暗中模索
朝政が散会されると、ひとりまたひとりと引き上げて行く。孫権は久し振りにホクホクした良い笑顔で自室に戻った。
その場に取り残されたのは、呂蒙と陸遜だけとなる。呂蒙は笑顔のまま「(*•'ᗜ'•)✧お前も下がって良い!」と言った。けれども陸遜は納得がいかず、呂蒙に食い下がる。
「殿!(ꐦ•"ᗜ•٥)੭ ੈ今のは何です?これではまるでこの私が阿呆に見えまする。いったい江陵に入った配下達はどうなりますか?あれだけの強者達がただの阿呆どもの集まりに捕えられる訳も無い…」
「…中には命を落とした者も居りましょう。なのに貴方は事も在ろうに良くもあんな事が言えますね?一世一代の方便ですか!」
彼の眼には炎が立つ。今まで尊敬していただけに、悔いが残る。すると呂蒙は「(๑‾᷅罒‾᷄๑)੭ꠥ⁾⁾=3 ちょっと来い、馬鹿者が!」と言った。
その表情は先程の能天気振りとは打って変わっており、その眼光には凄みが感じられた。陸遜は驚く。『(•"ᗜ•٥ꐦ)こんな恐ろしい形相は滅多に拝めぬ…』そう想った。
この瞬間、彼は何か裏があると感じ取り、黙って呂蒙の後に続く。二人は呂蒙の司る大都督府まで辿り着くと、人払いを命じて二人だけになった。
陸遜はもはや何も言わず、辛抱強く呂蒙の第一声を待つ。しばらく静寂が流れた後に、呂蒙は何と想いっ切りゲラゲラと笑い始めた。
陸避はまた嫌な予感に苛れるが、辛抱強く待つ。すると呂蒙は快活に宣う。
「どうだ?ꉂꉂ(•'ᗜ'•*)この私もなかなかの役者だろう♪さすがに私自身も自分にあれ程の話術があるとは夢にも想わなかった。だが、あれだけ闊達に発言すれば、誰も疑う事も在るまい…」
「…流れはこの私の想定通りという訳だ。唯一、情報を握っているお前だけは欺く事は出来なかったがね?どうだね、情報操作とは面白いものだろう。お前も将来、上手く活用すると良い♪」
呂蒙は言い終えると、横目でチラリと陸遜を見た。疑問には何でも答えようとその眼は告げている。陸遜は想い切って問い正す。
「(ꐦ•"ᗜ•٥)੭ ੈあんな方便を語った意図は何です?南海の極悪人の話しは本当では無いのでしょう?貴方が私の情報を重視している事は知っています。そしてこの私は江陵で行われつつある事に危惧を抱いているのです…」
「…どうかこの私にだけは本音を語って下さい。私は貴方を目標にここまでやって来た。今後も貴方を信じたいのです。お願いです、どうかこの私には嘘は無しで願いたい!」
これは陸遜の必死の嘆願であった。これまで呂蒙を信じて着いて来たのだ。このままでは彼の根底が崩れてしまう。彼の眼は血走しり、真険であった。呂蒙はコクリと頷くと口を開く。
「そうだな…(٥ •'ᗜ'•)=3 強いて言うなら、挙国一致を計るためだろうな。そしてよりはっきりと言えば我が君の迷いを消し去るためだ。伯言、お前は赤壁の戦いの折りにはまだ出仕して四年目、地方の文官に過ぎなかった。だから詳細は知るまい…」
「…私は公瑾殿や德謀殿と共にあの曹操と戦ったから、当時の様子を嫌という程、記憶している。あの時、我が呉は恭順し降伏するか、徹底抗戦するかで真っ二つに割れていた…」
「…重鎮である張昭殿を始めとする文官達は、恭順し降伏する事を進言した。それに異を唱え、徹底抗戦を主張したのは魯粛殿であり、周瑜様も程普様も武官達と共に、我が君に戦う事を迫った…」
「…我が呉は一時的とはいえ反目し合い、団結するどころでは無かったのだ。そしてその相反する意見に悩まれた我が君は迷いに迷った。そんな時に、挙国一致に導いたのがあの諸葛孔明だ…」
「…つまり我が呉は、同盟相手になった陣営とはいえ、他国の介入を許した事になる。何とも情けない事よ!伯言、これで私の想いが少しは読み取れる事だろう。我が君は日頃は寛容なる良き君主だが、強迫観念に囚われると弱き御方なのだ…」
「…今度の事でも、このまま放置しておけば、無理にでも好戦に逸る者が出て来ないとも限らない。そして一旦そういう輩に勢力を形成されると厄介極まりないのだ。もし仮に彼らが我が君を焚き付ける様な事に為れば、赤壁の時の二の舞に成りかねん…」
「…そもそも反目する勢力は端から作らぬ方が良いのだ。我が君は激情型の君主。日頃は心穏やかにされておるが、その芯は熱き魂を持った御方だ。その魂を刺激されれば、蜀は無論の事、下手をすれば大国・魏をも敵に回して、二国相手に無理な戦いに突入する懸念もあったのだ…」
「…それは絶対に避けなければ無らなかった。今は挙国一致を計り、富国強兵を優先すべき時。せっかく一致団結して復興を成し遂げたのに、つまらぬ横槍でまた反目する事になれば、我ら江東の未来は潰える…」
「…あれはそれを阻止して、選択枝を無くす為の方便よ♪是か非かでは無く、その場の全員を納得させる事が出来れば、それで良かったのだ。特に我が君を納得させなければ成らなかったのだよ。これで判ったろう…」
「…何事も正直で直向きに進むだけが脳じゃない。一時は例え方便だったとしても、進むべき方向性がブレなければそれで良いのだ。今、何をすべきか、何が必要なのかをしっかりと見極め、その都度、正しき方向へ導けるか否かが我々に問われているのだ…」
「…そこに信念があり、国のため、真っすぐに進むべき道を示す事こそが大事なのだ。つまりはそれだけ我々の忠節が問われているのだと言って良い。私は自分の考えに自信を持ち、貫く事が出来ると信じている。今はただ、情勢をしっかりと見極め、舵を切り間違えぬ事が肝要と言える…」
「…御主の考え方は間違ってはおらぬ。だが、余りにも正直過ぎる。そして性急だな。今はとにかく詳細な現状を知る事に徹したい。その為にはお前の協力が不可欠なのだ。俺を知り信用出来る者は、残念ながらお前だけだ…」
「…まずは現状がしっかりと把握出来なければ、対策も立てようが在るまい。そうさな…ある意味、時間稼ぎという訳さ。どうだね?これで私の考えは全て明かした。ここからは、一蓮託生と為るだろう。それでも着いて来るかね?」
呂蒙は淡々とそう述べた。陸遜はコクリと頷き、今まさに呂蒙の真意が理解出来た気がしていた。
「殿!⁽⁽(•"ᗜ•٥ꐦ)お話しは判りました。まさに目から鱗が落ちる想いです。私の考えが浅う御座いました。なぁに貴方と私は元々一蓮託生ですからな!その点は御心配には及びませぬ。すると、極悪人の話しとはでっち上げなのですな?あれは真実では無いと考えても宜しゅうございますな?」
陸遜はホッと安心するようにそう告げた。
「うん?……"(ღ•'ᗜ'•*)あの、極悪人の話しか、あれは半分は方便半分は真実だ。私は丸っきりの嘘は言わん。そもそも必然性の無い方便など説得力に欠ける。嘘を吐く時には多少の真実が加味されていなければ、その場を凌ぐ事など出来んよ!そうさな…お前と私は同じ穴の狢だ。真実を話すと約束したのだから、本当の事を教えておく事にしようか…」
呂蒙はそう言うと、言葉を継いだ。
「…⁽⁽ღ(*•'ᗜ'•*)極悪人に大枚を叩いて抱き込んだ話しは本当だ!こいつは元々は士燮の動きを監視させるのが目的だったのだ。何しろ我々は戒厳令を敷いて、復興に専念する事が重要だったのでな…」
「…お前の国外の配下も全て引き上げる段になって、何を私が一番恐れていたかと言えば、交州の動きだ。士燮の奴は悔れない。何しろ奴はたった一代で交州を支配し、漢帝に朝貢し、中枢の権力者どもに大金をバラ撒き、支配圏を磐石にして来たやり手だからな…」
「…そして一番の警戒点は奴が自ら我らに服従している点なのだ。歩隲からそれを耳にした時、私はそう感じた。だから監視を付けた。特に危険視しているのは、奴が海洋交易で得た財力。奴には自由に交易させている分、財だけは飛び抜けて保持しているからな…」
「…それに奴は人との繋がりを大切にする気質があり、魏や蜀にもかなりの人脈がある。そういう切り札を持つ奴にいつの間にか裏切られ、裏を掻かれると厄介極まり無いのだ。そういった訳で着けた監視だったのだが、急に逃げ出して来た。私は呆れて物が言えなかったな…」
呂蒙は大袈裟に両手を広げると、困った顔をしてみせた。
「⁽⁽ღ(•"ᗜ•٥ꐦ)すると、極悪人を抱き込み、そやつが逃げて来た事も本当なのですな…それにしても誰にも言わずにそんな手をいつの間にか打っていたとは驚きました。さすがは大都督ですな!恐れ入りました。」
陸遜はさも感心したようにそう溢す。
「ハッハッハ…ꉂꉂ(•'ᗜ'•ღ*)敵を欺くにはまず味方からさ、悪く想うな!」
「(ꐦ•"ᗜ•٥)੭ ੈでも始末したと聞きましたが?」
「あぁ…(ღ •'ᗜ'•٥)=3 始末したな!どうせ元々極悪人だ。殺し、人身売買なんでも御座れの連中だからな。こちらの役に立たないのなら、ただの金食い虫だ。しかも少々可笑しな体験をした為か頭が正常に働いていなかったのだ。どいつもこいつも悪夢でも見たように、同じ事をほざく!」
呂蒙は小気味良く舌打ちをする。
「Σ(•"ᗜ•٥ꐦ)ほぉ〜それは摩訶不思議な事ですな!どういう事なんです?」
陸遜も俄然興味を示した。もしかしたら、その辺りに問題点が隠されているのかと感じたのだ。
「あぁ…(٥•'ᗜ'•).。oO まず一点目は泣き虫な乱暴者の話しだ。奴等が言うには、あれは神だというのだな!」
「神ですと!Σ(•"ࡇ•٥ꐦ)そんな馬鹿な…」
確信に迫ると想った瞬間に、お伽噺に転じた話に陸遜でさえ、ガッカリして目を丸くする。
「ꉂꉂ(•'ᗜ'•ღ)何でも顔は人だが、常に涙を流している。上半身は虎で下半身は狼、足は和仁だという。そんな人外の者にコテンパンにのされたらしい。"悔い改めよ、悔い改めよ"と、必死の形相で追い掛けて来ては、泣きながらボカスカ欧るらしいのだな!奴等だって素手で人を殴り殺せるほどの強者なのに、全く立ち打ち出来なくて逃げ出したと言っていた!」
陸遜は想わず想像してしまう。確かに首から下が恐ろしい獣なのだ。虎に狼にワニなんて、考えただけでもゾッとする。
追い掛けられたら、確かに逃げるしか在るまい。ここまで考えた時に、またぞろ呂蒙が呆れた眼差しでこちらを見つめているのに気づき、彼は慌てて創造物を頭の中から追い払った。
そして見透かされた心を恥じるように畏まる。
「で?(•"ᗜ•٥ꐦ)続きをお聞かせ下さい!」
陸遜のその言葉に呂蒙は言葉を継ぐ。
「(٥ •'ᗜ'•)੭ ੈそんな奴等の言葉をどうしたら信じられる?土台無理な話しで在ろうが!だがそれでも私は何かその中にも信憑性を見出だせないかと慎重にその言葉の真意を吟味した。無論、表面的な言葉を信じるつもりは無かったが、人は言葉の中に必ず明確な意志を内包しているものだからな…」
「仰有る通りですな♪⁽⁽(•"ᗜ•٥ꐦ)さすがは大都督!」
「そこで私は辛抱強く奴等に付き合ってやった。どうせ始末するのだ!(,,ò᎑ó,,)最期の言葉くらい真剣に耳を傾けてやろうとの、この私のせめてもの情けよ♪」
呂蒙はそう言いながらもまだ核心は持てていないようだった。彼は淡々とただ一心に語り始めた。
「首を切られたのだそうだ。そう…(٥•'ᗜ'•)੭ ੈその神とやらが、あの凡庸と名高き蜀の太子・劉禅君にな!"この僕の首を切るなんて信じられない!阿呆はやはり阿呆なのだ!絶対に許さん!"などと宣い、呪いの言葉を吐きながら襲って来るので、死に物狂いで逃げ出したそうだ…」
呂蒙はもうただただ呆れていたが、最後まで付き合った。そして引き出しが空になるまで辛抱強く付き合った甲斐は在ったのだといえる。
陸遜は呂蒙の辛抱強さに敬意を表した。自分なら既に手を出していた事だろう。呂蒙の言葉は続く。
「(٥ •̀_₍•́ )やがてひとりの者が逃げ出して来た途上で得た情報を語り出したので、気を取り直して聞く事にした。その男の話しでは、太子・劉禅君が現在、荊州に流されて来て、頭の可笑しい事を始めたと言うのだ。本国・成都から丞相を始めとする重臣を呼びつけ、お医者さんごっこを始めたと言うのだ…」
「…何でも自分は高名な医術を学び、病気を治せると信じているらしい。若返りの秘薬を作り、皆にそれを飲ませていると言うのだ。そしてそれだけに止まらず、荊州を縦断する運河を造り、南海に出て、海洋交易に乗り出すと公言しているそうだ…」
「…どうも太子・劉禅君には傍で助言し、太子を操っている男がいるらしい。董斗星と名乗る若い男で、これが神出鬼没な仙術を極めた強者らしいのだ!先の大洪水をその秘術で収め、民を救い英雄と為ったのもその男のようだ…」
「…そいつが若き凡庸な太子を操り、勝手気儘に荊州を牛耳っているそうなのだ!聞いていて私は頭が可笑しく成りそうになったので、そこで始末した。それ以上聞いても御託を並べるだけで埒も無い戯言を畳み掛けるだけだったからな…」
「…そこで私は想った。こいつは確かに埒も無い戯言だが、巧く利用すれば皆を挙国一致に導けるかも知れぬと考えたのだ。そこで多少、頭の可笑しいところは割愛して披露したという訳だ…」
「…だがその後、もしかしたらこの話の中に何か重要な見過ごしが在るのではないかと想ったのだ。だからそれを今、必死で考えている。そしてふとした疑問が頭をもたげた。劉禅君が実はまともだったらどうなるかな?そう感じたのだ!」
呂蒙はそこまで話すと言葉を切り、陸遜を見つめた。『(٥ •̀_₍•́ )お前はどう想う?』彼の眼差しはそう訴えていた。
陸遜は真剣に耳を傾けていたが、呂蒙同様に頭が可笑しく成りそうだった。こんな話しを辛抱強く聞き続けた殿に頭が下がる想いである。
しかもその表面的な言葉を信じず、その中身の信憑性をろ過して咀嚼しようと言うのだから、大都督の頭の中身も相当に切れる。
そしてふとした疑問に行き当たり、逆説的に物事を考え始めている辺りは凄いとしか言いようがなかった。そして彼自身もその可能性を念頭におかねば危ういと感じたのである。
さすがは呉の将来を担うべき二人だったと謂える。こんなまやかしの言葉の中から、真実に辿り着く光を見出だしていたのだ。
陸遜はやや頭の整理をした後にこう答えた。
「(ꐦ•"ᗜ•٥)੭ ੈ殿の目の付け所は恐らく正しいと、この私も想います!今はただ先入観を捨てて、どちらの線も捨てぬ様に、新たな情報を探り出して、慎重に事に当たるべきかと存じます!この際、劉禅君がまともな線も念頭に置くべきでしょう…」
「…否、ひょっとしたらかなりの策士と謂えるのかも知れませんな!しかしながら、こんな頭の可笑しくなる話しを聴きながら、その真意を探ろうなどとは?殿の根気の強さには舌を巻きます。私なら我慢が効かぬでしょうな!」
陸遜は感心しながらそう述べた。呂蒙は陸遜の頭の柔らかさに感心と満足を得ていた。
「良くぞ申した!⁽⁽(٥ •̀_₍•́ )そのお前の言葉が聞きたかったのだ。実際にはこの私も確信は無かった。だが、おそらく今後の調査がそれを証明しよう♪その為には御主の申す通り、先入観は捨てて臨むべきだろう…」
「…今後の調査もお前に任せるぞ!それにお前の大切な配下を救い出さねばならんからな♪慎重に行動し、真実を探り出して欲しい。その鍵はお前も感じている通り、おそらく太子・劉禅君だろう♪」
「そうですね♪⁽⁽(•"ᗜ•٥ꐦ)私もそう想います!ベストを尽くします。そして必ずや真実に到達します!」
呂蒙と陸遜は互いに決意した。その瞳の先には荊州で暗躍する劉禅君を捉えていた。
【次回】神童と呼ばれた男