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剛毅な漢

「(*゜ー゜)何だって?もう一度言ってくれないか…」


「( `ー´)え?…あぁ、呉の手練れです!」


「(*゜ー゜)…て事は、君達は我々だけでなく、呉も謀報してたって事なのかな?」


「( `ー´)否、この荊州で遭遇致しました!」


「な、なんだって?((゜□゜;))!いつ?」


「一昨日の晩です( `ー´)!」


「どこで(^。^;)?」


「( `ー´)長江沿いの狼煙台の下ですな…」


北斗ちゃんはそれを聞いて戦慄(せんりつ)を覚える。


『何て事だ(^。^;)!危うく判断を誤る所だったぞ…』


そうなのだ。彼は始め白装束の連中が呉の間者だと考えていたが、管邈(かんばく)を治療した時に徐州訛りで彼らが魏の間者と考え直していた所だったのだ。


ところが、やはり呉の連中も既に動き出していたのである。


『(*゜ー゜)虞翻(ぐほん)(しき)りにちょっかいを掛けて来ているのだ!例え間者が潜かに動いていても不思議は無かったのだ…』


彼は改めて相手が甘くない事を知る。


「判った…( -_・)今日はもう良い!御苦労だった。また聞きたい事が在れば、その時に教えてくれ。貴方もお疲れだろうから身体を休めて下さい!」


北斗ちゃんはそう言うと、組んだ両手に頭を乗せて考え込んでいる。すると、不意に投げ掛けられた質問に、再び興味を引き起こされた。


「殿…( `ー´)斬った相手の素性を知りたく有りませぬか?」


田穂は言う。ハッと身を起こした北斗ちゃんは「え!(*゜ー゜)判るのか?」と食いついていた。


「ええ…( `ー´)勿論!相手が名乗りましたからね?」


「何だってえ!(*゜ー゜)名乗る間諜なんているのか?」


「まぁ…( `ー´)そうですな!圧力を加える時か、はたまた相手が確実に死ぬと判断した時ですかね?」


「で…(*゜ー゜)何と言ったんだ?」


「( `ー´)私が直接聞いた訳じゃあ、在りません。管邈様が聞いたのです!」


最早、彼は完全に食いついて離さなかった。


「で、誰なんだ?それは…(*゜ー゜)」


「それは…( `ー´)」


「(*゜ー゜)ふんふん…」


「( `ー´)陸遜(りくそん)と名乗ったと!」


『陸遜か…(*゜ー゜)聞いた事無いなぁ?でもこれは 何かの啓示かも知れない!覚えておくか?』


「判った…(*゜ー゜)有り難う♪頭に入れて置く事にする…」


北斗ちゃんは田穂を労った。そしてようやく田穂も退出して行った。彼はその後、隣室に見舞い、管邈の処置を済ませた。


幸い大した事も無く、「大事にせよ!」と言い残すと自室に再び引き上げた。彼は疲れが溜まっていたのか、そのまま寝台に倒れ込む様に寝てしまった。




あくる日の朝、彼は朝げを済ませると、華侘先生を呼びに行って、一緒に管邈を見舞った。先生はその処置の跡を検分しながら、北斗ちゃんの説明に耳を傾けている。そして時折、質問をしながら、コクリコクリと頷いていた。


「(*^ー^)ノ董斗星よ、よくぞやり抜いたのぅ~♪なかなか勇気がいった事だろうが、処置としては完璧に近い。頑張ったな!」


これ以上は無い、御褒めの言葉である。先生は嬉しそうだ。


「勿体無い(*゜ー゜)!僕はもう、とにかく必死だっただけです。勇気があったかは判りませんが、今ここに居る僕にしか助ける事は出来ないのだと、覚悟しました。ただそれだけです…」


「(*^ー^)ノそれで良いのだ!無欲と覚悟、そして患者と向き合うひたむきさ…それが彼を救ったのだよ!」


華佗は北斗ちゃんの両肩にそっと手を置きながら、「(*^ー^)ノこれからも精尽せよ!」と言った。それを聞いていた管邈は感動していた。二人には気づかれぬ様に背を向けながら、枕許で涙していた。彼はこの先生のためなら、命を張る覚悟すら出来ていたのである。




華侘先生にはその日も休みを頂いた。代わりに弎坐が務めてくれるそうだ。彼はあれ以来張り切っている。将来的に本国の宮中にも医官は必要となる。彼はそれを新たな目標として頑張るそうだ。


北斗ちゃんはそれを聞いて嬉しかった。自分は将来、医師にはなれない。自分の代わりにその道を目指す人が居る事は、彼の心を少し軽くしてくれる様な気がしていた。




「(*゜ー゜)これで今日は全ての予定をキャンセルした…」


いよいよである…これからあの偉大なる将軍・関羽と対峠する事になる。これは元々、北斗ちゃんから声を掛けて実現したものだ。


彼は丹田(たんでん)に力を込めると、両頬をパンパンと叩き、気合いを入れた。ところがである。


想いのほか、将軍は笑みを称えながら彼を迎えた。北斗ちゃんは意を決して臨んだだけに、拍子抜けさせられる。彼はこう言ったのだ。


「( *´艸`)さて、今日は久し振りの対戦だ!負けませぬぞ!」と!


二つの床几(しょうぎ)を挟んだ机上には碁板が置かれていて、碁石も整っている。そして驚くべき事には、彼の側に白石が用意されていた。将軍が黒石を持つ。


驚くのはそこじゃないって?その通りである。北斗ちゃんも正直、訳が判らない。いったいどうなっているのだろうか?


「(*゜ー゜)どういうつもりだ…?」


北斗ちゃんは想わず用心が先に立つ。ところが将軍はお構いなしにこう宣う。


「( *´艸`)若、肩の力を抜きなさい!時間はたっぷりあるんだ、話し合う用意は在りますゆえ、心配さるな!まず第1ラウンドは囲碁勝負♪これで寝むった頭も起きるでしょう!さすればきっと良い知恵も浮かぶ事でしょうな?」


そうサラリと言って退けたのだった。これは最早、囲碁を打たねば先に進めない事を意味していた。


「ええい(*゜ー゜)!ままよ…やる他あるまい!」


北斗ちゃんは観念して、関羽将軍に付き合う事にした。


想えば始めての勝負は白石を持っての勝負だった。白石が九つ全ての星に置かれた真に奇妙な勝負だった。そしてその時に、彼は関羽将軍に薄氷の勝利を挙げた。その事で彼はひとりの男として、将軍に認められたのだった。


そのハンデ戦を除き、黒石を持っての対等な勝負で、現在11勝10敗…勝ち星の多い方が白石を持つという、将軍に一方的に決められたルールで、前回遂に勝ち越しを果たした北斗ちゃんは、ハンデ抜きで初めて、白石を持つ事に成ったのである。


「では若君!( *´艸`)参る♪」


関羽はそう言うと黒石をいきなり天元に打ち込んだのである。


「(*゜ー゜)なっ!」


北斗ちゃんは想わず(うな)る。


「いやぁ~若、( *´艸`)儂はね♪一度これがやってみたかったのです♪」


関羽は『ガッハッハ』と手を叩いて喜んでいる。将軍の奇襲攻撃である。


「(*゜ー゜)へぇ~そんな手があったとは…」


北斗ちゃんもびっくりである。けれども、それがどんな影響を及ぼす手なのかは、彼にはまだ判らなかった。関羽将軍は元々強物なのだ。彼に踊らされてはいけない。


彼は揺るがなかった。そもそも盤上のど真ん中の星に打たれて、どう対応するかまでは教えて貰っていないのだから仕方がない。


そこで彼はこう想う事にしたのである。


『(*゜ー゜)う~ん…どうするかな、あ!そうだ♪良い事を想いついちゃった。これなら僕でも打てるかもニャア♪』


彼の碁打ちとしての腕前はそんなに上達しているかというと甚だ怪しい。何しろ初めて対戦した時には、碁とは何かすら良く判っていなかったのである。だから彼は兵法の極意を参考にして、相手を包囲するにはどうすべきか考えた結果として、辛勝に漕ぎ着けたのだった。


無論、予め星に置かれた九つの白石が救いと成ったのは言うまでも無かろう。そして関羽将軍とのその後、21回にも及ぶ対戦の中から得た定石も頭の中にはあった筈で在る。だからその経験も役に立ったに違いない。


そこで彼は不思議な疑問にぶち当たった。


『(*゜ー゜)天元が必殺の技ならば、初めて試したと言うのには疑問が残る。もし試すのならば、馬良殿に一度も使わなかったのは可笑しい…』


鯔のつまりは、『一度これがやりたかった』の裏の事情には、相手が格下である事が絶対条件なのではないか?要するに、例え一手損をしても経験したかった…そう考えれば、これが単なる奇を(てら)虚仮威(こけおど)しであって、こちらの知らない手を打つ事にこそ意味があったのではないかと考えたのである。


単に北斗ちゃんの指し手を惑わし、考え悩んでいる内に、自らの地盤固めに入り易くする事が目的であるならば、惑わされなければ良いだけだ。


そこで北斗ちゃんは次の様に考える事で迷いを無くす事にしたのである。


『(*゜ー゜)関羽将軍が天元に打った黒石は、元からハンデとして置かれた置き石ひとつと考えるべし!僕は後番としてでは無く、先番として白石を打てば良いだけの話しだろう。天元に気を取られて、戸惑う事が無ければ…いつも通り打てれば、勝てる確率は自ずと上がると言うものだ♪』


そこで彼は惑わされずに白石を、いつも通りの隅の方から打ち始める。関羽将軍は北斗ちゃんが戸惑う事無く打ち進めた事で、段々と劣勢に陥り、最終的には、北斗ちゃんの圧勝でこの勝負は幕を閉じた。


「( *´艸`)やられましたわい♪儂の負けですな…」


関羽将軍は素直に負けを認めた。どうやら北斗ちゃんの閃きは間違い無かったようである。将軍は二手目以降、然したる計画は無かったようであり、その指し手はいつもと然程変わらなかったから、結局の所、一手目の天元打ちは、一手損の打ち損じという極々つまらない結果に終わったのだった。


「(*゜ー゜)関羽将軍!僕の勝ちですね♪しかし、奇襲とは驚かされました。でもこれは恐らくですが、僕が今一つ、碁に精通していなかったのが功を奏したのでしょう…お陰でさして戸惑う事無く打つ事に専念出来ました。もうそろそろ頭も回って来た事ですし、本格的な話し合いに入りませんか?」


北斗ちゃんはそう提案すると、碁石を終い始めた。関羽将軍も『そうですな…』と言って片付けている。二人は碁石を器に仕舞い終わると、改めて相対してきちんと座り向き合った。


改めて真剣に向き合うと将軍はでかい。体躯は勿論の事、その存在感が半端無い。身体全体から(みなぎ)る真っ赤に燃え盛るオーラは、彼がひとたび意志を示せば、すぐにも襲い掛かって来そうな勢いである。それ程に、受ける威圧感は尋常で無く、激しい衝撃を彼に与えた。


北斗ちゃんは一瞬、将軍の醸し出す雰囲気に呑まれてしまい先手を許してしまう。関羽将軍はゆっくりとその口火を切った。


「( *´艸`)若、儂は考えもなく奇襲策を狙った訳じゃない…相手を混乱に陥れて、こちらの思うままに出来たら愉快だと思わないかね?」


『(*゜ー゜)ハッ??何言ってんだ?碁の話しじゃないよな…まさか!』


北斗ちゃんは嫌な予感が頭をもたげた。


「(*゜ー゜)…それでどうなりました?将軍の奇襲は失敗!兵は壊滅…逃げ場を絶たれて降伏しましたよね?」


北斗ちゃんの物言いに関羽将軍はとても嫌な顔をする。


「( ;´艸`)若!今日は偉くどぎつい仰有り様ですな…それは碁の話しでは在りませんか?」


「(*゜ー゜)…?何を言ってるんだ!碁とは戦いに相通ずる物があると教えたのは将軍、貴方ですぞ♪」


北斗ちゃんがそう堂々と宣うと関羽将軍は赤ら顔を(ほころ)ばせ、その頬を緩ませて快活に笑った。それはとても愉快だと言わんばかりであった。


「ガハハハハッ( *´艸`)♪こりゃあ一本取られましたわい…若もなかなか穿(うが)った物言いをする様になりましたな♪儂は嬉しくて堪りませんぞ♪」


「(*゜ー゜)そらどうも…まぁ身近な人の受け売りですがね♪」


「( *´艸`)そらどうも♪」


関羽将軍はそう言うと、急に真面目な顔と成って北斗ちゃんを見つめた。


「若…(* ̄艸 ̄)!儂はな、兄者の為にどうしても北伐がやりたいんじゃ♪どうしてもな…」


関羽ははっきりとそう言った。これまでは明白(あからさま)な表現は避けて来た男が、今太子に向かって堂々と自分の本音を打ち明けたのだった。


その姿勢は最早、何も隠す必要が無いという程に露骨さを現していた。それは、遠回しな言い方はやめて本音で話し合おうという意気込みに満ちていた。


『遂に来たか…(^。^;)』


相手と向き合うという事は、即ち真剣に話し合う事を意味する。北斗ちゃんもまさにそのつもりでここに居る。丹田に力を込めた気概に嘘は無かった。つまりは彼も一歩も引かない意気込みを示さねば成るまい。


「(*゜ー゜)将軍…北伐ありきではダメです!物事には準備という物がいる。それが貴方に在りますか?現状が判っていますか?計画に齟齬(そご)は在りませんか?相手の事を知っておりますか?この荊州の重要性が判っていますか?大義名分が在りますか?民の想いに沿っていますか?身内の一致団結性に(ほころ)びは在りませんか?本国との連動性は計っていますか?自分に出来る事と出来ない事が判っていますか?少なくともこれだけの事を理解し、共通認識とし、皆のやる気を引き出せなければ時期尚早でしょう…」


北斗ちゃんは関羽将軍の想いを真摯に受け止めながらも、自分の意見を堂々と述べた。その嘘偽りの無い将軍の気持ちに対して、正々堂々と正面から受けてたったのだった。

【後書き】


明白と書いてあからさまと読むとは勉強になりました。日々勉強ですね♪


筆者

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