鶴の一声
五人は武陵の工事現場に到着した。ちょうど昼時も過ぎ、威勢の良い掛け声に迎えられる。
皆、額に汗を流しながら、河川整備に励んでいる。心なしかその表情は明るく充実している。
「やぁ〜凄い熱気だね♪˚ (๑*´° ᗜ °๑)੭ ੈ✧何つ~かとても皆、良い顔をしているねぇ~!」
北斗ちゃんは現場を目の当たりにして、とても嬉しそうに弾んだ声を出した。
凪も驚いている。
実際、この若君とその連れである仲良し集団が手懸けた工事が、こんなに大規模に展開され、こんなにも多くの人々を巻き込んで進んでいるとは思いもしなかったので、かなり感動してしまっていた。
中には明らかにこの国の人じゃ無い人々も混じっていて、それが何の不自然さもなく融合している。
そしてそれは何も視覚に訴えるだけでは無い。耳から次々と入って来る言葉にも顕著に表われていた。
そして驚くべき事には、外国の者同士が漢語で話したり、地元の者でも内容の判らない言葉で外国の方に気さくに話し掛け、十分に言葉のやり取りが成立している様なのである。
凪は呆然としてしまって、只々驚くばかりであった。するとそんな凪を尻目に若君は軽やかな歩調で彼らに近づいて行く。
ルンルン気分でスキップしながら何の抵抗も感じていない。そして在ろう事か赤毛の体格の良い外国の方に話し掛けたのだ。
凪は驚いてしまった。大丈夫なのだろうか。ところが潘濬も田穂も弎坐さえもそれをのんびりと眺めている。
凪は弎坐に想わず訊ねた。
「(٥^-゜٥)大丈夫なんですの?」
すると弎坐は「あぁ…ε-(-ω-*)」と言って直ぐに答えた。
「|•̀ω•́)✧⁾⁾ フフフッ…不思議な人でしょう?でも元々人懐っこい性格だからね!それに民にも人気が在るし、心配無いよ♪」
「(٥^-゜٥)あっ!いゃそうじゃなくて…」
「Σ(ღ-ω -〃٥)おっと!そっちかぁ…でも大丈夫♪北斗ちゃんは日頃から外国の歴史書を漁って読んでるからね!まぁ何とかなんじゃない?ほら!ちゃんと和気あいあいと話してるじゃん!」
「(๑゜д゜๑)✧あら♪ほんとだ!凄い凄い♪」
「(ꐦ* •" ຼ •*)本当に変わった御方でね?探究心と言えば宜しいのかな!否…知識に飢えている小猿ですかな?それを暇潰しや遊びでやるところが人でなしと言えますな♪」
「ღ(٥`ー´ )⁾⁾ 本当に♪変わってますなぁ!」
「(٥^-゜٥)…アハハハ」
するといつの間にか戻って来た耳敏い若君がまたまた絡む。
「(•́⌓•́๑)✧ムムッ!僕が聞いてないと思って言いたい放題言ってくれるな。生憎と僕は地獄耳なのだ!誰が小猿だって?人でなし?誰が変わっとるだ?全く!油断も隙もありゃしない♪」
「(*`‥´٥)変わってるのは認めた癖に…」
「( •̀_₍•́ )あれは半歩譲ってだ!変わっとると言われて喜ぶやつがいるかい?」
「(〃`⌓´٥)=3 そりゃすいやせん!仰る通りで♪」
「判れば宜しい♪(๐•̆ ·̭ •̆๐)でっ?」
北斗ちゃんはジロリと潘濬を横目で見る。
その勢いに押されたのだろう。潘濬も「そらぁ~すいません!Σ(ღ• ຼ"•ꐦ)」と謝る。
途端に若君はニコやかに微笑み、「(⁎⁍̴̀﹃⁍̴́⁎)まぁ僕の実力を評価しているところは認めてやろう♪」と言って、カッカッカと笑った。
「ところでその後ろのガタイの良い方はどなたなんで?(`ー´ღ*)」
田穂は訊ねる。いつの間にか赤毛の男が若君の背後に立っている。
若君もまだ成長期だが、けして背は低くない。けれども男はその背後に立っても厚い胸板が判る程であった。
見たところ、身体はがっしりしているのに、妙に剽軽な顔をしているのでしまりが無い。赤い髪もそれに拍車をかけていた。
弎坐も田穂に言われて、その存在にようやく気がつき、背の低い彼はかなりビビっている。北斗ちゃんは弎坐を安心させるように、こう言った。
「なぁに、心配ない!✧(๐•̆ ᗜ •̆๐)彼はとても温厚で気さくな男だよ♪遠い大陸からやって来たらしい。元々医者らしいから、弎坐、君とも話しが合う事だろう。僕もさっそく意気投合したところだ♪」
北斗ちゃんにそう言われて、弎坐は改めて男を見た。
「ꉂꉂ₍ᐢー̀ ̫ー́ᐢ₎…貴方、弎坐サン!ソシテ貴方、潘濬!貴方、田穂!ソレニ、北斗チャンネ♪オヤ?貴方ハ、何方デスカァ?」
赤毛はかなり大胆な片言で話し掛ける。成る程、気さくなのは間違いないところだ。
その標的となった凪ははにかむ。外国人と接触するのは初めてなので、珍しく怖気ずく。
「大丈夫!(*`•o•´)੭ ੈこれは良い機会なんだ♪自己紹介して?」
若君からそう言われて、凪は覚悟を決めた。それに今まで散々パラ挨拶して来たのだ。それを繰り返せば良い。
「凪です!(*^-゜)宜しく♪」
すると赤毛の男は「ꉂꉂ₍ᐢー̀ ̫ー́ᐢ₎ Das ist aber 'n schöner Name.Guter Klang.(良い名前だね。響きがいい!)」と言った。
「Σ(,,ºΔº,,*) Adam! Nagi ist die Ruhe, wenn der Wind aufgehört hat.Es ist kein Ton zu hören.(アダム、凪は風が止んでいる静けさの事さ♪音は無いんだ!」
「ꉂꉂ₍ᐢー̀ ̫ー́ᐢ₎ Hey, ist das so? Das ist interessant.(へぇ~そうなんかい?そりゃあ面白いね!)」
赤毛の男は母国語を喋っているらしい。そして若君もその言葉で話し掛けている。
成る程…確かに会話は成立している。二人はしばらくそうしていたが、やがて気がついたように、若君は語った。
「あっ!ꉂꉂ(°ᗜ°٥)ゴメンゴメン♪つい時間を忘れるね。彼はアダムだ!ある事が切っ掛けでここにやって来た。気に入ったので、今度僕の従者にする事にした。後で劉巴に相談しなきゃね♪」
「アダムです♪ꉂꉂ₍ᐢー̀ ̫ー́ᐢ₎ ヨロシクネ!」
アダムはすぐに挨拶し、皆も頷く。するとアダムは若君に断わりを入れると仕事に戻って行った。
「若!(ღ• ຼ"•ꐦ)彼はいったい何者なんです?急に従者にするなんていったい!」
潘濬は驚いた顔でそう訊ねた。
「いゃ…ε-(-ω-*)北斗ちゃんは元々そういう人だよ!あちきだって単なる宦官のひとりだったのに、たまたま記憶を取り戻した彼から、最初に声を掛けられただけの御縁で、遠く荊州くんだりまでやって来たんだ!」
弎坐は当たり前のようにそう答えた。
「あっしもそうですぜ!(ღ`⌓´٥)元々ここに居る弎坐さんを人質にして、お頭の手術をさせたのが御縁です。でも今じゃ御信頼頂いている。切っ掛けなんてそんなもんじゃ?」
田穂も不思議とすら想ってないらしい。
そう言われて、潘濬も想い当たる節があった。自分も河川氾濫で江陵城に避難しなければ、伊籍に推挙して貰えていないだろう。
そして初めて面と向かって話し合った直後に、抜擢されたのである。成る程、確かに彼らの言葉には一理あった。
「いゃ…(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ 愚問でしたな!確かにその通り♪」
潘濬も認めざる逐えなかった。
凪は驚く。
宦官に盗賊に在野の人たちをひと目で気に入り配下に据え、その人たちがまたそれぞれに力が発揮出来た結果として、今に至るのである。
とどのつまりは、それだけこの若君の眼力に間違いが無く、逆の見方をすればこの独特な個性の持ち主たちから圧倒的な支持を受けているという事になる。
凪は改めて若君をジーッと眺め、感心してしまった。言い得て妙である。
すると、若君は照れるようにこう告げた。
「なぁに♪ꉂꉂ(• ▽ •๑ )何事も一期一会の成せる技さ!出会いは大切って事♪皆もそう、凪さんもその一人なんだ。ねっ?不思議でも何でも無いでしょう♪」
そう言って爽やかな表情を見せた。皆はこの若君の人懐っこい仕草と懐の広さに感じ入っていた。
先程の赤毛の男も、そんな彼に誘われた事など一旦忘れてしまったかのように、皆に混じって額に汗を流しながら懸命に土と向き合い、掘り進めている。
若君は今、目の前の事に直向きに向き合える一生懸命な人が好きなのである。凪はそんな気がしていた。
そして自分もいつまでも逃げずに、正面から父親と向き合わなければと、堅く心に誓ったのである。
「やぁやぁ…ꉂꉂ(o'д'o )お待たせしてすみません!よくいらっしゃい ました♪」
そう言いながら、ようやく劉巴が近づいて来た。一緒に鞏志を伴っている。
彼もペコリと頭を下げた。北斗ちゃんはそんな二人に嬉しそうに言葉を掛ける。
「劉巴!それに鞏志も!(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ 久し振りだね♪元気そうで安心した。そして逞しくなったね!すっかり日に焼けて男の顔だねぇ♪」
「いぇいぇ…ღ(o'д'o٥ღ)滅相もない!全てはこの鞏志殿と志組の采配のお陰♪そして大勢の若君の民達の働きがあってこそです!それに、私は元々屋内で執務を取るより、現場で指揮を取るのが性に合っています♪これぞまさに、水を得た魚ですな!」
劉巴はそう言った。
要は適材適所の喜びを表わしたものだろうが、河川工事にかけて洒落てみせたのだろう。相変わらず心憎い事をサラリと言える男なのだった。
北斗ちゃんは勿論の事、潘濬も想わず苦笑する。潘濬にとっても感慨深い。かつての盟友は自分のやりたい事を成して、その充実振りが窺えた。
鞏志は称えられてすっかり畏まっている。彼は実務に長けた専門家だ。やる事をきちんと踏まえ、実直に進める事に力を注いでいる。
それは彼にとっては当たり前の事で、他人に褒められる手合いのものでは無い。けれども同じ飯を食い、ここまで一緒に努力して来た劉巴の評価はやはり嬉しかったのだ。
「若!(*゜Д ゜*)一重に貴方のお陰です♪この私をお信じになり、こんな大役を任せて下さった。志組の連中も皆、貴方に感謝しとります!なら、我々はその期待にお応えするしか在りますまい♪毎日が充実して愉しい。その一言に尽きます!」
鞏志は今の気持ちをそう表した。その一言だけで、彼らがしっかりとやってくれている事は若君にも十分に伝わった。
まさに彼がここに来て、聞いておきたかった言葉だった。
「うん♪(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ僕もここの熱気を肌身に感じて、さっきからゾクゾクしている。働く皆の顔も生き生きとしているね!それは君たちの管理が行き届き、計画が順調に推移し、彼らの意欲が高い事の証明だ。つまりはここにやって来て、悔いが無い事を示している。僕はそれが嬉しい。そしてそんな充実振りなら、きっと目的も果たせるに違いない。どうか今後も益々の努力を頼む。期待してるよ♪」
そう言って二人の手を取り、固く握りしめた。とても感動的なひとコマだった。
凪も想わず貰い泣きしてしまった。すると、劉巴が若君に言った。
「長旅、御苦労様です♪(*o'д'o)੭ ੈ大したお持て成しも出来ませんが、お腹が空いておりましょう!川魚の旨い季節です。膳をご用意致しましたので、是非どうぞ♪」
そう言って誘う。
北斗ちゃんはみるみる晴れやかな顔になって礼を述べた。
「へぇ~そうか!( ๑˙﹃˙๑)✧旬な物は一番の馳走だねぇ♪こりゃあご相伴に預からないとね?皆、飯だそうだ!とっとと行こう♪」
そう言ってひとりさっさと歩き出した。
皆、先程の感動はどこへやらである。凪も呆気に取られてしまった。
高台の居住地区から眺める景色はまた格別である。特に高台の突端からはかなり遠くまで望む事が出来る。
上から見下すと、その見応えは素晴らしく壮大である。まるでパノラマを見るが如くに横に長く、奥行きもくっきりとしている。
だから、工事の行程が手に取るように判るのだ。場所によっては既に完成しているところも散見される。
劉巴によると、未だに日々移住者は増加していて、その分さらなる行程の加速が見込まれているそうだ。
北斗ちゃんは大好きな鮭の切り身を小綺麗に切り分けて、口に放り込み、その後、米を追い掛けして、口の中で合わせるように咀嚼する。
さすがに育ち盛りだけあって、パクパクムシャムシャと絶え間無く口を動かしながら、劉巴の説明に頷き、鞏志の今後の計画にもじっと耳を傾けている。
「お代わり♪ꉂꉂ(˶‾᷄﹃‾᷅˵)」
そう言って若君が椀を差し出すと、給仕頭が「あいよ♪」と言って、テンコ盛りにしてくれる。
「若、食べ過ぎなんじゃ?✧(• ຼ"•ꐦ)」
潘濬が心配してそう言うと、北斗ちゃんはニヤリと笑ってそれに答える。
「アハッ♪˚ (๑*´° ᗜ °๑)੭ ੈ✧大丈夫、大丈夫!今度の旅で僕はこれでもかなり歩いているからな?特に記憶喪失の前後は、空腹のまま強行軍となった。皆も知っての通り、僕は医者だ。血と成り肉と成るものは、海軍府でたらふく食わせて貰ったが、この身体に脂肪も少し付けてやらないと、僕はかなり痩せ気味だ。それにせっかくのテンコ盛りだ!こんな素晴らしい事が、今後またいつ出来るか判らない♪この機会は逃せないだろう?僕の目の前でたくさんの米粒が立って、早く食せと笑っているのだ♪心配するな!僕は米は二膳と決めている。テンコ盛りでも二膳は二膳だ♪山を崩したら、仕上げに鮭茶漬けだ!これがまた旨いんだ♪安心してくれて良い!」
若君は愉しそうにそう告げた。口の端についた米粒がキラリと光って見えた。
「ハイハイ♪判りました!⁽⁽(ღ •" ຼ • ٥ꐦ)それなら潘濬は止めませぬ。子猿さんを子豚さんと呼ばせないようくれぐれも頼みますよ!」
潘濬は真顔でそう言った。
特に彼としては受けを狙った訳でも、嫌味を言った訳でもなかったが、弎坐も田穂もプッと吹き出してしまった。連られて劉巴や鞏志も頬が膨らむ。
すると北斗ちゃんはまた怒るかと思いきや、「あい♪(∗˃̶ ᵕ ˂̶∗)♡」と可愛らしく言ったもんだから、皆ずっこけてしまった。
只一人、凪だけは「キャ~ッ♪(◍˃ᗜ˂◍)ノ⁾⁾✿可愛い♡」とひとり悦に入っていた。
こうしてその場は丸く収まった。北斗ちゃんは既に目の前の山頂に夢中になっており、それどころでは無かったのだ。
なぜならその後、彼の大好きな鮭茶漬けが彼を今か今かと待っていたからである。
さて既に皆、食事を終えていたが、若君はようやく、山頂をやっつけ、鮭茶漬けに取り掛かる。全くのんびりしたもんである。
皆は若君の一挙手一投足に熱い視線を注ぐ。北斗ちゃんの食べ方はとても愉しそうで、自然と引き込まれるらしい。
彼は残しておいた鮭の切り身を米の上に小綺麗に並べてから、熱い茶を注ぐ。
そしてわざわざ両袖を捲って、おもむろに椀を持つと、ゆっくりとサラサラ音を立てながら口に流し込むように頬張り、咀嚼を連動させる。
そんなこんなであっという間に平らげると、彼は吐息をついた。そして如何にもお上品に「ご馳走様♪(ღ • ▽ • ๑ )」と言って手を合わせる。
そんな若君を皆、微笑ましく見守っていた。食事が終わると北斗ちゃんは皆に向かってニコやかに笑い、ある提案をする。
"閃き"の降臨であった。
「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ劉巴!それに鞏志も良く聞いてくれ♪特に鞏志は志組の長だから、僕の構想を実際に実現出来るかどうかの観点から、どんどん意見を出して欲しい♪」
そう言って語り始めた。
彼ら二人にしても、工事の出来に直結するなら有り難い話だから、その顔は真険だった。二人のその眼差しを、若君も満足そうに捉えていた。
「これは海軍総督府で扱っている造船所のレールの溝を見て想いついた事なんだが…(๑>•̀๑)"」
北斗ちゃんのこの前置きは、二人の関心を強く惹いた。特に鞏志は、自分の右腕に当たる志組の手の者の草案から生まれたものだったから、興味を惹かれた。
そしてそこに感銘を受けた若君の、目の付けどころに喜び、期待が膨らんだ。
「(๑•́⌓•́).。oO 土を掘り返しそれを運ぶのにも、随分と苦労が在ろう。今はどうしているんだ?」
北斗ちゃんは訊ねた。これには鞏志がすぐに答える。
「そうですな!(*゜Д ゜*)今は手押し車に掘り起こした土を盛り、運んでいます。これも志組の者共の力作ですが、何か?」
「うん♪(,,ºΔº,,*)でもいちいち人力で押していたのでは大変だろう。勿論、それが悪いとは言ってないが、同じ力を入れるなら、負担が少ない方が良いと想ってな…」
「ほう~♪(゜Д゜*)具体的にはどういった物でしょう?」
鞏志は訊ねる。
すると北斗ちゃんは、おもむろに胸元から羊皮紙を取り出し、皆に見えるように机の上に広げた。それはある種のカラクリの図案であった。
見ようによっては、動物のようにも見える。北斗ちゃんは、愉しそうに図を示しながら説明を始めた。
「ここが味噌だ!(•́⌓•́๑)✧この足の部分に、四つの車が付いておろう?そしてその足を回転させるための仕掛けが、この持ち手よ♪人がここに立って乗り、この持ち手を上下させる事によって漕ぐのだ!土や砂利はこの前の大きな入れ物に入れる。そして絶妙なのが、このもうひとつの仕掛けだ。土を捨てる時にわざわざ掬い上げなくても、この入れ物の首を緩めると、反対側に傾く。これは土の重さがあればある程、傾き易い。そして出し口は、城の門に嵌め込む板から思いついた。予め傾ける前に、外しておくのだ。後は傾斜の反動で土は捨てられる。本来なら石や鉄などで進路にレールを敷設すれば、より漕ぐ力が増す事だろうが、それは将来的に考えれば良い。今はそんな事に割く人材が居ないだろうからね?ひとまず試作品を作ってみてくれないか。すぐに量産出来るかどうかは、また試作品を見てからで良い。どうだい?いけそうかな??」
北斗ちゃんは熱量を込めて説明した割には、半信半疑のようだった。それは謂わゆる人力で動かすトロッコのような物で、一朝一夕に作るのは難しそうに想われた。
「どうだ?ꉂꉂ(o'д'o )行けそうか…」
劉巴はすぐに鞏志に訊ねた。
「う~ん…(゜Д゜*)そうですな!今、直ぐに判断は出来ませんが、腕利きの連中を集めて工夫してみましょう。若!この図面、お借りしても宜しいか?」
「うん♪(∗˃̶ ᵕ ˂̶∗)✧役立てば何より!僕にはもう必要の無い代物だからね♪何しろこの頭の中に構図は入ってるから、いつでも再現出来るよ!僕ももう少し考えてみるとしよう…」
北斗ちゃんはそう言って席を立った。
「まぁ全てを機能的にする事は無い。でも少しでも現場に携わる民が働きやすく改革する事も大事な事だよ♪( ๑•▽•)幸い順調に推移してるようだし、少し遠廻りになるかも知れないが、やって損は無いはずだ。生かすも殺すもそれは現場の者次第!好きに判断してくれて良いよ♪」
北斗ちゃんはそう言った。少しでも助けになればとの想いがそこには詰まっていた。
劉巴も鞏志も真摯に受け止めている。鞏志は答えた。
「いぇ!(*゜Д ゜*)面白い発想だと想います。現場の指揮や推移に歯止めが掛かる訳じゃない。我々志組は、元々利便性を追求する職人の集まりです。新たな取組みはむしろ大歓迎♪こういうのが好きな連中ですからきっと喜ぶ事でしょう!私も楽しくてワクワクして来ました♪」
彼は朗らかな笑みを浮かべた。
北斗ちゃんは無言で頷く。
凪はその様子を眺めていて、皆の取り組む姿勢に心を奪われていた。そしてこの男たちの目的がきっと叶うと信じて止まなかった。
【次回】徒然なるままに




