ニヤミス
「孟達様、大変です!ꉂꉂ(`ロ´;)張郃が南下し、この上庸を窺っているとの事です!!」
「Σ(* ‾᷄꒫ ‾᷅ ꐦ)何、鄧賢それは真か?」
「✧(`ロ´;)物見の第一報です!詳細はここに!」
「むむっ!✧(* ‾᷄꒫ ‾᷅٥ ꐦ)張郃がなぜここに…奴は大司馬・曹真と共に長安に駐留していたはず。なぜわざわざこんなところに?丞相からは魏と盟約したと聞いているが?荊州不可侵条約はいったいどうしたのだ!」
「判りませぬ!ꉂꉂ(`ロ´;)ですが接近されてからでは迎撃は難しくなります。どうされますか?」
「(ꐦ ‾᷄꒫‾᷅ *)ღ⁾⁾ ひとまず我が軍に臨戦態勢を敷け!すぐに迎撃に入れるよう準備せい!ワシは坊ちゃんに会う!」
「⁽⁽(`ロ´;)ははっ!」
このところ、ここ上庸は平穏無事に過ぎており、毎日の訓練は欠かさないものの、その士気は極度に落ち込んでいた。
孟達自身でさえ、魏との盟約が成立したのを良い事に、部下共々鷹狩り等に勤しんでおり、少々緊張感に欠けた節はあったので、少し焦りを感じていた。
生真面目な劉封からは、何度か指摘を受けたものの、その経験と年齢から来る威厳によって退けていたから、この期に及んで再びその指摘が再熱する可能性は大きく、その心中は戦々恐々としていたのだった。
『(ღꐦ ‾᷄꒫‾᷅ *)⁾⁾ くそぅ~あの坊ちゃんに下手に出ねばならんとは!』
孟達は苦虫を噛み潰している。世の中には、こういう輩が必ず居るものである。自分の事は棚に上げ、虚勢を張り、素直に耳を傾ける事が出来ない愚か者と言うと言い過ぎで在ろうか。
けれども最近の彼はそれを地で行く程の体現者であった。
上庸と言えば、元々は漢中郡であるから、荊州に組み込まれた現在でも、その所在は西の外れに位置し、魏との国境に打ち込まれた楔の呈を為し、魏国にとっては厄介な腫れ物である。
目の前に矢尻の先を突きつけられたかの如くに見えるその地は、まさに戦端が開かれた際には橋頭堡に成り得るのだから、けして看過が出来ない代物であったのだ。
逆に言えば蜀側から見れば最重要地点と言い切っても過言では或るまい。
それだけ重要な地点だからこそ、益州攻略の際の絵図を書いた一人である孟達が任されたのであり、劉備は養子とは言え、自分の息子である劉封を赴任させて盤石の体制を敷いたのであった。
けれどもこれは却って裏目に出たらしい。結果的にはこの二人は剃りが合わず、揉める事も少なくなかった。
孟達は功績によって得た上庸太守の座を王の息子だからという理由で奪い取られるのではないかと神経を逆撫でされた気持ちになっていた。そして、自分に対する信用の無さなのかと失望していた。
そうなって来ると、そもそもこんな危険ばかりが目に付く場所を宛がわれた当初の始末そのものにも腹が立って来る。
彼は疑心暗鬼に落ち入り、自分への評価が低過ぎる事に苛立ちを憶え始めていたのである。
そんな気持ちになれば、やる気そのものにさえ支障を来たす事になるし、自棄にも成ろうと言うものである。
そして共同統治者として派遣されて来たこの若造の生真面目さに窮屈さを憶え、まるで自分の上に立つが如き振る舞いに、業を煮やしていたのであった。
一方の劉封としては、そんな評価を与えられては甚だ迷惑であるに違いない。彼は孟達が評するような王の息子を笠に着た凡庸な男では無かった。
彼は劉備が各地を放浪中に世話になった、地元の名士の次男坊で、同じ劉姓の諠もあって、その能力を買い、養子に迎えた男である。
この時点では劉備も任侠者に毛が生えた程度の、吹けば飛ぶような存在であったから、決して自分の後継者として恭しく迎えた立場の人物では無かった筈である。
強いて言えば、良家の家柄で次男坊だから貰い易かったのだろう。
本人にしてみても跡目は兄が継ぐのだし、自分はこのまま居れば部屋住みのまま終わるが、仮にもしこの劉備という男が大出世を果たした暁には、陽の目を見る可能性すら在るのだから、この機会に賭けたのかも知れない。
但し、曹操や孫権を向こうに廻し、国を建て、王の称号まで得るとは、さすがに想っていなかったに違いない。
だから、彼が当初からこんな細やかな望みを抱いていたとしても、文句を言う筋では無いのではなかろうか。
当時はそれだけ跡を継げぬ者は先行きが暗く、それを打開するには、このように他家に貰われるか、自立して、自分で立身出世の道を探るより方法が無かったのである。
だから彼は劉備を養父と仰ぎ、懸命に付き従い戦って来たのだ。彼が戦場で上げた戦果は目立つ程のものでは無いにしろ、建国までの道程で示して来た貢献はけして馬鹿にしたものでは無かった。
そして実際に益州攻略戦に於いては、多大な成果も上げていた。
但し、彼は自分の立場を彼なりに理解していたので、傲慢に振る舞う事はなかったのである。だから孟達が感じている事の恐らく半分以上は、彼の誤解であろう。
なぜなら彼は自分が養子として目立つ行動をする事により、養父に疎まれ、捨てられる事を極度に恐れていたのだから。それは跡継ぎとして、実子の阿斗が生まれてからは、依り顕著に為っていた。
ところがこれが一時期とはいえ、その立場が逆転するのだから世の中は不思議なものである。それは益州の攻略で功績を上げた劉封に比べて、世継ぎの期待を一身に背負っていた阿斗の凡庸さが如実に顕れて来たからだった。
特に本人が直接言葉を掛けられた訳では無い。
無いのだが、養父が近しい者に"阿斗を諦め、劉封を正式に跡継ぎにしたい"と溢したというような、真しやかな噂を耳にするにつけ、彼だって一瞬くらい胸が踊らなかった訳じゃ無かった。
けれどもこの人の生真面目さは徹底していたし、その優しさは義弟の将来を憐れんですら居たので、心の底から喜ぶ事などとても出来なかったのである。
劉封はその養父に認められて、今、ここに居る。
この上庸はそれだけ重要な地である事は先にも述べたが、孟達だけでは心細いのかと問われるならば、それは"是"であり"否"でもある。
孟達は戦場で戦った事が無い訳では無かったが、劉備陣営に組してからは、少なくとも戦果は無かった。只ひたすらに太守として務めあげていただけに留まる。
そして彼の手柄である益州攻略絵図についても、元々は劉璋の別駕・張松の策で在り、孟達と法正は手伝ったに過ぎない。
法正はその手柄に浴したが、肝心の張松は身内の密告により事が露見した為にその命を落とす事に為ったのだから、気の毒という他無い。
そんな訳で、孟達はその手柄に浴し、上庸太守と為ったので在り、武勇に優ったからでも、戦果を上げたからでも無かったのである。
つまりは彼の策士としての能力は認めるが、将軍としての能力は未知数と判断されたので、この際、一族の中でも功績一番である劉封を共同当地者として送り込む事にしたので在ろう。
有事の際には劉封の武勇と孟達の策で乗り切らせようとの目論見がそこにはある。劉備が一族を就ける辺りはかなりの慎重さが窺えた。
今回はその要の地・上庸での出来事である。
孟達の急報に接した劉封は想わず叫んだ。
「何ですって!Σ(`• ᴥ •´٥)張郃が南下して来たのですか?」
「えぇ…(ꐦ ‾᷄ ꒫‾᷅ ٥)੭ ੈ坊ちゃん♪その様です…」
「✧(ღ`• ᴥ •´٥)でも張郃って長安に駐留してましたよね?確かですか?」
「えぇ…(ꐦ ‾᷄ ꒫‾᷅ ٥)੭ ੈ物見の報告ですから間違いは無いかと!」
「判りました♪⁽⁽(`• ᴥ •´٥)孟達さん貴方の指示は?」
「(ꐦ ‾᷄꒫‾᷅ *)ღ⁾⁾ 現在、迎撃態勢を構築中です♪さらに物見を増やし、敵の動向を探らせています!」
「ꉂꉂ(`• ᴥ •´*)さすがですね孟達さん♪でもなぜ今なんでしょう?彼らとは公嗣が盟約を結んだ筈です!まだ河川整備に懸かったばかりなのでは?」
「えぇ…(ღꐦ ‾᷄꒫‾᷅ *)⁾⁾ そうなのです♪それが解せない所では在りますな!しかしながら相手はあの魏国です。張郃を寄越した所を観ると油断は禁物…」
「そうですね!⁽⁽(`• ᴥ •´*)確かに♪」
「如何致しましょう?(ꐦ ‾᷄ ꒫‾᷅ ٥)੭ ੈ刺激して来たのは相手とはいえ、ここは慎重を期した方が宜しいのではないかと!」
「そうですね♪✧(ღ`• ᴥ •´*)珍しく貴方と意見が一致したな…あ、嫌すみません。他意は無いのです♪そこでですが、こうしては如何でしょう!孟達さん、御足労ですいませんが貴方の装甲槍弓兵で出撃頂きたいのです…」
「…貴方は策士ですからね♪本来は私が出張って行く方が宜しいのでしょうが、状況に応じて臨機応変に対処するのは貴方のおハコでしょうからね?お願い出来ますか!」
「(ꐦ ‾᷄ ꒫‾᷅ ٥)⁾⁾ それしか無さそうですな!坊っちゃんから丞相や若君には伝えて貰った方が良い♪連絡が取れ次第、伝者を寄越して下さい。儂も状況を逐次報告しますよ!」
孟達は珍しく積極的である。実のところ、彼にはひとつの思惑があり、これを良い機会として捉えていたのである。
それは士気の向上と密かに鍛練していた槍弓兵の実践である。彼は汚名を進んで受け入れ、鷹狩りという名の許に彼らを実践形式で訓練していたのだ。
虎・猪・狼などこちらに直線的に向かって来る物は槍で!鳥・鹿・兎など足の速い物は弓で!倒した獣は食料となり、彼らの意気高揚とも成るので一石二鳥という訳だ。
ここで終われば隠された美談として称えられよう。当然、孟達はここで終わらない。サバイバル訓練の一環という名目で薪を集めさせ、火を起こさせる。
辺り構わず焚き火が焚かれるので、さながら集団キャンプファイヤーの如く壮観であるそして本日の糧として得た獲物を盛大に焼かせる。
但し、その半分は戦果として残す。狩りに出掛けて果実が無ければ話しにも為らないからである。
獲物が程良く焼け、肉汁がポタリポタリと落ち始めたら頃合いである。彼は隠し持って来ている酒樽をおもむろに取り出すと、部下に振る舞う。
一見すると太っ腹な良い上役であろうが、公私混同も甚だしい。彼はこれを自分に対する忠誠心を高めるために為す。
勿論この酒が自腹で手に入れたものなら、まだ立派な事だが、当然公費で備蓄された物である。これも彼なりの論理が在り、訓練後の細やかな意気高揚である。
彼は"食料の現地調達とはこのように行え" とまるで手本を見せているように誇らしく感じており、酒代の穴埋めは後で人知れず行われるのであった。
帰る頃には戦果の半数がさらに無くなる。これは酒代の一環として穴埋めする為で在り、割合いに律儀なところはある男だった。
『(ღꐦ ‾᷄꒫‾᷅ *)⁾⁾ 備蓄が長引けば、酒も古く為る。新しい酒と入れ替えてやってるんだから罰は当たるまいよ♪』
それが彼なりの論理であった。
この様にここ上庸では、法や規範は彼の頭の中で構築され、スレスレの行為が頻繁に行われていたので、そりゃあ生真面目坊ちゃんの劉封で無くとも、一言注意したくもなるだろう。
もちろん劉封は孟達が私腹を肥してないかは調べた。ところが一時的な持ち出しは在っても、そのほぼ全てが当日または翌日には解消されているため、厳重に注意はしているものの、告発にまでは至っていない。
彼が劉封に少しでも賂でも渡そうものなら、そこで始末を着けるつもりでいたが、彼は半ば、正々堂々と行っており勝手気儘なのだ。
しかも彼のお陰と言って良いのかは判らぬが、備蓄がどんどん新しくなるし、酒や食糧に至っては新鮮になるので、"上庸の七不思議"として兵の間では真しやかな噂となっていた。
"月の終わりに神様が舞い降りて宴会を催し、その礼として新鮮な酒や米を置いて行く"などと言う者も出る始末である。
孟達はそれを聞いてほくそ笑んでいるが、劉封は苦虫を噛み潰して、大きな溜め息を吐くほか無かった。
『ε- (ღ`• ᴥ •´*)これではまるでこの私が奴の行為を肯定しているようでは無いか?とんでも無い事!いつか足が付いて困っても私は知らん!自業自得よ!!』
こうして劉封の日々の注意という名の干渉は続く。孟達は半ば、開き直っては居るが、より足の付き難い手法を考える事に精を出している。
彼にとっては些細な事としか感じていない事をしつこく圧力に変えて口撃して来る劉封は、しち面倒臭い存在であったのだ。
お気づきの方も居るかも知れないが、月末に必ず帳尻が合うのも、会計監査と定例報告に掛からないためであり、"神様の嬉しい悪戯"では無いのだ。
但し、ここの所お互いに多少なりとも相手の信条や信念が判って来た事もあり、相手の逆鱗に触れる事はなるべく避けようと、少なくとも努力している節はあるようだった。
その結果として意見が合う事もまま在ったのである。今回意見の一致をみたのもその努力の表れと言えるのかも知れない。
「⁽⁽(`• ᴥ •´*)それではその様に♪私は江陵に早馬を出す事にします!僭越ながら、専守防衛を心掛けて下さいね♪こちらからは決して手出しせぬ様に!それが今、我々最大の命題ですから♪」
「(ꐦ ‾᷄ ꒫‾᷅ *)⁾⁾ 心得ておりますよ♪どの道、相手が張郃ですからな!こちらが分が悪いったら無い。安心して下さい。相手の襲撃が無い限りは手出ししません。只ひたすら地味に索敵に努めます!」
「宜しく!ꉂꉂ(`• ᴥ •´*)私はその間、城の守備に徹すると致しましょう♪後は、この顛末を解決出来る手掛かりですね?一番はやはり盟約を締結した公嗣本人から情報を貰う事がその早道になる事は間違い在りません…」
「…だから我慢強く返書が来るのを待つのが最良では無いかと私は思いますね♪その間、我々にしか出来ない事をやり、耐え忍ぶしか道は無いでしょう。急いては事を仕損じます!"果報は寝て待て"と言うのは、意外に真理かも知れませんね♪」
「そうですな!(ꐦ* ‾᷄ ꒫‾᷅ *)⁾⁾ それを期待させて貰うとしましょう♪色々備品や食糧を貰い受けて行くが、宜しいですな?安心して下さい♪今回は酒は持ち出しませんから!」
孟達は劉封を安心させようとそう口にした。ところが劉封は意外な言葉を掛けたのである。
「✧(`• ᴥ •´*)嫌、孟達さん♪今回は許可しますよ!と言うより持って行って下さい。そろそろ夜は寒い季節、安易に火を起こせない以上、身体を温めるためには必要不可欠でしょうからね♪その変わり、量は貴方が調節して下さいね?いざという時に動けない様では困りますから!」
「それもそうですな…ꉂꉂ(* ‾᷄꒫ ‾᷅ ꐦ)判りました♪坊ちゃんの御配慮に感謝しますよ!皆も喜ぶ事でしょう♪では城の守りは頼みます♪」
「えぇ…⁽⁽(`• ᴥ •´*)貴方もお気をつけて♪」
こうして孟達は小飼いの装甲槍弓兵と共に出撃した。劉封はすぐに副官を呼ぶと、指示をする。
「ꉂꉂ(`• ᴥ •´*)悪いですが、至急江陵城に伝者を出します。端っこくて賢そうな、ほら、あの者なんて言いましたっけ?」
「はぁ…費立の事でしょうか?」
「あぁ…(*`• ᴥ •´)ღ⁾⁾ そうでした!字は確か建熙でしたね?彼に物見の報告と私の書簡を持たせて至急、江陵城の義弟の許へやって下さい!頼みましたよ♪」
「はぁ…承知しました♪閣下のお心のままに!」
こうして早馬も江陵に発つ。
魏蜀同盟は突如として南下して来た張郃の来襲で水泡に帰そうとしている。
ようやく認められ、ひとかどの人物にのし上がった義弟の彼方には再び暗雲が垂れ込めようとしている事に、劉封は憤りを感じていた。
そして万が一にも自分がその戦端を開く事になったら、顔向け出来まいと危惧していたのである。




