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宴のひととき

夕刻を過ぎる頃に簡単ではあるが、観迎の意として軽く晩餐(ばんさん)と相成った。費観も張翼も突然の押し掛けにも拘わらず、温かく歓待してくれる。


「ꉂꉂღ(・ᗜ・*)貰い物がほとんどで大変恐縮ですが、間に合わせでは面目無き事!どうか遠慮なく召し上がって頂きたい♪」


費観も精一杯の歓待をしようという意気込みで臨んだようである。その証拠に机の上には色々な種類の食べ物が並ぶ。


まず焼き物ー。(キジ)が十羽、これは張嶷の戦果である。そして川魚の塩焼と煮付け、これは傳士仁である。そして熊肉の燻製(くんせい)、これは周倉である。


「⁽⁽ღ(・ᗜ・*)そして本日、若君からは収穫されたばかりの新米が届きました♪そして交州からは許靖殿が鯨肉(クジラにく)を送ってくれました。今日はなんか偶然当たり日なんですよね♪…」


「…貴方ひょっとして幸運の星の許に生まれているでしょう!何かこちらが相伴させて貰っている気になるから不思議ですな♪」


費観は元々人間が出来ている。だから決して恩に着せたり、厚かましい物言いはしない。


そして相手を若君にとって大切なお客人と想っているからこそ、出し惜しみせず、歓待し、そのためには、率先して出席もする。


そしてさり気無く相手の心がホッコリするような言葉を繰り出す。しかもこの場合、かなり気の効いた物言いだったので、秦縁は許より他の三人もニッコリと笑みを浮かべた。


費観は元々その年令よりも大人びており、文武にバランスの取れた考え方が出来る。


彼が過去最年少で将軍になったのも、こうして城主と成れたのもそこら辺りが遠因と謂えるかも知れない。もちろん北斗ちゃんの信頼と抜擢在っての事であるのは言うまでもない。


諸葛亮も彼に絶大の信を置いており、元々北斗ちゃんの荊州行に彼を付けたのも、その表れだと言えるだろう。


『へぇ~…(ღ❛ ᗜ ❛´๑)この男も、あの若君の肝煎(きもい)りで、この公安砦を任されたという。成る程!まだ若いのに大した男だ。しかもこの男、この若さで全く(りき)みが無い…』


『…のんびり構えている様で、身体中の全神経が研ぎ澄まされている。いつでも剣を(ふる)える様に心の準備がされており、考え方にも柔軟さがある。それが心の余裕を生んでいるのだろう…』


『…心技体、こうして三位(さんみ)を一体に持ち合わせている男もなかなか珍しいな。またひとり頼もしい男に出会えた気がする。しかしあの若君の傍にはなんと人材の多い事よ♪…』


『…張翼は言わずもがな、あの潘濬という男と言い、劉巴、そして田穂。皆、粒揃いの精鋭だ!しかもまだ若く、皆が常にその目線の先にあの若君の存在を捉えている。そしてあの太子自身も前向きに先を見据えていて頼もしい…』


『…努力を怠る事無く、進化し続けて来たのだろうな?それにとても民想いだ。否、民という定義はひょっとしたらあの若君にはそもそも無いのかも知れん。根本的に人間が好きなんだろうな…』


『…そしてその中で弱い立場に立つ者こそが民だと感じているのかも知れぬ。否々さすがにここまで飛躍して考えては俺の独り善がりというものだ。だが期待出来る。そして面白い存在が現われたものだ!』


秦縁はそう感じていたのである。


「ꉂꉂ(❛ ᗜ ❛´๑)いゃ~上手い事を仰有いますな!城主♪それにかくも盛大な心尽しの数々、この秦縁感服致しました♪有り難き幸せ、是非ともお相伴に預かりましょう!」


「アハハ…ღ(・ᗜ・*)遠慮なさらず、どんどん召し上がって下さい♪"食を粗末に扱う事無かれ!"で御座る!」


費観は努めて明るく振舞う。そして自分は申し訳程度に少しずつ満遍なく料理を口に運ぶに止めていた。


相手に心行くまで堪能して欲しいと願う優しさがそこには在ったのだろう。秦縁を始め、趙蓮も元直も諸葛均も大いに食べ、大いに飲んだ。けれども、長い付き合いである趙蓮には判っていた。


『(๑•̀ •́)و✧今夜の主には遠慮がある。主にとっては腹八分目と言った所に違い在るまい!どうやら彼は主の琴線に触れたらしいな♪彼の心からの歓待振りとその言葉に胸が一杯となったに相違ない♪』


趙蓮はそう感じて彼自身も胸が熱くなっていた。


そしてこの中でもうひとり、同じ事を考えていた男が同席していた。あの徐庶であった。


『(´ސު`٥)私が居ない間にも、着実に若い芽が育ちつつあるのだな!こりゃあ、私の出番なぞ無いかも知れぬ。老兵は去り行くのみなのか?…』


『…否、まだだ!私にも何か必ず貢献出来る事がある筈♪せっかく、その気になったんだから、私も負けぬぞ…』


彼は今一度自らを奮い起たせながら、切り換える。


「時に…⁽⁽ღ(・ᗜ・*)」


費観は皆が飲み食い、落ち着いた頃合いを見計る様に口火を切る。


「ꉂꉂღ(・ᗜ・*)貴方の配下の方は両人共、物静かな方ですな!それにバランスが良い♪おひとりは生粋の武人、もうひとりは参謀ですかな?」


「えぇ…⁽⁽(❛ ᗜ ❛´๑)二人共かなり優秀ですよ♪特にこいつは小うるさくて困ります!」


秦縁は趙蓮を横目で眺めながらそう答える。名指しされた趙蓮は場を(わきま)える事には慣れており、涼し気な表情を崩さない。


すると想定外の方角から、疑問が突如投げ掛けられた。


「(๑´ސު`٥)✧失礼だが、私が参謀だと想ったのはなぜかね?私はこの通りの体格だし、良く武人にも間違えられる。ここに来てからも一言も喋っていないのだがな?」


徐庶であった。


「あぁ…⁽⁽ღ(・ᗜ・*)仰有る通りです♪でも実は先程、初見で私の意識を引いたのは、貴方でした。私は初見の方は然り気無くではありますが、その人と形を眺めるようにしています…」


「…勿論、言葉を交わして把握する方が判り易いが、こちらが話し掛けた瞬間の反応を眺めているだけでも、随分と違うのですよ…」


「…世の中、先程のあなた方の様に無言を貫く方も居ります。それでもこういった手法で情報の入手は可能と言えます。それに…」


そこまで言うと費観は少々言い淀んだ。すかさず徐庶は先を促す。


「ꉂꉂ(´ސު`๑)遠慮は要りません!感じたままを仰有い♪私は気にしない!」


「"(・ᗜ・*)では、申しましょう♪私は貴方がとても毛色の変わった男だと感じました。陽に焼けた肌、ゴツゴツとしている手、太い腕、筋肉の付いた胸許。恐らくこれは向こう一年程の間に付いた物でしょう…」


「…慣れない者はここで誤解します。でも良く観察すると、貴方は帯剣していないし、物腰が洗練されている。食事の仕方ひとつ取ってみても上品さが出ている…」


「…この事から、宮仕えしていた文官で、何らかの理由でここ一年程の間は隠棲し、晴耕雨読の毎日だったのだと想った訳です!これは隠棲していた諸葛均殿から得たヒントで恐らく貴方も一緒にこの荊州で隠棲中だった。違いますか?」


「正解だ♪(๑´ސު`)✧ 良く観察し、分析力もなかなかのものです!感服した♪まぁ私も宮仕えが長かったので、つい所作が出てしまう。隠す事も出来たが、想わぬ馳走だ!猫を被っていては美味しく無い…」


「…いつも通り振舞ったまでだが、図らずもその為に、せっかく身許を伏せてくれた秦縁殿の御配慮を無駄にしてしまったな!申し訳ない事だ…」


「…何を隠そうこの私は徐庶元直と申す!改めて宜しくお願いしたい。それにしても内官にも色々ある筈!どうしてこの私が軍師だと判ったのかね?」


「何と!Σღ(・ᗜ・٥)ღあの徐庶殿で在らせられるか?これは大変失礼致しました。こちらこそ宜しくお願い致します♪」


費観は慌てて拝礼する。


「ꉂꉂ(ღ´ސު`๑)否々、今は単なる老体で御座る。気に為さるな!それよりも早く理由を教えて欲しい♪」


徐庶もせっつく。


「あぁ…(・ᗜ・٥)ღ⁾⁾ それはですな!」


費観はポリポリと頭を掻くと先を続ける。


「⁽⁽﹆(・ᗜ・*)それは貴方の胸許から時折、白扇の羽が頭を出しているからですよ♪すみませんな!」


費観はカンニングした生徒のように申し訳なさそうな表情をして見せた。


徐庶は「Σ(´ސު`٥)あぁ…」と想わず声を上げると、費観を指差しながら、然も嬉しそうに微笑んだ。


「(๑´ސު`)⁾⁾ 良く観察し、良く分析するか!確かに大したもんだ♪今後、身許を隠す時には私も気をつけるとしよう!」


そう答えると、白扇を取り出して、軽く扇いだ。


「元直よ!ꉂꉂ(❛ ᗜ ❛´๑)下手に身許を隠そうとしたこの私にも否はある。気にするな!それにしてもさすがは諸葛亮殿のお弟子さんだ。優秀な事だな♪」


「ホゥ~ꉂꉂ(´ސު`๑)お前さんは孔明の弟子かい?あいつとは師が同じでな♪まぁ腐れ縁よ!」


徐庶はさして驚く風も無い。


「⁽⁽(・ᗜ・*)貴方の事は先生から聞いておりました。そうですか…戻られていたのですね♪あ!そうか♪敵を(あざむ)くにはまず味方からという事なのですね!」


費観はまた才能の片鱗(へんりん)をみせる。


「そうだ!✧(❛ ᗜ ❛´๑)さして新しくも無い使い古された手だがな…やらないよりはましというものだろう♪」


「⁽⁽(・・*)そうでしょうね♪」


秦縁の言葉に費観も同意する。


「(๑´ސު`)⁾⁾ まあ、こいつのお陰だよ!感謝している♪」


徐庶は秦縁にチラッと視線を当てるとすぐに振り向き、費観に尋ねた。


「(ꐦ´ސު`٥)私からすれば、この奇妙(きみょう)奇天烈(キテレツ)な男の方が余程、胡散(うさん)(くさ)いと想うがね?ハハァーン!さてはお前さん、こいつの事を知っていたんだな?」


徐庶はズバリと斬り込んだ。


「ハハハ…ꉂꉂღ(・ᗜ・*)まぁそうです!今、江陵城には健康診断のお手伝いで、費禕(ひい)が滞在しており、秦縁様の来訪の件は伝書鳩で既に知っておりました…」


「…だから取捨選択の折りにすぐにマークから外し、諸葛均殿もノーマークで済みましたから、徐庶殿!貴方に注目するのは特に難しい事では無かったのです♪」


「成る程…ꉂꉂ(´ސު`๑)青色の長髪に緑色の瞳だからな!明らかに異人そのものだ。否…」


「…失礼!引っ掛からぬ方が不思議というものだが、予め知っていればその懸念も無い。つまり、お伴もひとりと知っていたのかい?」


「いいえ…(・ᗜ・٥)ღ⁾⁾ 二人ですが、ひとりは妙齢(みょうれい)の御婦人ですからな!」


「ホゥ~♪⁽⁽(`ސު´๑)そうなのか?」


徐庶はニヤニヤしながら秦縁を見る。


「妙齢の御婦人か…(´⸝⸝• ᗜ•٥⸝⸝ღ)⁾⁾ 喬児が聞いたらさぞや喜ぶ事だろうよ♪費観殿は気の利いた事を仰有る。女性が放っておかんだろう?」


「否、それほどでも…(・ᗜ・٥)ღ⁾⁾」


費観は赤面する。ちなみに彼は既婚者である。


「あぁ…ꉂꉂ(ღ`ސު´๑)それで納得がいった!喬児殿なら、確かに麗しい♪」


徐庶も意味深な言葉を投げ掛けながら、秦縁を見つめた。


「全く!✧(❛ ࡇ ❛´٥๑)この助平じじい♪やかましいわ!余計なお世話だ…」


秦縁は彼特有の毒舌を繰り出す。言葉は悪いが本気ではない。徐庶の冷やかしに対する皮肉である。これには理由が在ったのだ。




青柳商団の者達は秦縁と喬児が真の夫婦である事を知っている。恐らく徐庶も脱出の際に、商船に便乗していたから、喬児には会っていたのだろう。勘の良い彼はそこで気づいていたに違いない。


ちなみに趙蓮と喬児は兄妹である。


その昔、ご先祖様に趙良というやはり生真面目な男が居た。彼が喬燕という女性を愛し、結ばれ、その家系がその後、何代も続いているが、趙家は男子には趙、女子には喬を当てて名乗らせて来ているのである。


詳しい説明は省略するが、秦縁が趙蓮をけして義兄上(あにうえ)と呼ばないのは格の違いである。生真面目な趙蓮もそれを望んでいない。ちなみに喬児も呼び捨てである。




この場に居る者達もこのやり取りを聞いていて、何となくではあるが、そう感じた事であろう。


「こりゃあ、すまん!(´ސު`٥)ღ⁾⁾ 失礼した♪」


徐庶のこの一言でその場はそれで収まる。


「⁽⁽ღ(*。-_ - 。)それで徐庶殿はこれからどうされるのですか?」


張翼であった。何も機転を利かせるのは、費観や費禕の専売特許では無い。それに今は費禕が不在だから、彼にはその外れたピースを一時的に埋める必要があったのである。


「あぁ…ꉂꉂ(´ސު`๑)ひとまず雲長殿のところにでも顔を出すつもりですよ♪あそこには、馬良や伊籍も居る事だし、何ぞお役に立つ事もあるでしょう!落ち着いたら、後々の事はゆっくり考えます♪」


これで話しは終わった。宴のひとときは、終わりを告げ、彼ら四人は費観と張翼に見送られながら、公安砦を後にした。予定通りの夜間行軍となったのである。




「ꉂꉂ(ღ❛ ᗜ ❛´๑)いやぁ~(えが)いていた通りの馳走であったな♪おっと!こりゃあ、すまん♪」


秦縁は反射的に趙蓮を見る。どうやらこの人は言わねば収まらない(たち)のようだ。趙蓮の顔にもそう書いてある。彼は苦虫を噛み潰した様な表情で、答えたのみであった。


「ハッハッハ♪ꉂꉂ(`ސު´๑)趙蓮お主も苦労するのぅ~♪まぁでも美味(おい)しかったけどな!」


徐庶は口許を拳骨(ゲンコツ)で押さえながら、高笑いである。


「でしょう?(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈしかしあの熊の燻製(くんせい)というのは初めて食べましたが、なかなかの珍味ですな!今度、商団のメニューに加えてみようかな?」


本当に商魂逞しい。


「ꉂꉂ(´ސު`๑)私は鯨肉というのは初めてだったな!あんなドでかい商船の主だ♪手に入るなら、今後頼むよ?」


「あぁ…⁽⁽(❛ ᗜ ❛´๑)勿論ですとも!元直殿なら半値で卸しますよ♪」


「ꉂꉂ(´ސު`๑)そらぁ、有り難いな!」


とっくに夜の(とばり)が落ちているというのに、暗闇の中を進みながらも明るい話題に華が咲く。見方を変えれば、こんなにお気楽な連中も居ないというものであろう。


諸葛均はそんなやり取りを眺めながら、心の中がホッコリと温かくなるのを感じていた。


そんな時に趙蓮が剣を(さや)ごと頭上に(かざ)し、皆に注意を(うなが)す。一行にも瞬時に緊張が走る。


「(๑•̀ •́٥)و✧誰か前方から来ます!」


彼はそう告げ剣を抜く準備に入った。ところがそれは商団の仲間で、喬児の放った伝令であった。


伝者はすぐに喬児の要件を采配である秦縁に告げる。秦縁は少しばかり驚いた様子だったが、その決断は早かった。


「判った!⁽⁽(ღ❛ ᗜ ❛´๑)だが今日はもう遅い。明日の朝一番に出向くとしよう♪」


秦縁はそう告げると、予定通り(パオ)のある森の宮へと向かったのだった。

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