門出
こうして虞翻との会見は無事に幕を閉じた。結局、潘濬の出る幕は無く、茶を通しての触れ合いだけに終わった。
けれども、この話し合いの生き証人になると共に新たな知已を得る事となったのである。若君にとっても大いに実りのある一時になった事を、彼は素直に喜んでいた。
そして彼は再び、敵さえも魅了し影響を与えてしまう若君のカリスマ性をそこに見る事になったのである。
『|• •๑)”ㄘラッ♡影響を与えられたのはむしろこの僕だ♪』
若君はきっとそう言うに違いない。
けれども時の変化と共に雪解けを迎えるように、互いの心が氷解して行く様を眼の当たりにした者にとっては、確信に近い証をそこに認めた事になる。
そしてこの若き太子の凄さはそれだけに止まらない。敵からの称賛と共にその教えを吸収し、またひと回り大きく成長した事であった。
勿論それはこの若君が聞く耳を持ち、その言葉を真摯に受け留める姿勢が在ってこそだが、当初難航すると思われた話に無事に終止符を打ち、相手の蟠りも自分の蟠りさえもスッキリと解き解したその布石は、見事というほか無かったのである。
「それで…(ღ • ▽ • ๑ )仲翔殿は今後どうします?貴方ほどの方が隠棲するのは惜しい気がしますが…」
北斗ちゃんの本音であった。でも彼が手の平を返す様に味方に付く事は無いとも想っていた。虞翻も今さら誤魔化す気も更々無く、素直な胸の内を打ち明けてくれた。
「そうですな…(ღ*。- ∀ - ٥)=3 今はまだ考え中と申しておきます。呉にはもう帰れぬ事は劉禅君も承知しておられる事でしょう。何しろ貴方に刃を向けぬと誓った以上、呉にはもはや儂の居場所は無いに等しい…」
「…ε- (-∀- 。)ですから五山のどこかで隠棲するか、むしろこの中華を飛び出す手も在りましょうな♪生憎ともう少し早く決断していれば、秦縁様が呉に居りましたから助けて下さった事でしょう…」
「…(*-∀- ٥*)ღ⁾⁾ でもその場合、この蟠りは解消されたかどうか怪しいものです。逆もまた然り... これもこの儂の不徳ゆえですかな?人生上手く行かぬものです!」
虞翻はそう告げるとニコやかに笑った。
北斗ちゃんは「(٥ •ᗜ•)✧それなら…」と彼の居場所を教えようとして、また制される。
「大丈夫!⁽⁽ღ(-∀- 。)本来そんな事をお願い出来る筋では在りませんからな♪貴方はどうも優しい上に馬鹿が付く程のお人良しです。世の中には儂の様に、いけずうずうしい者も居ります。そんな人達にまでいちいち反応しなくて宜しい…」
「…Σ(-∀- ٥。)それに貴方は紹介する人の身になりましたかな?自分で責任の取れる事なら宜しいが、人には都合というものがありますからな!あっ、いやはやこの儂もとんだお節介を…人の事は言えませんな♪」
虞翻もそう言うと頭を掻く。こいつも案外、良い奴らしい。そう潘濬は想った。
「しかし…(ღ• ຼ"•ꐦ)それにしても考える時間が必要でしょう。どうでしょう、総督閣下!しばらく仲翔殿を我らで客人としてお招きするというのは?それなら皆も文句は言いますまい♪」
潘濬の提案に若君の反応も早い。
「|'◇'*)".。oO それ良いじゃない♪あっ、いや、良い提案だ。さすがは侍中!良きに計らえ♪ゴホン、ゴホン…Σ(˶‾᷄﹃‾᷅˵)」
公式の場である。慌てて切り換えたためか、可笑しな具合となった。
「ガッハッハ♪ꉂꉂ(*-∀- **)ღ⁾⁾ これはこれは。太子様も大変ですな!まぁ、余所者の儂が言うのも烏滸がましいが、伸び伸び育てた方が宜しいのでは?あっ、いや、これは独り言ですがね♪」
虞翻も慌てて切り換える。潘濬も特に口を狭む事無く、三人は大いに笑った。そして北斗ちゃんは決断した。
「これで決まりだね♪ꉂꉂ(• ▽ •๑ )今から貴方は僕らの客人だ。貴方が居たいだけ居てくれて良い。江陵に居る分にはおそらく問題は起きないだろう。けど余所に出る時には十分注意して下さい。そうだな、何かご要望があればお聞きしますが?」
北斗ちゃんは誠意を示した。
虞翻はそれに応えて謝意を示した。
「有り難い事です。⁽⁽ღ(-∀- 。)そうだな、何かこの儂にも協力出来る事があれば、遠慮なく言って下さい。儂も償いがしたい。真の大夫は約束を違えぬ者、義理を欠かない者です…」
「…(ღ*。- ∀ - ٥)そして可能であれば、劉璋親子に謝りたい。無理は申しません。もう儂の顔など見たくも無いかも知れませんからね!この通り…」
虞翻はそう願い出た。
「えぇ…Σ(,,ºΔº,,*)可能な限り善処しましょう。今はお約束出来ませんがね♪仲翔殿、これで宜しいんでしょう?」
北斗ちゃんは微笑みながらそう答えた。
「⁽⁽(-∀- 。)感謝します♪」
虞翻もそう答えるとニヤリと笑った。
「さて…(*`•o•´)੭ ੈそうなると問題は彼の当面の身柄を誰に預けるかだね。幾ら自由とはいえ、そのまま放って置く訳にも行くまい。どうだろう?ここは言い出しっぺの潘濬にお願い出来ると助かるが?生憎と僕はあちこち跳び回らなきゃ為らん…」
「…|• •๑)”ㄘラッ♡その都度、仲翔殿を連れ回すのも大変だ!そしてそうなるとあちこちで彼は顔を晒す事になる。それじゃあ余りにも勝手が良くないからね♪つまりはそういう訳だ。二人はどう想う?」
北斗ちゃんは当事者たる二人にも訊ねた。彼らがどう想うかが大事であるからだ。
「✧(• ຼ"•ꐦ)はぁ~私は特に異存は在りませぬ。若君についた方がここの事情に通ずるには都合が良いと考えていた事は確かです。でも今、若君のお言葉を聞き気が変わりました。仰る通りでしょう。私で宜しければ喜んで引き受けましょう♪」
潘濬は快く頷く。虞翻には多少の遠慮があり、潘濬の発する言葉にじっと耳を傾けていた。そしてその言葉が終わりを告げると、受け入れる姿勢を示した。
「ꉂꉂ(-∀- 。)それは有難い♪この儂には何の異存も在りませんな!若君の配慮に感謝致します。そして潘濬殿。宜しくお願いします。どうやらこれでこの儂も安堵しました…」
そう言って快活に笑った。潘濬はその返事に喜びを示した。
「(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ こちらこそです♪茶でも飲んで今宵は心行くまで語り合いましょうぞ!実は私も下戸でしてね♪貴方の気持ちは良く判りますよ!」
「ꉂꉂ(*-∀- *)カッカッカ♪そうでしたか?貴方も!それは不思議な巡り合わせですな。否…逢うべくして…ですかな?」
虞翻もそう応じた。
「(๑*´° ᗜ °๑)੭ ੈ✧どうやらこれで決まりだね♪じゃあそうするとしよう♪実は僕は明日の朝は早いんだ!だから助かる。仲翔殿とはまた明日以降にゆっくりと話すとしよう♪」
「✧(-∀- 。)承知致しました。色々とご配慮に感謝します…」
虞翻の拝礼に北斗ちゃんも「あぁ♪またね!潘濬も頼むね♪」と言って答礼すると、寝室に下がって行った。二人は丞相代理・執務室を出ると歩きながらどちらからともなく語り出す。
「(ꐦ •" ຼ •)良かったですな!しかし無茶が過ぎる。私もあそこは一度試しに入った事が在りますが、かなり困難を伴った!そもそも人の通れる所では在りませんし、罠も多い。子龍将軍の叡知の結集された作品ですからね♪」
「ꉂꉂ(*-∀- *)でしょうな♪だからこそです!でなきゃ元々選びませんでした。むしろ褒めるべきは太子殿の叡知でしょう。それを逆手に取るとはね♪完敗ですな!」
虞翻は心底感心した様にそう答えた。潘濬も頷く。
「(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ えぇ…それが我が主人・劉禅君なのですよ♪私も貴方と同じで初めてお逢いした時に驚いたものです!」
「"(-∀- 。)ホォ~貴方も♪ですが貴方は侍中なのでしょう?それにかなり太子様の信頼が厚い様だ。普通は儂の様な侵入者をいきなり赦す事など有り得ない。ですが赦した上に結果的には貴方の一言が効いたと言えます。ここは変わった所ですな!」
「(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ それは今が過渡期だからでしょうね。太子様はここに着任遊ばした当時はまだまだ太られていたそうで、右も左も判らなかった筈です。唯一の味方が丞相で在り、関羽将軍でした。太子様は名目上は丞相代理の監察官という名目で、名前も董斗星と名乗る事になっていました♪」
「⁽⁽(*-∀- 。)あぁ…成る程、そういう事でしたか?」
虞翻は困難かと想われた情報が、こうも簡単に手に入るとは意外だと謂わんばかりの心持ちである。
無論、自分はもう白旗を掲げた訳だから、当然の事ながら他意は無い。けれどもこんなに簡単に人を信用する太子の姿勢や推し戴く配下達の揺るぎの無い信頼には驚いている。
その辺りの根底に在るものが何なのかについては未だ不明であった。けれども潘濬は何の障りも感じていないらしく、簡単に踏み込んで来る。そして言った。
「(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈ一見の方にとっては、然も可笑しな感覚でしょうな?私も当初は理解が及ばなかった。けれどもあの方は独特の感性をお持ちなのです。噂は話し半分に聴いて於いて、直に会って話をする事で相手を見極められております…」
「…Σ(ღ• ຼ"•ꐦ)そしてその性根を見据えた途端に相手を受け入れ信用されます。未だ我らにはその根底が見えませぬ。けれどもあの方の独特の感性は確かです。そして相手を信ずれば、最後までお信じに為られます。疑いは疑いを呼ぶのだそうです…」
「⁽⁽(*-∀- 。)ホォ~まだお若いのにそれ程の目利きで在られるか?それは凄い!」
虞翻も感心仕切りである。けれども潘濬はサラりとこう言った。
「…(ღ •" ຼ • ٥ꐦ)恐らく人の悪意に長年晒され続けた御方だから、その辺りの事は肌で感じる事が出来るのでしょうね。にも拘わらず、人とは生来は善であるという孔子の教えを地で行く御方です…」
「…✧(• ຼ"•ꐦ)環境が人を変えるのだそうです。だから本来の善為る自分を取り戻した方には寛容ですし、一度信じたら最後までお信じに成るというのも先ほど、ご説明した通りです。若君は在る時にこう言われました…」
『✧(๐•̆ ᗜ •̆๐)そんな事か…造作もない事だ!では聞くが潘濬は自分に信を置かない人を信じられるかい?これが全てさ♪人は信頼されるとそれに応えたいと想うものだ。裏切りには後ろめたさを感じるものだろう…」
『…(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ 僕はね潘濬、一度信じたら最後までそれを貫く。それなら喩え裏切られても自分の目が曇っていたのだと諦めも着く。けれど相手を信じられなく為っては世も末だ。決して良い結果を生んだ試しは無い…』
『…(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈそれは数々の先人たちが身を以て証明している。特に名君たる方々はそこを間違えない。裏切られたらそれは自分自身の不徳のせいさ♪そう想えば誰も傷付くまい。それが僕の覚悟かな?決して甘さなどでは無いと断言しよう♪』
「…(ꐦ ٥•" ᗜ•)まぁそういう事です。私は人を追い詰めない姿勢なのだとその時に感じました。漢の劉邦は配下をお信じに為れなくなった晩年はかなりの粛清をされたと聴いております!恐らくこれは過去の偉人の悪意を反面教師にしているのだと、私はその時に感じたものです!」
潘濬は虞翻の問い掛けに真摯に答えた。これは潘濬の感性でも在るのだろうが、元々は若き太子から学んだ姿勢でも在ったのだ。
『ε- :;((-∀- *٥ ))));:覚悟の差なのだ…』
虞翻はその時、ふと感じた。裏切りは次の裏切りを得てして呼び起こすものだ。その逆に信頼は信頼を引き寄せる。
そしてどちらの場合も大抵の場合、それは連鎖するものなのである。同じ連鎖するものならば、後者を連鎖させた方が良いに決まっている。
果たしてそこまであのうら若き太子様が考え抜かれた事かどうかは定かではない。けれども感性でそれが判っているなら、それはそれで素晴らしい事なのである。
"天の祝福"に護られている。そう言っても過言では無いからだった。
『ε- :;((-∀- *٥ ))));:果たして自分はどうなのだろう…』
虞翻は自らの身に照らし合わせて考えていた。裏切り者の末路はきっと良くないに違いない。
けれども自分は国や仲間を裏切ったつもりも無い。過去に主君に恵まれなかった先人はたくさん居た。
別に国に損害を与えた訳でも、情報漏洩を画策した訳でも無い。単にここで降りただけだ。その結果として自分は職を失った。
そして今までの奉公で真摯に尽くして来た。悔いは無い。そしてここで自らの間違いを認めて、それを払拭したのだ。
それは元より若き太子やこの潘濬という男のお陰である。今自分に出来る事は、その間違った今までの半生を反省し、新しい自分の道を再出発させる事なのではなかろうか。
虞翻はそう決意を固めたのだ。そしてこれ以上、自分に嘘は付かず、人を欺かず。そう心に誓いを立てた瞬間であった。
潘濬は考え込んでいる虞翻を横目で眺めながら、何となくではあるが、その気持ちが判る気がしていた。自分は運良く良い主人に恵まれた。
それはいみじくも同胞の劉巴や田穂、そしてあの傅士仁でさえも語っていた事である。この虞翻という人は恐らくどこかで道を踏み外したのだろう。
けれども今日この時にその事に自ら気がつけた事は幸いであり、それは"天の情け"なのだろうとそう感じていたのである。
「(ღ* •" ຼ • *ꐦ)仲翔殿!そろそろ夜も更けて参った。そろそろ寝床にご案内致そう。これから時間はたっぷり在ります。また明日も日は上るのです♪そうでしょう?」
「⁽⁽(*-∀- 。)えぇ…左様♪お陰様で、今夜は良い夢が見れそうです!」
虞翻もそう答えた。二人は肩を抱き合いながら、家路に着いた。
時は少々遡る…。二人が執務室を出て行くと、寝室に消えたと思っていた若君は執務室に再び戻って来た。そして囁いた。
「(٥ •ᗜ•)⁾⁾ お~ぃ、田穂!もう良いぞ♪」
「:;((`罒 ´٥ ))));:はぁ、こりゃあどうも!」
田穂もようやくのお役御免とホッと溜め息を洩らす。
「(ღ`⌓´٥)⁾⁾ 何事も無くて、あっしも一安心です。若の読み通りでしたな♪おめでとう御座います!」
「✧(๐•̆ ᗜ •̆๐)…有り難う♪でもこれは皆のお陰でもある。今回は先入観の無かった潘濬の助言に助けられたのは確かだ。けど兄ちゃんも居て、正直心強かったし、桓鮮も無傷で捕縛してくれた。そして田穂、何より君の僕を護ろうとする気迫を感じた。とても心強かった…」
「…ꉂꉂ(• ▽ •๑ )そして廖化の気持ちも嬉しかったな!それだけじゃ無いぞ♪皆も大いに協力してくれた。だから皆に感謝している。チーム北斗ちゃんの総力を結集出来た勝利だな♪そして何よりだったのは、皆の僕に対する直向きな姿勢だ。あれが仲翔殿の心を氷解したのだと僕は想っている…」
「…Σ(,,ºΔº,,*)世の中、まだまだ捨てたもんじゃない。信頼し合う仲間に恵まれ、ひとりの迷える男にこの先の道に灯る輝きを示す事が出来たのだ。先に待つだろう明るい道程を垣間見せる事が出来たのだと謂えよう。これもチームの勝利だ♪御苦労だった!君も今日は良く休んでくれ!また明日は明日で大変だが宜しく頼むね♪」
北斗ちゃんは感謝の言葉をそう言い表した。若君らしい心のこもった気持ちの顕れだと田穂は感じていた。
「(*`ᗜ´٥)੭ ੈ何の♪大した事じゃ在りません。若を護るのはあっしの務めです。廖化や桓鮮には若の気持ちを伝えておきましょう。まぁあいつらが判らない訳も無いですがね!人は言葉にされるとそれでも嬉しいものですからな♪あっしだけが聞いちゃ何か勿体無いや!まぁそういうこってす。若もお疲れでしょう!明日も早い。良く身体を休めて下さいや♪あっしもこれで失礼しましょう♪」
「♡(๑>•̀๑)" だね!有り難う♪じゃあお休み!」
北斗ちゃんは手を振ると再び寝室に消えて行った。そして田穂もそれを見送ると、やがてゆっくりと執務室を退出して行ったのだった。
【次回】朝靄