表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/321

一夜の夢

「ꉂꉂ( ー̀д ー́ *)੭⁾⁾ しかし、大殿と二人で気楽に出歩くのも久し振りの事で御座いますな♪」


連れ立ちのんびりと歩きながら、自然とそんな言葉が曹仁の口から溢れ出す。彼らが歩んで来た道のりはそれだけ過酷な修羅の道だったという事に為る。


無論、彼らだってそれがまだ終着地に着いていない事は承知していた。けれども闘う戦士たちにも時には休息が必要なのである。


曹仁は幼き頃よりその命はこの曹孟徳という男に預けると決めていたし、彼を信じ彼を慕って、ここまで着いて来たのだ。


曹操にとってもこの男の支え無くしては、ここまで自分が辿り着けたかどうか怪しいと感じていた。


二人は互いに信じ合い、支え合いながら今日まで歩みを進めて来たのだ。だからこの曹仁の言葉が示す本質に曹操自身も共鳴していた。


「そうだな♪ꉂꉂ(๑°ㅂ° ๑)小さい頃はお前と良く野山を駆け回って居たっけな!あの頃はまだこの儂も純粋無垢であった。先の事をとかく心配したり、人と人とが傷つけあったりする事など想いもしなかったよ…」


「ですな♪(* ー̀ᗜー́ )⁾⁾ 儂もです!ですが、儂は世の中の方が貴方を放って置かなかったのだと想っております♪」


「⁽⁽(๑°ㅂ° ๑)そうかも知れん!だが出来得るならば、儂は今でもあの頃に戻りたいと想っているよ♪」


「儂もです♪(* ー̀ᗜー́*)੭⁾⁾ ですが最早それは考えても先無き事!儂らはあの日ご一緒に修羅の道を突き進むと決めたのでは在りませんか?もう後戻りは出来ませぬ!やるしか無いのです♪」


「ハハハッ…ꉂꉂ(๑°ㅂ° ๑)そんな事は判っておるわ!だが、お前だって同じ気持ちに為ったのだろうが?だから協定を結んだ♪違うか?」


「ハハハッ…ꉂꉂ( ー̀д ー́ *)大殿には適いませんな!左様、仰有る通りかも知れませぬ♪ですがそれは貴方も同じでしょう!でなければ、この道行きは選択肢に無かった筈でしょう?」


「(๑ °⌓°๑)੭ ੈまぁな、やはりお前も気づいていたのだな♪そうなのだ!儂はお前が認めたあの小僧に会ってみたくなったのよ♪文遠にさえ小言を言われる始末だ!他の者は如何ばかりや♪」


「(* ー̀ᗜー́ )⁾⁾ やはりそう言う事でしたか?貴方もやはり人の子ですな♪」


「そりゃあそうだ♪ꉂꉂ(๑°ㅂ° ๑)まぁこれはここだけの話しだがな!お前はこの儂の本質を良く理解しておるから、弱味も見せられるが、他の者の前ではそれは無い!儂がブレる事は無いのだ!」


「(٥ー̀▱ー́ ๑)それは仕方無い事です!貴方がブレると下の者の動揺を招く。貴方が確固足る信念をお持ちだからこそ、皆が貴方を慕い、付き従うのですから!」


「(๑ °⌓°๑)੭ ੈ判っておるわ!で、あの小僧の目はさぞや真っ直ぐであったのだろうな?そうで無ければ、お前が陥落する事は無かった筈だ!」


「陥落ですと!Σ(٥ー̀⚰ー́ ๑)それは大殿、言い過ぎですぞ♪儂は確かに譲歩しました。ですが仕方無かったのです!あんな藪から棒に、そして真っ直ぐに人の命の尊さを説かれたら誰だって同意しまする…」


「ハハハッ…ꉂꉂ(๑°ㅂ° ๑)そうだな♪人の命に境界線は無いか!そんな大それた言葉を平気で口にする男がこの世にまだ居るとは驚きだ…」


「…(๑٥ °⌓°๑)੭ ੈ巷に死体の山が溢れている昨今、誰だって自分の命が一番尊いわ♪他人の事まで考えられる輩なぞ居る者か!だからこそ、力の在る者が民を保護し統治せねば為らんのだ!」


「えぇ…⁽⁽(ー̀ᗜー́*)仰有る通りかと!あの者の様に我が身を顧みず、他の者を命懸けで救う事なぞ今の世の中、決して常道とは言えませぬ。邪道と言って然るべきかと考えます♪」


「そうだな!(ღ๑°⌓°๑)✧だがお前はそう言いながらも、あの小僧の事を話す時には、とても優しい顔をしておる!在りし日の腕白小僧の表情を思い出す♡その柔らかな顔つきが今回の決断の決め手に為ったと言ったら信じるかね?」


「Σ(٥ ー̀дー́ )੭⁾⁾ そうなのですか?こりゃあ参りましたな!儂が貴方の決断を即したとは!でももし仮にそうなのだとしたら、儂も貴方にあの者の瞳の輝きを見て欲しくなりました。」


曹仁は嬉しそうにそう答えた。


「そうか…(ღ๑°⌓°๑)✧そうだな♪そうしようか…」


曹操もそう答えた。けれども彼はこう想っても居た。


『(ღ๑°⌓°๑)…確かに切っ掛けはお前だ!子孝♪だけどな…この私の腹心のお前がそれ程までに傾倒している事の方が問題なのだ!…』


『…そんなにも真っ直ぐでブレの無い意志を瞳に宿した若者が居るとしたなら、我ら魏国の大きな脅威と為る…』


『…儂はまだ良い!儂ならばそんな(きら)めきは跳ね返せるし、儂の輝きで滅する事が出来よう♪しかしながら、子桓はそうでは無いかも知れん!奴はまだまだ開花して居らん…』


『…この先も試行錯誤が続くだろう。それに引き換えまだ十代の若さで既に確固足る強い信念を持つその若者は、この先も止まらず走り続けるに違い在るまい…』


『…その差は縮まる所かどんどん開いて行く事だろう。子孝!お前はそれを果たして理解しているのだろうか?男が男に惚れる、その気持ちはこの儂にも理解出来る…』


『…だが、儂が王で在る様に、お前も国をしょって立つひとりなのだ!最も儂が信頼し、頼りに出来る替えの利かない腹心なのだぞ!その意味を理解しているのか…』


『…否、理解している事は間違いないのだろう。それでも抗えぬ魅力をその太子が持っているとしたら、これ以上の脅威は無い。すぐにでも殺してしまわねば為るまい…』


『…今回の儂の行脚はある意味、それを確める為である。この儂の眼力でその太子の性根を特と見定めてやる!若さゆえの純粋な行動であるなら怖くは無い…』


『…しかしながら、もし若さを超越した芯のある行動で在るのならば、これは恐ろしい事だ!その若さでそれを持つ者が居るとしたら、将来どこまで化けるか判らぬ…』


『…もしそう判断した時には、お前には申し訳ないが、この儂自らの手を汚したとしても、ここで必ずや息の根を止める…』


『…それが我が魏国の将来の安寧と発展に、必ず寄与するに違い在るまい!悪いな、子孝♪お前を利用した様で後味が悪くなる事だろうが、これが儂の結論なのだ!』


曹操はそう想いながら、曹仁の横顔を見つめていた。彼の表情は変わらず気ままな笑みを称えていたが、その心には邪悪な根が張りつつあったのだ。




二人はその後も四方山(よもやま)話しに華を咲かせる。戦乱の中に身を置き、日々走り抜けて来た二人にとっては正に久し振りにのんびり出来るひとときである。


特に二人にしか判らない共通の話題になると、互いに目を輝かせながら食いつく。人は誰しも昔を振り返る時に、ひとつやふたつは懐かしい出来事があるものだ。


そして人は話しに熱が入ると時が経つのも忘れるものである。それが愉しい話題で在れば在るほど、人は夢中になる。


身体全体から力が(みなぎ)って来て、その歩みには自然と熱が帯びる。所謂(いわゆる)闊歩(かっぽ)である。


そんな調子だから、彼らの歩みもいつの間にか知恵の泉の制御を離れて、ひとり歩きを始めていた。その結果として、彼らの思惑とは裏腹に間もなく目的地に辿り着こうとしていたのである。


「大殿!ღ(٥ー̀ᗜー́ *)どうやらそろそろ着きそうです♪」


曹仁は少し驚いた様に主に告げる。


曹操も呆気にとられた顔である。その表情は狐につままれた様であった。


「おぉ…Σ(๑°ㅂ° ๑)もう着いたのか?」


二人は長江の(ほとり)の船着場に着いていた。曹仁は気を利かせてすぐに船頭に声を掛けに行く。


どうやら"渡し"の交渉は上手くいった様だ。合図があったのだ。遠めに見える曹仁は(しき)りに手招きしている。


それはまるで泳ぎが出来る様になった子供が、殊更(ことさら)嬉しそうに母親に笑顔を爆発させている様である。


それを眺める曹操も自然と破顔している。二人にとってはこの旅は腕白小僧の冒険であり、在りし日を懐かしむ感傷旅行(センチメンタルジャーニー)の様でも在った。


「おぅ♪ꉂꉂღ(๑°ㅂ° ๑)御苦労だったな子孝♪」


「ハハハッ♪ꉂꉂ(*ー̀д ー́*)交渉事など久し振りです♡愉しいものですな♪」


「ハハハッ…ꉂꉂ(๑°ㅂ° ๑)ღ⁾⁾ 庄屋の爺さんから馬二頭、巻き上げて以来かね?」


曹操は昔を懐かしみ、想わず口に出す。


するとそれを聞いていた渡し舟の親父が、藪から棒に声を上げた。心無しかその声色は上擦っており、素っ頓狂である。


「(;´д`)旦那方、勘弁して下せい!このあっしにはまだ小さい子供(ガキ)が居るんで…」


普通の日常を過ごしている者は、決して馬を巻き上げない。


しかも二頭である。人の思考は思いの外、単純であり、その二頭が目の前の二人に結びつく。


するとその答えは、自ずから、この二人を"悪いやつら"だと見なす事になろう。そう、この船頭は彼らを"野盗"だと想い、怖れたのである。


怖れは人を惑わす。今まで久し振りの上客だと想っていたのに、よく見ると平服がその体型に合っていない。


長髪の男は殊更にその髪で顔を覆っており、怪しく見えて来る。自分に声を掛けて来た男も背中に大刀をしょっているのだ。


彼は叫ぶように言葉を発すると、みるみる青ざめ、シュンとしている。まるで全世界の不孝をひとりでしょい込んでしまったようにそれは見えた。


曹仁は深い溜め息をつき、親父を(なだ)める。


「親父、心配致すな!(٥ ー̀дー́ )=3 我らは決して怪しい者では無い。それにこの舟を確保するのに、高い駄賃を払った筈だ。そんな金を払える者がお前さんを襲ったりするかね?」


ここで止めておけば良かったが、ついつい魔が差す。


「( ღー̀дー́٥)…いや待てよ、それを見せ金にして取り戻す事は考えられるか?」


彼は親父が余りにも(おび)えているので、少し可笑しくなり、(とぼ)けてみせた。


彼も日頃は優しさのある男だが、曹操の従弟である。要は似た者同士なのだ。悪乗りに懸けては負けていない。


そしてこの親父も二人の期待に(そむ)かない。"渡し"の最中なのに(かい)を両手に持ち、身体をビクビクさせながら、振り回す。当然、舟は前後左右に揺れる。


「おいおい!ღ(๑°罒°٥๑)危いだろ、子孝つまらん事をするな!これ以上、(あお)ってどうする?」


曹操は想わず口を開いた。さすがにこれ以上、事を荒立てると不味(まず)い。それでなくても、ここは不安定な水面(みなも)の上に浮かぶ舟の中である。


次の瞬間、何が起きるのかは神のみぞ知るというものである。曹仁は主の言葉に敏感に反応し、さっそく事態収拾に乗り出す。


「いやぁ~ꉂꉂ(*ー̀ᗜー́*)スマンな親父♪少し悪乗りが過ぎた!この通り(あやま)る♪だが落ち着いて考えてみてくれ?始めに誤解して、混乱したのはお前さんの方だ!…」


「…(٥ ー̀дー́ )=3 まぁうちの(あるじ)が余計な一言を言わなきゃ良かったんだが、それも客の四方山(よもやま)話しさ!乗せた客が軽口を叩くのは日常茶飯事というものだ…」


「…(*ー̀ᗜー́ღ*)皆、解放感から浮かれているからね♪お前さんもそんな客たちに、いちいち相の手を入れていたら気が休まらんだろう?…」


「…ꉂꉂ(*ー̀ᗜー́*)それに話題に応じて空気を読むのも仕事の内というものだろう♪違うかね?我らは見ての通りの遊山の旅だ…」


「…⁽⁽(*ー̀ᗜー́*)お前さんが余りにも反応するので、儂も少し悪戯が過ぎた。許されよ♪旅のせいで少々我らも浮わついて居た。スマンな!」


曹仁は彼なりに手を尽すと、少し鼻薬を握らせた。船頭は全てが冗談であった事が判ると、少々恥じた。自分も大仰(おおぎょう)に過ぎたと反省したのである。


「(;´д`)旦那方、悪い冗談ですぜ!こちとら、しがない"渡し"で食っているのです。勘弁して下さいまし♪」


少し照れ気味に顔を上げると、彼はまた(かい)()ぎ始めた。曹操は肩を(すく)めてみせると、曹仁に目配せしながら微笑を返す。


しばらく二人は河のせせらぎを愉しむ。天候に恵まれ、河を渡って来る風が肌にとても心地良い。


やがて舟は対岸に到着し、結果、身の丈に合わない大金を手にした親父は顔を(ほころ)ばせながら、手を振り去って行った。


「さて大殿!(*ー̀ᗜー́ღ*)如何しますか?ここから江陵城はもはや目と鼻の先!いかようにも接触出来る筈です。何か計画(プラン)はお在りでしょうか?」


「あぁ…(ღ๑°⌓°๑)=3 そうだな。在ると言えば在るし、無いと言えば無い。まぁざっくばらんに言うと出たとこ勝負という事になるかな?…」


「…(๑ °⌓°๑)੭ ੈそもそもが想いつきから衝動的に始めた事だからな♪まるで考えてもいなかったんだが、ここに来て、ひとつ面白い思惑(アイデア)(ひらめ)いた!」


曹操は苦笑いしながら、曹仁を見つめる。


「"(*ー̀ᗜー́*)ほぉ~それはいったい何です?おやおや、大殿!貴方笑ってらっしゃる。しかもガキ大将のような懐しい表情です!さてはまた新手の悪戯を想いつかれましたな?勿体振らないで教えて下さいよ♪」


曹仁もまた子供が新手の玩具(オモチャ)に夢中になるように、嬉しそうな微笑をたたえていた。


曹操は「ღ(๑°ڡ°*๑)耳を貸せ♡」と言うと、ボソボソと話し出す。曹仁はフンフンと相槌を打ちながら聞いていたが、突然、びっくりしたように声を上げた。


「大殿!Σღ(٥ー̀ࡇー́ღ*)︎⁾⁾ それは少々危険(リスク)があるのでは?」


懸念を示す曹仁の表情には、いつの間にか腹心としての慎重さが垣間見えた。曹操はその懸念すら、払拭(ふっしょく)するように、ニカッと大仰に笑ってみせると、即座に答えた。


「ꉂꉂ(๑°؂°*๑)子孝よ、人が人である由縁とはいったい何ぞや?」


「それは…(٥ ー̀дー́ )੭⁾⁾ 判りませぬ!いったい何です?」


「⁽⁽ღ(๑°ڡ°*๑)それはな、人は皆、歳を喰うという事じゃ!だがな、子孝♪幾ら歳を重ねても忘れては為らないものがある。それは"悪戯っ子の瞳"と"遊び心"なのだ!今度の事は我らが…」


「…⁽⁽(๑°ㅂ° ๑)否、この儂が衝動的に決めた事だ。予め正式に通達している事では或るまい♪となれば必然的に変わった接触(アプローチ)が求められよう♪…」


「…(๑ °⌓°๑)੭ ੈお主はごく最近、顔を見られているゆえ、細心の注意をせよ!まぁ我らは変装しているから、そうそう簡単には見破られまいが、この際、名前も態度も改めねば為るまい♪そうだな…」


「…儂は季唱(りしょう)、お前は李孝(りこう)!我らは兄弟じゃ♪"儂"もいかんな!"私"にしよう。先程言ったように、私が病を抱えている事にする!…」


「…ღ(๑°ڡ°*๑)かなり優秀な医者らしいから、頭痛持ちの私ならぴったりだろう♪お前は兄を心配する付き添いじゃ♪なるべく目立つな!…」


「…心配する役廻りだから、顔に手を宛てるなり、(うつむ)くなりしていれば、それなりに見えよう♪我らは遊山の身だから、請一杯愉しむとしょう♪」


曹操はそう言って微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ