禍を転じて福と為す
「やぁ~良くやったね♪(๑*´° ᗜ °๑)੭ ੈ✧田穂お手柄だったな!」
復命した田穂は一番に若君に褒められた。
「それに桓鮮もよくぞ満寵を出向かせた♪これもお手柄だ!⁽⁽ღ(◕ 0 ◕*)」
山高のとんがり帽子も顔を綻ばせる。皆、褒められれば嬉しい。
二人は満面の笑みで復唱する。その声には張りがあり、達成した満足感に溢れていた。
「それで…(๑´❛ ᗜ ❛)੭張嶷は予定通り、休暇に出掛けたのかい?」
「えぇ…(ღ`⌓´٥)⁾⁾ そらぁもう♪事が終わるや一目散に出掛けましたな!脇目もふらずとはアレの事を謂うのでしょう♪」
田穂は半ば呆れる様にそう答えた。桓鮮も同意する様に頷く。
北斗ちゃんはケラケラと大いに笑ってから張嶷を擁護した。
「クックック…๐·°(৹˃̵ᗜ˂̵৹)°·๐ 仕方無いんだ♪彼には休みが必要だからね!」
そう言われて田穂は疑問を呈した。然も当たり前の様に言う若君の言葉に違和感を覚えたからだ。
元々、田穂には物事をハッキリさせないと気が済まないところがあるが、最近の彼はとみにそれが激しい。
それはまるで自分に足りない知識をガムシャラに吸収しようとするきらいさえ在った。
北斗ちゃんは多少、面倒臭いという意味では張嶷と同様の気持ちはあるものの、これは田穂の成長の証と捉えていたから、彼よりは理解があった。だからすぐに答えた。
「君たちも知っての通り、潘濬の義兄である蒋琬が今、代理城主としての最終関門に居る。張嶷は優しさとマメさがある。だから居られると正しい判断の邪魔になる。これがまずひとつ。そして一番の理由は彼がまるで僕の様にじっとしていられない性格だからさ♪(•́⌓•́๑)✧」
北斗ちゃんはそう言ってクスクスと笑う。何か思い出した様な含み笑いだ。
「…と言いますと?ღ(٥`ー´ )⁾⁾」
田穂は反射的にまた聞き返す。
話し手にとって、これほど楽な相手はいない。適度に合いの手を入れてくれるから話の腰は折らないし、流暢になる。
元々、北斗ちゃんも話好きだから、二人はとても相性の良い組合わせと謂えた。そこいらも張嶷と異なる点だろう。
「うんとね!僕を見て来た君なら判ると思うけど、彼に遊びは無いんだ。唯一それらしいのが彼の愛好する狩りなんだが、彼にとってはそれすらも実践で己を磨く一貫なのさ!君は僕が蛇のような横文字を趣味の一貫で解読して遊んでいるのを知っているだろう?まぁそれと同じと言えば、言い得て妙かな♪判った?(๑‾᷅⚰‾᷄๑)੭」
北斗ちゃんの含み笑いは、どうやらそこいらに在るらしい。田穂はそんな人種がまだ居たかと、呆れた様に頬を緩めた。
桓鮮も人でなしを眺める様に苦笑いしている。田穂は何やら気がついたらしく、「ハハ~ン!」と宣う。
「やはりアレっすかね?ꉂꉂ(`ㅂ´ღ*)張嶷殿は確か第三の提督を目指しているのでしょう♪海軍府ではそんな話でしたな!あん人は費観殿を手本としていて、ガムシャラに追い掛けてます♪そのせいもあるかと!」
「へぇ~田穂もやるじゃん!君も最近、目の付け所が良いねぇ♪感心!感心!Σ(,,ºΔº,,*)」
北斗ちゃんは少しびっくりした様に頷き、田穂を褒めた。田穂は照れている。
元々、張嶷の感性は自然とのやり取りの中から育まれたものであり、その鋭さは費観と共通するものは在っても、その思考過程や方法は異なる。
自然の厳しさや野生動物との関わりから得た独自の手法は、彼の独自性の表れであり、他者のそれとは一線を画した。
だからこそ若君は、それが単なる遊びでは無いと言っているのだ。そして他者と同じ轍を踏まない彼のやり方は、将来的に飛躍する可能性すら示唆していた。
前向きで貪欲な彼の姿勢はだんだんと芽吹きつつある。それを理解し、根を詰めぬ様に休みを与えて豊かな感性をより育めるよう導いてやる事も主人としての務めだった。
そしてこれは期待の表れでもあるのだ。田穂は凄いと思った。
でも彼は不思議と羨む事は無かった。以前の彼ならおそらくそう短絡的に感じるだけだったに違いない。
けれども今回の事でより一段、成長を果たした彼は、凄いと思うと同時に自分なりの独自手法こそが大事という事が身に沁みて判ったのだ。
若君には若君の、張嶷には張嶷の、満寵には彼なりの独自のやり方がある。それを垣間見て来て、田穂はようやく若君の言わんとしていた事に辿り着く。
『自分なりの生き方を探せ♪』そういう事を若君は彼に伝えたかったのだ。だから口を酸っぱくして言い続けてくれたのである。
そしてその可能性を切り開くために、若君は彼を信じて今回、大役に抜擢してくれたのだった。
田穂は若君を見つめ、感謝する様に頷く。
「あっしも少しだけ判った様な気がしやす♪若に感謝せねば為りませんな!(*`ᗜ´٥)੭ ੈ」
田穂の言葉に北斗ちゃんも晴れやかな表情を見せる。この一言で彼には判ったのだ。
『✧(*❛ ⌓ ❛´*)ようやく端緒に立つ事が出来たんだ…』
若君はすぐにそう理解した。そして田穂の成長の一端を見たと、如実に感じたのである。
但し、ここからが大変なのだとも同時に感じていた。北斗ちゃんも田穂を見つめた。
『焦らなくていい…(๑•́⌓•́).。oO 温かく見守るとしよう♪』
北斗ちゃんはそう想い、会釈を返すに止めた。言葉はいらないのだ。
本人が自覚したなら、説教じみた称賛は却って邪魔になる。彼は只一言、「⁽⁽(•́⌓•́๑)それは良かった!」とだけ言った。
田穂はその時、ふと感じて、戸惑う事無く進言する。躊躇いの無いその言葉は、最近の彼の十八番だった。
「あっしは今ふと想ったんすが、張嶷殿はやり方は違っても、若君のような忙しい毎日を送っているんすよね?(*`⌓´ღ*)」
「うん♪(๑•̀ᗜ •́)⁾⁾ その通り!」
「でもあの人は病にすら成っちゃいないのに、若君はどうして成るんすかね?ღ(٥`ー´ )⁾⁾」
この一言は北斗ちゃんを驚かせる。彼にも田穂の言わんとしている事が判ったからだった。
「でも張嶷は元々、名家の家系じゃ無く、貧しい身の上から這い上がって来た努力家だ!少しくらいの事じゃ音を上げないだろう。でも僕は在る時までは堕落した生活を送って来た過去がある。その違いじゃないかと想うぞ!✧(❛ ࡇ ❛´٥๑)」
堂々と宣うには少し辛いものはあったが、若君はそう推論した。けれども田穂は諦めない。持ち前の粘り腰を見せた。
「そらぁあっしも聞いてますが、でもそれはあくまで過去の事です。今は似た様な繁忙な日々を送っているのですから、現状で比較するのが妥当っす♪違いは何だと思いますか?(ღ`⌓´٥)⁾⁾」
田穂の言葉に、若君は廖化の弛まぬ努力を思い出す。一心に岩を叩く小刻みな音…それが岩をも打ち砕く瞬間を見た時の衝撃は今でも覚えていた。彼はハッとした。
『必ず適度な運動をする事!(*ㆁ ωㆁ)੭』
彼は老師に言われた忠告を覚えていたのに、実行はしていなかった。瞑想する事は欠かさぬものの、確かに身体は動かしていない。
その替わり、せかせかと走り廻っているので不要だと思い込んでいたのだ。彼はようやく腑に落ちた心持ちになった。
自然に親しみ、心身を癒す。太陽の光を一身に浴びて、汗を流し、身体を鍛える。
そんな当たり前のような事が、忙しい彼には出来ていなかった事になる。
それに引き替え、張嶷は城主として軍を鍛える日々を送り、狩りに出れば森林浴にも自然と当たっている事になるのだ。
同じ忙しさでも、頭の中で情報整理にばかり当たり、たまの遊びも目や頭を使う若君とは、根本的な忙しさの中身が違ったのだ。
彼は目に鱗の想いだった。田穂の指摘と粘り腰が無ければ、到達しなかった事だろう。
そしてその田穂に粘り腰を与えたのは若君自身だった。その相乗効果が引き出した成果と謂えた。
北斗ちゃんは突如、ニンマリと笑った。そして田穂の手を取る。
「田穂!判った♪君のお陰だぞ!僕は忙しさの余り、身体を休める事にのみ気持ちが行き過ぎていた。そうじゃないんだ!僕はまだまだ若いんだから、身体を鍛えなきゃいけなかったんだ♪そして時には自然の中に身を置く事もしなきゃね!僕は子龍に鍛えられ、減量をしている内は、身体を絶えず鍛えていた。だから健康を維持出来ていたのに、痩せた後は食事制限以外には日々追われる生活を余儀無くされていた。要は身体が鈍り、心を蝕んでいたんだな!よくぞそこに気づかせてくれた♪おそらく僕はもう大丈夫だ!ε٩ (๑•̀ •́๑)۶з」
若君が両手を掴んで振り回すものだから、田穂は泡を食った。でも北斗ちゃんの満面の笑みは、彼の心を晴れやかにさせた。
『言って良かった…(*`⌓´*)』
彼はそう想い、自信を得た。
『自分でも若君のお役に立つ…』
彼はそう想えた自分に満足出来た。
そんな事を想わずとも、彼は日頃からよく励み、若君を守っているのだから、十分に役に立っているのだ。
けれども奥ゆかしいというよりは、それが彼の仕事だから、本人としては当たり前に感じていて、その実感に欠けたのだろう。
田穂がびっくりしているので、その気持ちは若君にも如実に伝わった。北斗ちゃんは田穂の存在をより有り難く感じていた。
田穂もようやく笑顔を見せた。ニンマリと笑う表情は、互いの感謝を表していた。
桓鮮も喜びながら、自分も自分の独自性を高めようと心に決めた。少々、可笑しな事になったが、山高のとんがり帽子もニンマリと笑った。
さて、北斗ちゃんは有言実行の人である。翌日からさっそく実行に移す。
彼はまず趙雲の造り上げた森の宮城に目を付けた。ここなら馬で飛ばしても然程の時間も懸からない。
森の中だから当然、森林浴にもなり、その場所の一角にある修業場を使えば、剣の修業にもなる。
彼はひとまず午前の公務を終えると、早めの昼食を取り、連日、田穂を連れ立っての往復の馬駆け、森林浴をしなからの瞑想の後、修業場での剣術の稽古を共に行うようにした。
当然、日々身体を動かす事で汗も大量に掻く。日光にも適度に当たるもんだから、その肌も黒く焼けてみるみる健康を取り戻していった。
せっかく趙雲から伝授された剣術もすっかりサボっていたからナマクラに成っており、勘を取り戻すのにも時を要した。
けれどもその顔付きが違って来て、運動して疲れているから、自然と夜の寝付きも良くなる。というよりは、若君は豪快な寝息を立てて寝るようになって、とても目覚めて夜歩きそうには無かった。
その報告を得るにつけ、弎坐も納得した。だからすぐに華佗老師にも相談し、即日厳戒体制は解除される運びと成ったのである。
忙しい合い間を縫って、診療所にも顔を出す様になった若君を日々見るにつけ、その体調の良さを看破していた華佗はすぐに許可した。
彼はその後、夜歩く事は無かった。
歴代の王朝の継承者が身体が弱かったのは、親族婚が当時は当たり前の様に行われており、血が濃すぎた事がその要因として挙げられよう。
けれども喩え劣悪遺伝子の配合が無くとも、人というのは生きる上でごく当たり前の健康的条件を与えられなければ、勿論、健康を維持していく事は出来ない。
それは良く寝て規則正しい生活を行い、太陽の光を一身に浴びて身体を動かし、栄養を適度に接種する事で在る。過剰摂取は身体の均整を却って崩すもとだろう。
そういった意味では、やはり根本的な原因は身体を動かさず、薄暗い宮殿の中で職務と寝室の往復をするという、全く不健康な生活を余儀無くされていた事が、歴代の継承者たちの身体を蝕んでいたと謂えよう。
そして贅沢な偏食もその一因であったと想われる。
その一例を挙げるとすれば、史実での曹操の嫡男・曹丕が挙げられよう。
彼はあれ程、曹操に付き従い、各地を転戦して鍛え上げられて来た筈なのに、父を継承して帝位を継いだ後には宮中から出なくなり、みるみる内に身体を痛めて早死にする破目になるのだ。
それに引き替え、各地で転戦し身体が資本の将軍たちは、少なくとも病弱には成らなかった。
成るとすればそれは帰郷出来ない心労から来る不摂正や酒の飲み過ぎで、疫病や水に当たったりする事が無ければ戦死するぐらいしか死に至る事は無かった。
健康を維持する上で運動する事が如何に大事であるか思い知らされるエピソードである。
「いゃはゃ…Σ(˶‾᷄﹃‾᷅˵)参ったね♪長い事、悩まされたがようやく放免となった。こうしてみると、自業自得な気もするが、切っ掛けを与えてくれたのは田穂、君だ!本当に有り難う♪」
若君から礼を言われ、田穂は恐縮している。本心を言えば、彼にとってはそんな事はどうでも良いのだ。
若君に連日付き合い、日に日に良くなる顔色を見て来た彼にとっては、その目覚しい回復振りを目の当たりにする事が一番の喜びであり、ご褒美であったのだから…。
北斗ちゃんが健康的な姿を取り戻した事は、何も彼だけの喜びでは無く、皆が口を揃えて『良かった良かった…』と嬉しさを滲ませた。
潘濬などは目に涙を溜めた程である。
彼は記憶喪失事件の発端となって冷や汗を掻き、夜歩く事件でも、いち早く叫び声を上げる事になったのだから、その感慨もひと潮であった。
関羽も若君が治癒し、より逞しくなった姿を見て喜んでいる。
「若!(*´艸`*)良い顔になりましたな♪漢の顔をしていますぞ!」
そう素直に表現した程である。
「全くもう…( ๑˙﹃˙๑)✧そんなに褒めても何も出ないよ♪」
北斗ちゃんは笑みを称えながら、そう言って照れてみせた。
皆がこれほどこの件で、口を大にして喜び合えるのも、既に済んだ過去の事だと想えたからである。
北斗ちゃんもさすがに想うところが在ったのだろう。たとえどんなに忙しくても、その後もこの日課を変える事は無かった。
健康な精神は健康な肉体に宿るものだ。彼はそう信じて疑う事は無く、益々心身共にバランスよく育み、鍛える様になったのである。
そんなある日の事、満寵から若君の許へ書簡が届いた。田豫の妻子が近々、荊州に無事に到着するという。
その書簡の中にはこう記されていた。魏王の許可が下りて、晴れて田豫を自由の身にする事。その後任には、郭淮が就任した事などである。
そして明後日、漢江の畔、一本杉の下で待つと締め括られている。
「良かったな!⁽⁽(•̀ᗜ •́๑)これで無事、田豫との約束を果たせる…」
北斗ちゃんの第一声は安堵の吐息であった。
「直ぐに田豫に知らせてやれ♪僕も立ち合うとね!(๑•̀ ᗜ•́)⁾⁾」
「へぃ!ꉂꉂ(`ㅂ´ღ*)判りやした♪」
田穂は意気込みそう言った。
彼が足早に立ち去ろうとすると、若君はそれを呼び止め、「田穂、君のお陰だ!⁽⁽ღ( •̀ ᗜ •́ *)良くやってくれた♪」と再び彼を称えた。
すると田穂はニコリと微笑み、「人の命は尊いものだ…(*`ᗜ´٥)੭ そうでしょう?」とそれに答えた。
「あぁ…Oo。.(*•́⌓•́*๑)そうだったな♪」
北斗ちゃんはその言葉が嬉しくて、ついつい頬が綻んだ。嬉しくて仕方無かった。
田豫が喜び、すぐに感謝のために登城したのは謂うまでも無かった。
北斗ちゃんはそんな田豫に手を差し出し、「お待たせした。(๑>•̀๑)良かったね♪」と答えた。
田豫はその手を取り、再び深い感謝を示した。田穂はそんな二人を温かく見守る。
『この人だからこそ、こういう結果となったのだ!(ღ`⌓´*)あっしは善き主人に恵まれて幸せだ…』
そう想い、その巡り合わせに感謝したのである。若君はそんな彼らの気持ちとは裏腹に、いつもと変わらぬ姿勢を貫く。
『人のために出来る事…』そういった境地に立つ事はなかなかに難しいものである。けして簡単な事では無い。
けれどもその時の付け焼場では無く、本心からそう想い、生きているから出来る事もあるのだ。田穂はおそらく若君とはそういう御方なのだと切に感じていた。
「では明後日♪⁽⁽(•̀ᗜ •́๑)」
若君はそう言って田豫を送り出す。
田豫は去り際に田穂にも感謝を示した。
「いぇ…ღ(٥`ー´ )⁾⁾ 今回の事はあっしにとっても勉強に成りやした!むしろ礼を言うのはあっしの方です♪」
田穂のその言葉に田豫は肩をポンと軽く叩く。
「貴方も若君も謙虚な方だ。私も本来、そういう人間だと自分を評価して来たが、君たちには負ける!これを機に私も初心に戻るとしよう♪まさに人生とは塞翁が馬です!改めて貴方達に感謝致す♪」
そう言って引き上げて行った。
田穂はしみじみとその言葉を胸に刻んだ。
「へぇ~田豫殿がそう言ったのかい?そりゃあ淮南子だね!✧(๐•̆ ᗜ •̆๐)さすがは博識な男だ。言い得て妙だな♪」
田穂が若君にそう訊ねると、彼はスラスラと諳じた。田穂がその意味を問うと、北斗ちゃんは簡単に教えてくれた。
「人の人生には必ず浮き沈みがある。今、不孝な事に見舞われても、それが先の幸せに繋がる事もあるって事さ!判った?ε٩ (๑•̀ •́๑)۶з」
北斗ちゃんはその由来も付け加えた。
これは徐庶が廖化に教えた手法で、物事は知識として知るだけじゃ無く、その背景を知る事でその意味を理解するという事である。
それが学びの愉しさを知るという事なのだ。その背景とはこうである。
老人の飼っていた馬が逃げてしまい、人々は同情したが、老人はそれが幸いに転ずるかも知れないと気にしなかった。
するとしばらくして自分の馬がもっと立派な馬を連れて戻って来て、今度は人々は祝福したが、老人はこれが不幸を呼ぶかも知れないと嘆息した。
そしてその通り、老人の息子が立派な馬から落ちて怪我に見舞われ、人々は再び同情したが、老人はそれが幸いに転ずるかもと気にしなかった。
やがて戦争が起こり、付近の若者は全て兵に取られて戦場に送り出されたが、怪我をしていた老人の息子は戦に出れなかったお陰で命を拾った。そういう格言である。
「人間万事塞翁が馬と言ってね、田豫はその言葉で自分を今一度戒め、再起を計ろうと思ってるって事さ!(๑´° ᗜ °๑)੭✧前向きな彼らしい言葉だね♪」
北斗ちゃんはそう評した。
「ハァ~そらぁどうも!(*`‥´٥)あっしなんて怪我の功名が関の山でして、それで命を繋いでますんで…」
田穂がそう言うと、若君はケラケラと笑って言った。
「田穂!お前、怪我の功名を知ってるのかい?でも凄いぞ!Σ(,,ºΔº,,*)でもな、僕の解釈はちと違う。偶然なんてもんは無いんだ。それも的確な経験に基づく判断だと僕は想うね♪それに運も実力のうちだからな!」
北斗ちゃんの言葉に田穂は刺激を受ける。そしてふと感じたままを口にした。
「すると今回の若君はいったいどういう捉え方が良いのでしょう?(ღ`⌓´٥)⁾⁾ やはり閃きっすか?」
それを聞いて若君は不敵な笑みを浮かべた。
「う~ん…そうだね?閃きとも言えるかも知れないけど、今回のは田穂、君の言葉に触発された結果に依るものだからね!強いて言うなら、禍を転じて福と為すって事だろうな?(๑‾᷅⚰‾᷄๑)੭ これは戦国策の中の"燕策"にある言葉でね、知者は失敗を糧にして成功に導くって言葉だな!僕はこの言葉のが好きだし、性に合っている。漢代の劉安先生の塞翁が馬よりも、こちらの方が自分の意志が込められている分、僕向きかな?成せば成るさ♪」
北斗ちゃんは力強く言い放つ。
田穂はそこに挫けぬ意志を感じていた。
若君は次の瞬間にはもうニコやかな若者に戻っている。そこには名言とはまるで無縁の愛らしい横顔が在った。
【次回】気づけば学びは其処に在る




