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竹馬の友

「ꉂꉂღ(❛ ᗜ ❛´*๑)楼琬♡御無沙汰!元気?」


秦縁は昔馴染みに会う懐かしさでついつい子供時分の気軽さで、声を掛けながら中に入る。するとそこには観たことも無い様な(たくま)しい体格の若者が居り、掛け声を聞いて反射的に立ち上がった。


「=͟͟͞͞(ღ❛ ⌓ ❛´٥)えっ?こらぁスミマセン!場所を間違えたようで…この俺、いや私とした事が大変申し訳ない!」


瞬時に相手を間違えた事に気づいた秦縁はすぐに頭を下げて謝る。今日は頭を掻いたり下げたりと彼の(つむり)は忙しい。


すると今度はその頭越しに相手が気軽に声を掛けて来た。それは間違いなく懐かしい友の声であった。


「ꉂꉂღ(°ᗜ°٥ღ)アハハッ♪何言ってんの?秦さん!僕ですよ僕♪楼琬ですよ!あの末成(うらな)り君ですってばぁ♡」


末成(うらな)りとは時期が()うに過ぎた頃に(つる)の先にチョンと申し訳程度に実る瓜の実の事である。それを評して顔色が青白く()()けた人を(あらわ)す。


これは本来、相手を(さげす)む言葉であるが、この場合は本人が自覚した上で自ら評しているので蔑みには当たらない。どちらかと言うと自虐的な物言いである。


無論、秦縁は楼琬の事を『末成(うらな)り』などと口にした事は一度も無い。自信の無かった頃の楼琬本人が時折、(たと)えとして使っていた言葉であった。


張翼も秦縁も彼のその自虐的物言いにいつも文字通り、"物言い"をつけていた。"自分から自分を(おとし)める様な行為はするな!"と(いまし)めていたのである。


勿論、冒険を通じて心身共に強く為った今の楼琬は自分の事を既にそんな情けない男だとは想っていなかった。けれども余りにも変わった自分を認めて貰う必要が生じて仕方無くそう告げたのだった。


「=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)何!お前さん本当にあの楼琬なの?」


秦縁は驚く様にそう告げると、またぞろ頭をポリポリと搔いて言葉を継いだ。


「✧(•́⌓•́๑)何だよ?冗談は無しだぜ!それにしても見違えたよ♪随分と逞しく為ったなぁ…こりゃあ判らん筈だわ♪」


秦縁は無論喜んでいるが、余りの変わり様に続く言葉が見当たらない。感心する様にそう告げる(ほか)なかった。


楼琬自身も想わず苦笑いするしか無い。自分でさえも少し前までは想像も出来なかった変わり様なのだから、友がそう感じても仕方無いだろう。


楼琬は自嘲気味に語り続ける(ほか)なかった。彼は一旦、気持ちを落ち着ける様に深呼吸すると語り始めた。


「ꉂꉂღ(°ᗜ°٥ღ)いやね、話せば長い話になるんだけども…」


楼琬は敢えてそう前置きをする。


彼が辿って来た長い道程(みちのり)とその後繰り広げられた冒険譚は、とても一朝一夕で語り切れる代物では無かったからである。


楼琬はその時々で顔を(ゆが)めるほどの辛かった経験を切々と語り、また時には愉しかった思い出を嬉しそうに面白おかしく物語った。


秦縁はその言葉にドンドンと引き込まれて行き、真剣に耳を傾ける。そしてその緑陽石(サファイア)の瞳はいつしか熱い眼差しで友の物語る(さま)を眺めていた。


楼琬の話が一段落したのを見計らう様に喬児が入って来て椀と大きめの土瓶を置く。そして「ごゆっくり♡( ◍ ❛ ᗜ ❛ ◍)✿」と一声掛けながら軽くお辞儀をするとスッと立ち上がり出て行く。


二人の久方振りの団欒(だんらん)に水を差さない気配りであった。秦縁は満足そうに喬児に目線を送るとコクりと頷く。


喬児はニコっと微笑む。楼琬もコクりと頷き感謝の意を示した。


秦縁は土瓶から柄杓(ひしゃく)で椀に茶を注ぐ。まず楼琬の椀を満たしてやり、次に自分の椀に茶を注ぐと友に語り掛けた。


「⁽⁽ღ(❛ ⌓ ❛´๑)まずは喉を(うるお)してくれ♪(しば)し茶でも傾けよう。話の続きはそれからだな♪」


「(*´°ᗜ°*)੭ ੈうん!有り難う。あれ?これはあの時のお茶だね♪何か懐かしいな!」


楼琬は椀から立ち上る湯気に(ほの)かな香りがする事に直ぐに気づきそう答えた。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈあぁ♪だろう?俺らが別れる時に飲んだ餞別(せんべつ)(さかずき)だな!まぁ…とはいえあの頃は三人とも子供だったからね!酒を酌み交わす事も出来なかった訳だ♪…」


「…こいつは俺の故郷(ふるさと)のお茶だからね♪ちょうど良かったのさ!何しろかなりの貴重品だと聞いていたからな。本来、交易路に乗せれば高値が付く代物(しろもの)だったらしい…」


「…でもあの頃の俺は正直、こいつがそんなに高価な物だとは想いもしなかったがね?貴重品なら別れの餞別に相応しいと想ったまでさ!後でそれが判って(おさ)()(ぴど)く怒られたが、それでも俺の心は清々しさに溢れていた…」


「…大事な友との別れの盃にはちょうど良かったと却って安堵したくらいだ。まぁ今にして想えば子供(ガキ)の発想だけどね!人の価値観とは面白いものだな♪本来的に自己満足に帰結する。相手が満足しているとは限らないのにな!」


秦縁は自嘲気味にそう漏らした。人と人との心の繋がりは物で解決出来るものでは無いと彼は言っているのである。


それは楼琬にも良く判った。けれども彼の気持ちは十分に伝わったし、子供心に嬉しかったのだ。


事実椀を口に運んで飲んだ瞬間に、彼は張翼と想わず顔を見合わせた。二人とも頬を緩めて嬉しそうな表情を隠さなかったから、互いにこのお茶が香りといい、旨味といい、絶品である事はすぐに判った。


だから二人とも脇目も逸らさず直ぐにゴクゴクと飲み干す。あっという間に椀は空になる。そしてほぼ同時に「旨い!!」と叫んだ。


秦縁は満足そうにお代わりを注いでやったのを覚えている。餞別の盃に果たしてお代わりが在って良いのかという疑問は残るが、無邪気な子供だった当時の彼らには関係の無い事であった。


そして楼琬にしてもこの一期一会を大事にしようと想ったものである。今この時にしか飲めないお茶の味を忘れまいとしたのだ。


それはこの秦縁という稀有(けう)な存在である友との絆を改めて確かめる切っ掛けとも為ったのだった。それは張翼にしても同じ気持ちであったろう。


だからこの再会の時にそのお茶に迎えられた事は、楼琬にとっては掛け替えの無い喜びを伴っていた。秦縁が絆を忘れず温かく迎えてくれた。そう想ったからだった。


「ꉂꉂღ(°ᗜ°٥*ღ)そんな事は無いさ♪僕はあの時の想い出を決して忘れた事は無い。君はあの時に考えられる精一杯のおもてなしで僕らとの絆を忘れまいとしたんだろう…」


「…それは十分に伝わったんだ。確かに心の絆は君のいう通り物の価値で量るべきでは無いさ!でもね、人は大切な人と時を過ごす為には精一杯の振る舞いをしたいと想うものだ…」


「…それはごく自然の行動だと僕は想う。そしてその気持ちの(こも)った姿勢は必ず相手に伝わると思う♪相手が君に対して心を運んでいる者ほどその心配りは強く胸に響く事だろう…」


「…現に僕も恭さんも感激したんだよ♪あの高貴な香りと芳醇な旨味を忘れまいと想ったものだ!君が振る舞ってくれたお茶を通してその愉しい想い出は凝縮されて心の奥底に自然と残った…」


「…君の心配りは決して無駄では無かったんだ!そして僕は今そのお茶に迎えられた事に少なからず感動している。君の心が時を経ても変わらずここに在ると確められたんだからね!」


楼琬はそう言いながら左胸を押さえた。心臓の鼓動が胸を打つ。心踊る音である。


彼は椀から漂ってくるその香りを再び嗅ぐとゆっくりと椀に口を付けた。芳醇な旨味は彼の五感を刺激し昔の事を思い出させる。


「やっぱり旨い!( ๑˙﹃˙๑)✧この仄かな甘味は青春の味だよね♪」


楼琬はひとり悦に入っている。彼は昔から夢想家(ロマンチスト)なところが有り、その女性(にょしょう)の様な顔立ちも()る事ながら気の利いた物言いが女性受けしたからとても人気が在った。


けれども生来の引っ込み思案が顔を出し、女の子から「キャッキャ♡」言われると直ぐに顔を真っ赤にして逃げ出す始末だから、せっかくの容貌も甘い言葉も無駄であった。


『変わらないな…ε- (ღ❛ ⌓ ❛´٥)』


秦縁はそう想った。幾ら逞しく成っても、彼の夢想家(ロマンチスト)な側面はそのままである。時にそれは周りを置き去りにしてしまう嫌いがある。


それは楼琬が想い描く理想がまず有り、その理想を実現させる為に必要な条件を充たすために準備を徹底し、その実現に向けて脇目も振らずに一目散に走り出す事を意味する。


彼は理想家として輝く人なので在った。だからこそ南海の非常識な程の現況を見過ごす事が出来ずに彼らを正しき道へと(いざな)う事も出来たので在る。


秦縁はそんな楼琬とは対極に位置する人で在った。なぜなら彼ほど現実的な物の考え方をする人物は居ないからである。


商売とは現実的な物の考え方が出来ないと成り立たない。理想論だけではやっていけないのである。


そこには必ずその根底を支える計算がなければ為らない。実利を常に念頭に置き、必ず損益を計りながら事を進める。


時には損害込みの計算の上で事を成し遂げる必要すら在ったのである。勿論、世の中の流れは待ってはくれない。


その時々の時勢に応じてそのやり方すらも柔軟に変容させていかなければ為らない。そのためには将来の事を常に頭の中で模索しておき、計画性に基づく地道な実務を積み重ねる必要すら在った。


彼の妻である喬児はその計画を支える為の情報を絶えずかき集め、入念に精査し、その結果として今後起こり得る可能性を常に念頭に置きながら助言に努める。


秦縁は長年の経験と商人として培って来た知識(スキル)を駆使して、彼独特の勘を働かせて、今まで困難を乗り切り、この一家を繁栄させて来たので在った。


理想と現実の狭間の中で二人ともその信念の(おもむ)くままに、自分を信じて突き進んで来た結果である。どちらのやり方が正しいのかでは無く、それぞれが今、自分を信じている事に意味があるのだ。


楼琬はその気の弱さから、一時とはいえその精神状態に破綻を(きた)した。けれども彼はその地獄の様な苦しみから、自分の努力で再びのし上がって来たのである。


挫折を味わった者は強い。再び目の前に大きな壁が立ちはだかる事が在ろうとも、失意を糧にして腹を据えて事に当たる事が出来るのだ。


『(ღ❛ ⌓ ❛´٥).。oO まぁ確かにな!彼の(げん)にも一理在るか…』


秦縁はそう想う事にした。少々大袈裟に過ぎるかも知れないが、自分との再会をこんなにも喜んでくれているのだ。


その彼の熱い気持ちを素直に受け止めてやるのも友情である。まぁ少し子供染みた嫌いは在るが、見方を変えればそれだけこの瞬間に童心に返って昔を懐かしむ心なのだと、秦縁だって嬉しかったのだ。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈそんなに喜んでくれるとはね♪まだまだたくさんあるから、愉しんでくれ!どれ俺もお相伴に預かろう♪う~ん…確かに青春の味がするな!…」


「…君と居るといつも驚きが待っている。その都度、新鮮で穏やかな風を送り込んでくれる気がするよ!冒険を通して見事に立ち直った君に乾杯だ♪今日は君に会えて本当に良かった!」


秦縁はそう言うと頬を緩ませて微笑んだ。楼琬もその言葉に想わず微笑む。彼にはこの後、再び困難な旅が待っている。このひとときの安らぎは何にも代え難い喜びで在った。


「秦さん!(*´°ᗜ°*)੭ ੈ僕はね、明日にも再び旅立つ♪だからこの機会に是非とも君に会っておきたかったんだ!恭さんに聞いた時から僕の胸は踊っていた…」


「…君に会えたら、また僕は力が湧いて来て、元気を取り戻せると信じていたんだよ♪そしてその通り、元気を貰った。僕は若君の為にも必ず優秀な人材を発掘してみせる!君も若君の力になってくれると言う…」


「…本当に助かる!お互いにまだまだ道半ばだけど、今まで通り信じて進もう♪アハッ!僕が君に言うのも可笑しな事だけど、たまには良いよね?許してくれるかい!」


楼琬ははにかみながらそう告げた。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈあぁ♪勿論だとも!俺らは竹馬の友だからな♪互いに上下の区別は無いさ!遠慮は要らない。そうか…」


「…君はまた旅立つのだな!今日は良く来てくれたね。本当に嬉しかった。君の旅が上手く行く事を心の底から願っているよ♪」


秦縁も友の為にエールを送った。掛け替えの無い大切な友に向き合う直向きな心がそこにはあったのである。


「(´°ᗜ°)✧有り難う♪これで僕の肩の荷も下りた。新たな気持ちで旅立てる。僕は今回の旅の途上でようやく心身を鍛え直せた。でも人の役に立つ為にはまだまだ修行が足りないんだ…」


「…それは自分自身が一番良く判っている事だからね♪今までは自分の為の修行だった。けど、ここからはその力を人の為に役立たせる為の修行なんだ!…」


「…そのくらいの気構えで居ないと、若君に申し訳が立たないよ♪僕は自分の力がどこまで通用するのか試してみたい…」


「…そしてかつての僕の様に後一歩を踏み出せずにいる人の背を押してやれたらと想っている。これって傲慢な考えかな。君はどう想う。僕は間違っているかな?」


楼琬は自分の素直な気持ちを友に伝えた。それは秦縁にも理解出来た。


「(๑•́⌓•́).。oO そうだな、君は元々困った人を見掛けたら放って置けない性格だろう。そして忍耐力もある。教育者向きの素養を持っているからそう考えるのだろうな…」


「…俺が想うに君にはまず理想が在って、それを実現する為に努力を惜しまない。それはとても素晴らしい事だ。けれどね、世の中の人が君と同じく高い理想を掲げているとは限らないのだ…」


「…恐らくはそういう人達には君の理想論は絵に描いた餅に感じる事も在るだろう。その時に君はどうする?まさか君が先ほど話してくれた南海の住人の様に頭を小突いて矯正する訳にも行くまい…」


「…彼らは元々理屈の通じない乱暴者の集まりだったから郷に入れば郷に従えってなもんで、それで済んだかも知れん。相手も敬う基準が強者である事が条件だった様なものだからね?…」


「…時と場合にもよるが、これからはそうも行くまい。必ず理想と現実の狭間で君も悩む事に成るだろう。今更こんな事を君に語るのも烏滸(おこ)がましい事だが、君が俺を友として頼ってくれた以上は、俺もその期待に答えたい…」


「…だから敢えて耳の痛い事を()(てら)わずはっきり言おう。理想主義者とはあくまでも自身の内包する理想像を持っている。そしてそれは極端な話、理想を掲げる人の数だけあると断言してよい…」


「…つまり自分の主義、主張で説得するのは並大抵の事では在るまい。相手の掲げる理想に寄り添い、その主張を噛み砕いて理解し、その相手毎に適切な助言をしてやらねばならない事になる…」


「…その時に相手を決して追い込んでは為らないし、自分の理想を押し付けてもいけない。常に本人に考えさせるように努め、必ず逃げ道を用意してやる必要もある…」


「…そして一番大事な事は、早急に結果を求めない事だな!人には理解力に段階的な層があり、時を置かずに理解出来る者と時間の掛かる者が存在するのだ…」


「…だから時には長い目で見てやる事も必要だって事さ!俺は君と違って現実的な男だからね♪相手をまず眺めるところから始める。その際に大事な事はなるべく聴き手に廻り、相手の言いたい事を全て吐き出させてやる事かな?…」


「…勿論そのためにはこちらを信頼させる事も必要になるだろう。そして相手の求めるものが判ればこちらの利害と一致するかどうかを見定める。おっと!これはあくまで俺の場合さ!何しろ俺は商人だからな♪…」


「…最終的には利害が一致するかどうかなのさ!でも一理あるだろう?君の場合は見極めた相手に適切な助言が出来るかどうかだろうね?その時すぐに役に立たなくてもそれはそれで良いと想うぞ!…」


「…後で振り返ってみた時に本人の腹に落ちればそれで良いのだ。教育とはすぐに結果の出るものでも無いだろう。本人が最終的に開眼に至る道筋を示してやればそれで良い…」


「…否、そこまで丁寧で無くとも指針となる言葉で十分なのさ!まぁ明日この世界が終わる訳でも無い。じっくり構えて相手に寄り添ってやる事だな♪まさかこの俺がこんなに饒舌(じょうぜつ)だとは想わなかった。これくらいで勘弁して貰おう♪」


秦縁は結局のところ、楼琬の問いには是とも非とも答えなかった。"傲慢"だとか"間違っているか"とか今さら論じても始まらないと想ったのである。


仮に秦縁が答えなくとも、彼は旅立つ事になる訳で在り、自分の信念に基づく行動を取るに違いない。


そもそもそんな事は楼琬本人が重々承知の上で訊ねているのだ。彼は自分を否定する事で何かしらの助言が欲しかったのだろうと秦縁は感じていたのであった。


楼琬は秦縁の話を頭の中で整理する様にしばらくブツブツと呟いていたが、突如顔を赤らめると口を開いた。


「ꉂꉂღ(°ᗜ°٥ღ)いやぁ~本当に色々と知恵を拝借してしまってすまない。君の言いたい"事の本質"は手に取る様に判った。この僕を気遣い遠廻しにでは在るが、"今それを実地で行っているのが若君なのだ!"そう君は言いたいのだろう?…」


「…そして"その若君に指針を与えたのは君だろう?もう少し自信を持ったらどうだ!" 君の結論は僕にはそう聞こえたんだ!まさに目から(ウロコ)が落ちる気分さ♪」


楼琬は申し訳なさそうにそう告げた。


「=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)はい??」


それを聞いた秦縁は二の句が継げない。どこをどう解釈すればそういう致命的(クリティカル)な帰結に成るのかと驚き戸惑う。


単に彼は長い付き合いである楼琬の理想論が時として裏目に出るのではないかと心配しているだけなのだが、楼琬は彼の言葉をもう一捻(ひとひね)りしたらしい。


けれどもここでも秦縁は否定はしなかった。彼は自分なりに解釈した言葉の意味を肯定的に捉えて活力に変え、自らを鼓舞する糧としたのだ。


そうで在れば上々ではないか。秦縁は友を心配して懸念を表明しつつも、焦らず気長にやれとエールを送ったつもりだから、彼が元気を取り戻し、前向きに進めるならばそれで良かったのである。


「あぁ…✧(❛ ࡇ ❛´٥๑)まぁ、そういう事になるかな…。自分の弟子をも手本にしようとは何とも謙虚な事だが、そのくらいの覚悟があればこの先、君は何の心配もいらないだろう♪お互い民のために中華の安寧に力を尽くすとしようか!」


「だね?(*`•o•´)੭ ੈでも若君が僕の弟子だなんて小っ恥ずかしいかな。僕は駄目教師だったからな?でも心配しないでくれ!僕はあくまで謙虚そのものさ♪まだまだ発展途上なのは自覚している。君のご高説は肝に命じよう!」


桜琬は胸を叩いてそう述べた。秦縁はコクリと頷く。


『何だ! (⑅˘̳ლ˘̳⑅)♡判ってるじゃないか?俺の心配は杞憂(きゆう)だったかも!これならこの先、期待が持てそうだ♪』


彼は安堵の溜め息を吐いた。一方の楼琬も然り気無くクスリと微笑む。


『ウフフ…ღ(°ᗜ°*ღ)君が想っている程、僕も理想家では無くなっている。今回の冒険で思い知らされたからね!それに君だって大した理想家じゃないか?"中華の恒久平和"なんて、そんな大それた理想、他に誰がぶち上げる?これでお合子(あいこ)だね♪』


楼琬は現実的だと公言する秦縁に一矢報いたと想っていた。けれどもそれも仕方が無いのだと理解を示した。


『(٥´°ᗜ°).。oO 彼は事在(ことあ)(ごと)に"俺は現実的だから"とか"何せ俺は商人だからな!"とか口癖のように宣うが、彼も立場上やむを得ぬのだろう。彼の大義は生半可な物じゃない…』


『…Oo。.(´°ᗜ°*٥)むしろ我々には想像も出来ぬほどの使命と多くの命が彼一人の双肩に懸かっているのだ。それに比べれば僕の悩みなど大した事じゃない...否、そんな事を言うとまたこの友に叱られるな!僕はまず自分の目的を津々がなく果たすとしよう!』


楼琬はそう想い、頭を切り換える。秦縁にはそんな苦労を背負(しょ)い込んでいるような仕草は微塵(みじん)も無かった。


彼らは互いに顔を見合わせると、今まで考えていた事を(おくび)にも出さぬように固い握手を交したのであった。

【次回】友よ壮健なれ

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