歩隲との会談
北斗ちゃんは言いたい事だけ言うと、さっさと引き揚げる。
「じゃあ♪(⁎⁍̴̀﹃⁍̴́⁎)僕は帝国建設の作戦計画でも練ろうっと!」
皆、ノリノリの若君が最後まで手を抜かない姿勢に鼻白んでいる。全く"遊び心"を爆発させた若君は手が付けられない。
潘濬などは巻き込まれた事に辟易している。劉巴は意外に面白かったと目に悪戯心を滲ませていた。
田穂は本当にこれで良かったのか少し心配している。おそらく彼らも若君の野望を知ってしばらくは泳がせてくれるに違いない。
もし仮に独自の帝国を築く野望の為に躍起と為っている事が本当ならば彼らの敵では無いだろうからだ。それなら地に足を着けて今は富国強兵に力を注ぎ、かつての力を取り戻せれば、後々、翻弄する事など朝飯前である。
若君の真の狙いである時間稼ぎに甘んじて乗ってくれる事だろう。それにしてもその為とはいえ、かなり際どい線まで真実を態々ただで教えてやるなど本来では有り得なかった。
後は何が真実で何がデタラメなのかをハッキリと取捨選択して拾い上げる力が問われる事になる。つまりは若君はここで、呉のお歴々を相手に知恵比べを真っ向から挑んだ事になるのだ。
呉王・孫権を初め、呂蒙、陸遜などの強者相手にそんな大胆な挑戦に踏み切る若君の胆力に、田穂は平伏せざる得ない。
唯一の望みは今回の決定に際して、潘濬や劉巴、楼琬などの知恵者が全くと言って良いくらいに反対をしなかった事であった。
潘濬はともかくとして、皆、概ね賛成票を投じたからである。田穂はそこまで考えを巡らすと考えるのを辞めた。
『(〃`⌓´٥)=3 所詮あっしの及ぶ所では無いっすね!それに若に着いて行くと決めた時から覚悟は出来ている…』
田穂にとって劉禅君という人は気持ちの良い人であり、自分の全てを賭けても惜しくない存在に為っていた。だから一身を委ねる事が出来るのだと、改めて感じていたのである。
「あのぅ…(^д^٥)すいません♪」
その時に何を思ったのか突然、間者のひとりが間の抜けた様な声で語り掛けた。それは明らかに熊の恰好をした若君に向けたものだった。
なぜならその視線があからさまに若君に向いており、そのノリは『ꉂꉂ(^д^ღ*)ちょいとそこの熊さんお待ちなさい♪』くらいの明るさだったからである。
当然の如く、皆一斉に声の主に視線を移す。それはあの歩隲であった。北斗ちゃんは多少面食らったものの、直ぐに声を掛けた。
「はい♪( ๑˙﹃˙๑)何でしょう?」
するとその男はおもむろに告げた。
「ꉂꉂ(^д^٥)少しお時間をいただけませんかね?私は貴方と話がしてみたいのです♪」
奇を衒う事無く、真っ直ぐなその瞳は若君を一心に見つめている。皆が呆気に取られるほどその場にはそぐわない物言いであった。
「(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈ間者ごときが太子に何用か?無礼であるぞ!」
潘濬が直ぐに間に入る。けれども北斗ちゃんはそれを軽く手で制し、答えた。
「ꉂꉂ(ღ• ▽ •๑ )はて?まだ何ぞ御用がありますかな?僕は帝国建設の作戦会議で忙しいのだが?」
北斗ちゃんはまだまだノリノリである。それにこれは彼にとっても願ってもない機会だった。
なぜなら北斗ちゃんも歩隲と話してみたいと思っていたからである。それには会見を持つ為の必然性が必要だった。
北斗ちゃんが主導するのは自然とは謂えない。どうせなら相手から望んでくれる方が良かったのだ。
それを歩隲の方から御膳立てしてくれているのである。渡りに船とはこの事であった。
但し、引き受ける以上はこのまま演技を続ける必要がある。彼はどうしようか迷いながら歩隲の反応を待った。
「ꉂꉂ(^д^٥)私はかなりの情報を握っていますぞ♪貴方がこの荊州で独立するつもりなら、聞いて於いて損は無いと思うのですが?」
『懸かった!✧(⁎⁍̴̀﹃⁍̴́⁎)これなら大いに必然性がある。今は只、会見に持ち込めればそれでいい…』
北斗ちゃんは満足そうに笑みを浮かべながらコクりと頷く。
「✧୧(๑•̀⌄ •́ ๑ ૭)いいでしょう♪ならこちらにも利は在りそうだ。では貴方は別室へ御案内致そう♪どうぞこちらへ。他の皆さんは御苦労様でした。配下がお送り致します♪」
北斗ちゃんが桓鮮に目配せすると、彼は配下に命じて四人の間者を連れ出す。すると田穂と楼琬もその後に続いた。
「おい!大丈夫なのか?」
去り際に間者のひとりが突然残ると言い出した男(歩隲)に声を掛ける。男は少し寄り道をするくらいの気楽な口調でそれに答える。
「あぁ…ꉂꉂ(^д^*)心配いらない。お前たちは先に行ってくれ!私の事なら待たなくていい…」
その返事に、声を掛けた男も無言で頷き、そのまま去る。地下広場には、北斗ちゃんと歩隲の他には潘濬と劉巴、廖化だけに為った。
「(ღ • ▽ • ๑ )ではどうぞ♪私の居室で話を致そう!」
何といきなり五人だけに為ってしまった。歩隲は驚く。なぜなら未だ四対一とはいえ、数の上では隙を突ける可能性すら十分にある。
勿論、逃げるという事では無い。解放される事は決まっているのだ。だから一見、油断仕勝ちだが、暗殺される可能性は考えないのだろうかと想ったのである。
ひとまず歩隲は従うことにして、彼らに囲まれながら太子の居室に向かった。すると角を曲がった所で巨体の男が鉞を振り回している。
当然の如く歩隲は驚く。
かなり場違いな仕草である。するとその巨体の男は舐め回す様に彼を観ると、口を開いた。
「おや、若君!(* ^ิ౪^ิ)ლまた捕獲ごっこですか?余り殿様を困らせないで下さいや?」
「おぅ♪(´°ᗜ°)✧周倉!ご苦労様。また秘密特訓かい?御精が出るね♪爺ぃ~には迷惑掛けないから大丈夫!じゃあ頑張って♪」
劉禅君は励ましの言葉を残すとそのまま通過する。しばらく廊下を進むと、突き当たりに階段が見えて来る。その階段を昇り切ると地上に出た。
すると今度は階段と目と鼻の先で二人の豪傑が話し込んでいる。何とそれは関羽と馬超だった。
『馬超だ!✧(^д^٥)本当だったのか…』
歩隲はまたまた絶句する。馬超と言えば成都の北で北方に備えている筈だ。只のまやかしでは無く、劉禅君は真実を話していた事になる。
「(*`•o•´)੭ ੈ何だ、爺ぃ~こんなとこで何してるんだい?」
「(*`艸´)おぅ♪若、今日も稽古やりますかい?今、こいつと相談していたとこです!そろそろ孟起じゃ物足りんでしょう?儂が相手致そうか!」
「(〃´•̀ з•́)=3何を仰有る!まだこの馬超、負けませぬぞ♪」
関羽に食って懸かる馬超の顔は真剣そのものだ。二人の豪傑から溢れ出す闘気に歩隲は気圧される。けれども劉禅君は気にも留めずのんびりと構えていた。
『何と!(ღ´^д^٥)この太子の腕前は、あの馬超を凌ぐというのか…』
歩隲はもはや二の句が継げない気分だった。
「⁽⁽ღ( • ᗜ •٥ღ)まぁまぁ二人とも仲良くやってよ♪それに今日はお客さんと会談だからまた明日ね!それよりも守りに備えてくれ。いいね♪」
「「(*`艸´)(〃´•̀ з•́)判りました!!」」
こうして二人を後にした一行はまたまた先に進んだ。
やがて丞相府と書かれた門が見えて来て、そこを潜る。するとそこには何と趙雲が控えており、若君を目に留めると朗らかに挨拶して来た。
「(* ̄^ ̄)これは若君!お待ちしておりました♪」
「ꉂꉂ(• ▽ •๑ )おぅ♪子龍!何か用かい?」
『何ぃ~趙雲だ!!五虎将が三人もマジで居やがる…いったいどうなってる?』
歩隲は次第に眩暈がして来た。自分の目が可笑しくなったのかと疑心暗鬼に陥って来る。
けれども劉禅君は全くと言って良い程に泰然自若としていて、慌てる素振りすら見せない。歩隲は趙雲の反応に注目していた。
「(* ̄^ ̄)✧いや何ね♪精兵が万を越えましたのでその報告に!」
「Σ( ꒪﹃ ꒪)まじで!そりゃあいい♪その調子で頼む!天下に僕の名を轟かし、帝国建国も順調だな♪御苦労さん!」
「ꉂꉂ( ̄^ ̄*)そらぁどうも♪ではまた!」
趙雲は報告が済むととっとと引き揚げた。歩隲はその報告にまたまた頭が混乱して来る。
『何だとぅ…Σ(´^д^ღ٥)いったいいつの間に!劉禅君の話しもこりゃあ真剣に検討せんと危ういかも知れん…』
歩隲はますます話の真実味を信じずには居られなくなって来ていた。
一行は北斗ちゃんの執務室に辿り着く。歩隲は室内へ誘われると目を見張った。
『なっ!何だこの書簡の物量は(٥´゜д゜)ゞ…それに何やら怪しげな作業場があるが!』
壁一面に設えられた大きな棚に書簡の山が綺麗に整頓されている。そこには古今東西から取り寄せられた書物が集められ北斗ちゃんの知識の源に為っていた。
そして薬を捏ねる擂り鉢や杵。薬効成分を乾かした材料が暗所に寝かされていた。
「(´°ᗜ°)✧さぁさぁどうぞ♪」
劉禅君に椅子を勧められた歩隲は言われるままに着席する。それを待って太子が席に着くと、潘濬、劉巴が席に座る。
廖化は出入口付近で直立不動のまま剣は携帯したままである。いつでも鞘を抜ける様に備えを怠らない。
『(^д^٥)こりゃあ確かに暗殺は無理だな!警戒してない様に見せているが、かなり考えられた警戒振りだ。まぁ端から暗殺などする気は無いがね。それにあの戸に立つ男、あれはかなりの使い手だ…』
『…そして関羽・馬超・趙雲だ。彼らがここ江陵に居るのも本当だった。この若者の真実を突き止めるつもりで残ったが、とんだ事に為ったな…』
歩隲は内心の驚きを見破られぬ様に平静を装うが、意外性の連続で、ひょっとしたらどこかで表情に出たかも知れぬと焦っていた。
もはやその瞬間の事を、悉くは想い出せなかった。だから腹を括り為るに任せた。
「(´°ᗜ°)✧それで?お話とはいったい何でしょうか?我らに利の在る話だとよいのですがっ♪」
劉禅君は落ち着く間も無く、畳み掛けて来る。今度は歩隲の順番であるという事だ。そもそもこの会見は歩隲が提案したものだから、そういう事に為る。
これは必然で在り、避けては通れなかった。つまりこの会談を維持する為には、何かを言わねば為らない。当たり前だがそういう事である。
歩隲は長沙の太守であるから、情報にはかなり精通している。こんな時にもその強みを発揮する事で自然と振る舞う事は出来たのだった。
「ꉂꉂ(^д^*)太子様は河川整備を整え、海洋交易を始められる予定とか?我ら呉も海洋交易はしておりますが、内陸部の河川とは違い、外洋はかなり厳しい。波も高く、操船技術もかなり高くないと務まりません。何しろ辺り一面広い海の上ですからな…」
「…目標を定め、進む為にはコツが要ります。それが無ければ広い海で迷子に為り、目的地には着けませんし、戻る事もまま成りません。果ては水や食料が尽きて、漂流する羽目に成るでしょう…」
「…海の上では嵐が在り、船の高さより遥かに高い波に飲まれる事も在ります。果ては船が大破し、沈没すれば生きては戻れません。さらには鮫や鯨という恐ろしい生物もおり、鮫は人を食います…」
「…鯨は船より遥かにでかく、体当たりされたら船など砕けます。それに鯨に飲まれると身体が溶けてしまいますぞ♪余程の覚悟が無ければ難しいのです…」
「…それに異国には人食い人種や奴隷商人などもおり、騙されたら最期です。そんな困難に挑戦されるとはさすがに帝国建設の野望を持つ御方ですな♪感服致します!」
歩隲は散々に脅してから、最後だけ巧く持ち上げて来る。何と嫌味な物言いだろう。聞いていて潘濬などは腹が立って来る。
廖化も余り良い気持ちはしないらしい。けれども若君や劉巴はそれでもケロリとしている。脅しがいまいち効いていないと感じた歩隲も怪訝な顔である。
すると若君はこう答えた。
「ꉂꉂ(• ▽ •๑ )へぇ~貴方はご親切な御方だ♪わざわざ我々の為にご教授をいただけるとは光栄の極み♡感謝致しますぞ♪でも御心配あるな!我らにも海洋交易の経験者が居りましてね…」
「…今秘密裏に特訓しております♪まぁ問題は無いと思いますよ!第一、冒険とは危険が付き物です。危険の無い冒険などつまらないですからね♪御心配には及びませんよ♡」
太子・劉禅君は淡々とそう述べると、愉しそうにペロリと舌を出した。
「Σ( ꒪д ꒪٥)なっ、何ですとぅ…経験者が居られるのか?それはどなたです!」
歩隲はびっくりしてしまい、想わず本音が漏れる。そらそうだ。冷静に考えても、海に面していない国のどこに経験者が居ると思う?彼の驚きは至極当たり前の反応だった。
けれども若君はのほほんとした姿勢を崩さず、白装束の黒い方と顔を見合わせて笑っている。熊に頭を噛まれた装いがさらに不気味に感じる。
歩隲にはその熊の瞳が小馬鹿にした様に見えて為らなかった。すると若君の横に居た男が愉しげにケラケラ笑いながら語り掛けて来た。
「ꉂꉂ(o'д'o*)想わず本音が出ましたな歩隲殿♪それは言えませんな!うっかり口を滑らすと、狙われたら適わない。まぁ絶対見つかりませんけどね!何なら捜索でも致しますかな?それに…」
「…海軍力のお強いのがいつまでも貴殿方、呉の専売特許とは限らないのですよ♪我らは先頃、魏と同盟を結びましたが、それは彼らが我が国の誇る海軍精鋭に壊滅したからです♪いつまでもお山の大将気分で居ると、酷い目に遭うかも知れませんな!」
劉巴であった。けれども変装しているからその正体が歩隲に判る訳が無い。それに彼は今、間違いなく自分の事を"歩隲"と呼んだでは無いか。彼はさらに問うつもりがこの一言で空中分解を始めた。
「Σ( ꒪д ꒪٥)なっ、何で私の正体を御存知なのだ!まさか…初めから知っての狼藉か?」
止せばよいのに、ついつい自らゲロってしまった。するとおもむろに若君が口を挟む。
「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)あっ!ズルいぞ♪僕が恰好良く決めるつもりだったのにぃ~。今までのせっかくの苦労が水の泡じゃ無いか!全くもう♪」
「(*o'д'o)=3 あっ!そうでしたな♪すいません…」
「(⁎⁍̴̀﹃⁍̴́⁎)まぁ、いいけどさぁ♪…」
若君は至極残念そうにそう呟くと、歩隲に話し掛けて来た。
「そういう訳だ歩隲殿!(˶• ֊ •˶)まぁ悪く想わないでくれ♪でもこれで僕が言っていた事が全て真実だって判ってくれたろう?魏と僕らは君達の千歩先を行っているんだ♪僕が帝国建設を成し遂げた折りには、君達の敵じゃ無い!…」
「…それが証拠に呂蒙殿に聞いてみると良い。君達が攻めて来た折りに罠を仕掛けたのは子龍だし、僕は別動隊で君達を待ち伏せしていた。あのまま嵐が来なければ、君達は天を覆う矢の餌食に為って居たろう…」
「…爺ぃ~も君らを待ち受けていたから、どの道退却を余儀無くされていたさ♪天の怒りを一身に受けて復興に時間が掛かったのは気の毒だったけどね、僕らも河川の反乱で手一杯だったからな。悪く想わないでくれ♪…」
「…まぁそういった訳でどちらに転んでも君達は国の建て直しに尽力する事に為っていたろうさ!君達がどうしてもやり合いたいならいつでも受けて立つ♪今回はそれを伝えたくて君と話してみたかっただけだ…」
「…魏をも潰す我らの海軍力を甘くみない事だね♪種明かしはここまでだ!君達の富国強兵が巧く行く事を祈っているよ♪帝国万歳!✧ ⁽⁽(•̀ •́๑)(๑•̀ •́)⁾⁾ و✧僕の野望を阻む者は容赦しないからそのつもりで居てくれたまえ♡」
若君はそう通告しながら、歩隲を見つめた。
歩隲はもはやグゥの音も出なかったのである。
【次回】伸るか反るか