思わぬ再会
さて徐庶である。彼は未だ彷徨っている。若君とは対面出来たものの、その後の面会の予定は決まっていない。
余りにも劉禅の予定が詰まり多忙を極めているからであった。さらには諸葛亮との対面も果たして居ない。
彼は城下に住まい、民と共に暮らして居たから、城内奥に身を置く諸葛亮とは必然的に出逢う機会は無かったので、偶然接触する等という事は当然、無かったのである。
勿論、関羽や馬良からは城内に住まう様にと部屋は与えられていたが、彼は堅苦しい官僚としての暮らしに戻るのが煩わしく、尚且つ、一年にも渡る草蘆での暮らしが気に入って居たので、せめてのんびり暮らそうと民草の中での暮らしを選んだので在った。
そして廖化の勉強を観る時にだけ参内し、その合間に関羽や馬良と碁を打ったり、伊籍と旧交を温めたり、時には黄忠と遠乗りに出掛けたりしていた。
「先生♪(*`艸´)まだ丞相に逢われていない御様子だが、儂がお繋ぎ致そうか?」
「そうですよ♪⁽⁽ღ(๑◝‿◜ ๑)それが宜しいかと!」
その様子を眺めていた関羽や馬良の方が却って心配して気遣いする程である。けれどもそんな時には彼はのほほんと笑みを浮かべて、やんわりと話を逸らす。
「いやいや…ꉂꉂ(´ސު`๑)それではつまらない!いずれ逢えるじゃろう♪再会は必然の時で無ければな!奴とは昔からの腐れ縁じゃ♪逢うべくして出逢うものじゃて!」
そう言って高笑いするのであった。
彼がこんな具合である。気儘な暮らしを謳歌するのは、恐らくは長きに渡る忍従の日々の裏返しなのだろう。
ところが肝心の諸葛亮もそれに負けず劣らず、毎日の様に音曲に勤しみ琴を奏でる。
そして自分が思いついた政務の在り方や兵法書などを認めたり、詩を諳じたりと、繁忙から逃れたこの時にしか出来ない愉しさを慈しんでいたので、当然の如く両者はすれ違い、その切っ掛けすら無かったのだった。
恐らく徐庶の身分が確定し、その務めが決まれば、彼自身もこれまでの様な、のほほんとした態度は即刻、改めなければ為らないだろうから、今は自由で居たいという気持ちも判らないでも無い。
関羽も馬良もそれが判っていたから、それ以上の干渉は避ける事にしていた。それに彼らも富国強兵の一如を担っているのだから日々忙しく、他人に必要以上のお節介を焼いている暇など無かったのである。
「先生!ꉂꉂ(* •̀ᗜ•́ ღ*)︎今日も有り難う御座いました♪」
廖化は師に礼を尽くす。満面の笑顔でぺこりと頭を下げた。
「ホッホッホ…ꉂꉂ(´ސު`๑)随分と上達したのぅ♪後ひと息といったところじゃな!良く努力しておる♪偉いぞ♡また明日、来なさい♪」
「はい!⁽⁽(* •̀ ̫•́ *)︎先生♪感謝します♡」
廖化は今日も嬉しそうに辞していった。これから田穂と共に職務をこなすのである。
徐庶は途端に暇になり、今日はどうしようかと考えを巡らせる。
すると彼は何かを思いつき、なかなか良いアイデアだと悦に入った。そこで早速、実行に移す事に決めたのである。
それは診療所の見学であった。彼もここに来るまでは知らなかった事だが、ここにはあの有名な医師の華侘が居るらしい。
一度会ってみたいと想っていた彼は、さっそく城外に近い砦内の診療場に向かった。するとそこには案の定、長蛇の列が出来ている。
そして無償奉仕の若者たちが、その列を統制していた。
「(^o^)/ちゃんと並んでくれ♪先生はちゃんと診て下さる。慌てなくて良い♪但し、簡単な手当てはお弟子さんに廻す。悪く思うな!先生は見世物じゃ無いのだ…」
「…(*^_^)︎⁾⁾ あくまでも皆の健康の為に骨身を惜しまず診て下さるのだからな♪こら、そこ横入りするな!揉めると先生や患者さんに迷惑だ。おとなしく待て!」
人が集まると必ず起こるのが揉め事である。だから人が多い時にはこうして統制を取る信奉者が集まって来る。
彼らの多くは先生のお陰で命を救われた者が多かったのだ。だからこういう時には、その恩に少しでも報いようと自ら勝手出るという事らしい。
徐庶はその小気味の良い掛け声を聴きながら、少ない列の入り口に立ち、その戸に掛かっている名札を眺めた。
「何々…管邈…先生?Σ(´ސު`٥)はてこの名前どっかで聞いた事があるような…」
彼は右手で顎髭を擦りながら瞳を上目遣いにして頭を巡らす。するとふとした瞬間に思い出す。
いわゆるフラッシュバックである。
『あぁ…(٥´ސު`)✧そうだ!そうだった♪こいつは満寵殿の子飼いのひとりだ!でも確か潜伏先で全滅したと聞いていたが…』
『…ꉂꉂ(´ސު`๑)こりゃあ何かいわくが在りそうだな♪こんなところで医師をやっているなんて、まさか誰も思うまいよ!』
徐庶は面白くなって来たと思っていた。そしてこの日の暇潰しは当たりだと悦に入った。
しかしながら、それと同時に用心に越した事は無いとも感じていたのである。冒険はいつの時にも危険と常に隣併せなのだから。
『✧(´ސު`٥)ままよ!!』
彼は決意を固めると、この冒険を続ける事を選んだ。そしてそのまま列を素通りして中に入る。
「あんた…(*`Д')いったい?」
統制を取る若者から声が掛かると、彼はさも馴れた様に右手で制する。
「…(´ސު`๑)ღ⁾⁾ 儂は管邈先生の手伝いじゃ♪気にするな!」
彼の振る舞いが余りにも自然なために、若者もそれ以上は言わなかった。
けれどもその時にその軽い騒ぎに目を留めた二人が振り返り、こちらを観て驚いた様に見えたのである。
彼はすぐにその不審な態度に気づき目に留めていた。ほんの刹那の出来事であった。
徐庶は診察のため腰を降ろしている患者と、その付き添いとおぼしき二人の人物が背中を向けているのが、身を潜めている様に感じ取れた。
そこでわざと聞こえる様に若者に再び声を掛けた。
「きみ!ꉂꉂღ(´ސު`๑)あれはどうしたのかね?先生はどこだ♪」
彼は念のために管邈の名を口に出さぬよう配慮した。どこに落とし穴があるか判らない。そのための用心であった。
「ハァ~、(;´∀`)実は困って居ります。あの患者さんが董斗星先生が良いと駄々を捏ねまして、先生は今、董斗星殿を呼びに行っております!」
「成る程な♪⁽⁽ღ(´ސު`๑)それで先生が居らん訳か!ならこうしよう♪儂が先生が戻るまで相手しておくから、お前さんは待っている人に説明をしておくと良い。時間が掛かるかも知れん!」
「(*^_^)︎⁾⁾ そらぁ助かります!頼みます♪」
若者はホッとしたように入口に戻って行く。診察の間には二人連れと徐庶だけと為った。彼はゴホンと咳き込んで注意を向けた。
すると案の定、その二人連れは反射的に振り返った。そして今度こそ徐庶の顔をはっきりと認めると、これまた同時に声を上げそうになり、想わず手を口に持っていき、ゴニョゴニョと呟く。
かなり泡を食ったその様子と、驚きの表情で、徐庶は相手が自分をよく知っており、焦った様子である事を瞬時に見抜いた。
まるで悪戯小僧がママに悪さを見つかって罰が悪そうな仕草をするのに似ていると感じたのだ。
どうも観られては不味いものを観られたらしいと睨んだ徐庶は、そそくさと歩み寄ると、彼らを近くでジッと眺めた。
付き添いの者も焦っているものの、患者の方がどちらかというと焦っている。その不自然な程の態度はかなり怪しい。
徐庶はますます顔を寄せて見つめる。患者の男はそれを嫌がり、顔を逸らす様に背ける。かなりあからさまに嫌がっている様だ。
「おい!Σ(´ސު`٥)あんた、この儂を知っているな。いったい何を企んでいる?」
「嫌々…!(๑°⌓°٥๑)旦那、私は何も隠していません。これは誤解です!」
患者の男は、何とかこの場を切り抜けようと、踠く様に否定する。
けれども焦っていたからか先程の様にその声色に切れは無く、まんまの声に為ってしまった。付き添いの男もそれを聞いて焦りからか擬音を発する。
それを聞いた徐庶はすぐに相手が誰なのかが判ってしまった。そして今度は彼が驚く番で在った。
「おいおい!⁽⁽ღ(´ސު`٥ღ)こりゃあ何てこった♪大王…否、孟徳殿!あんたいったいこんなとこで何をしとるんです?それに子孝殿まで??」
「バカ!しっ!(ღ๑°⌓°٥ღ๑)声がデカい…周りに聞こえたらどうする?それに玄直!お前こそこんなところに何用じゃ?」
曹操は焦りと人目を憚り、いつもの勢いは無く、小声で矢継ぎ早に咎め立てた。けれども既に状況が示す通りに弱い立場である事も理解していた。
今、徐庶が騒ぎ立てれば、甚だ不味い事に為ろう。彼は歯軋りをして不満を呈し、苦虫を噛み潰した。
「こりゃあ愉しくなって来た♪ꉂꉂ(´ސު`๑)まさかこの世にまだこんな面白可笑しい事があるなんて…あんたは今まで見た中でも一番滑稽で愉快な御方だ!最高だ!素晴らしい♪」
徐庶は悦に入った気持ちがさらに高揚していた。そして想わず腹を抱えてゲタゲタと笑い出していた。
それを何とか抑えたのは曹仁であった。彼はすぐに徐庶の口を抑え、困った顔をする。何とか穏便に済ませて欲しいと、かなり情けない表情をしていた。
徐庶も自分が遊びが過ぎた事をすぐに自覚し、右手で制すと判ったと頷く。曹仁の抑えた手が引っ込むや小声で口を開いた。
「判りましたよ♪Σ(´ސު`٥)儂も事を荒立てる気は在りません!けどなぜです?判る様に説明して下さるのでしょうな♪」
小競り合いの最中にも頭を抱えていた曹操は想わず深い溜め息を尽く。こうなっては仕方無いと覚悟を決めた。
「玄直!(๑ °⌓°๑)੭ ੈ儂らは太子の劉禅を観に来たのだ。そう文字通り、観にな♪その気持ちはお前にも判るのでは無いかね?」
曹操の言葉は端的で在ったが、徐庶にはすぐにその気持ちが判った。自分も同じ気持ちだったのだから。
只ひとつ違いが在るとすれば、彼はもう面識には浴しており、面会を待つ身である。その心うちは期待で膨らんでいる。
片やで曹操はまだ面識すら無いのだ。恐らく後ろに控えている曹仁から聞き及んだ若君の人と形を確かめ様と足を運んだに違い在るまい。
けれどもその瞬間、徐庶はふと疑問に思っていた。曹操という人は人を呼びつける事はあっても、自ら虎口に首を突っ込む様な愚は冒さぬ筈である。
彼の納得のいかない表情を読み取った曹仁がすぐさま助け舟を出す。彼は玄直を見つめるとおもむろに口を開いた。
「玄直殿!(๑ ー̀дー́٥)✧大殿は童心に返られたのだ。劉禅君の人柄を聞き、自分の若かりし頃を懐かしんで居られる。だから野山を駆け巡った冒険心を胸に秘めてここまで来られたのだ♪」
聴きながら徐庶は呆けて、曹操の顔を眺めていた。そう言われてみると、確かにそんな気がしたのである。
曹操は気まずそうなニヒルな笑みをたたえ、玄直を見返している。徐庶は溜め息を洩らすと、その立場を表明した。
「判りました!⁽⁽ღ(´ސު`๑)そのお覚悟や良しです♪この事は黙っていましょう。ですが仮にもし若君を傷つける様な事が在れば容赦しません。ここには雲長殿も子龍殿も孟起殿も居ります…」
「…(٥´ސު`)✧さらにはたまたま諸葛亮殿も居たりします♪見つかればあんたは終わりですよ!大王陛下♪くれぐれも隠密を貫くのならば、それをお忘れ無き様に!」
徐庶はほくそ笑むとそう宣う。
曹操はそれを聞いて想わず子孝を見つめた。その目は何かを問うている様に見えた。
「大殿!(٥ー̀ࡇー́ ๑)それは恐らく本当の事です♪儂も見た訳では在りませんが、河川整備をする以上は国家事業、丞相の諸葛亮が検分に来ても不思議は在りませぬ…」
「…ε- ( ー̀дー́ ٥)そして丞相が動く時には、重臣が同行するのは自然な事です!趙雲と馬超が二人も揃ったのは少し驚きですが、恐らく間違いは無いでしょう。嘘は無いと考えます!」
曹仁の瞳には武将の矜持が眩く光る。曹操はそれを見てとると頷いた。
「判った!(ღ๑°⌓°๑)⁾⁾ 儂も男だ♪約束は守ろう!決して手出しはせぬ。それでよかろう?」
「宜しいでしょう♪⁽⁽ღ(´ސު`๑)その代わり必ず約束は守って頂きます。絶対ですよ?」
「男に二言はない。(๑ °⌓°๑)੭ ੈ儂は王だ!その立場で約定する。これで話は決まったな?」
「えぇ…⁽⁽(´ސު`๑)結構です!しかし大王♪貴方がそんなに変装がお得意とはね!お見逸れしましたな♪それに引き換え、子孝殿はド下手ですな?」
「そうだろう♪(ღ๑°⌓°๑)⁾⁾ 儂もこやつの大根振りには肝を冷やしておるよ!やはり人には向き不向きがあるようだ♪」
「そうですな!ꉂꉂ(´ސު`๑)でもやはり貴方には欠かせぬお人ですよ♪先程の機転には冷や汗を掻きました。お陰でまだ顎の辺りが痛くて仕方無い!」
徐庶は顎の辺りを擦りながら、目配せする。
「(٥ ー̀дー́ )੭⁾⁾ いやぁ~こりゃすまんな!玄直♪儂も必死で在った!」
「判ります!⁽⁽(´ސު`٥๑)貴方は道中から肝を冷やして居られたでしょうからね?全く玉体をここまで運ぶなんて、有り得ませんな!でも恐らくその甲斐は在りましょう♪」
徐庶は涼やかな瞳でそう伝えると、姿勢を正し、礼を尽くし拝手した。
「⁽⁽(´ސު`๑)それでは儂はこれで辞する事に致します!長居は無用だ♪大王も閣下も引き続き、演技を怠りませぬ様に!油断は禁物ですからな♪ではまたお会いする事も在りましょう!」
彼はそう言うとそそくさと退去する。二人は嵐が去った様にひと息入れるのだった。
若者は徐庶が引き上げるのを横目で見ながら、不思議そうな顔をする。
「ꉂꉂ(´ސު`๑)余りにも遅いのでな、ちと観てくる♪」
徐庶はそう告げると、のんびりと難を逃れる。落ち着きこそ虎口を抜ける技なのである。落ち着き払った徐庶に若者が煙に巻かれたのは言うまでも無かった。
徐庶がそこをすり抜ける時に、ちょうど遠くから四人の男が駆けつけて来るのが見えた。それは管邈に案内された若君と田穂に廖化であった。
彼はこれからどんな事に成るのか少々気が揉めたが、いずれ判るだろうと後の愉しみに取って置く事にした。
四人の背中を見送ると、彼は再び踵を返して歩き出す。木枯らしが舞い、身体に当たると彼は首を縮めて早足と為った。
「⁽⁽(´ސު`٥)全くこの寒空に酔狂な事だ!」
彼はそう想いながら、早く帰って囲炉裏にあたろうと考えていた。