鶏口牛後
落ち着きを取り戻した劉巴は、諸葛亮の御膳立てに乗る様に、先を続ける。
「(o'д'o)士燮は独立国を謳い、自ら王に為る野望を達成する為には邪魔に為るで在ろう呉巨を何とか懐柔しようとしていました…」
「…呉巨は元々は劉表の配下の豪族で交州でも名を馳せており、御主君・劉備様の古くからの悪友でもあるので、丞相は御存知でしょう♪」
「あぁ…✧(ღ ˘͈ ᵕ ˘͈ *)詳しくは知らぬが名前だけは聞いた事が在るな!孫呉の派遣した交州刺史・歩隲に斬られたと聞いているが…」
「えぇ…ꉂꉂ⁽⁽(o'д'٥o)そうです♪士燮の王に成ると言う頑なな野望は、やがて呉巨をして同じ野望を抱かせました。呉巨も王に成ろうとしたのです!その為に彼は孫呉にすり寄り、孫権に阿りました…」
「…ライバルの士燮を蹴落とす為に孫権に歩隲を派遣させて、士氏勢力を潰させるという策を弄します。ところが呉巨は猛将ではあるものの、いまいち演技に掛けてはド下手であり、すぐにその腹積もりは賢い歩隲に見破られました…」
「…呉巨は歩隲を迎える宴会の場で、敢えなく罠に嵌まり斬られます。これには士燮も平静では居られませんでした。次は自分の番であると判っていたからです。彼は仕方なく歩隲の無言の圧力に屈しました…」
「…自ら進んで歩隲を迎えて、孫権への服従を願い出る事により、その地盤を守る事を選んだのです。これは王に成る野望が壊れた瞬間でも在りましたが、自らの地盤を確固たる物にする事にも成りました…」
「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈつまりは憧れよりも、実利を選んだという訳か!孫権の保証が在ればその地位は安泰だもんね♪さすがは海洋交易で利鞘を稼ぐ御仁だな!」
「えぇ……⁽⁽(o'д'*o)左様です♪若君!まさにその通りで♪」
「で♪✧(๐•̆ ᗜ •̆ ๐)君はいったいどうやって彼に恥を掻かせたんだい?そろそろその話には成るのだろう?」
北斗ちゃんは早く答えを知りたがり、劉巴を急かした。彼もまだ若者である。そういう我慢は利かない様だ。
「フフフッ……ꉂꉂ(o'д'*o)ではそろそろ種明かしを致しますかね♪若君、私は彼が王に成ろうとした事に、鼻持ち為らないものを感じていました。勿論、日頃若さゆえに小僧呼ばわりされていた憤懣も在りましたがね…」
「…でも私は若いなりにも、自分が士大夫の一員としての自負も在りましたから、そんな口汚い罵りや衆人環視の中で面と向かって恥を掻かせる事などは、下策と心得ています…」
「…ですから少し頭を捻り、彼や彼の周りで勘の良い者にしか判らない様なスマートなやり方をする事にしたのです♪」
『フフフッ✧(ღ ˘͈ ᵕ ˘͈ *)♡これは面白い♪若君でなくとも早くその答えを知りたくなると言うものだ。さてこの才知に恵まれた男がどうしたのか愉しみだな!』
白扇を靡かせ諸葛亮もまたほくそ笑みながら、その答えを待つ。劉巴は二人の興味が自分に向けられている事に満足して、やがてポツリポツリと語り出す。
「ꉂꉂ(o'д'*o)私は明日の朝、士燮と許靖殿が朝早くから参内する事を存じていましたので、その前日の夜に然り気無く宮殿に忍び込みました。そしてその政務の間にやって来ると柱の前に立ちました…」
「…そこには士燮の座右の銘である唯一無二という言葉が刻まれています。私はそれを持参した獲物で時間を掛けて丁寧に削り取り、その代わりとしてある言葉を彫り込んだのです…」
劉巴はそこではにかんで見せた。その時の彼の悪戯心が今まさに蘇ったらしい。可笑しくて堪らないといった呈でほくそ笑みながら、一気に捲し立てた。
「✧(o'д'*o)それは鶏口牛後でした。ちょうど四文字ですし、なかなか洒落た言葉でしょう?私は目的を遂げると何食わぬ顔で引き揚げて明朝に備えました…」
突然その場からはけたたましい笑いが起きた。ꉂꉂ(* ˘͈ ﹃ ˘͈ *)ღ諸葛亮であった。彼は可笑しくて仕方がないらしく、なかなか笑いがおさまらない。
北斗ちゃんは逆にキョトン( ¯ࡇ¯ ٥)としていて、その意味を捉えかねていたから、丞相の笑いの意味が判らず唖然とそれを観ている。
劉巴は、まだ若君には難しかったのだと悟り、丞相にその笑いの意味を問うた。
「丞相♪ꉂꉂ(o'д'*o)若君はどうやらその意味が掴み兼ねているようです!出来ましたら、貴方様から噛み砕いて説明してあげては貰えませぬか?」
「(* -_・)❁ ੈん?あぁ…宜しい。では私が説明して差し上げるとしようか!」
諸葛亮は笑いを収めると、真面目な顔をして若君に向き合った。そして切々と説き始めた。
「若君!(* ˘͈ ᵕ ˘͈ )੭❁ ੈ⁾⁾ 士燮殿は王と為るべく切磋琢磨し、その気持ちを忘れぬ様に恐らくその柱に唯一無二と刻ませたのでしょう!唯一無二とは他に代わりが無くただ一つしかないという意味です…」
「…つまりは他に並ぶものがないほど飛び抜けた存在に成るという意志の表れでしょう♪一方、鶏口牛後とは、元々、鶏の口と牛の尻を表す言葉です…」
「…総じて、喩え大きな組織の中にあって誰かの指示の許に身を置くよりも、小さな組織で常に危機に見舞われ様とも、自ら治る立場の方がましであると言う意味に成ります…」
「あぁ……⁽⁽(๐•̆ ᗜ •̆ ๐)成る程!つまり劉巴は、王に成りたかった士燮が自らの節を曲げて、孫権の下風に身を置いた事を暗に批判したという事だな♪」
「御明察の通りです!!⁽⁽(o'д'o)さすがは若君♪飲み込みが早い!そして丞相♪貴方の見識には敵いませんな…すぐにその意味を捉えて、私が意図した通りの反応を示されました!私もこれで面目が立つと言うもの…」
「それで…(٥ •ᗜ•)それで士燮はどうしたんだい?」
北斗ちゃんはその後始末を知りたがる。ここまで来たら最後まで知りたくなるというものだ。
「あぁ…⁽⁽(o'д'*o)そうでしたな!」
劉巴は然も忘れていたと言わんばかりに、苦笑いである。まさかここまで自分の話が興味を惹くとは想わなかったらしい。
「では…(ღo'д'*o)卒爾乍ら申し上げますと、その翌朝、士燮は予定通り許靖殿と共に朝早くに参内しました。私の目論見通りです。そして私はやはり朝早めに参内して陰ながら、その様子を窺っておりました…」
「…すると士燮よりも先に柱の文字に気がついたのは許靖殿でした。彼は"こ、これは…"と動揺する素振りを見せました。士燮はその様子に異変を感じとり、彼に誘われるまま柱を眺めます…」
「…彼は鶏口牛後という言葉にすぐに反応を示しました。"蘇秦か?"とひとり言を呟くと、"こんな事をするあざとい奴は劉巴で在ろう♪"と言ったのです…」
「…私は想わず咳き込みそうになり、慌てて口を抑えました!するとその直後に彼はガハハハハッと大声で笑い出しました。すると許靖殿もその気持ちをすぐに推し量り、一緒にけたたましく笑ったのです…」
「…士燮は"面白い♪ユニークな発想だ!これはこのまま残しておき、儂の今後の反面教師としよう…"そう宣言しました。結局、彼に恥を掻かせる事には成功したものの、その身許はバレ、却って彼に評価される結果と為ったのです…」
「へぇ~(ღ๐•̆ ᗜ •̆ ๐)士燮という人はやはり稀代の人物かも知れないね?そこで笑い飛ばせる度量があるんだな!じゃあ却って良かったじゃないか?」
「えぇ…⁽⁽(o'д'٥o)ここまではね♪でもその後が不味かったのですよ!」
劉巴は途端に口をモゴモゴとさせて歯切れが良くない。その様子では、余り後の始末を説明したくは無い様であった。
「劉巴…(* ˘͈ ᵕ ˘͈ )੭❁ ੈ⁾⁾ 若君の前では隠し事は無しにしよう♪ここまで話したのだ!君の不徳とやらを聞こう♪けして笑いはせぬ!ちゃんと最後まで言いなさい♪」
諸葛亮は白扇をパチンと綴じるとそう促す。彼はこの先の話が今後の交渉に関わりがあると困ると考えていたのだろう。そこに妥協は無かったのである。
劉巴も覚悟を決めた様だ。彼はいったん深く息を吸い込むと、ゆっくりと吐いた。そしておもむろに話し始めた。
「ꉂꉂ(o'д'*o)士燮はその足ですぐに私に使いを寄越しました。それは傍にいた許靖殿が必然的に担う事に為ったのです!士燮と許靖殿はその場でゴニョゴニョとしばらく話し込んでいました…」
「…ところが少し距離があるのでこちらからはその内容が聞き取れませんでした。けれども許靖殿の表情からそれがただ事では無い事が判りました。許靖殿はその後すぐに走る様に殿中を抜けて行きます…」
「…士燮はそれを見送ると、改めて柱の言葉を苦笑いしながら見つめていました。私はこのままでは不味いと、そこをひっそりと脱け出すとやおら慌てて走り始めたのです…」
「…そして殿中を急ぎ脱けて許靖殿の後を追いました。若い私が年配の許靖殿に追いつく事は然程、難しい事では無かったので、直ぐにその背を捉えます。私は彼に声を掛けて呼び止めました…」
「…"( 'ע ٥)やはりな!"そう彼は直ぐに応えました。"(ღ 'ע ٥)⁾⁾君の事だ!あんな事をするのだから近くで眺めていたのだろう?"そう言うとニヤリと笑みを浮かべました。」
「全く!(٥ 'ע )✧君という男は負けず嫌いで困る。若さゆえなのだろうが、我々は彼に庇護されている身なのだぞ?彼を怒らせる様な事をしてどうするんだ!いつも言っているだろう、大人に成れと?」
許靖は劉巴を諭す様にそう告げた。そこには厳しさの中にも優しさがあった。
「はぁ……⁽⁽(o'д'٥o)面目無い事で!でも幸い士燮は怒って無い様に見えましたが?」
「あぁ…(٥ 'ע )✧それはな、彼の中にも孫呉に服従した事に忸怩たる想いがあったからだ!それがいみじくもあの言葉を見た瞬間の彼の胸に刺さったのだ。そして彼の秘めたる想いに共鳴した…」
「…お前さんは孫呉に服従した彼をけなそうとしたのだろうが、彼はそれを初心に戻る啓発と捉えたのだ!だから反面教師にしようとされたのだ♪お前には悪いが、相手が悪かったな…」
「…そして、お前は誤解している様だが、士燮殿はお前を決して軽んじてはいない。むしろ、その聡明さを買っておられる。だからお前を甘やかす事が無かったのだ!どうだ?驚いたろう…」
「えぇ…⁽⁽(o'д'٥o)そらぁもう!すっかり小僧呼ばわりに、私は軽んじられていると想っていました。しかしもし仮にそうなら、あの方はとんだ変わり者ですな♪」
「全く!(٥ 'ע )✧お前という奴は口が悪い。でもそうだな、確かに変わり者では在るよ♪でもその変わり者と気が合うこの儂も変わり者なのだろう。そしてその儂と気が合うお前もそうなのだぞ♪」
「えぇ!?Σ(o'⌓'٥o)そら無いですよ!文休殿♪私は至ってまともです♪」
「否…(٥ 'ע )੭⁾⁾ 子初や♪お前も結構な変わり者じゃぞ!じゃなきゃ、劉備殿や諸葛亮殿の誘いを断わるまい?」
「否…⁽⁽(੭ o•̀Д•́ o)੭⁾⁾それは私の信念の問題ですから!私は玄徳殿が好きでは在りませんので?」
「あぁ…(٥ 'ע )⁾⁾ そうだったな!まぁそれは良いとして、お前は今後どうするつもりだったのだ?あれだけの事をして、ここに居られるとは考えて居なかったのだろう?」
「まぁね…ε- (o'д'٥o)どうせ私は放浪には慣れておりますからな♪まぁまたどこぞ、落ち着く場所が見つかるまでは放浪するつもりでしたが?」
「ほぉ…(٥ 'ע )⁾⁾ 一応の覚悟があってやった事なら仕方がないな!何も考えずやったのなら殴るとこだがな!まぁ幸いな事に、お前も観ていたから判ったろうが、士燮殿は怒っていない…」
「…それどころかお前のその負けん気の強さと、然り気無い批判の仕方に感銘を受けられている。どうもお前に自分の娘を嫁がせたいと乗り気に為られてな、この私を遣わしたのだ♪どうする?」
「げっ!それは…Σ(o'0'٥o)まさかとは想いますが、許靖殿はそれを望んでおられるのでは無いでしょうな?」
劉巴は珍しく許靖に疑うような眼差しを向けた。
「否…(ღ 'ע ٥)まぁな!お前も確かにそろそろ身を固めても良い時期だとは想っている。そうすればお前の軽々しい勇み足も少しは直り、地に足を着けて慎重に為るだろうよ♪けどな…儂は本人の意思に反しての決定には従わぬ!お前の好きにするさ♪」
「(;꒪ö꒪)でしたら私はこのまま逃げますよ!私は劉備も好かぬが士燮も好みでは在りませぬ。只、居場所を提供し、その身を自由にさせてくれているから、ここに居を構えているに過ぎません…」
「…それが婚姻し、身を固めてしまってはあの方が私の義父に成ります。そうなれば言うがままでしょう?あの方の為に身を粉にして働かねば為らなくなります!それは願い下げですな…」
「(ღ 'ע ٥)為らば断われば良い!今まで逃げに逃げて来た儂が言うのも可笑しいが、お前にはその道は進められない。お前はまだ若い!その前途にはやがて光も射すだろう。だから逃げるのは止せ!良いな♪」
「判りました!⁽⁽(o'д'٥o)貴方がそう言うのなら従いましょう♪けどあの士燮が"はい!そうですか"とはとても言うとは想えぬのですが?」
「あぁ…(٥ 'ע )⁾⁾ そうだろうな♪だが儂が口添えをしてやるから心配は要らん。まさかこの儂がお前を裏切るとは想わぬで在ろうが?」
「それは在りません!⁽⁽(o'д'*o)貴方を信じていますよ♪」
「良し♪(ღ 'ע ٥)⁾⁾ ではゆるゆる戻るとするか?余り待たせてもいかん!それに皆が参内してくると話がややこしくなるだろう…」
「そうですね…ꉂꉂ⁽⁽(o'д'*o)ではさっそく!」
二人はその足で宮殿の政務の間に戻ると、士燮はまだ柱の前で彫られた文字を観ていた。
「(٥ 'ע )੭⁾⁾ 士燮殿♪只今、戻りました!」
許靖が劉巴を伴い、声を掛けると、彼は振り向き様に劉巴を見つめた。
「やってくれたな、子初!( ಠдಠ)⁾⁾ だがこの件は赦そう♪ある意味お前には感謝しなくては為らんからな?儂も初心に返る事にする。それはそうと早いお出ましだったな…」
「…邸宅から来たのでは無かろう!どこぞその辺りにでも潜んでいたのだろうが、よく逃げずに来たな♪その勇気に免じて不問に伏す。ところでその分だと許靖から話は聞いておるな?どうだ、受けるか!」
士燮はズバリと切り込んで来る。回りくどいのは嫌いらしい。劉巴は胸を張り、おもむろに応えた。その瞳には決意の色が窺える。
「否…⁽⁽(o'⌓'٥o)お気持ちは嬉しいのですが、この件はお断り致します!私はまだ身を固めるつもりも無く、貴方を義父と仰ぐ気にも為れません。残念ですが、ご勘弁下さい!」
「ほぉ~(ღಠд ಠ *)はっきりと宣うな!だが、その方が儂も気持ちが良い!判った、ではこの件は取り下げよう♪で?これからどうするつもりだ!この儂に喧嘩を売り、譲歩も断わった。どう身を処すつもりかな?」
「はい!⁽⁽(o'ᗜ'٥o)お暇を頂戴したいと想います!なぁに、私は元々は流れ者ですから、放浪には馴れております。ですからどこへ為りとも去るつもりです!」
「そうか…⁽⁽(ಠд ಠ *)判った!覚悟を決めての行動だったのだな?それならば儂も引き摺る事無く、鉾を収めよう♪儂は恨みがましいのは好きでは無いのでな…」
「…そうだ!今、確か益州の劉璋殿が人材を求めておる♪巴蜀までの道のりは長いが、今後の事が決まっていないのなら渡りに船という物だろう、どうだ?行くかね♪」
劉巴は驚いた。恥を掻かせた相手に職を世話してやろうというのである。まさか士燮にこれ程の度量が在ったとは想わなかった彼は、心を決めるしか無かった。
これ以上、この男に恥を掻かせる訳にはいかなかったのだ。劉巴は覚悟を決めた。
「有り難き幸せ♪ꉂꉂ(o'д'*o)貴方の恩義に報いる事は出来ませんでしたが、そのお申し出には従いましょう!今までお世話に為り有り難う御座いました!貴方の夢が叶う事をお祈りしています!」
「おう…⁽⁽ღ(ಠд ಠ *)勿論だとも♪許靖殿はどうされるのか?貴方はこいつの保護者で在ろうが!」
「えぇ…(ღ 'ע ٥)⁾⁾ 儂もこいつに着いて益州に参ります!何から何までお世話頂き感謝に堪えませぬ♪有り難う御座いました。」
「フフフッ…ꉂꉂ(ღಠд ಠ *)そう言われると想っていた!判った、行くが良かろう♪また逢う日が来るのを愉しみにしておるぞ♪」
こうして二人は益州に向かう事に為ったのである。士燮は温かく迎えた時と同じ様に彼らを温かく送り出したのであった。




