表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/308

睡蓮の華の君

他愛(たわい)も無い自信から窮地に陥った関羽は茫然自失のまま劉備を見つめる。すると劉備は突如ケラケラと笑い出して言った。


「いゃいゃ悪いな、雲長♪(*◍′_₍‵◍ღ)お前と同様にこの儂も悪乗りしただけよ!何しろ今、儂は大変気分が良いのでな♪許せよ!」


「(٥ღ`艸´*)いゃ、儂の方こそすみません!少々知ったか振りました♪でも兄者がそこまで為されるとは余程の事だったのだと、この雲長お察し申し上げますぞ!」


関羽も素直に嬉しかった。おそらくは若君の方から折れたのだろうが、関羽はそれも若君の成長だと感じていたのである。


「(ღ◍′◡‵◍*)ところで冗談はさておき、お前に相談がある…聞いてくれるか?」


劉備は勿体振る様にそう尋ねた。おそらくそれが先程の"儂の考え"という事に成るのだろう。


関羽は乗り掛かった船と胸を叩いてそれに応えた。劉備のやる気は半端ない。


これではどのみち聞かずには収まらないだろう。関羽は覚悟を決めた。


「えぇ♪(*`艸´)੭ ੈ勿論!我らは一心同体、お聞きしますとも♪」


胸は叩いてみたものの、余り調子をこくと先程の二の舞である。関羽は余計な事を言わないように慎重に入った。


すると劉備は御機嫌なまま、「(◍′_₍‵◍*)そうか、そうか!」と頷きながら話し出す。


「実はな…(*◍′_₍‵◍ღ)公嗣の奴に妃を(めと)らせようと想っている。お前はどう想う?」


劉備はさも誇らしげにそう告げた。まるでそれは、その思いつきに酔っているようにも見えた。


関羽は驚き、慌てた。まさかそんな相談だとは想いもよらなかったので、彼も些か動揺していた。


けれども若君の顔を想い浮かべて踏み止まる。あのあどけない顔の少年が、妃を(めと)るなど想像も出来なかった。


「(٥ღ`艸´*)兄者、お待ちを!今の今までそんな話は一言も聞いておりませんぞ♪昨晩の(うたげ)でも出なかったでは在りませんか?いったいいつそんな事を想いつきました?」


関羽は落ち着いて問うたものの、ついつい本音が出る。"想いつき" と彼が言い切っているところが味噌である。


劉備は痛いところを衝かれたと明らかに不満を表す。けれどもそれでも尚、平然と告げた。


「(٥◍′_₍‵◍)=3 さすがは雲長だな。お前には敵わぬ。だが公嗣は我が太子。行く末も考えぬとな!」


「(٥ღ`艸´*)それはそうですが、今は大事な時です。女子(おなご)にうつつを抜かしている場合では在りません。儂は反対です!」


関羽ははっきりとそう言った。けれども一度言い出したら義兄が頑なである事も判っている。


長い付き合いだからそう察した。ゆえに彼は問うた。


「(٥ღ`艸´*)それに娶らせると言っても相手在っての事でしょう。何か宛でもあるので?」


「(ღ◍′ᗜ‵◍٥)いゃ無いな!だからお前に相談している。在れば儂がとっとと進めて居るわ♪」


「Σ(٥`艸´٥ღ)そんな…無茶苦茶ですな!だいたい太子様のご意志はどうなさるおつもりか?まだ本来なら遊びたい盛りを敢えて目標に向かって邁進されているのに、これ以上負担を掛けてどうしますか?」


関羽は堂々とそう述べた。殊更に河川事業の事を盾にされると劉備も弱い。


どんな事でも助力は惜しまんと約束したのは彼自身だからである。劉備の勢いは急激に(しぼ)む。


けれど諦め切れない彼は、細やかな抵抗を試みる。


「雲長よ♪ღ(◍′◡‵◍ )御主の言う事ももっともだ!だが、公嗣だって好いた女子(おなご)の一人や二人居るのじゃないか?さすれば…」


劉備がそこまで言った時に、関羽はフフンとほくそ笑むと口を挟んだ。


「ガッハッハ♪ꉂꉂ(*´艸`*)何だ!ようやく判りましたぞ♪兄者の意図が!」


関羽は自信満々である。切り返された劉備は焦るように愚痴をこぼした。


「なっ!Σ(ღ◍′⌓‵◍٥)どういう事だ。まぁいい…言ってみろ!」


やたら顔を突き出し、覗き込むように笑みを浮かべるのだから、暑苦しいったら無い。


その圧力に押される劉備は、ほうほうの体である。関羽は勝ち誇ったようにこう言った。


「(٥ღ`艸´*)要は兄者は親らしい事がしたいので御座ろう。若君と和解された事で今までの贖罪(しょくざい)の気持ちが一気に噴出した。そういう気持ちになる事自体はけして悪い事では在りませぬ。是非、助けておやりなさい。ですがそういう事は、本来少しずつ、相手に負担を掛けぬように、然り気無くやるものです。いっぺんにこれ見よがしにやるものでは在りません。若君は利発な御方、そんな事ではせっかく和解したのに足許を見られますぞ!」


切々と(さと)す関羽の言葉には重みがある。真実を突いているから尚更であった。


劉備は想い当たる節があるから言葉も無い。すると関羽はここが正念場と追い打ちを掛けた。


彼も義兄をこれ以上、追い込むのは本意では無いが、このままでは若君が余りにも気の毒なので心を鬼にする。


「ꉂꉂ(*´艸`*)好いた女子(おなご)が居れば仲を取り持ってやろう….皆の目にはさぞや気持ちの優しい父親像に映る事でしょうな!良い宣伝にもなりましょう。でもそれでは単なる自己満足でしか無い。兄者は皆の目に恰好良く映るのが目的ですか?それとも若君の役に立ちたいのですか?」


「そらぁ、お前!(◍ ºΔº◍٥)決まっている…役立つ方だ!」


「(٥`艸´)੭ ੈならば、無茶はお()しなさい!のんびり構えて時を待つ事です。お節介と助力は似て非なるものです!」


関羽の心のこもった諫言(かんげん)は劉備の心に強く響いた。ようやく劉備は翻意する事となったのである。


「=͟͟͞͞(٥◍′_₍‵◍)੭ ੈお前も言うようになったね?随分と成長したな!」


劉備は本音半分、皮肉半分にそう告げた。すると関羽は嬉しそうにこう答えた。


「ꉂꉂ(*´艸`*)そらぁ、若君のお陰でしょうな!儂も随分と鍛えられました。儂は若君の味方ですから、幾ら兄者でも覚悟成されよ?」


関羽は笑いながら念を押す。


「あ~判った、判った!=͟͟͞͞(٥◍′_₍‵◍)⁾⁾ 儂の負けだ。今回は収める事にする。全く!子龍といい、お前といい、儂の味方は翼徳くらいか…。おい!そういえばあいつが居らんが、いったいどうしたのだ?」


劉備は疑問のままにそう問い掛ける。


すると関羽はまた笑い出す。今度は苦笑 (しき)りである。


「全く!(٥`艸´)੭ ੈ子龍といい、兄者といい、酒が弱いのも考えものですな!翼徳なら既に発ちました。生き別れた娘に会うためです。奴が涙ながらにそうこぼしていたでしょう?」


「はて?Σ(◍ ºΔº◍*)そうであったかのぅ…あいつ他にも娘が居たのな?何歳くらいだ?」


それは極めて自然で、素朴な疑問に聞こえた。だから関羽も何の疑念も持たずに素直に答えた。


「そうですな…(٥ღ`艸´*)若君よりはお若かったと存じます!」


関羽はそう言った瞬間にギクリとした。


彼も正確な歳は知らなかったので、たまたまそういう言い方になったのだが、言い終える前に懸念を覚えた。だから想わず義兄を眺めた。


「兄者…(ღ٥`艸´*)=3 あんたまさか…」


目を皿のように見つめる関羽を尻目に、劉備はフフンと微笑む。そして何事も無かったように口を開いた。


「ほぉ〜そうか?(ღ◍′◡‵◍*)それはめでたいな♪帰って来たら、温く迎えてやろうでは無いか?」


そう言って笑った。


『懲りてない…(ღ٥`艸´*)』


関羽はニコやかに微笑む劉備を目の当たりにして言葉を失う。慚愧(ざんき)の念に堪えなかった。




その頃、張飛と趙雲は既に南郡に入り、あ~でも無い、こ~でも無いと目的地を目指している。


趙雲は適当なところで別れる予定だったのだが、張飛に泣きつかれて付き合ってやらざる逐えず、ほとほと困り果てていた。


『(ღ٥ ̄^ ̄)まさかこれほどの方向音痴とはな…』


さすがに埒が明かないと感じた趙雲は、文を取り上げてようやく家を探し当てた。張飛に任せていたら、未だ辿り着く事は無かっただろう。


関羽の書き記してある住居は正確で、まずここで間違い無い。趙雲はようやく解放されるとひと安心したものの、それは大いなる誤解だった。


「おい♪子龍!ꉂꉂ(*°᷄д°᷅*ꐦ)もそっと付き合わね~か?」


張飛は直前で怖じ気づいたのか、猫撫で声を出す。戦場ではその一喝で、敵を震え上がらせるほどの強者がだらしのない事である。


けれども甘やかす訳にもいかない。これは父親としての責任なのである。赤の他人がとやかく言う事では無かった。


「(  ̄^ ̄)私は任務を控えておりますのでこれで失礼します♪後はご勝手にど~ぞ!」


趙雲はわざと突き放すようにそう言った。


「何だい♪⁽⁽ღ(*°᷄д°᷅٥*ꐦ)子龍ちゃん連れないねぇ~!」


張飛は半べそである。それでも心を鬼にして 趙雲は一線を引く。物事には絡んで良い事と悪い事がある。


仮にもしこれが命のやり取りであれば、彼はそれがどんなに絶体絶命の窮地であろうとも、進んで助けに入った事だろう。


けれどもこれは私事であり、我が子との再会の瞬間なのだ。余計な詮索に当たる事は彼の矜持が許さなかった。


それに今は(ひる)む心がそう言わせているものの、本来家族との感情に満ちた会話を人に聞かせたい者などそうそう居ない。


これは兄貴分である張飛の矜持を守るためでもあった。今は一時、腹を立てても後日、この無言の配慮に感謝する事だろう。


仁義を重んずる真の男は、黙って背中で語るものだ。趙雲はそれ以上余計な事は言わず、只一言「津々がなく…( ̄^ ̄*)」と言って、先に立ち去る。


そして心を鬼にして、けして振り向く事は無かった。




「行っちまったか…(ღ*°᷄д°᷅٥ꐦ)」


張飛はしばらく趙雲の背中を見送りながら佇んでいた。彼だって本当は判っているのだ。義弟がなぜ自分を冷たくあしらったのかという事を…。


誰だって生き別れた娘が見つかったと聞けば素直に嬉しい。涙を流して喜ぶ事だろう。


そして早く会いたいと一日千秋の想いで待ち侘びるに違いないのだ。


けれどもようやくこれから会えるという段に成ると、人は却って躊躇(ためら)い、怖じ気づくものだ。


それが人の感情の起伏で在り、難しいところで在る。特に男親は駄目だ。こういう時に限って、てんでだらしない。


ものの役に立たないのである。


但し、ここまで来たのだからひと目会う事も無く引き返す訳にもいかない。未だ踏ん切りの衝かない張飛であったが、丹田に力を込めて勇気を振り絞り歩みを進めた。


そこは藤の木々に囲まれた一角で在った。狂い咲きで在ろうか、未だに花をつけているものもあり道行く者の心を穏やかにしてくれる。


仄かに甘く感じる匂いがきっと心を落ち着かせてくれるのだろう。張飛も例外無くその恩恵に預かり、だんだんと落ち着きを取り戻す。


やがて拓けた場所に出て視界が広がってくると、大きな池が在り、その中央には橋が架かっている。池には色とりどりの睡蓮の花が咲き誇り、来る者を温かく迎えてくれる。


『(ꐦ°᷄д°᷅)(なぎ)…そうであったな!』


夏侯氏が凪を産んだ頃には睡蓮の花が咲き誇りそれは見事であった。張飛はそれを思い出していた。


そんな気持ちが彼の歩みを早めた。そしていつの間にかその歩みには力強さが戻っていた。


「⁽⁽ღ(*°᷄д°᷅*ꐦ)頼もう♪」


たくさんの家屋が軒を連ねている一番奥の一軒には目印と成るように紫色の吉祥結びが掛けられている。


張飛が声を掛けるとやがて家屋の奥から慎ましい身なりの女性が出て来た。そして張飛の姿を認めると丁寧にお辞儀をした。


「張飛様で御座いますね!よくおいで下さいました♪」


「(ꐦ*°᷄д°᷅*)おぅ♪あんたが連絡をくれたお人かい?」


「左様です♪」


「(ꐦ٥*°᷄д°᷅*)で凪は?」


「それが…どうかこれを御覧下さい!」


女性は文を差し出す。張飛は受け取るとすぐに視線を落とす。


「Σ(*°᷄д°᷅*ꐦ)何だってぇ…」


張飛は絶句する。凪は既に発った後だったのである。


『探さないで下さい…』


そこにはそう書かれていた。そして心の準備が出来たら会いに行くとも綴られていた。


「(ꐦ٥*°᷄д°᷅*)どういう事だ?」


張飛は尋ねる。すると女性はその顛末を話してくれた。


女性の母親が夏侯氏の許で乳母をしており、ひとり娘のこの女性とともに長い間、凪を育てて来た。


長い年月、三人は祖母・その娘・孫娘という関係を続けて来た。物心つく前に生き別れたという過酷な運命を小さい幼子に背負わせるのは酷だと感じたからだった。


ところが先頃、乳母が亡くなった事から、長年、母親として接して来た女性もこのままではいけないと感じて名乗り出る事にしたのであった。


娘は本当の父親と母親が生きている事を初めて知らされ、動揺した。真実を受け入れる事が出来なかったのである。


そこで悩んだ挙げ句、迎えが来る前に文を残して家を飛び出してしまったという事であった。


「(ღ*°᷄д°᷅٥ꐦ)しかし…どうやって?女の身で移動手段にも困るで在ろう!」


「それが…あの子は賢い娘です。そして貴方様に似て、男勝り。馬に跨がり弓矢も上手なのです。上品には育てたつもりですが、お転婆なところが玉に瑕。ですが十分ひとりで生きていける様には育てました。私もいつまであの娘を守ってやれるか判りませんでしたから…」


女性はそう答えた。この乱世の世の中である。そう育てる事が預かる上で最良の事だと考えていたのだろう。


責められる事では無かった。むしろ感謝すべきだったと謂えるだろう。


「(ꐦ٥*°᷄д°᷅*)何てこった!!」


張飛は迎えを躊躇していた自分を悔やんだ。もう少し早く迎えていれば良かったと想ってみても後の祭りである。


「⁽⁽ღ(*°᷄д°᷅*ꐦ)事情は判った!そういう事なら心配在るまい。あんたはどうする?」


すると女性ははっきりと言った。


「私はここに残ります。ここはあの娘の家ですから、気が向けば戻って来るかも知れません。その時は温かく迎えてやります。それが今、私に出来る唯一の事ですから…」


「⁽⁽ღ(*°᷄д°᷅*ꐦ)判った!世話に成ったな♪あんたの事は儂も夏侯も悪くはするまい。何れ改めて迎えに来よう♪」


こうして張飛の再会は空振りに終わった。逞しく育った愛娘が無事で居てくれる事を願うのみであった。

【次回】鷹に導かれし者たち

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ