武陵にて
その日劉巴は武陵に来ている。鞏志との最終確認であった。まだ少し寒さが残るものの現地は一面澄み渡る青空で陽射しが眩しい。
時折、鳥の囀りも聞こえて来て、耳に心地好かった。彼がここに足を運ぶのは果たして何度目の事で在ろうか。
その都度、検分して来た彼にとっては然程珍しくも無い光景で在ったが、若君が観たらさぞや驚くだろうと劉巴は想った。
河川沿いから少し離れた高台には既に街並みが広がっており、住居の建設もいよいよ大詰めを迎えていた。そして街並みを縦断する様に大通りが通って居て、ここに市が並ぶ予定である。
「(゜Д゜*)やぁ~いらっしゃい♪どうです?かなり出来上がって来たでしょう!早ければ数日後には人が住める様になりますよ♪」
鞏志は頬を緩ませる。彼がそう感じる程になかなか立派な仕上がりなのだ。機能性も高く、良く考えられていて、そこには住む人に寄り添う優しさが在った。
「ꉂꉂ(o'д'o*)恐れ入りましたぞ♪さすがは鞏志殿!予定よりもかなり早い仕上がりですな?河川の線引きも在ったろうに、家屋の建設だけでなく、住まいとしての佇まいも感じられて、これなら住む方々も安心して日々の生活を送れる事でしょうな♪」
劉巴は感心しながらそう述べた。鞏志はその反応に満足そうに頷く。
「(* ゜Д ゜*)まさにそれがこの度の基本理念ですからな♪働く者の気持ちに寄り添わなければ、良い仕事は出来ません。それに私は貴方から若君の目指す着地点を聞いたその日から迷いを無くす事が出来たのです…」
「…当初は一過性の仮屋で良いと想っていましたが、考え方その物を変えました。末長く住まう生活の場に為れば良いと今は想っています…」
「…それに造る方だってその方が気持ちも入りますし、嬉しいものです。彼らにとっては自分達で産み出した物はやはり赤子の様に可愛いものですからね♪遣り甲斐にも繋がるのですよ。そうでは在りませんか?」
「(ღo'д'o*)確かにそうですな♪判ります!」
鞏志のその言葉に劉巴もいちいちウンウンと頷きながら感じ入っている。ここにはたくさんの人々の将来の生活拠点が必要だったのである。
そしてそのひとりひとりがこれから若君の大事な民となるのだから、この力の入れようも理解出来るというものだった。
「( o'д'o).。oO 鞏志殿!私は満足ですよ♪これだけの働きが出来るのですから、貴方と組んだ私は幸運というべきでしょう。貴方を選んだ若君の先見の明にも驚くばかりです!きっと河川事業にもそのこだわりが反映される事でしょうな♪」
劉巴は満足そうに頷き、誇らしげに鞏志を見つめた。鞏志は少し照れながらも、確固足る自信をその瞳に宿していた。
「ꉂꉂ(゜Д゜*)フフフッ…それも私の手足と為って私の描いた絵図を体現してくれる奴ら在っての事です!志組も少数精鋭から始まった組合でしたが、今や弟子が育って来てその質だけで無く、量もこなせる組織に成長しています♪」
「(*o'д'o)੭ ੈそうですな♪こんなに早く仕上がるなんてこの私も想いもしなかった。ちょうどこちらもそろそろ着工に懸かる目処が立ったところでした。士燮殿との密約も結んだし、恐らくは今頃、南海との締結も進んでいる頃でしょう…」
「…若君のかつての師であった法邈という御方が南海の梃入れをして下さった事で、話がトントン拍子で進んだのですよ♪その字を楼琬と言い、あの法正殿の御嫡男なのです。これでこちらの体制も万全!ここの準備も整った。いよいよですな?」
「(ღ゜Д゜*)ほぉ~それは朗報ですなぁ♪現場で汗を流す者としても、いつ着工指示が降りてくるのかヤキモキしていたところです。それを聞いて安心しました。志組の奴らも益々やる気に成る事でしょう。それにしても貴方の敬愛する許靖殿が遂に結果を出したのですな!おめでとう御座います♪」
「ꉂꉂ(o'д'o*)有り難う♪私も喜んでいますよ。まぁあの御方なら必ずやって下さるとは想っていましたがね♪では若君には着工準備完了の旨を御報告させていただきます。それで宜しいですな?」
「⁽⁽(ღ゜Д゜*)えぇ♪頼みます。こちらは受け入れ態勢万全と伝えて下さい。私もこの際、御報告に上がりたいところですが、残っていた南海の検分や交州との繋ぎどころを見定めなければ為りません…」
「…せっかく素晴らしい運河を造り上げても、海に出られなければ意味が在りませんからね♪先頃、傅士仁殿からも造船計画と乗組員の訓練も順調との報告が来ています!彼らも血の滲む様な努力をしてくれているのです。我らも頑張らねば!」
「(*o٥'д'o)⁾⁾ 承知しました。御苦労をお掛けします!宜しくお願いする。それにしても見事な景観ですな♪改めて眺めるにかなり材木を使っているようですが、この資材はやはり秦縁殿からのご融資なのでしょうか?」
劉巴は素朴な疑問を呈した。
「⁽⁽ღ(゜Д゜*)えぇ♪勿論!その大半はそうです。でもそれだけじゃあ無いのですよ♪実はこれは今まで先方の御意向で黙っていましたが、定期的に西の彼方から材木や生活用品が届いているのです♪そのためにかなりの進捗が見込めたと言えましょう!」
「( o'д'o).。oO ほぅ…それは有難い!王の肝煎りですかな?」
劉巴は少々驚いている。あの漢中王が気を利かせるなんて不思議な事もあるものだと想ったのであった。
けれども鞏志は不敵な笑みを浮かべてそれをやんわりと否定した。
「ꉂꉂ(゜Д゜*)フフフッ…そうだと良かったのですがね♪実はこれが違うんだなぁ。まぁいいでしょう。勿体振っても仕方無い。ずばり告白するとですな、誰在ろうあの糜芳殿なのですよ…」
「…彼の結成した商団がやってくれました。西の姜族からかなりの材木を買い付けましてね、今も日に日に届いています。深い森の道を抜ける新たなシルクロードを敷く計画を推進しているそうです…」
「…その中で切り倒した大木がこちらに廻って来ているのですよ!考えましたな。不要な木を買い付ける事で姜族を儲けさせてやり、商いの道も出来る。そしてそればかりで無く、通行税を認めてやり更に彼らに利を与えてやる…」
「…その代わりとして安全な通行を約束させて、さらには我らの家屋建設にも寄与する。まさに一石三鳥の取り組みですね。これは秦縁殿も言われていた事ですが、優秀な商人とは相手にまず利益を与えてやり、こちらも利益を産む…」
「…これが秘訣なのだそうです。末長くより良い関係を築くためには欠かせないそうですな♪糜芳殿は新たな商いの道を求めていたそうですが、願いを叶えたのですな♪あの方の横暴に異を唱え抵抗したこの私に今はあの方が力を貸してくれているのですよ…」
「…勿論、若君在っての事でしょうが、私にとっても今回の事は考えさせられるものが在りました。人とは直向きに取り組む事が見つかれば、こんなにも変われるのですな!あの頃の事を想えば感慨深いものです…」
鞏志はそう言うと少し言葉を詰まらせる。そしてその瞳からは自然と涙が溢れていた。
彼は感極まっていたのだ。そしてとても喜んでいたのである。
劉巴もそれを聞いて嬉しさが込み上げてきた。若君に良い手土産が出来たと想ったのであった。
「( o'д'o).。oO そうですか!それは良い話をお聞きした。ここも益々やる気に溢れて来る事でしょうな!私もそれを聞いて更に気持ちが上がった気がします…」
「…それぞれの持ち場で互いに切磋琢磨する。若君の信念である"考えて行動する自由"が成せる技かも知れませんな♪良い手土産が出来ました。糜芳殿の事も若君に併せて報告させていただきますぞ♪」
「ꉂꉂ(゜Д゜*)フフフッ…若も糜芳殿の事は心配されていました。話を聞けば喜ぶ事でしょう。では私は仕事に戻ります!明日には南海に向けて立つとお伝えあれ♪」
「(*o'д'o)੭ ੈあぁ♪承知した!宜しくお願いします。ではこれにて私も引き揚げるとしましょう♪」
劉巴と鞏志は互いに拝礼し合うと別れた。またそれぞれの役割を担う為、互いの道筋に戻っていったのであった。
「Σ(˶‾᷄﹃‾᷅˵)ブワックション!!」
糜芳は想わず大きなくしゃみを覚えた。
「(・・;)何です?お頭風邪じゃ無いでしょうな!今、身体壊されたら困りますぜ?」
配下の言葉に糜芳は明るく返す。
「ꉂꉂ(ღ*❛ 公 ❛*)心配ない!誰かが噂でもしとるのだろうさ♪何しろ最近の儂らは絶好調だからな!さぁ馬鹿言っとらんで先に進むぞ♪明るい将来に向けて前進あるのみだ!」
「「(*´∀`)(*´∀`)へい♪♪」」
配下達も声を合わせてそれに応える。彼らもお頭である糜芳の喜ぶ顔が観たい。そしてここまでの苦労が必ず報われると信じていた。
だからこそ身体の中の熱気が益々溢れて来て、力の漲る活力と為っていた。糜芳主従には一体感が在り、誰もがお頭の直向きな姿勢に感情移入して居たのである。
この様子を見れば彼ら主従の未来は明るいと言えるだろう。糜芳はそんな彼らの表情を眺めながら満足していた。益々こいつらの為にも励まねば為らぬと誓いを新たにしていたのであった。
『(٥ ꒪公꒪)…ニャンかマジで風邪かも?気をつけようっと!』
彼は新たにそう誓うのだった。
南海の男たちを見送りに出た楼琬はその足で若君に拝謁を願い出た。彼も気持ちを新たにしていた。
「ღ(°ᗜ°*ღ)若君♪これでひとまず僕の務めは済みました。無事に河川整備も運河構築にも漕ぎ着けられて何よりです。細やかながら僕もその一助と為れて喜んでいます♪」
楼琬はそう口火を切った。彼の瞳には既に新たな挑戦に向かう覚悟が観て取れる。
判っていた事だが、再びこの男は自らに新たな目標を課し前に進もうとしているのだと北斗ちゃんは思った。
久し振りの再会である。そして互いの成長が判った今、彼らはより良い関係を築ける筈だった。
けれども楼琬はまだまだ満足はしていない。更なる高見を目指して直向きに前を向いている。そんな前向きな男に待ったを懸ける事など出来まい。
北斗ちゃんも常に前を向き未来図をその頭に描きながら一歩ずつでは在るが直向きに進んで来た男である。彼の更なる成長を課す姿勢には共感していたから、止める事など出来ない事は判っていた。
それに彼も言っていたではないか。将来更なる高見で再会し、今よりももっと良い関係を築こうと。そしてそれは北斗ちゃん自身の願いでも在ったのだ。
彼は楼琬を真っ直ぐに見つめてコクりと頷く。そしてそれに応える様に口を開いた。
「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈいよいよ君を止めていた枷も解消された訳だ!旅立つんだね?判った♪身体を大切にして必ず無事に帰って来てくれ。君と将来に渡って国の大事を語り合う事を愉しみにしている!」
北斗ちゃんは楼琬の気持ちを察し、進んで彼の背中を押してやる。そこには気持ちが通じ合った漢同士の姿が在った。
「⁽⁽ღ(°ᗜ°*)さすがは若君♪話が早い!僕は公言通り、ここの課題のひとつである有益な人材の掘り起こしを担ってみせますよ♪まだまだこの中華は広い。埋もれた人材だって探せば居る事でしょう…」
「…中にはつてが無く自分の力を発揮する場が無い者だってきっといます。この中華は実力社会では在りますが、まだまだその出自が重宝され推薦が無ければ檜舞台には出られない構図に為っています…」
「…若君はそんな些細な事には拘らない御方。その人となりには多少の問題を抱えていてもこの先本人がどうしたいのかを重視なされる。だから僕はそこら辺を鑑みて送り出すつもりでいますよ♪」
「⁽⁽ღ( •̀ ᗜ •́ *)そうだね♪そうしてくれると有難い!裾野は広い方が良いのだし、君の持論である多方面の専門家を拾う為にも成る事だろう。どんどん寄越してくれて構わないよ♪」
若君の言葉はお気楽に聞こえるかも知れない。けれどもそれは楼琬の自由裁量に任せるとのお墨付きなのである。
若君はそれだけ楼琬の見識を認めている事に為るのだ。彼はそれ程の信頼を寄せられた自分を誇らしいと感じていたし、併せて若君に感謝していた。
だから遣り甲斐と同時にその責任の重さも重々承知していた。そんな彼だからこそ変な重圧と為らぬ様に、若君はわざとお気楽な言葉尻で答えたのかも知れない。
ここまで考えると考え過ぎかも知れないが、少なくとも楼琬はそう捉えていた。彼はコクりと頷くと言葉を返す。
「⁽⁽ღ(°ᗜ°*ღ)はい!承知しております。若君も健康には御留意下さい。そして貴方の夢である目標を完結される事を祈っております♪」
「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ あぁ♪勿論だとも!次に会う時にはここは中華でも指折りの経済自治区と成っている事だろう♪君も愉しみにしていてくれ!明日の朝は僕も早起きして君を見送りに出る事にしよう♪」
北斗ちゃんはそう言うとニカッと笑った。
楼琬もニカッと笑い返す。
長い付き合いである彼らにしか判らない心の有り様がそこには在ったのである。
【次回】天職への目覚め