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体制刷新

翌日の朝、朝政の場に於いて、北斗ちゃんは河川事業の着手開始と運河構築のための本格稼働に移行する旨を皆に宣言した。これからは人を集めて実際に作業に入る事になる。


その場には秦縁も呼ばれており、改めて依頼を受けてこれから人の斡旋をどんどん促進させて行く事に為った。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ秦縁殿♪宜しくお願いします♪」


北斗ちゃんは秦縁にぺこりと頭を下げて頼み込む。人がどれだけ集まるのかは秦縁の力に依るところが大きいのである。


勿論、荊州一円からも大々的に人を集めるし、荊州に限らず他国からの出稼ぎで来たい者も制限無く受け入れる方針であるが、それでも工事にはまだまだ人が居るのだから、秦縁の商人としての力量が問われる事になる。


「(ღ❛ ᗜ ❛´๑)劉禅君!お任せあれ♪お約束通り、この秦縁の商人として培った力量をお見せしよう。働き口が無く、稼ぎたいと想う者は各地に幾らでも居ますからな!彼らに声を掛けて勧誘し拾い上げてやれるなら、互いの利となります。我ら商団一丸と為って取り組ませていただきますぞ♪」


秦縁も皆の前で改めて協力する事に同意し、その熱意を示した。




即日、河川整備の募集は始まり、いの一番に荊州一円の働き手が集まり始めてくると受け入れ側の動きも慌ただしくなる。


北斗ちゃんの周りでも着手に当たる者たちの活動が活発になる前に大々的な人事を刷新して事に当たらせる事になった。


まず荊州に帰郷したものの、職務がはっきり決まって居なかった徐庶は廷尉(えいい)となり、法務全般を取り仕切る事になる。ある意味大抜擢と謂える。


それだけ大勢の民が集まる生活の場に於いて日々起こるで在ろう問題解決に着手する事になった。


諸葛均はその補佐を担う。そして廖化は民の安全と保安を兼ねた武官として徐庶の采配のもと力を発揮する事に為ったのである。


これはある意味異例の抜擢と云えた。廖化の書に親しみ努力する姿勢が評価された結果であった。


劉巴はようやく河川事業の着手に於ける計画推進のために一意専心(いちいせんしん)骨を折る事になるが、若君の期待はそれだけに留まらず、糜竺が抜けた後に空白のポストとなっていた尚書令に大抜擢した。


これで彼は必然的にチーム北斗ちゃんの根幹を担う立場に踊り出る事に為ったのだ。だから単なる尚書令ではなく、北斗ちゃんは彼を録尚書事として位置付けている。


これはこの荊州に於ける政務全般の舵取りを担う事であるから、その分責任も重大である。けれども視野が広く冷静に物事を見つめて、的確な判断が出来る劉巴の能力とその人柄が評価された結果だった。


北斗ちゃんがそれだけこの劉巴という男の能力を買い、信を置いていた事に為ろう。いみじくも法正が見極めたこの男の力を若君は見出だした事になる。


そしてかの老人が懸念していた心配は杞憂であった。なぜなら、劉巴はここ荊州に於いて真に仕えるに足る主人にようやく巡り逢えたからで在った。


潘濬は正式に侍中(この場合は太子の顧問・相談役)となって少府(総務長官)や大司農(財務長官)も兼務するというかなり権力が集中する役割を担う事に為った。


本来で在ればこれ程の権力集中は避ける必要があるのかも知れないが、彼がそれだけ太子の信頼を勝ち得ている証明である。


しかも彼は独善的な振る舞いは避け、生真面目な性格ゆえに私腹を肥やす心配も無かったから、誰も異を唱える者は居なかった。


それにかなりの重責を担い、負担も大きいから、彼の様に時に大鉈(おおなた)を奮い、沈着冷静に事を推し進める実務能力に長けた力量が無ければ務まらなかったと謂えよう。


そして関羽は荊州総督を正式に若君に委ね、その代わりとして大将軍・荊州方面大都督と為った。これにはさすがの関羽も目が点となった。彼は名実ともに軍部の最高指揮官となったのである。


この任命にあたってはオマケが付いており、漢中王のお墨付きがあったのだ。北斗ちゃんは「爺ぃ~良かったな(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾♪」と声を掛けた。


それは自然と出た言葉であり、皆も最近とみに人格が(そな)わった関羽の事を誇らしく思っていたから、すぐに満場の拍手喝采を浴びる事になった。


本来ならここで潘濬のお小言となる筈だが、この時は彼も堅い事は言わなかった。公式の場で私情を挟む事は確かに良い事では無い。


けれどもこれだけの人々の支持を勝ち得た男もそう居ない。場の雰囲気を大事にしたいと彼が想ったとしても、それは止むを得ない事と言えた。


こうして劉公嗣による任官授与は次々に行われる事になったのである。任官授与の式典には各地から大物が続々と集まって来ており、南郡からは趙雲・張嶷、公安砦からは費観・費禕・張翼も皆、(こぞ)って参集している。


零陵からは費詩、上庸からは劉封・孟達も呼ばれていた。任官式は順不同に行われるため、既に呼ばれた者が高位とは限らない。


これはある意味、北斗ちゃんの"遊び心"がふんだんに発揮されたものであると同時に、上下の別を本来はつけたくないという配慮でもあった。




「(•́⌓•́๑)✧あのさぁ~僕は別に上下関係をつけたくて、今回の事を企画した訳じゃないんだかんね!現在の職責に合わせたかっただけなのよ♪」


北斗ちゃんは右の手の平を目一杯広げて、手首を利かせながら左右に懸命に振り、(ちゃ)(ちゃ)うと可愛らしい仕草を見せた。


「(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈ 若君、ですが元々官位とは上下の別が付いているから官位なのですぞ!」


潘濬は諭すように説明した。


「いやいや…(๐•̆ ·̭ •̆๐)そんな事は判ってる!現在の官位を使うのは、皆がそれに馴れているからだ。それだけの事さ♪僕はあくまで官名で役職名をはっきりさせたい訳よ!だからぶっちゃけ言うと、誰が上で誰が下かなんてどうでも良いんだ。僕を頂点に、皆が肩を並べて並んでいる。それで良いと想っているんだよね!これじゃ駄目かしら?」


北斗ちゃんは冷や汗を掻きながら、そう訊ねた。


「しかし…✧(• ຼ"•ꐦ) 我々は宜しいのでしょうが、官位とは何かという事に馴れた連中にとっては、甚だ納得いかないものが在るかと!それに若君は御存知無いかも知れませんが、官位の上下は俸禄(ほうろく)に直に影響致しますぞ!それはどうするのです?」


とどめの一撃であった。


俸禄(ほうろく)とはこの時代のお給料の事であるが、歴史上、中国は戸数(こすう)で表す。戸数とは、簡単に言えば民が住んでいる住居の数であり、そこから上がってくる税が、治めている領主の収入となる仕組みであった。


因みに我が国では安土桃山~江戸時代には石高で表した。石高とは米俵の数である。


「(*´・д・)えっ?そうなの!」


北斗ちゃんは青天の霹靂(へきれき)と謂わんばかりに驚いている。潘濬は『ε- (° ຼ"° ꐦ)やっぱり…』と然も在らんとばかりに溜め息を洩らす。


「若君…(ღꐦ•"⌓•)" 貴方、我々がどうやって生活しとると思ってるんです?」


潘濬は呆れた様にそう訊ねた。


「✧(•́⌓•́๑)そりゃあ、お前達が働いてくれる対価として国庫から払うのだろう?」


北斗ちゃんは言い切った。


潘濬はまたまた呆れた様に、横目でチクりと視線を飛ばして来る。


「(° ຼ"° ꐦ)あのぅ…若君!判って言ってます?」


「( •̀_₍•́ )無礼者!どういう事だ…」


「(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ じゃあ、聞きますが…そもそもその国庫を潤す為の糧は何です?」


「(๐•̆ ·̭ •̆๐)そらぁ税だろう。違うのか?」


「(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ その通り!では税とは何です?どこから来るのですか!」


「(๐•̆ ᗜ •̆๐)何を今さら…民から徴収するのだろう?何が言いたい!」


「(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ はい、正解!では誰がどうやって徴収するのです?民はどうやって税を納めるのですか!」


「(´°ᗜ°)✧そらぁ国の官吏が徴収するのだろう♪民は役所に納めに来るんじゃないのか?」


「Σ(ღ• ຼ"•ꐦ)はい!ブブ~不正解!やっばり…若君、貴方何にも判っとらんのですな!民から税を徴収するのは、その地を治める領主です。領主は民から税率に応じて穀物や米で税を納めさせるのです…」


「…その納めさせた米や穀物を領主が国庫に納めます。納めた量に応じて貨幣方が金・銀・銅・鉄で鋳造された銭で支払いを致します。未だに民の間では物々交換が行われておりますが、我々は日常、米や穀物の現物を担いで歩く訳にはいきませんからね♪…」


「…だから銭を代わりに持ち歩くのです。その代わりとして、各地の農産物、まぁこの場合は米や穀物ですが、それがどんどん国庫を潤します。国庫に集められた農産物の総数が国の財政を担う訳です♪判りました?」


潘濬は何を今さらと想いながらも説明を終えた。北斗ちゃんはフムフムといちいち頷きながらも、腑に落ちない。


「(๐•̆ ·̭ •̆๐)待てよ?そうすると確かに上下の別はつくな!でもさぁ、皆は各城の中に屋敷を構えている訳で、その戸数に相当する民をどうやって管理してるんだ?」


「(ღ •" ຼ • ٥ꐦ)そらぁ、信頼の於ける采配に任せております!我らは若君にお仕えする為にも、ここ江陵城から離れる訳には参りませんからね。大抵の場合、皆、自分の領地は地方に位置しますから、そんなに容易(たやす)くは戻れません…」


「…それに人に依っては、全く土地勘の無い者すら居ます。何しろ私の様に元々荊州閥の者は土地勘が利きますが、成都から出てきた者は加増を受けても、土地勘が無いのです。中には蜀や巴に元々領地が在り、ここ荊州と股がった領地の者も居りますからね!」


「(๑ • o•๑)=3 そらぁそうだな!でも今回の様に僕が新たな官位を任命して、加増になる者は良いが、失策を繰り返して官位が下がったりした者はどうするんだ?」


「(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈそらぁ領地を削減されたり、中には土地その物の転封をされる者も居りますな♪我らは領主とはいえ、冊封されている訳では在りません。つまりですな…」


「…官位に見合った土地を与えられているだけで、元々はこれ皆、王の土地です。自分の私有地では無いのでして、官位を降りたら返納しなければ為りませんな♪…」


「…まぁその場合も全てを返納しなきゃいけない訳でも無く、長年の功労に応じて一定の土地は残して貰えます。それで皆、老後を過ごす訳です。だからこそ官位は大事なのですよ!」


北斗ちゃんは数字にはすこぶる強いが、官吏が担っていた税の取り扱いの構図についてはいまいち理解が深いとは謂えなかった。


恐らくその辺りの事は、今までも伊籍や潘濬、劉巴や鞏志などが然り気無くフォローしていたのだろう。


公安砦に居る費禕や南郡で太守として采配を(ふる)う趙雲などが繁忙を極め、執務に没頭しているのは財務管理と土地の検分、農作物の生産高の向上と民の暮らしを守る為である。


北斗ちゃんはようやく糜芳叔父から言われた財政管理の難しさについて想い当たる事と為ったのであった。彼は官位の任命に当たり、慎重を期さねば成らない事を肝に命ずる事に為ったのである。




…さてその数日後の事である。北斗ちゃんはルンルンで潘濬に声を掛ける。


「·˚ (๑*´° ᗜ °๑)੭ ੈ✧ お~い♪潘濬!新たな官位任命の準備が整ったぞ♪ちと中身の検分をしてくれるかい!」


北斗ちゃんのその言葉に潘濬は直ぐに反応し、若君の持つ書簡を肩越しに眺める。そしてしばらくフンフンと呟きながら視線を落としていたが、おもむろにコクりと頷いた。


「(ღꐦ•"⌓•)" 成る程…良く考えて在ります。でも官位に応じた戸数はかなり(いじ)らねば為りませんな!そもそも我が蜀にはこれだけの財政(パイ)は在りませんし、今は河川事業にお金が要ります…」


「…こんなに臣下に大盤振る舞いしている余裕は在りませぬ。大将軍なんて本来は一万戸の官位ですからな!まぁそれはあくまでも漢王朝全盛期の勘定ですがね♪今は魏でもこれほどは出していないでしょう…」


「…判りました。この潘濬が手本を示します。幸い、この私はかなりの激務を与えられた職責です。何しろ侍中のみならず、少府や大司農まで兼務するのですから、これでは普通に換算すると大将軍よりも高位の戸数になりますからね…」


「…その私が貰う基準を示せば、後の者は従わざる逐えません。まぁ皆、ここ荊州にこれだけの財政が元々在るなんて想ってませんから、それで落ち着くでしょう…」


「…要は皆のバランスと生活の保証が配慮されているかという事です。ひとりに偏った俸禄を与えれば、他の者が不満を持ちます。そもそも若君の今回の体制刷新は、河川事業を始めるに当たり、新しい荊州政策の在り方を示す事でしょう…」


「…そして皆のやる気を引き出す事に在る筈です!自分も頑張れば認められ、出世の糸口に為ると想えば励みに成りますからね♪だからこの官位任命には賛同致します…」


「…良く頑張られましたな!でも俸禄は全てを半分のそのまた半分に致します。そのくらいで我が蜀の財政にはようやく適合(フィット)するでしょうからね!ちなみに私の俸禄は侍中のみの分で宜しい…」


「…それで皆も納得するでしょう。実はあれから劉巴殿にも打診しましたところ、自分はどんな職責でも額は抑える様にと返信が御座いました。彼はこの荊州の事情を一番判っております…」


「…それに秦縁殿からも多額の借金をするのですからね!まずは我々の俸禄よりも民の日当を確実に捻出する方が先なのですよ♪判っておいでになると想いますが、今一度そこいらの事を念頭に置かれ、重々配慮されます様に!」


潘濬はそう言うと満面の笑みを浮かべた。若君の気持ちは良く判る。皆の意気高揚を計り、河川事業を成功させたい一心なのだろう。


けれども身の丈を越える配慮がけして優しさに繋がるものでは無い事を改めて教えたので在る。


「(๑•́⌓•́).。oO あぁ…そうだな♪」


北斗ちゃんはそう答えた。彼にも潘濬の言う事はよく理解出来たのである。そして続けてこう応えた。


「✧(๐•̆ ᗜ •̆๐)でも君は仕事に相応する分を取らねば為らないよ♪じゃなきゃ皆が萎縮して困ってしまう。勿論、半分のそのまた半分に為るが、ちゃんと適正の俸禄は受けて貰うよ♪いいね?」


「Σ(ღ• ຼ"•ꐦ)はぁ…まぁ確かにそうですな!判りました。そう致します。けど当面の間は御遠慮申し上げます!河川事業が軌道に乗り、秦縁殿への返済の目処がついた暁にはそうさせて頂きましょう…」


「…ところで話は変わりますが、物のついでに若君の財政について少々調べたのですが、あの借財は酷いものですな?どうしたらあれだけの借財が出来るのです。そこら辺を教えて頂きたいのですが?」


潘濬の一言は話の流れを極端に変えた。まるで予測していなかった方角から逆流が押し寄せて来る勢いであった。


北斗ちゃんはいきなり背中からブスりと刺されたくらいの驚きに直面し、想わす噛んだ。


「Σ( ꒪﹃ ꒪)にゃ…いきなりニャにを言う。そらぁ、厠に墜ちる前の体たらくがそうさせたのだ!僕は今でもかなりの緊縮財政で負債を払っているのだ!反省してる僕を責めるのは止せ!」


北斗ちゃんはかなり動揺しながら、そう宣う。潘濬は直ぐに被りを振った。


「∑(º ロ" ºꐦ)それは辻褄が合いませんな!若君は既に凡庸な時代の負債は支払った筈です!最近の出し入れの事を私は問うているのです。若のお小遣いと月々のお給金を合わせても、かなりの額が使途不明金と為っています。はっきりおっしゃい♪」


潘濬の迫力は半端無かった。北斗ちゃんは大きな溜め息を洩らすと被りを振りながら、仕方無いといった表情で白旗を挙げた。


「˚‧º·(˚>ᯅ<)‧º·˚ あぁ…判った判った!本当の事を言う…」


北斗ちゃんは観念した。


「(⁎⁍̴̀﹃⁍̴́⁎)…実はな!ここんとこ捻出し難いお金が(かさ)んだのだ。お前も知っての通り、僕は田穂と桓鮮に命じて各地から流民を受け入れている…」


「…財政上、公式に計上する事は出来なかったのだ。計上すれば、事が公になり、流民を受け入れ難く為るだろう。だから仕方無く、ひとまずは僕の私財を投じたのだ…」


「…それでも足りなくて実は困っている。お前も判っていると思うが、我が蜀は人口が足りない。その人口を増やす機会(チャンス)は今を於いて他に無いのだ…」


「…数は力だ!だがいずれ魏も呉もそれに気がつく。そのためには今、多少無理をしてでも受け入れられる流民は受け入れて措きたい。その為の先行投資として私財を(なげう)ったのだ。スマンな!」


北斗ちゃんは遂にゲロった。


潘濬は深い溜め息を洩らす。


「(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈいや待って下さい?それでは道理が通りませぬ!流民の受け入れはその為の基金を設立してある筈です!何しろこの私も一枚噛んでいるのですからな。対外的に判らぬ様に避難民の受け入れ資金と銘打つ知恵を出したのは各いうこの私なのです!」


「ღ(°ᗜ°٥ღ)待て待て潘濬!そんな事は判っている。元々僕が労働力を増やすヒントを君に与え、流民を集める事を提唱したんだ。謂わば言い出しっぺだ!…」


「…でも君はそれが例え本人の意思に適い、人助けに成るとしても、他国の流民を掠め取れば、いずれ他国の非難の的になると言って避難民救済基金を設立してくれたんだ…」


「…なかなか良い着想(アイデア)だった!始めの内はそれで助かっていたのも事実だ。でも日に日に多くなる流民の数に、基金だけでは追いつかなくなっていたのだ…」


「…だから仕方無く、苦肉の策で緊急に受け入れる為の資金に充てたのだ。スマンな!僕の見込みが甘かったのだ。でも助けを求めて来る人を、資金が足りないからといって切り捨てる訳にも行くまい。皆、命の重さは同じなのだ!」


北斗ちゃんは苦渋の胸の内を吐露した。


「ε- (ღ• ຼ"•ꐦ)やっぱり!そんな事だとは想ってました。でも一言この潘濬に相談して下されば宜しかったのです。我が蜀にも機密費なる物は在ります!…」


「…本国の丞相には既に打診しており、お父上・漢中王の決済を経て、今後はその費用に充てますゆえ、無理は為さらぬ様に願えますかな♪…」


「…貴方の施した慈愛の心は尊いものですが、事も在ろうに我が国の太子で在り、この荊州総督の立場の貴方が借金まみれでは示しがつきませぬ…」


「…今後はこの潘濬に何事も包み隠さずに相談されます様に!特にお金の問題は直ぐにおっしゃい。宜しいですね?約束してくれますね!」


潘濬は厳しい口調で念を押した。


「๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐アイ…判りまちた…」


余りの潘濬の迫力に北斗ちゃんは稚拙な声を上げる他無かった。無条件降伏したのだった。


潘濬もそれを聞いてホッとした様である。けれども次の瞬間に北斗ちゃんは叫んだ。


「(٥ ꒪⌓꒪)…お前、まさかとは想うが途中から気づいていたな!いつ判った…どうして?」


「✧(• ຼ"•ꐦ)若!貴方、お金が足りずに費観殿や張嶷殿に借りたでしょう?費禕殿や趙雲様がそれに気づき、心配して内々にこの私に陳情して来たのです!」


「Σ(˶‾᷄﹃‾᷅˵)あちゃあ~だからこの僕の財政を調べたんだな…」


「(ꐦ ٥•" ᗜ•)その通り!全く恥ずかしい…これでは私の教育係としての立場が在りませぬ!頬が焼ける様に恥ずかしい想いを致しました…」


「…気持ちは判りますが、物事を成すには正道を行かねば意味が無いのです。これで良くお分かりに為りましたな?今後はけして軽はずみな行為は控える様に願います!…」


「…だいたい端から付け焼き刃に成る用な手当ては致しますな!だからこそ先程、そこいらの事を念頭に置かれ、重々配慮するべきだと申しました。宜しいですな!」


潘濬はそう言うと再び深い溜め息を洩らした。北斗ちゃんはコクりと頷く。


「(٥ •ᗜ•)⁾⁾ 判った!必ず今後は相談する事にしよう…」


「✧(• ຼ"•ꐦ*)それで宜しいのです♪貴方は確かに皆を守る立場に在ります。その一心で身体を張る気持ちは尊いですが、ひとり相撲に成っては行けません。我々もひとりひとりが貴方と同じような気概でおります…」


「…北斗ちゃんの作ったチームはそんなにヤワな組織ではありません。チームはひとつなのですから、皆で知恵を出し合い困難を乗り越えて行けばよいのです♪」


潘濬は最後にそう諭した。これは北斗ちゃんがみせた初めての綻びであった。彼はまだ若い。逸る気持ちに成る時も在ろう。


幾ら才能豊かな者でもまだ十代の若者である事に変わりは無かった。そして余りにも慈愛の心が強く、自己犠牲の気持ちが強過ぎた結果であった。


けれども彼は三國の一方で他国と対峙し、采配を揮う担い手なのである。喩え些細な綻びでも、却って皆を危機に陥れる事になる事をこの機会に学んだ事に成る。


けれども結果として、周りの者たちの連携に依り未然に防がれる事と為ったのである。チーム北斗ちゃんの連携がさらに強固になる切っ掛けとなり、これで依り一枚岩と為る事が出来たのであった。


あの陸遜は、稚拙な社会性ゆえに自壊するだろうから、放置しておくに限ると評した。彼の予言がこういった事を示していたのかは判らないが、結果としてその想いは実らなかった。


なぜなら、劉禅君の周りにはその若さを諭し、ちゃんと主君を導く事の出来る優秀な者たちが彼を支えていたからであった。

【次回】転機

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