗談じゃあ無い。


「おぃおぃ…ღ(°ᗜ°٥ღ)ちょっと待ってくれ♪そんな鉄の塊で突進された日には軽い僕なんざ吹っ飛ぶぞ!あの大木を見ろ?どんなに頑張ってもあんな大木、僕なら抱き止められるのがオチさ!それを君は幾ら鉄を被って居ようともその力で薙ぎ倒したんだぜ?爺ぃ~や叔父貴、子龍くらいならやれるかもだが、僕は無理だ。当たられただけで、遥か彼方へ飛んで行く事だろうさ!冗談じゃあ無い。勘弁してくれ♪」


若君はいつに無く捲し立て、拒絶した。


彼がこんなにはっきりと拒否るのも珍しい。それだけ規格外の力量を見せつけられたのである。


「アラッ!(ღº ㅿº*๑)…そう?」


アダムは意識が欠如している訳では無いだろうが、然も残念そうにそう宣う。そしてニコやかに笑いながら振り向くと、今度は田穂に声を掛けた。


「じゃあ、⁽⁽ღ(*º ㅿº*๑)デンホやろうよ♪」


これには田穂もいつに無く焦る。気持ちは全くと言って良い程に若君と同じだから、彼もその言葉には腰が引けた。


けれどもチラッと眺めた若君の瞳はキラキラと光輝き、期待の眼差しに見える。田穂は急に目の前が真っ暗になり、目眩(めまい)がして来た。


『ゲッ!(*`‥´٥)…ったく、人事だと想って勘弁しておくんなさい…』


田穂はとっとと逃げた上に、せっせと砂上の楼閣を築いて逃げ道を塞ぐ、悪戯小憎を想像して萎えた。


こうなると、どうにかしてこの鉄の騎士をうっちゃらないと仕方無い。彼は必死で考えた。


『待てよ!(ღ`⌓´*).。oO うっちゃる?これだ!』


そう想った田穂は何を考えているのか、急に座り込み、足首の辺りをまさぐり始めた。するとカチャッという音がして何かが外れる音がする。


それは鉄の板を布に縫い込んだ物だった。彼はもう片方の足からも重りを 外した。


田穂は何と足首に重りを巻いたまま、ずっと付き従っていたのである。


「へぇ~♪(๑•̀ з •́๑)そんなズッこい事してたんだ!」


不意に真上から声が降って来ると想ったら、いつの間にか若君が擦り寄って来て、彼の肩口から覗き込んでいる。


『いつの間に…(ღ`⌓´٥)⁾⁾』


田穂は泡を食う。いつもながら見事な接近である。


彼はあの日以来、どんなに頑張っても若君の接近には対処しかねた。それだけ若君の擦り寄りが静かで早かったのだ。


「なっ、何がズッこいんです?ღ(٥`ー´ )⁾⁾ あっしは何も(やま)しい事はしておりませんが!」


田穂は慌ててそう答える。彼は慌てると思考回路に支障を来たすから、言った後でも考えてみた。


けれども特に思い当たる節は無い。彼がやおら安堵の溜め息を漏らしたところで若君は指摘した。


「どの口が言う?君は今まで僕との勝負を舐めて懸かっていたんだろう!こんなにご大層な重りをつけて♪僕に対するハンデだと想ってたところが気に食わん!大はしゃぎしていた僕がまるで馬鹿みたいじゃ無いか?あ~あっ、全く!小っ恥ずかしいったら無い…(。-ˇ_ˇ-。)」


若君はそう自戒した。


何しろ70連勝だとか、また僕の勝ちとか、勝ち誇り捲っていたのだから、そりゃあ恥ずかしいだろう。


けれどもそれは田穂の責任では無い。そもそもこれは勝負事では無く、若君の健康を維持するための鍛練である。


それにわざわざ付き合った挙句に、ズル呼ばわりされたら堪らない。


でも彼の務めは、若君のやる気を削ぐ事じゃなく、むしろやる気を引き出す事にあったから、彼は素直に謝った。


いつの時代も勤め人は辛い立場なのである。


「いゃはゃ…Σ(٥`⌓´ღ٥)すみません!そんなつもりじゃ無かったんす♪あっしは日頃から有事の際を想定して、足腰を鍛えております。でなければ、緊急の際にものの役には立ちません。実際、若を魏の陣営に救いに行った時には、この枷を外していたのです。さすがのあっしでも、コレを付けたままでは想う様に動けませんからね!それだけ魏の陣内を闊歩するのは容易な事では在りません。若い者たちもどんどん育って来てますし、あっしも負けていられませんから、自分を改めて鍛え直すつもりで若君に付き合っていたのです!お気持ちを損ねたなら謝ります。でもあっしはこのハンデを付けたまま若君に追いつけなければ、貴方を守れないくらいの覚悟でやっております。どうかその辺りを考慮して、収めて下せぇ~!」


そう田穂は想ったままを口にした。元々、そんなご大層な(かわ)し方は心得ていない。


この言葉にはさすがの若君も絶句した。聞いてみたら、成る程と想わずには居られない。


そして自分の不用意な発言に自ら自爆する破目になった。これこそ恥ずかしいったら無かった。


若君が謝ろうとした時にふと見ると、いつの間にかアダムが足枷を拾って持ち上げ、フンフンと興味深げに見つめている。


「コリャ(スゴ)いね!ꉂꉂ(ღº ㅿºღ๑)ヨクこんなん()けとるね?」


彼はそう言って足枷を差し出す。


反射的にそれを受け取った北斗ちゃんはその重さに驚く。


「田穂!(٥ •ᗜ•)⁾⁾ お前こんなの付けていつも行動してるのか?いやぁ、恐れ入った♪僕の負けだ!考え違いも甚だしかった。本当にすまん…」


若君は素直に謝る。


すると田穂は、少し照れた様に言葉を返した。


「判ってくれれば良いのです♪それより今から面白いものをお見せします。(ღ`ェ´*)⁾⁾ うまく行けば、無敵のファランクスをキリキリ舞い出来るかも?」


田穂はやる気を(みなぎ)らせた。


「それは本当かい?✧ ⁽⁽(•̀ᗜ •́๑)」


若君も途端に晴れやかな顔を見せる。


「まぁこっちは今ので手の内を見せたようなもんですけど、それはアダム殿も一緒です♪何とかなると想いますよ!(*`ᗜ´٥)੭」


田穂のその言葉にアダムも笑顔を見せる。


面白(オモシロ)くなったね♪✧(ღº ㅿº๑)じゃあ、やろう!」


そう言って二人は対峠した。辺りは静まりかえり、若君も息を飲む。


次の瞬間、アダムは突進しながら槍を突き出す。ファランクスの必殺技である。


それは一瞬、田穂を貫いたかに見えたが、それは幻影で彼は既にそこには居なかった。


いつの間にか彼は弧を描くようにかっ飛び、アダムの背後を盗ると、その首筋に刀剣を噛ませた。


アダムは兜のズレで目の前が見えなくなり、躍起となって突進するも、田穂に(かわ)され続けた。仕方無くアダムは白旗を掲げた。


(マイ)ったねぇ~♪=͟͟͞͞(ღº ㅿº٥๑)やっぱりファランクスは集団(シュウダン)でこその威力(イリョク)ね!」


アダムはそう言い切った。


これは何も負け惜しみでは無く、実際そうなのだろう。人が充満している戦場で、果たして個人戦の如き対し方が可能かどうかはとても疑しかった。


けれども田穂は有言実行をしてみせた。彼には彼の矜持があった。


そう…衛尉として若君を守る立場の彼には、負けるという選択技は選べない事情があったのである。


それでも田穂は勝ち誇りはしなかった。むしろこの結果を妥当だと認識していた。


彼の立場からすれば、躱しただけでも勝ちは勝ちだが、真険勝負の観点から考えれば、彼を打ち負かした訳じゃ無い。


それに槍の切っ先はスレスレをビュッビュッと擦り抜けて行き、戦っている間、正直生きた心地はしなかった。


田穂はアダムを認めていた。否…認めざる逐えないと言うべきだった。


只の医者だという見方は当に無かった。それに戦って判った事もある。


彼の足腰はどちらかというと、肉弾戦に堪え忍んで押し返すために鍛え上げられたもので、踏ん張りと槍を突き出す瞬発力に特価したものなのだ。


だからその反射的な動きたるや、田穂すら凌ぎかねないが、それはあくまでもその一瞬だけの(きら)めきであり、短距離走ならまだしも、中長距離で若君や田穂に追いつけるものでは無かったのである。


それでもあれだけの速度で完走するのはある意味、脅威な事なのだ。田穂はようやくその身を体した事で、アダムに感じていた凄みの源を知った気がしていた。


若君はアダムの突進する迫力と槍さばきの凄みに感じ入り、田穂の鮮やかな本領発揮に酔い痴れて、二人の真険勝負を拍手で称えた。


そしてどんなに大柄な人間にも必ず弱点はあるのだと認識する事となった。




「ほぉ〜♪ꉂꉂ(*^. ^ *)アダム殿は戦士でも在られるか?それは凄い!」


剣の修業が終わり、宴が始まると趙広は感心したようにそう述べた。


「今は医者(イシャ)ね!ꉂꉂ(º ㅿº๑)でも(イマ)()らしは若君(ワカギミ)のお(カゲ)よ♪それを(マモ)るためなら、(タタカ)うね!」


アダムは躊躇(ちゅうちょ)なくそう言った。


「そりゃあ、助かる!(* ^ .^*)੭ 我らも気持ちは同じです♪その時は一緒に、若君を守りましょうね!」


趙広は若者らしく爽やかに答える。


北斗ちゃんはというと、脇目も振らずに食卓に噛じり付いており、どちらかというと現在は戦力外である。おそらく彼らの言葉は都合良く遮断され、彼の耳には届いていないだろう。


彼にとっては(うたげ)だろうが何だろうが、(こと)、食事の時間に関して言えば、人と戯れる時間に在らず、食と直向きに向き合う時間なのである。


彼に言わせれば、米だって野菜だって育てるのに時もかかるし、人手も居る。無事に育つかどうかだって、天候に左右されるのだ。


手間暇をかけてようやく収穫を得た喜びは、美味しく食す事でしか返せない。大地の恵みを冒涜(ぼうとく)する無かれなのである。


「ほぉ~こりは何とも間の抜けた顔をしていなさる!( ๑˙﹃˙๑)✧けれども身は美味いねぇ~♪これは何かしら?」


若君がそう訊ねると、大抵は即座に田穂が答える。彼は長年、中華全土を放浪して来たから、その時々で生きるためには色々な物を食して来た。


だから逆に言えば知らぬ物が無い程、知っていたのだ。田穂は矢継早に即答していく。


「若!それは(ナマズ)です。(`ー´ღ*)お(ひげ)(はえ)えておりましょう。とても滋養(じよう)が有り、健康に(よろ)しい♪」


「ふ~ん!そうか♪おやゃ…これは元の形が判らないが、かなり美味だ!たまらんぞ♪(❛ ڡ ❛´๑)」


「若!そちらは(うなぎ)です!ꉂꉂ(`ㅂ´ღ*)とても精が付き、身体に宜しい♪」


「どんな形をしておる?(•́⌓•́๑)✧」


「う~ん…(ღ`⌓´*)✧そうですな!細長く蛇を小柄にしたくらいの大きさで、黒く(ツヤ)があり、表面はヌルヌルしてますな!」


「マジでぇ~Σ( ꒪﹃ ꒪)それ大丈夫なんかい?」


「大丈夫ですよ!(ღ`⌓´٥)⁾⁾ だって美味いでしょう♪嫌ならあっしが頂戴(ちょうだい)しますが?」


「ならん!ならん!(๑‾᷅罒‾᷄๑)੭ コレは僕のだ!お前のは…何だ、もう食ってるじゃん♪人の食い物にまで手を付けようとは、いじ汚い!(まか)り成らんぞ♪」


若君にかかると、食物の恨みにまで話が発展しかねない。いつの間にか田穂は食い意地が悪い事にされてしまう。


二人はこんな具合に、夫婦(めおと)漫才に興じている風情(ふぜい)(かも)し出す。


アダムは横目でチラッチラッと見ていて、面白いのでついついそちらに意識が向く。


すると趙広もクスリと笑い、「満足頂き、用意した甲斐がありました♪(* ^ .^*)੭⁾⁾」と 言って、結局いつもの様に美味しくパクつく若君の食事を、皆が感心しながら見守る構図が出来上がった。


ひと通り、皆の腹が満たされると、北斗ちゃんは切り出す。


「アダム!ここは良いところだろう?森ノ宮城はこの趙広の父・趙雲が、自然の森を要害として造り上げた天然要塞だ。昔はそれでも掘っ立て小屋みたいな物しか無くてな、雨露も凌げず大変だった。そして住人も皆、兵ばかりだったものだが、今やこんなに立派な砦となった。それはこの趙広の若い感性(センス)の賜物だ!そして周囲の農民や漁師、大工や職人なども自然と(つど)って来て、小じんまりとはしているものの、雨風も凌げる過ごしやすい場所となった。僕にとってもここは荊州に来たばかりの時の想い出の場所だ。 体力作りだけでなく、こんな豪勢な馳走にまで預かれるとは、あの頃は想像もしていなかった。嬉しい事だな!(๑‾᷅⚰‾᷄๑)੭」


そう言って笑った。


アダムはこの若君がその手腕を発揮して、ここまでの発展を逐げた事に驚くと同事に、尊敬の念を抱いている。


だからここに移住して来て良かったと心底想っていて、いつかこの恩を返したいと願っていた。今日、再びこの若君の成果の一端に触れて、彼は益々その心を強くしていた。


今、彼が出来る事は河川事業に始まった荊州の街造りに寄与する以外に無い。


若君に言わせれば、本来それで十分なのだが、恩義に厚いアダムの様な男にとっては、またそれは別の話なのであった。


『いつか必ず報いる…(ღº ㅿº٥๑)』


彼は改めてそう決意した。


今の彼には、たまに船で到着する昔の仲間から得られた書物を、差し上げるくらいしか出来ないが、それでも若君はとても喜んでくれる。


だからこそ、彼にとってもそれは嬉しい出来事だったのである。彼はふと想い出したように話題を転ずる。


若君(ワカギミ)!ღ(º ㅿº*๑)コレ(アタラ)しい書物(ショモツ)ね♪()けてみてよ!きっと()()るね♪」


アダムは分厚い書物を差し出す。


「へぇ~こりゃあ凄いね!(๑´❛ ᗜ ❛)੭ 地図があるぞ♪」


北斗ちゃんはそれだけでも十分興味を引いて、悦に入る。


「コレが(ワタシ)(クニ)ね!ꉂꉂღ(º ㅿº*๑)それでココが中華(チュウカ)よ♪」


北斗ちゃんは自分の住んでいるところが意外にも大きい事に驚くと同時に、アダムの住むところがとても遠い事に関心を持った。


海に出るまでには相当、苦労したに相違なく、彼は改めてアダムや他の人々の胆力に敬意を示した。


「有り難う♪ε٩ (๑•̀ •́๑)۶з こんなに遠くから来てくれたんだね?君たちに改めて感謝するよ!」


若君がそう述べると、アダムは被りを振る。


「いゃ…ღ(º ㅿº٥๑)(ワタシ)たちはより(ドコロ)()かった。それを()()れてくれた。それだけでも感謝(カンシャ)一杯(イッパイ)よ♪」


アダムはそう言って礼を述べた。


田穂も若君の肩口から覗き込んでみる。成る程…これが地図というものかくらいのあやふやな感想である。


彼らが日頃、目にする地図など、せいぜい見飽きた程度に簡単なひと筆書きだが、これはしっかりと書かれていて、しかも良く見方が判らない。


「田穂!✧ ⁽⁽(•̀ •́๑)(๑•̀ •́)⁾⁾ و✧これがアダムの住んでたとこで、ここが僕らの地だ♪」


若君に再度そう言われても、とっつきが悪く認識出来ない。これは別に彼が(すこぶ)る頭が悪い訳でも、勘が(にぶ)い訳でも無く、当時としては当たり前の感覚なのである。


むしろ陸地と海の境を認識出来て、海洋航路を見極める事が可能な若君やアダムの方が、却って可笑しいとも謂えた。


おそらく海洋地図のみならず大陸地図すらまともに見た事がある人が何人いたかといったところだろう。つまりこの書物は、当時としては門外不出の高価な代物だったと謂える。


「あっ!やっぱりだ♪Σ(˶‾᷄﹃‾᷅˵)これはピュタゴラス教団の秘伝の書だね?こんなもんを良いのかい!」


北斗ちゃんはびっくりしてそう訊ねた。


するとアダムは「えぇ!勿論♪価置あるものは、その価置が判る人の許に帰するべきね!コレ(イニシエ)よりの(コトワリ) ね♪ꉂꉂ(º ㅿº๑)」と言った。


それを聞いた北斗ちゃんは緊張気味に、「どうだろうね?僕は人が言う程、自信がある訳じゃ無いんだ!でも皆を幸せにしたいとは想ってる♪それだけが取柄の男さ!✧(๐•̆ ᗜ •̆๐)」と返した。


田穂も趙広もそのやり取りを見ていて、その分厚い本がそんなに重要なものだったのかと驚く。


確かに見た事も無い地図が記されているのだから、そうかも知れないが、後は見た目にも蛇が這っているような文字の羅列だから、判断は付く訳が無かった。


ところが彼らの目の前でその書物の一節を若君が(そら)んじてみせたから、彼らはもっと仰天した。そしてアダムに(ささや)くように指摘したのだ。


「コレさぁ…⁽⁽ღ( • ᗜ •*ღ)例のピュティアスとダモンの物語だよね?」


「ウン?ハイ!⁽⁽(º ㅿº๑)そうです♪コイツはいわば教義(キョウギ)のようなもんね!だいたい()ってるね♪」


「そうか…(٥ •'ー'•)⁾⁾ 何度も取り上げられるなんて、お忙しい事だねぇ~♪」


北斗ちゃんも冗談混じりにそう言った。するとふと想い出したように、田穂が反応を示す。


「あのぅ…(ღ٥`ᗜ´)੭ 確か若は田豫殿の件の折りに、彼をピュティアス、洪赤をダモンと呼んどりましたが、そりゃあいったい何なんです?」


それを聞いた若君は、突然ニッコリ笑って答えた。


「へぇ~いいよ!ꉂꉂ(⁎⁍̴̀﹃⁍̴́⁎)とっても良い♪最近の田穂は貪欲(どんよく)だね?でも良く憶えていたな!」


そう田穂を褒めた。


田穂は少々照れているが、どうやら答えを知りたくて待っているので、北斗ちゃんは説明する事にした。


「"ピュティアスとダモン"というのは、以前アダムから貰った本に乗っていた物語だ。元々は潘濬に対して、僕が横文字を読み、理解している事を証明するための試みだったんだ!だから僕はたまたまこの一節を読み、彼にその内容を説明する事になったんだよ♪案の定、潘濬は目を見張って絶句していた。(そら)んじてみせた段階で、彼は既に信じていたらしいけどね!皆は意識した事は無いだろうが、言葉には抑揚と発音が不可欠で、それを修得するのが大変だった。じゃないと全く違った意味になってしまう事もあるんだ♪我々の言葉だってそうなんだぜ!なっ、アダム?(๑`•᎔•๑)σ」


「ウン!そうね♪⁽⁽(º ㅿº๑)ここの言葉(コトバ)発音難(ハチオンムツカ)しいね!若君(ワカギミ)(スゴ)上手(ジョウズ)ね♪素晴(スッパ)らしいね!」


アダムに褒められ、若君は照れる。


「そうかなぁ〜♪ꉂꉂ(°ᗜ°٥)まぁでも現地の人が言うんだから、そうかもな!」


言葉には出さないが、北斗ちゃんの顔が物を言う。彼は誇らしげであり、鼻高である。


田穂は『やれやれ…(〃`⌓´٥)=3』と想いながらも、忘れられないうちに再びせがんだ。


「それで…(*`⌓´٥)੭ いったいどういった物語なんすか?あっしらにも教えて下せぇよ♪」


田穂のその言葉に、我に返った若君は苦笑いしながら頷く。


「うん!⁽⁽(•̀ᗜ •́๑)じゃあ、まぁひと通り話してあげよう♪」


まだそこにはほんのちょっぴり鼻高君が残っていたが、彼はおもむろに話し始めた。皆もじっと耳を傾けた。




ピュティアスとダモンはピタゴラス教団の信徒だった。その頃、彼らの住む一帯を治めるディオニュシオスは傲慢な男で、専制政治を行い、恐怖で民を支配する男だった。


そして汚職にまみれるという、およそ良いところの無い人物だったから、心が清く直言を厭わないピュティアスを憎んでおり、罠に嵌め、突然、獄に下した。


やがて彼は処刑される事になったが、故郷に家族を残して来ていたので、身辺整理のために帰郷を願い出た。


その時に彼の(しち)として残ったのが、教団の友人であるダモンである。ピュティアスは必ず戻ると約束を交した。


やがて処刑の日は刻々と近づいて来るが、ピュティアスは未だ戻らない。このままでは身替わりで残ったダモンが処刑されてしまう。


彼は刻々と近づく期限に心を痛めたが、それでも友であるピュティアスを信じた。そして遂にその日がやって来ると、皆もうピュティアスは戻らないと諦めていた。


ダモンは処刑を覚悟した。ところがピュティアスはあと寸前というところで姿を現わし、二人は抱き合って涙ながらに言葉を交わす。


「間に合って良かった!すまなかった…」


「いゃ、戻ると信じていたよ!」


そんな二人の姿を見て、涙しない者は居なかった。


元凶のディオニュシオスすら感動してしまい、自分も仲間に入れて来れと頼んだ程である。勿論、これは即座に却下された。


ピュタゴラス教団の信徒の絆は強いという喩え話である。


おしまい、おしまい。




北斗ちゃんはそう締め括り、いつも通り「判った?(๑•̀ ᗜ•́)⁾⁾」と言った。


「えっ?Σ(ღ`⌓´٥)それで(しま)いですかい!ピュティアスはどうなったんで?」


田穂は慌ててそう訊ねる。


すると若君は溜め息混じりにこう伝えた。その表情は至って(ひょうひょう)々としていた。


「どうって言われてもな…(ღ❛ ⌓ ❛´٥)はっきりとは書いていないんだ!生死はこの際は重要で無いって事さ♪これはピュタゴラス教団の絆はそれだけ深いって事だな!」


若君はケロッとしてそう宣う。


田穂は不服を申し立てる。


「:;((`罒 ´٥ ))));: 何か尻切れ蜻蛉(トンボ)で気持ち悪いですな…」


するとアダムが補完(フォロー)した。


(ワカ)()(トオ)りね!ꉂꉂ(º ㅿº๑)コレは教団(キョウダン)教義(キョウギ)だからさ♪(キヅナ)(スベ)てなのよ!それに輪廻転生(リンネテンセイ)(ジク)とした思想(シソウ)だから、むしろ信念(シンネン)(モト)づく()(ホマ)れとさえ()られてるね♪そういう教団(キョウダン)なのよ!」


「そういう事だな!⁽⁽ღ( •̀ ᗜ •́ *)僕は絆は尊いから、この喩えを使ったまでさ♪でも信念に殉じるというところは好きじゃない!そんな事で命を賭けてはいけないんだ♪僕は今でもそう想ってるけどな!」


「そうです!そうです!⁽⁽(º ㅿº๑)その(トオ)り♪」


アダムも同意を示す。


田穂はまだピュティアスの結末を気にしていたが、喩え話であろうと無かろうと、書物に記されている段階で既に過去の事だから、割り切る事にした。


そしてふと彼なりの想いを巡らせていた。


『若が命を尊ぶ人だから、田豫も洪赤も他の者たちも命を拾ったのだ!(ღ`⌓´*).。oO そして法は法と筋も通した。あっしはそんな御方にお仕え出来て、幸せな事だな!ピュティアスとダモンに(さち)有れだ♪』


田穂はそう想いようやく矛を収めた。


当の若君はもう忘れてしまったかの様に、既に他の話題に花を咲かせている。それに乗じて、皆の笑い声がこだまして来た。


こうして森ノ宮城はひとときの安らぎに包まれる。

【次回】叡知の先

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