その優しさを突け!
北斗ちゃんは田穂の推論を聞いて驚いている。匂いから異変を嗅ぎつけ、廖化の経験からその匂いの素が化粧として使う白粉と紅である事を特定し、最後にはその証として曹仁愛用の大刀に眼を着けたところなぞ、正に本領発揮と言うべきだろう。
間諜として長年研ぎ澄まされた彼の嗅覚は未だに健在なのだと、改めて感心していたのだ。北斗ちゃんは口をあんぐりと開けて呆けていたが、気を取り直すと、田穂を褒めた。
「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈやるじゃないか田穂♪大したものだな!良くぞそこまで辿り着いたね♪僕はすっかり信じ込んでいたよ!何しろ疑う余地が無かったからね♪それにあの患者は正真正銘の頭痛持ちだ…」
「…✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)しかも僕の見立てではかなり重篤な症状だからね!医者の眼から観るとそれは間違い無い。だからこそ僕も真剣に向き合った!まさか後ろに控える付き添いの人までは気にして無かったな♪」
北斗ちゃんは急に脱力感に苛まれた。あの曹仁殿が重篤な患者を盾に方便を騙るとは思わなかったのだ。彼はそれだけ曹仁という人を尊敬に値する人物として評価していたからである。
「(ღ`⌓´٥)あのぅ…決して若君を疑う訳じゃないんすが、あの患者は本当に頭痛持ちなんすかね?」
田穂は言い難そうにそう訊ねる。彼は些細な懸念も見逃さない。そうやって命を繋いで来たのだ。身体に染み込んだ癖である。
「✧(❛ ࡇ ❛´٥๑)あぁ…それは間違いないよ!田穂、君が情報収集に特化した才能を持つ様に、僕には医療分野で一日の長がある。些細なミスは患者さんの命に関わるからね!先生にそう叩き込まれた…」
「(〃`⌓´٥)=3 でしょうな♪だとするとあっしの想像も満更、当て外れでも無いかも知れません!これは確実では在りませんが、ひとつの可能性として申し上げておいて宜しいですかね?」
可能性はあくまでも可能性である。しかしながら、この際は念頭に置いて考えた方が若君の選択肢が拡がるかも知れないと田穂は考えたのである。
北斗ちゃんは人の話を鵜呑みにする人では無い。自分で確証を得るまでは思い込む事は無いのである。選択肢が拡がるだけと割り切っている。
そんな人だからこそ、可能性のある事は選択肢として持たせておいた方が良いと彼は思ったのであった。北斗ちゃんはニヤニヤしている。
田穂の話しにもう既に耳を傾けていた。またぞろ面白い話が聞けそうだとさっそく食いつく。
「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ 勿論だとも♪是非とも聞いておきたいね!この際だから懸念は全て払拭しておく方が良いんだ♪何か閃くかも知れん♡」
北斗ちゃんは興味津々に水を向ける。田穂は苦笑いしながら、話を向けた。
「ꉂꉂ(`ㅂ´ღ*)でしょうな♡そう言われると思っていました♪話を向けた甲斐が在ったと言うものです!」
「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈあぁ!頼む♪」
遊び心は心の余裕を産む。彼はそれをいつしか肌で感じる様に為っていた。
「(`ー´ღ*)ここだけの話ですが…」
「⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)うんうん…」
「(ღ٥`ᗜ´)੭ ੈ魏王・曹操は頭痛で長年悩んでいるそうで、数多の医者に掛かり、一時的に症状を緩和出来たのは神医様だけだとか?」
「(٥ •ᗜ•)な!何だってぇ!!」
北斗ちゃんはそれを聞いてぶったまげた。おそらくは田穂は全てを理解しないで話しているのだろう。彼は直ぐにそれを諭した。
「田穂…ꉂꉂ(°ᗜ°٥)お前、神医が誰か知らないで言ってるよな?」
「(*`‥´٥)੭⁾⁾ まぁ、あっしのような流れ者には、かつてはそこまで必要ありませんでしたからね!若君のお陰で今は違います。なるべく考えるようにしてますが、え!まさか?」
「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)たぶん、そのまさかだ!神医とは華佗老師の事さ♪僕も失念していたが、だから腑に落ちなかったんだな!あの患者は元々老師の列には並んでいなかっただろう?…」
「…(´°ᗜ°)✧本来治療が目的であれば誰だって神医に診て貰いたがるものだ!言われなくても並ぶさ♪それに彼らは遠い道程をわざわざ来てるんだぜ?可笑しいじゃないか!これは今だから判る事だけど…」
「…(˶• ֊ •˶)僕は問診の際に、華佗老師に診て貰うよう提案をしてみたんだ♪けど彼はまるでそれを避ける様に選ばなかったんだ。その時も可笑しいなとは想ったんだけど、でも彼がそれを避けていたのは当たり前だ…」
「…✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)田穂の話では魏王の頭痛を唯一緩和させたのは華佗先生なのだろう?ところが彼は僕にはそれを伏せたかった様だ!であれば自分の素性がバレる事を恐れたとしか考えられないだろう?…」
「…(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈだとしたら未だにその目的は判らないが、あの患者はほぼ曹操御本人様で間違いないんじゃないかな?少なくとも現時点で僕はそう感じている。田穂♪お手柄だったな♪」
「な、何と!Σ(ღ`⌓´٥)じゃあもしかして??」
田穂はハッとして若君の顔を見つめた。
「そうだ、⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)そうなんだよ♪田穂、君の考えは的を得ているかも知れない。しかも限りなくね!僕は曹仁殿と面と向かって語り合った。その人と形は堂々としていて、無用に人を欺く方では無いと感じた…」
「…(´°ᗜ°)✧僕は話しを聞いていて、そこがどうも引っ掛かっていたんだ。でも、もし仮にあの長髪の患者が曹操その人であれば、一応その説明も着く。魏王の考えなら曹仁殿も従うだろうし、二人っきりなんだ…」
「…✧(❛ ࡇ ❛´٥๑)彼が背後を守るのも納得がいく。但し、ひとつ僕には理解出来ない事がある。果たして一国の王がそんな危険を冒すだろうか?」
北斗ちゃんは当然、曹操その人と過去に面識がある訳ではないから、その人と形は知る由も無い。
だから彼らしくも無く、割と常識的な言葉が、想わず飛び出す。田穂もそれをすぐに汲み取ったらしい。彼なりに感じたままを言葉に乗せた。
「(ღ`ェ´*)⁾⁾ あっしには難しい事は判りませんが、人は時として唐突な行動を取るものです♪たぶん、そこには本人にしか判らない理由や事情があるのかと!…」
「…(〃`⌓´٥)=3 人を突き動かすものは興味・恐れ・義侠心など人それぞれですが、突き動かされた行動が対価に見合うと判断したなら人は後先を顧みずなりふり構わぬ行動を取る事も在るのでは?」
「そうかも知れないね♪⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)僕は曹操を知らな過ぎるからな!是非とも何故なのかそれを本人の口から聞いてみたいものだね♪」
北斗ちゃんはおもむろにそう述べたが、内心は冷や汗を搔いていた。それはそうだろう。止むに止まれず自分を頼って来たとばかり想っていた患者があの曹孟徳だと言うのだ。
普通に考えれば有り得ない話である。繰り返しに為るが、そんな危険を冒す君主がどこに居よう。
只、確かに田穂の言通り為らば、そこには別の目的が在るのかも知れない。だとするならば、自分でも危険を承知で潜入する事も在るかも知れないと想ったのである。
「田穂♪ꉂꉂ(°ᗜ°٥)悪いが先ほどの話は撤回する!今夜は僕と共に夕食にしよう♪悪いが一緒に居て貰うよ!曹仁殿が共にいるなら、曹操も無理は出来まい。けど用心に越した事は無いからね♪」
「(*`ᗜ´٥)੭ ੈ勿論ですよ北斗ちゃん♪貴方の命は身命を賭してお守りします!任せて下さい♪」
「(٥ •ᗜ•)たぶん…そこまでは危険じゃ無いと想うけどな♪まぁでも餅は餅屋に任せるものだからね、いざと為ったら頼むよ!でも可能な限りは話し合いで解決したい…」
「…まぁそれも本当に曹操だったらの話だけどね!相手は曲なりにも患者さんだから、しばらくは様子を見るほか在るまい。こちらから仕掛ける訳にもいかないからね…」
「…万にひとつだろうと間違っていたら、弱者を追い込む事になるからだが、上手い手を考えたものだ。ꉂꉂ(•ᗜ•ღ٥)まさかの展開だよなぁ!判ってたらここに連れて来なかったんだけどね♪」
北斗ちゃんはしくじったかも知れないと感じていた。彼の優しさが裏目に出た瞬間だった。
「(*`⚰´٥)੭ ੈいやいや…そう何でもかんでも判ったら黄帝様の領域ですぜ♪若、そりゃあ無理ってもんです!気に病まないで下さい♪貴方はそれで無くともまだ十代!立派なもんです♪」
「(⑅˘̳ლ˘̳⑅)だよなぁ♡僕にだって間違いは在るさ♪要は間違いをどう質すかだよなぁ!」
「(*`⌓´٥)੭ ੈそうですぜ♪あっしも協力しますから挽回しましょう♪」
「だよな!⁽⁽(੭ꐦ •̀Д•́ )੭*⁾⁾ そうしよう♪」
意外と立ち直りの早い北斗ちゃんである。気に病んで居ても状況は決して変わる事は無いのだ。それが直ぐに理解出来るのも彼の長所である。
そして田穂も修羅場を潜り抜けて生きて来たから切り換えが早かった。二人の超の付く程の変わり身の早さは、あくまでも前向きな思考の成果である。
因みに黄帝とは、古代中国の最初の帝であり、謂わば中華の基礎を造った人物とされている。伝説上の人物であり、医者としても名高い。
田穂が黄帝を引き合いに出したのは、少々不遜では在るかも知れないが、彼が東洋医学の祖としても有名で在ったから、若君と重ね合わせて考えたのも無理は無かった。
「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾ じゃあ取り敢えず腹拵えをしておこう♪腹が減っては戦は出来んからね♡今日は熊肉の燻製だ!あれは精がつくらしいぞ♪普通に旨いし、たくさんある!」
「ꉂꉂ(`ㅂ´ღ*)おやおや、思わぬお相伴に預かりますな♪こりゃあ幸運な事で♡食いましょう♪食いましょう♡いやぁ廖化に悪い事したな♪」
「(⑅˘̳ლ˘̳⑅)フフッ…大丈夫だよ♪まだまだたくさんあるからね♡周倉殿に感謝だな!気にせずやってくれ♪」
「(ღ`⌓´*)✧そう言う事なら遠慮無く頂きますぞ♡」
既に場の空気は明るく好転していた。何とも現金なものだが、それがチーム北斗ちゃんの真骨頂で在った。
その後二人は不安な気持ちをしばし忘れて、ムシャムシャと口を動かす事に為った。
さて一方の化粧を施された二人であるが、自室に戻るとひと息つく。曹操は余程、劉禅君との初対面が気に入ったとみえて御機嫌である。曹仁に自分の外連の無い本音を吐露した。
「ꉂꉂ(๑°ㅂ° ๑)ハッハッハ♪子孝!あやつなかなか面白いのぅ♪」
彼は高らかな笑いと共に、相棒である曹仁の瞳を覗き込む。
「でしょう?(* ー̀ дー́ )੭⁾⁾ ならば私もここまで来た甲斐があったというものです。ですが少々深入りし過ぎではありませぬか?ここは丞相府のようですが、彼は太子であるだけでなく、丞相代理という肩書きも持っているようです♪…」
「…表の顔は丞相代理の董斗星殿、裏の顔…否、真の顔は太子・劉禅君ですからな!それに少々、時期も不味かった。(٥ ー̀дー́ )੭⁾⁾ まさか丞相・諸葛亮や、趙雲、馬超まで居るとは?事情が判らないゆえ、その目的は見当も付きませんが、御用心されるべきかと!」
曹仁は魏王が劉禅君の事を気に入っているのは嬉しかったに違いない。けれども敵国の中にあって、その中枢に入り込み過ぎた事には素直に懸念を示した。
いざ逃げる段になった場合には、これではかなり難しいに違いないのだ。ところが当の曹操はその辺りの事には全く動じて無い様子である。何か秘策でもあるらしい。
「ふん♪⁽⁽ღ(๑°ㅂ° ๑)元々そんな事は百も承知よ!いちいち動じてたら、こんな場所には身を置かぬわ♪お前は高々こんな化粧と演技でこの状況を乗り切れると想っていたのか?いや想わぬであろう?…」
「…(๑ °⌓°๑)੭ ੈこの儂も乗り切れるとは端から思っとらんよ♪これはあくまで、安全にあやつに接見するための方便よ!それが証拠に、まんまと中枢といえるこの場所に、我らを安全に引き込む手引きをしてくれたであろう?…」
「…(ღ๑°⌓°๑)✧その後の事は応変に考え、振る舞うしかあるまい。あやつは見たところ、まだ若いが頭も良く回るし、勘も良い…」
「…ꉂꉂ(๑°ㅂ° ๑)いずれ変装が見抜かれるのも時間の問題だろう。だがな、あやつの弱点も既に判った事だし、逃げる算段もそこら辺りをつつけば適うであろうよ♪」
曹操は落ち着き払っており、そこには微塵も焦りの色は窺えない。曹仁は主人の堂々たる振る舞いに少し安堵したものの、その言葉尻に引っ掛かるものを感じて、反射的に問うた。
「弱、弱点ですと!(٥ ー̀дー́ )੭⁾⁾ 大殿♪彼の弱点とは何です?」
曹仁は言葉に詰まり、顔を歪める。曹操はその焦りがどこから来るものか、訝しげに眺めていた。そして深い溜め息を尽く。
『そうだったな…(ღ๑°⌓°๑)よくよく考えてみれば、こいつも似た者同士であったか。こいつがあやつに共鳴するのは、その辺りが原因かも知れぬな!』
曹操は今更ながらにそう感じていた。
「子孝よ♪✧(๑°ㅂ° ๑)それはお前自身が一番良く判っている事では無いかね?あの若物と直接対峙したお前がね!」
曹操は答える代わりとして、問い掛けでそれに応えた。曹仁はその瞬間、刃で胸を突かれる想いに駈られた。
「お、大殿!(٥ ー̀дー́ )੭⁾⁾ まさか貴方…」
曹仁には元々想い当たる節があったのだろう。そのタイプは違えども、二人は合せ鏡のように似通ったところがあったのだ。
【次回】巨星墜つ




