表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/308

自分らしく在るという事

卒倒していた関平を支えて椅子に座らせる。倒れた拍子に頭を打つと、不味い。打ち所が悪ければ、下手をすれば脳に深刻な被害をもたらす。


医者としての自覚が出来てきていた北斗ちゃんには、彼を見捨てる事は適わなかった。人としても見過ごせない。ましてや、こちらに例え非が無いにしても、その原因を作ったのは自分である。放って 置く訳にはいかなかった。


彼は関平の(まぶた)を開いて注意深く見る。


『( -_・)……』


そして少々考え込んでいたが、弎坐に指示を与えた。


「(^。^;)井戸から至急、水を汲んで来てくれ!桶に一杯分あれば良い!」


「(-ω-;)へい!判りました…」


弎坐は指示通り、桶に水を張り持って来る。


「(-∀-`;)やむを得ぬが、これ以上手っ取り早い方法は他に或るまい!」


彼は桶を受け取ると、勢いよくそれを関平の顔めがけてぶっ掛けた。


「うわっ…(ノ◇≦。)☆彡」


関平は冷水をぶっ掛けられて想わず意識を取り戻した。もう大丈夫である。


「私はいったい…(;つД`)?」


彼はすっかり前後の様子を失念して、自然の成り行きから、辺りを見渡した。こういう時に、人は自分の立ち位置を確認するために、周囲から情報を取り入れる様である。


そしてその結果として、太子様の存在を認める。彼が観念した瞬間だった。


「(´つω・。)私は意識を失っていたのですね…」


彼はいみじくもそう呟いた。


「悪かったね( -_・)!少々お痛が過ぎた様だ、謝まるよ…この通り!」


北斗ちゃんは両の手の平を合わせて陳謝する。


「否…( ω-、)私の方こそ、つまらぬ隠し立てをしてすみません!父に固く口止めされていたものですから…」


関平は既にいつもの冷静さを取り戻していた。つまらぬ隠し事を捨てたお陰で顔色も良く、晴れやかな気持ちに溢れていた。


北斗ちゃんはもはや焦る事無く、彼の言葉を待っている。人に無理矢理白状させる事は、やはり倫理に(もと)る。言いたい気持ちにさせる事こそが、大事なのだと痛感したのである。


勿論、こんな事を口にすれば、『まだ青い』とか『甘ちゃん!』とか陰口を叩かれるだろう事は判っている。


「( -_・)それが何だ!」


彼は気にしない。自分は自分なのだと、この時に想ったのである。




『自分らしくある事…』


簡単な様で、これは大変に難しい事だ。


まず第一に、どれが本当の自分の姿なのかを見極める事の難しさ。


人は社会通念に縛られる余り、まず或るべき理想像を思い浮かべる。そしてそれに近づこうと努力する。否、努力させられるというべきだろうか。けしてそれは悪い事では無い。社会教育がそれを支持し、規範と道徳を守る模範的な姿勢を尊ぶからである。


但しこれは社会が求める人としての在り方であって、皆が同じ方向を向き、方針に縛られ過ぎると人は画一化する気がする。すると個性という物が失われてしまうのでは無いかと思う。


理想像に縛られる余り、人は知らないうちに自分を去勢に追い込む。追い込まれる事で自己を見失い、個性を見失ってしまうのではないかという気がする。


一度自分の個性を見失うと、自己の在るべき姿を認知するのが難しくなるのではないか…そんな気がする。


だから社会通念に適応しながらも、内なる自己の中では自分に在った個性を育んで行く。


自分の在り方や考え方に自信を持ち、周りの意見には良く耳を傾け、その是非を自ら詮議し、良いものは吸収し、悪いもの、或いは不要なものは排除しながら個性に磨きを掛けて行く。


難しい事ではあるかも知れないが、それが出来れば育まれた個性は、迷いを軽減し、十二分に発揮されるのでは無かろうか。


逆に努力した結果として、それが叶わない時には、真逆の失念した姿を思い浮かべる者も居るだろう。人は社会生活の中で、様々な問題にぶち当たり、それを乗り越えて生きている。


色々な人と交わり、影響力を受ける事で、果たしてそれが自分の考えなのか、他人に刷り込まれただけの考えなのかが判断出来なくなる可能性すらある。


そうなって来ると、いったいどれが本当の自分の姿なのか?混乱に陥る時も在るだろう。そんな時には一旦、冷静に成り、素直な心で自分の胸に問う他あるまい。


但し、例え自分の或るべき姿を見極められたとしても、これが半永久的に不変であるかと問われるならば、それも違う気がする。人は生きているのだから、絶えず経験を積み重ねて行く。


そうする事で人は成長して行くのだから、過去の自分と現在の自分、未来の自分で或るべき姿に違いが出るのは当たり前の事なのだ。だから、今そう想えればそれで良い!


過去の自分は現在の自分を写す鏡だ。それを踏まえて、今の素直な心が表現出来ればそれで良いのだ。恐れる事は何も無いし、人の(さげす)みを真に受ける事も無いのだ。


そして例え未来の自分が、今の自分と違う判断をする事があっても、現時点で先の未来の事まで心配する必要には及ばないのだ。今の素直な自分の心を信用して生きて行けば、自分を見失う事も無いのでは在るまいか。


そのためには自分に嘘を付かない事であり、自分を裏切らない事なのではなかろうか。断言はしない。今の自分がそう考えているだけである。


人それぞれに違う人生を生きている。だから色んな考え方や選択枝があっても、それは極めて当たり前の事なのだ。只ひとつ言える事は、自分を自分で信じてあげる事である。


第二に、自分を例え見極める事が出来たとしても、残念ながら人には煩悩(ぼんのう)という物が存在する。


無論、煩悩にも悪い事ばかりが伴うのでも無い。例えば景色や人を見て、美しいと想う心は大事にするべきだろう。友を得て喜びを分かち合い、料理を食べ酒を飲んで、美味しい旨いと感じる気持ちも大切な物だ。


程度を逸脱しなければそれは人の人生を豊かにしてくれる活力源にさえなるだろう。


但し、厄介な負の面も多々存在する。自分の心の中で『これは駄目だ!』と強く念じたとしても、それに抗えず心が負けてしまう事もある。そして考える前に、自然と身体が反射的に動いてしまう事さえある。


自分を律する事の難しさは、いつの時代も誰の中にも存在している。それでもそれを克服し、負けない心を養うために、皆、人それぞれが自分に合った方法を見つける事に余念が無いのだ。


人によっては、精神修養や修業に道を見出す人すら存在する。けれども結局の所、最後に決断するのは自分自身である。


出来得るならば、自分や他人を偽ったり、傷つけたりしない選択技を選びたいものである。




関平は決心したのか、話し始めた。


「(,,・д・)あの日の前日…見張り台から妙な報告があったのです!」


彼が話してくれた内容を簡単にまとめると以下の様になる。


身なりは商人であるが、商いに貪欲では無い。


商いの簡単なイロハに精通していない。


妙な素振りは見せないが、内密に帯剣している者も居る。


こちらの人数を確認している者がいる。


交代するタイミングを精査している者が居る。


この五項目であった。


「(^。^;)かなり危ういな…」


これだけでもかなり目を引くに違いないのだ。


「(^o^;)そこで父は貴殿方を遠乗りに連れ出す事で、遠くからその様子を窺う事にしたのです。今は入国した全ての間者の追跡に従事されており、誰と繋ぎを取るか見極めようとなさっております!」


「( -_・)良く知らせてくれた。呉は積極果敢に情報収集に乗り出している様だな…わざわざ敵地で医者にまで来るとは、大胆不敵な連中だな…」


「(,,・д・)若のところにも行かれたのですか?」


「あぁ…( -_・)それらしき者達がな!全員かどうかは判らぬ…しかしながら、十人は降るまいよ…」


「( *゜A゜)そんなに?」


「あぁ…( -_・)一週間分の診断書類を確認したから、これは事実と断言してもよかろう!」


「御助力に感謝致します…有り難う御座います!」


「なぁに…( -_・)然程の事でも無いさ!」


「父が戻りましたら、(^.^)御来訪の件、お伝えしておきます!」


「あぁ…(´∇`)次いでで悪いが、大事な相談があると伝えておいてくれないか?」


「(^-^)/承知しました!」




二人は関羽邸を辞し、時間が余ったので散策に興じる。たまにはのんびり過ごすのも良いものだ。


「弎坐!( -_・)茶屋で団子でも食べよう♪」


「(-ω-;)え♪北斗ちゃんいいの?」


「( -_・)たまにはな♪親父さん団子十串ね!あと茶を下さい♪」


「あいよ♪」


こうして二人は麗らかな陽射しの中、旨い団子を食いながら午後のひとときを過ごす事になった。


長い旅の果てに遠路・荊州に辿り着き、それからも医療現場と碁打ち、学習に剣技と精力的に励んで来た北斗ちゃんにもたまには静養が必要である。


たったひとときの時間とはいえ、弎坐とたわいもない会話に興じて過ごす時間は、彼にとっても貴重なものとなった。


「(-ω-*)いやぁ~団子五串も食べてしまった…美味しかったっすね♪北斗ちゃん有り難う♪」


「( -_・)いゃいゃ…ほんと旨かったね♪ダイエット三昧だったからな…たまには良かろう♪弎坐、お前も良くやってくれてるからな…たまには感謝の気持ちを示したかったのさ!いつも有り難うな♪」


「( ω-、)北斗ちゃん…」


弎坐も嬉しかった。お団子も美味しかったには違いないが、若君の真心に触れてその優しさに感じ入っていたのである。


『(^。^;)たまにはいいよな…また太らねば良いが…』


若干、心配気味な北斗ちゃんであった。




帰り道…二人がこんな調子で歩いていると、事は突然、風雲急を告げる。


彼らは突如、白装束の男達にあっという間に囲まれてしまったのである。


『(-ω-;)ヒョェ~』


弎坐は完全にビビってしまっている。


「( -_・)…何だ、お前達!何か用か?」


北斗ちゃんも内心の動揺はあるものの、表には表さない。慌てても状況は変わらないし、弎坐が一緒なので下手に動けない。


費観が一緒だったならば反射的に一戦交えている頃だろうが、身動きは取れなかった。だから自分が落ち着く他に無かったのである。


「( `ー´)ホォ~、なかなかどうして!先生あんた冷静だね♪怖くはないのかい?」


首領らしき男がそう宣う。皆、口許を布で覆っているが、あの白装束なので身元はバレバレである。北斗ちゃんは思わず苦笑いしてしまった。


「( `ー´)"何だ!何がおかしい!」


「( -_・)"本当に聞きたいですか?」


「( `ー´)む!まぁいい…今はそんな事をしてる場合ではない!ちょっと来てもらおうか!」


「( -_・)いきなり何ですか?大勢で取り囲んで…だいたいこのまま逃げ切れると思います?」


「( `ー´)ふん!知った事か、緊急なのでな!やむを得ずさ…」


「( -_・)?と言うと怪我人か何かで??」


「(; `ー´)?何だ先生鋭いな!重傷なのだ…見て欲しい!」


「( -_・)ホッ…何だそんな事なら早く言いなさい♪こんなに脅す様な事をしなくても見てあげますよ!」


北斗ちゃんは少し安心した。彼らはどうやら先生としての彼に用があるらしい。


「( `ー´)本当かね?」


「( -_・)勿論!嘘なんて言いません…私は医者ですから!」


北斗ちゃんはもう大抵の事は出来るから一応医者である。華侘先生が認めたのだから間違いでは無い。北斗ちゃんと弎坐は男達と共に着いて行く羽目になった。この際やむを得まい。


「( `ー´)これ以上は目立つと不味い!散れ!」


首領らしき男の号令で殆どの男達は居なくなる。彼と二人の部下だけになった。


「( -_・)弎坐は離してやってくれませんかね?目的は僕なのでは?」


「( `ー´)ダメだ!一緒に来て貰う…」


「( -_・)だってさ…弎坐!しばらく諦めてくれ?」


「(-ω-;)ふぇ~い…」


「( -_・)あ!でも道具や薬が無いや?どうするかな…」


「( `ー´)…おい!お前取って来い!それまでこいつは預かる…」


「( -_・)…だってさ!弎坐、しばらく我慢だ!直ぐに迎えに行ってあげるから辛抱なさい!」


「(-ω-;)ヒエ~嘘でしょ!北斗ちゃん、あちき怖い!」


「( -_・)大丈夫だよ!仁義は守るだろ?」


「( `ー´)当たり前だ!我らは無駄な殺しはしない…」


「( -_・)だってさ!じゃあ僕行くから!どこに向かえばいい?」


「( `ー´)私が案内する…先程の団子屋の前で待つ!」


「( -_・)分かった!で症状は?」


「(; `ー´)斬られたのだ!」


「(; -_・)まじで?そりはどうかな…」


北斗ちゃんは焦っていた。彼が小刀を使ったのはまだお肉ちゃんだけだったのだ。


「(; `ー´)先生頼む!事は急を要する…」


「( -_・)まぁ…仕方無い!待っててくれ!」


彼はそう言うと一目散に駆けて行った。弎坐は白装束の男達に捕らえられている。


果たしてどうなる?以降次回!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ