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神の祝福

今日も廖化は徐庶先生に付いて指導を受ける。そこにはいつの間にかギャラリーが(たむろ)している。北斗ちゃんを待つ田穂しかり、その他にも潘濬や劉巴、馬良、魏延なども含まれていた。


皆、それぞれに昔を懐しみ想い出すのか、熱心に耳を傾けている。


そこに通り掛かったのが、我らが北斗ちゃんである。彼は関羽との打ち合わせが終わったので退出して、丞相府に戻る予定だったが、田穂がいない。そこで恐らくと、当たりをつけてやって来たのだ。


いの一番に気がついたのは、田穂である。彼は若君と関羽将軍の会見がしばらく無かった事を判っていたので、きっと長くなると高を括っていたのだが、暗に反して思いの外、早く済んだ事に驚いていた。


田穂はすぐに歩み寄り、拝礼すると、小声で謝る。


「若君♪(ღ٥`ᗜ´)੭ ੈ大変申し訳無く…ちょっと奴の様子が気に懸っていましたもので、すいません!」


少々言い訳がましく聞こえるかも知れないが、これは事実である。


けれども、北斗ちゃんは叱るどころか、「(´°ᗜ°)✧シィ~♪」と人指し指を口許に持って行くと、「僕も見たい♪ꉂꉂ(°ᗜ°٥)しばらく待機だ!」そう言って、覗き込んだ。


馬良は太子を目に留めると、目配せして魏延に合図すると、二人して拝礼しながら、引き上げて行く。この二人は関羽総督に呼ばれており、その合間にここに行き着いたのである。


潘濬と劉巴は互いを見つめ合い、溜め息を漏らす。ほぼ予想通りの若君のリアクションに二人は慌てず騒がず待つ事にした。


以前の潘濬で在れば、反射的に一言申すところだろうが、彼は随分と我慢強く為っており、最近は相棒の劉巴さえ驚く程であった。


これも日々の成長といったところで在ろうか。


北斗ちゃんは初めて逢う廖化の先生に興味津々の様で、かぶり付く様にその様子を眺めている。


するとその先生は、問答を通じて教えを説く手法で、急かす事無く指導を進めている。どちらかと言うと、弟子の答えを愉しんでいる節さえあった。


徐庶は恐らく廖化が初めて知る文言に対しても容赦無く問う。そして彼が導き出した答えの根拠をさらに問う。これはそれが正解でも誤りでも関係無く問う。


そしてその根拠に納得すれば、たとえそれが誤っていても褒めるのである。一見すると奇妙な光景であるが、彼はまずはにこやかに正しい解釈とその事例を諭すのであった。


その後にポツリとこう呟くのである。


「ꉂꉂ(´ސު`๑)この世の中はどんどん(うつ)ろって行く♪だからその解釈が間違っていると論ずる(いわ)れは無い。今は一笑に付されるやも知れぬが、将来的にその解釈は変遷していくものだ!後世の解釈では御手本に為るかも知れんな♪」


この光景を観ていた北斗ちゃんは俄然(がぜん)、この師に興味を持つ。そして判らない答えにも果敢に挑む廖化の姿勢にも頼もしさと逞しさを感じていた。


先生は興味を持たせる為の壺を心得ている。漠然と読んだのでは味気もへったくれも無い言葉の奥に隠された、奥行きのある背景を頭に描かせる事にとても神経を注いでいる。


そもそも教訓とは人が考え、或いは行動した結果として、成功したり失敗を重ねたりした事例を基にしているものだ。だからそこには必ずその下地となった出来事が存在するのだ。


何も無いところから言葉など産まれないし、ましてや教訓など導き出せる訳もないのである。


だからこそ、恐らくはその言葉が誕生した切っ掛けとなるエピソードを面白可笑しく物語る事により、その言葉の意味合いをより具体的に頭に叩き込む事が出来る様にしているのだろう。


ただ文言を覚えるには、余りにもその数は多く途方も無い時間と労力に追われて苦しく感じる事だろうが、ひとつひとつの言葉にひとつひとつの意味合いがあり、そこにその言葉の産まれた背景がある事が判れば、興味を持てるし、その言葉にも愛着が湧く事だろう。


そこまで判ってくれば、たとえどんなにたくさんの文言が並んでいようとも、そのひとつひとつを自分の頭の中で整理し、判別し、分類する事が出来るのである。


決して焦る事無く、そのひとつひとつの物語を愉しめ!先生はそう言っている様に感じられた。


その言葉に触れて感じた時の想いを忘れるな。そう受け取る事も出来た。愉しくなってくれば、どんなにたくさんの文言があっても、何の苦痛にも為らない。


なぜなら、こんなお愉しみが、まだまだこんなにあるぞ!そう想えてくるからである。人は愉しみの数は多ければ多い程、嬉しい。まだこんなに愉しめる玩具(オモチャ)が残っているのだ。愉しく無い訳がなかろう。


先生のその教え方には相手のやる気を引き出す原動力があり、また遊び心があった。


"遊び心"それは北斗ちゃんが常に忘れず友としてきた生き様に通じるものがあったのである。


やがて指導は御開きとなり、先生と廖化が出てくる。それを四人は拝礼で迎えた。


「(๑´ސު`)✧ ん!お前たちはどなたかな?」


徐庶は四人を見渡すとそう尋ねた。


「(っ* •̀ ̫•́ ٥)︎あっ!若君♪すみません…お待たせして!」


廖化は北斗ちゃんを認めると想わず声を掛けた。


「Σ(٥´ސު`*)何!貴方が太子・劉禅君♪」


突然の事で徐庶は少々驚いている。


「( ˶• ֊ •˶)いや廖化気にするな♪いい先生を見つけたな!なかなか愉しい指導で僕も感銘を受けたよ♪」


廖化は誇らしげにニッコリと微笑む。


「⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)先生!廖化を宜しくお願いします♪僕がこの荊州を預かる太子・劉禅です!貴方の教え方にはとても遊び心があって面白いですね♪あ、いや、こんな言い方は失礼かな?」


「ꉂꉂ(´ސު`๑)いやいや…若君!その通りです♪"遊び心"ですか?なかなか愉快な表現ですな!でも的を得ています。儂は教えるだけが講義とは想っとらんのですよ♪…」


「…人としての幅を広げる事が大事と心得ております。書に親しむ事を通して、愉しさを知り、想像力を養い、生き方を知る。これぞ真の指導と言えましょう♪」


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ判ります!愉しさとは人の活力となり、原動力になりますからね♪僕も今後、書に親しむ際にはこの手法を取り入れてみましょう…」


「…僕なりに知識は得たつもりでしたが、この方法ならば、いちいち意識しないでも分類出来そうです♪大変ためになりましたよ♡」


「(๑´ސު`)✧ ホホホ♪太子は賢い方ですな!良く判っていらっしゃる♪今まで何を学ばれたかな?」


「( ˶• ֊ •˶)大抵の書は読んでおります。国語・左伝・史記・漢書・書経・礼記・孫子・六韜…あと華佗先生の書き記した医学書かな?」


「Σ(´ސު`٥)ホォ~そら凄い!」


徐庶は驚く。まだ然程の年季には達していない様に見えるこの若者の瞳には光が宿っており、自信がその表情に溢れていたからである。


「⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)先生!先生のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」


「(´ސު`٥)ღ⁾⁾ あぁ…これは失礼を!儂は徐庶と申す。徐庶元直じゃ♪この度、ここ荊州に戻って来たのじゃが、生憎(あいにく)とまだ職が決まっておらんのでな、今はこやつの学びを手伝っておる!」


「ꉂꉂ(°ᗜ°٥)な!何と…徐庶先生でしたか?父上の軍師をされていたと聞いております♪ですが貴方は魏に仕えていたのでは?」


「ꉂꉂ(´ސު`๑)話せば長くなる。それはまたの機会にいたそう♪それより若君!後の三人を御紹介頂けるかな?」


「( ๑•▽•)۶”あっ!はい♪では簡単に!こいつは僕の幕僚で教育係の潘濬、そしてこいつが今回の河川事業の(かなめ)であり、外交を担当する劉巴!最後にこいつは僕の護衛官であり、諜報を担当している田穂です♪」


「(๑´ސު`)✧ 潘濬殿!劉巴殿!田穂殿!宜しくお願いする!」


徐庶の礼に三人共に礼で応える。


「(๑´ސު`)✧ 時に皆さんの師はどなたかな?」


「(ꐦ•" ຼ•)ハァ…私の師は宋忠様です♪」


「(o'д'o*)拙者は尹黙(いんもく)様で御座る♪」


「(ღ`⌓´٥)…」


宋忠とは高名な学者として知られ、司馬徽と同じ時代の学者であるが、彼は劉表に仕え、司馬徽は在野に在って、劉表の薦めにも首を縦に振らなかった高名な学者である。


司馬徽は通称"水鏡(すいきょう)先生"とも呼ばれ、門下には諸葛亮を始め、徐庶、尹黙、韓嵩などきら星の如く才能豊かな者たちが学んでいた。


その中に在って尹黙はこの両氏に学んだ特異な男であるが、今は劉備に仕え成都に居る。


田穂は少し場違いな所に出会(でくわ)した様で肩身が狭い。それを察した北斗ちゃんは彼を徐庶に紹介した。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ先生!田穂の奴はこういう所作には馴れておりません。ここら辺でご勘弁を願います!ちなみに彼の師は管邈(かんばく)です♪管邈も僕の配下で頼りになる奴ですよ…」


「…彼の父上はかの在野の士人・管寧(かんねい)殿ですから、先生も御存知でしょう?突き詰めて行くと、誰しもそのルーツは多岐に渡ります。僕は師が誰なのかが重要なのでは無く…」


「…大切なのは本人がどう生きるかであり、何を成すかに在ると想っています。良心に恥じる事無く生を全うする事の方が大事なのでは在りませんか?」


「ꉂꉂ(´ސު`๑)フフフッ…そうですな!貴方の仰有る通りだ♪少し戯れが過ぎた様ですな!お許しあれ♪田穂殿!そんな緊張せずとも宜しい…」


「…そして大変失礼した。儂もまだまだ形に囚われる。そして若君の様な若い方に諭される。つまりは発展途上!人は生きている間は常に修行。死ぬまでそれは続きます…」


「…人の一生は重き荷を負うて遠き道を行くが如し。急ぐべからずとは良く言ったものですな♪まさにこれぞ真理!潘濬殿も劉巴殿も若君と同様に貴方を気に掛けておいでの様だ…」


「…田穂殿も気に病む事は無いのです!まぁその理由を作ってしまった儂が言うのも可笑しな話ですがな♪大変失礼した!」


徐庶はそう言って頭を下げてくれたのである。


田穂は恐縮、(しき)りである。


徐庶は田穂に肩身の狭い想いをさせたと気遣っている。そして廖化もまた田穂を気遣った。


「(っ •̀ ̫•́*)︎先生!田穂殿は私の義兄弟なのです♪良くしてくれています!」


「(๑´ސު`)✧ だろうね♪」


徐庶は頷く。


「(๑´ސު`)✧ それはそうと劉禅君!貴方は細やかな礼を尽くされる御方の様だ♪感心した!これで田穂殿も辛くなかろう♪貴方に皆が惹き付けられるのも判る気がした!儂の方こそお逢い出来て光栄だ♪また近い内に時間を取って下さらんか!貴方と話してみたい♪」


「⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)勿論です♪僕も貴方の講義を聞いていてとても感銘を受けました!では調整して必ずや近い内に♪こちらこそお願い致します!」


「ꉂꉂ(´ސު`๑)フフフッ…結構!愉しみにして居りますぞ♪では廖化はまた明日だ!宿題を忘れぬ様にな♪」


徐庶はそう言うと去って行った。五人は拝礼してそれを見送ったのであった。


徐庶は想っていた。


『(๑´ސު`)✧ フフフッ…太子・劉禅君か!面白い若者が出て来たな♪そして切れる!これぞまさに神の祝福と言えよう…あの雲長殿が変わったのも頷けるというもの。愉しみな事じゃて♪』


彼は涼やかな風に当たりながら笑みを浮かべた。期待に胸を膨らませながら、これからの動向に一時も目が離せないと喜んでいた。


そしてここ荊州に来た事に、もはや迷いも憂いも感じていなかった。むしろ彼らと同じ時を一緒に刻める事に感謝していたのであった。




「(ღ`⌓´٥)若…余計な気を使わせてスミマセン!あっしの事はお構い無く♪」


田穂は気まずそうにうなだれている。


すると何の事は無いと言わんばかりに北斗ちゃんは優しくその肩を(さす)る。


「✧(๐•̆ᗜ •̆ *)つまらん事を言うな♪田穂、君は僕の配下の中でも手練れの一人だ!それに荊州行脚を経てここで僕の仲間に為った数少ない古参のひとり何だぞ♪もっと自信を持って良いんだ!」


「若♪(ღ٥`ᗜ´)੭ ੈそうっすよね!気にしたあっしが間違ってました♪」


「( ˶• ֊ •˶)それで良いんだ♪田穂はそうでないとね!」


「はい!若…(*`ᗜ´٥)੭ ੈ」


田穂は感無量であった。そして改めてその出会いに感謝していた。潘濬も劉巴もそして廖化も微笑みながら温かい眼差しを向ける。


北斗ちゃんは切り換えると、皆に告げた。


「では丞相府に戻ろうか?(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈもうそろそろ孔明が来る筈だ!」


五人は揃って歩き出す。その先頭を歩く北斗ちゃんの足取りは軽い。その主の背中を四人は頼もしく感じていた。

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