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転ばぬ先の杖

秦縁は『やれやれ…』という表情で敢えてこれ以上絡んで行こうとはしなかった。彼は直ぐに気持ちを切り換えると、視線を劉禅君に戻す。


「ꉂꉂ(❛ ⌓ ❛´*)で?太子殿の御用件は何ですかな♪見たところお取り込み中のようですし、我らが絡む余地が在るとは想えぬが?」


秦縁は場を改めて見渡す様に眺める。曹仁の傍にいる人物は、かなりの手練れの様であった。体躯も良く、赤み懸かった顔に立派な髭が特徴的である。彼はすぐにそれが誰であるか理解した。


『(ღ❛ ᗜ ❛´๑)あぁ…あれが噂の関雲長か♪こりゃあ運が良かった!一度会ってみたいと想っていたが、ここで出会えるとはね♪さっきから厭に視線が厳しいと思ったら、子孝殿に軽口を叩いた俺の事が気に食わぬと見えるな!まぁここは静観しておくとしよう…これ以上話がややこしくなると困る♪』


彼は何事も無かったかの様に、すぐに視線を逸らすと、太子の返事を待つ事に徹する。その緑陽石(サファイア)色の瞳はあくまでも涼しげである。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈフフフッ♪とんでも無い!貴方は魏の国とも友誼のある方でしょう?今回の事は僕たちにとっても青天の霹靂でした。ですから何か在れば貴方に間に入って頂くのが一番事を収めるのに都合が良いと想ったのです…」


「…貴方にとっては迷惑かも知れませんがね!でも何か在ったら相談に乗ると貴方が言って下さっていた事を想い出したのですよ♪だからお呼びしました!(*⑅˃◡˂⑅)いけませんか?」


北斗ちゃんはサラリと宣う。この際、使える手立ては全て打っておこうと想ったのだった。


「⁽⁽ღ(^ᗜ^*)成る程…そういう事でしたか?確かにそう申し上げましたな!俺は約束は守る男ですからね、構いませんよ♪是非ともお役に立ちましょう!で?何をすれば宜しいのですかな♪」


「(* •̀ ᗜ •́ )⁾⁾ 曹仁殿に明日の朝、張遼殿と接触していただく事になったのですが、そこに関羽将軍と一緒に出向いていただけませんか?…」


「…第三者が同行すれば、無用な争いが起こらないと想うのですよ♪今一番大切な事は、誤解を生じさせない事ですからね!✧(•̀᎑•́๑)如何です?」


「( -ᗜ・)" あぁ…確かに!考えましたな♪太子はこの俺に仲裁役をお望みか?いいでしょう!構いませんとも♪俺で良ければ!」


「フフフッ…(⑅˃◡˂⑅)♡きっとそう言って下さると想った!貴方ほどの御方には使いっ走り同然の役廻りでしょうが、恩に着ます♪」


「何を仰有る♪(´°ᗜ°)✧気に為さるな!貴方の成さろうとしている事に比べれば、些細な役廻りで大変恐縮だが、それで事が収まるのならばお安い御用です!一肌脱ぎますぞ♪微力を尽くすと致しましょう♪」


「⁽⁽(˶• ֊ • ˶)助かります♪」


「⁽⁽ღ(^ᗜ^*)厭何(いやなに)これしきの事!お互いのためですからな♪お話しはそれだけですかな?」


「⁽⁽(•• ๑)えぇ♪」


「ꉂꉂ(❛ ⌓ ❛´*)ではお邪魔だろうから、我々はこれで!」


「秦縁殿!( ๑•▽•)੭⁾⁾ 田穂を使いに寄越しますよ♪田穂、悪いが見送って差し上げてくれないか?」


「ヘぃ!⁽⁽(`ー´ღ*)どうぞ、こちらです♪」


「太子殿、良しなに♪(ღ❛ ᗜ ❛´๑)あぁ…田穂頼む!」


田穂に案内されて、秦縁主従が退席しかけた時に、不意に曹仁が語り掛けた。


「秦縁…(๑ ー̀дー́٥)੭⁾⁾ 悪いな!よろしく頼む♪」


「あぁ!ꉂꉂ(❛ ࡇ ❛´*)子孝、心配するな♪腐れ縁さ…じゃあ明日な!」


秦縁が軽く手を振ると、曹仁も軽く会釈を返す。田穂に先導された彼らはそのまま引き揚げて行った。


そしてそんな彼らが退席するのを真顔でじっと見つめる男が居た。関羽だった。彼も二人の奇妙な関係を興味深げに眺めていたのである。




「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈそう言う事だ!」


北斗ちゃんは関羽に視線を移すと口を開いた。


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)爺ぃ~も関平殿や周倉殿が居ないと困るだろうが、しばらくは堪えてくれ♪皆、それぞれに持ち廻りの役目に邁進してくれている。」


「若、判っております。⁽⁽ღ(`艸´*)関平の事は儂の希望でもある。今は儂の親心だが、きっと将来あいつが国の支えに一役買ってくれると信じております。これもひとえに若の姿勢が浸透した結果で御座る。我らはいついかなる時も一枚岩ですぞ!…」


「…互いに影響し合い、励みましょう♪なぁに、儂には馬良も居ります!それに隠れた人材ならまだまだ発屈出来るかも知れませぬ。若の積極さを儂も見習いますぞ!」


関羽は歯切れの良い言葉尻で豪快に言い放つ。それを聴いていた北斗ちゃんも想わず笑みが(こぼ)れた。


「そうだね♪(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ 爺ぃ~の言う通りだ!こりゃあ一本取られたなぁ♪じゃあ、明日宜しく頼むね!」


「任せて下され♪。⁽⁽ღ(`艸´*)儂はこの荊州の総督ですからな!それに獲って食おうってんじゃないですからな♪大丈夫!」


関羽もそう意欲を表すと、曹仁に「では明日♪」と声を掛けて引き上げて行った。


こうして明日の段取りが落ち着くと、北斗ちゃんは曹仁と共に再び、患者の許へと戻っていく。廖化が付き従ったのは言うまでも無い。




「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ先生!患者の様子は如何ですか?」


「おう…✧(ㆁωㆁ*)斗星よ♪戻って来たか?魏王は御主の見立て通り、どうやら重篤な様じゃ!だが今現在、やれるだけの事はやったのでな。今のところ安定しておる…」


「…今夜は儂も隣室で待機しておく事にする。今は弎坐に観させておるゆえ安堵せよ♪孟起殿の時と同様に管邈(かんばく)にも待機して貰っておるからな!御主も忙しい身だろうが、備えて於いてくれ♪」


「ꉂꉂ(๐•̆ᗜ •̆ ๐)えぇ…勿論です先生!僕も府の中に居りますから御心配無く♪管邈、君も頼むね♪」


「(*´꒳`*)⁾⁾ 無論です♪」


「✧(❛ ᗜ ❛´๑)曹仁殿も少し休まれては如何ですか?」


「(๑ ー̀дー́٥)儂も孟徳の傍で見守る事にする!なぁに心配はいりません。戦場での不眠不休には馴れて居る。あなた方には厄介事を持ち込んだ様で本当に申し訳なく思っている。すまない…この通りだ!」


曹仁は深々と頭を下げた。


「何を仰有るんです。ꉂꉂ(๐•̆ᗜ •̆ ๐)今回の事は誰にも予測が付かない不測の事態です。誰を責められる訳でも在りません。それに患者にとっては、むしろここで倒れたのは却って幸いだったかも知れないじゃ在りませんか…」


「…ここには華佗老師も居て下さる。そして僕も含めた弟子が支える事も出来ます。ꉂꉂ(°ᗜ°٥)あっ、いや…"幸い"は不謹慎な言い方だったかも知れません…」


北斗ちゃんは慌ててそう付け加えた。


曹仁はおもむろに(かぶ)りを振ると、それを責めなかった。


「とんでも無い!⁽⁽(๑ ー̀дー́٥)⁾⁾ 誤解など在りません。迷惑をかけているのはこちらの方だ。貴方の真心は重々承知しておりますから心配入りませんよ♪」


「(٥ •ᗜ•)⁾⁾ 恐れ入ります!」


北斗ちゃんもお辞儀する。


「(๑ ー̀дー́٥)੭ ੈそれはそうと、先生の見立ては如何なのです。判る範囲で結講ですから、本音を明かしていただけませんか?儂は数少ない身内の一人ですからな!知っておきたいのだが…」


曹仁は華佗老師の腕には格別の信頼を置いていたので、そう語り掛けた。


先生はしばらく静かに考えているようだったが、チラリと横目で若君を一瞥(いちべつ)すると、視線を曹仁に戻した。何か言いたげな様子だった。


「そうじゃな…✧(ㆁωㆁ*)貴方の仰有る通りですな!ではそ辻ながら、この儂の見立てを申し上げるとしよう。但し、儂の独自見解だという事を敢えて先に申し上げておく…」


「…こんな事を口にすれば、恐らく魏王ならば殺意を抱かれるに違い在るまい。一度口に出せば恐らくは儂は生きては居られまいよ!それを重々承知おき下され♪」


老師は念を押すようにそう告げた。それははっきりとは言わないまでも、ここだけの話という事である。「ꉂꉂ(ㆁωㆁ*)本人には黙っておれ!」と言っているようにも、受け取れたのであった。


今まで常に患者に寄り添い、必ずその症状と術の流れをきちんと説明する事に徹してきた老師にとっては、その姿勢を180度ひっくり返す程の事柄だったと言えよう。北斗ちゃんの方に一瞥(いちべつ)をくれた訳もその辺りにありそうだった。


「そうですな。(๑ ー̀дー́٥)⁾⁾ 判りました、先生!それで結講です。我らもこれまで幾度も危険な戦場を渡り歩いて来た身です。生死の境を幾重にも越えて来ている。相応の覚悟は在るつもりですから、どうか遠慮なく仰有って下さい♪」


「判った!⁽⁽(ㆁωㆁ*)では申し上げよう。魏王は頭の中に悪腫がある。これが活性化する事で脳が圧迫を受ける。それが頭痛の原因となっているのだろう。但し、見た目にも、触診しても(コブ)は見受けられない。つまり原因の源は内包されて居るのじゃ…」


「…(*ㆁωㆁ)੭ ੈこうなると正直、頭を切り開き調べる以外に道はないと言える。恐らく悪腫を完全に取り除いてやれば、全快するに違い在るまい。しかしながら、場所の特定も難しく、頭を切り開く時点でかなりの危険が伴うからのう…要は手出し出来ぬと言う事だな!」


「Σ(٥ー̀дー́ ๑)つまり手には逐えないという事ですか…」


曹仁が想わずそう呟いた時に、「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)そんな…」という悲痛な声が聞こえた。北斗ちゃんであった。


彼は今まで患者に寄り添い、治療にその心身を傾けて来たから、この事態がすぐに受け止められないで居たのだった。


華佗老師は溜め息混じりに『⁽⁽(ㆁωㆁ٥)⁾⁾ やれやれ…』という顔をして、再び若君を一瞥している。しかしながら、すぐに曹仁に向き直ると、その疑問に応えてみせたのである。


「子孝殿!(*ㆁωㆁ)੭ ੈ御主も斬られたり、矢で射られた経験は在ろう?」


「えぇ…(๑ ー̀дー́٥)⁾⁾ 先生!それは勿論…」


曹仁は老師が急に何を言い出したのか判らない。それはまるで謎掛けの様にも想えたのである。


「ꉂꉂ(ㆁωㆁ*)人は斬られれば血が出る。そして止血しなければ、どんどん血は流れ出る。ここまでは良いな!」


「はぁ…⁽⁽(٥ー̀дー́ ๑)儂もそれは何となく判ります。ですから止血し、流れ出るのを防ぐのですね?」


「そうじゃ!⁽⁽(ㆁωㆁ*)人は血が流れ過ぎると死ぬ。人の生を維持する事が出来るのは、血の巡りにある。身体全体を覆うように人の身体の至る所には血が巡っている。では人の急所と言われる場所はどこかな?」


「そうですな…(๑ ー̀дー́٥)✧儂が戦場で命のやり取りをする場合には、必ず心の蔵か腹、首辺りを狙います。逆に相手の戦意を削ぐだけなら、それは避けます!」


「⁽⁽(ㆁωㆁ*)で、在ろうな。腕や足等を斬られただけなら、止血次第ではまだ生き残れる術はある。それは人が生きる上で決定的となる弱点では無いからじゃ!だが御主の言う通り、致命性となる部位、即ち頭や心の蔵をやられてしまえば人は命をつなぐ事は出来ないのじゃ…」


「…そして頭の中にある脳や、心の蔵など人にとって重要な器官には、血脈が縦横無尽に張り巡らされておる。人はこの血脈を一時でも切られれば生きては居られぬ。悪腫は往々にしてこの血脈に癒着しておるものじゃ!(*ㆁωㆁ)੭ ੈ斗星、お前は孟起殿の術の際、実施に体験しておるから判っていよう?」


「はい!⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)先生、確かに…」


「(*ㆁωㆁ)੭ ੈつまり今回、術が使えぬ訳はそこにあるという事だ。人の眼で視認出来る大きさには限りがあり、微細な血脈までは認識出来ぬのだからな。いくらこの儂が"神の手"を持ち得ていたとしても、道具が整わぬ今現在では無理だろうな。千年先か…」


「…✧(ㆁωㆁ*)或いは数百年先で在れば、やれたかも知れんが、医術にも例外無く限界は在るのだ。必ず助けてやれる訳では無いのだ。斗星や管邈もこの機会にそれを肝に命ぜよ…」


「…ꉂꉂ(ㆁωㆁ٥)このジレンマに陥る者は、総じてこの事実にいつか気づく事になる。手を(こまね)く事はさぞや忸怩(じくじ)たる想いで在ろうが、止む逐えぬのだ。人は神では無いのだからな…」


「えぇ…(๑ ー̀дー́٥)⁾⁾ そうですな!」


曹仁は呟くようにそう答えた。


北斗ちゃんも管邈もコクリと頷くのみであった。彼らにしてみても、この中で一番辛い想いをしているのが曹仁だと判っていたからだ。


その彼が先生の意見を受け止めるように、苦痛に顔を歪ませながらも貢定しているのだから、彼らにそれを否定する事は出来なかった事だろう。


やがて、曹仁は気持ちを切り換えるように(えり)を正した。それは無理にでも自分を奮い起たせているように感じられたのである。


「ꉂꉂ(٥ー̀дー́ ๑)時に先生、完治が神の領域である事は判りましたが、何とか生をつなぐ事は出来ないのですか?孟徳に今、居なくなられては、我が国は混乱してしまうでしょう。以前、先生が施して下さった治療は一定の成果があったと想うのですが?」


曹仁は食い下がる。彼は伊達に戦場で生きて来た人では無かった。元々、命の危険を省みず、仲間を救出に向かう気概の特ち主である。


長年の盟友を無碍(むげ)に見殺しに出来る人では無かった。華佗老師もそれを受け止めるように、おもむろに口を開く。


「あぁ…(*ㆁωㆁ)੭ ੈ(ハリ)治療の事じゃな!それは無論、この儂も承知しておるよ。先程、既に処置は済ませた。安定して居るのはその成果じゃろう。後は意識が戻った後に継続する予定じゃ…」


「…ꉂꉂ(ㆁωㆁ٥)だからしばらくは我慢して欲しい。様子を見る事しか今は出来ぬからな!勿論、儂を含めて皆が待機するのは急な異変に備えるためじゃから、その点は心配いらぬ。安心せよ♪」


「有り難い!⁽⁽(٥ー̀дー́ ๑)それを聞いて少し安心しました♪では儂は孟徳の顔を拝んで来ると致しましょう。皆様は少し身体を休めて下され♪なぁに、この儂も朝までに少し仮眠を取る事に致しますゆえ御心配には及びませぬ。ではまた明日!」


曹仁は再び深々とお辞儀すると、扉の向こうに消えて行った。先生はそれを見送ると、深々と溜め息を漏らす。


『この先…✧(❛ ࡇ ❛´٥๑)先生はどうするおつもりなのだろうか?』


それを眺めながら、北斗ちゃんはそう想わずには居られなかった。

【次回】遼来遼来

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