神の業
諸葛亮が到着した時には既に丞相府はもぬけの殻だった。対応には潘濬が出て来た。
「これは閣下♪(ꐦ•" ຼ•)ひと足遅かったようです!若君は弎坐殿が寄越した伝者と共に手術に向かわれました。終わるまでは本日の予定は全てキャンセルとの事です…」
「…丞相がおいでになったら、気にせず休めと伝えろとの仰せで御座いました。こちらの予定は私と劉巴で間に合いますので、このままお引き取り下さい!」
「成る程…(* ˘͈ ᵕ ˘͈ )੭ ੈそうでしたね!若君も医術の心得がお在りなのでしたね♪判りました、そういう事なら引き上げましょう!」
諸葛亮は白扇を仰ぎながら、そのまま引き上げていった。
『それにしても…(• ຼ"•ꐦ)』
潘濬は想う。
『(ღ• ຼ"•ꐦ)老師が直に若君をお呼びになるとは、かなり難しい手術になるのだろう。それだけ若君の腕を頼りにされているという事だ…』
『…これはひょっとしたら徹夜になるかも知れん。咄嗟の機転で劉巴殿が代わりに行ってくれて助かった。私は私の領分を果たすとしようか?』
潘濬も山積みとなった案件の整理に没頭し始める。劉巴は鞏志との検分の確認に向かったのだった。
その頃、黄忠も関羽に諭されていた。彼は髯をしごきながら、とうとうと告げる。
「漢升よ!(`艸´*)若は恐らく孟起の奴の手術だろう。あの方はそういうお人なのだ。道端で弱っている弱者を見れば放ってはおけない方なのだよ。あんなにお優しい方には滅多にお目にかかれまい…」
「…何しろ、敵国の民すら助けておしまいに成るお人だからな!だから騒がんで良い♪あやつもいっぱしの猛者で有り、名家の誇りが在ろう。覚悟はしておるだろうよ!我らは華佗老師や若君を信じて待つのみだ…」
「…弎坐や費禕もなかなかのやり手だ。今この荊州には、中華を代表する医術家が四人も揃っている。この四人がその力を結集して駄目ならば、ほかに手立ては在るまい…」
「…ここは彼らの成功を祈ろうではないか?お前も疲れているんだから帰って休みなさい。恐らく丞相も今頃、潘濬に諭されてそうしている頃だろう。判ったな?」
「承知しました。( ꐦ◜ω◝ )੭⁾⁾仰せに従います…」
黄忠も納得せざるを得ない。そのまま引き上げる事と相成ったのである。
『(ღ ◜ω◝ꐦ )関羽殿も変わられたのだな…沈着冷静そのものだ!若君の影響力とは凄いものなのだな?』
黄忠は帰途に歩を進めながらそう感じていた。
「先生!(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ斗星です♪お呼びだそうですね?」
「おう…✧(ㆁωㆁ*)斗星よ♪良く来てくれた。ちと難儀な施術に成りそうじゃ!お前の腕を借りたい♪」
「喜んで♪⁽⁽( •̀ ᗜ •́ *)で先生、もう麻酔は打ったのですね?輸血はどうします?」
「あぁ…ꉂꉂ(ㆁωㆁ*)こいつらよ!」
「えっ!えぇ…=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)弎坐と管邈殿ですか?よりによって!」
「あぁ…(٥ ㆁ ωㆁ)⁾⁾ そうなのだ!実はな、お前も知っての通り、大掛かりな施術には輸血が必要なのだ♪そして今の時代、この儂と儂から教えを受けたお前たちしか知らない事だが、人の血にはそれぞれ型があるのだ…」
「…この事を知らぬと身体が拒否反応を起こして、下手をすると死に至る事になる。馬超殿は丙(O型)だ。丙は知っての通り甲(A型)、乙(B型)には血をやれるが、貰う場合は同じ型の丙からしか貰えないのだ…」
「…今のところ検査薬も限りがあり、作るのもかなり高度な技術が居るのだ。ゆえにまだここでも型が判明している人達には限りがある。この二人は丙じゃ!そして儂は甲乙。費禕は甲、お主は乙じゃろう?」
「えぇ…(٥ •ᗜ•)⁾⁾ そうです♪でも先生、今まで診察をした者の中には型が判ってる人も居るのでは?」
「✧(ㆁωㆁ*)彼らが疎開しておらねばな!」
「あっそうか!( ¯ࡇ¯ ٥)そうですよね?丞相や後の二人の検査をしてみては?」
「ꉂꉂ(ㆁω ㆁ ٥)彼らは行軍して来たのだぞ!明日ならまだしも今は無理じゃ!」
「σ(>ω<*)先生、あちき達は大丈夫です♪管邈そうだろ?」
「えぇ…( ٥´꒳`*)✧そもそも私も助けられて拾った命です!弎坐殿は処置も有りましょうから、まず私から!」
彼らの表情には決死の想いがあった。その時である。
「あれれ…⁽⁽(ღ`ー´٥)待って下さい!秦縁殿は確か丙だって聞いてます♪あの商団には検査薬が有るんですって?」
田穂であった。
彼らはキョトンとした顔で田穂を観ている。
「Σ(,,ºΔº,,*)それは本当なのかい?」
「えぇ…(*`ᗜ´)੭ ੈあの商団は進んでますからな!」
「(* ㆁ ωㆁ)੭ ੈそれじゃ!青柳商団が来ているのか?」
「「えぇ…(º ロ º )(`ᗜ´*)目と鼻の先に!!」」
「(ღㆁωㆁ*)✧呼んでくれぬか?」
「(*`ᗜ´)੭ ੈようがす♪あっしがひとっ飛びで行って来ます!」
「頼んだよ♪ღ(◕ 0 ◕*)田穂!」
田穂はその足で飛び出して行った。
「(* ㆁ ωㆁ)੭ ੈじゃあ、さっそく始める。まず管邈じゃ!」
「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾はい!先生♪」
輸血が開始され、すぐに施術が始まった。
『(ღ`⌓´٥)あっしは護衛っすからね!若君に張り付いていて正解でしたな!』
田穂のファインプレーである。彼は汗血馬の季牧に跨がり先を急ぐ。
季牧は飛ぶように風を切り、あっという間に到着した。田穂はその足で包に駆け込み、秦縁に事情を話した。
「何!(ღ❛ 罒 ❛´๑)そんな事になっているのか?ふむふむ…管邈殿と弎坐ってあの青年だな?彼らが輸血に応じる。しかしそれでは血液が足らんだろうな…」
「何!(ღ❛ ㅂ ❛´๑)検査出来ぬ者たちがいるのか?それでは照合が出来ずに不便な事だな!判った、ここには照合済みの者がたくさんいる。すぐに行く!少し待て♪」
秦縁は包の簾形式の出入口を開くと、ここぞとばかりに大声を出した。
「おい!✧(❛ ᗜ ❛´๑)お前たち♪血の型が丙の者はすぐに集合せよ!血液が足らんそうだから急いで出発だ♪俺に続け!」
「「お~!!」」
「おい!(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ趙蓮、お前はあるだけの検査薬を持って後から来てくれ!後な、ゴニョゴニョ…」
「判りました♪( ๑ •̀ •́ )و✧喬児と相談してすぐに!」
「ああ…⁽⁽(•• ๑)頼んだよ♪では田穂殿、参りましょう!」
「有り難い!(*`⌓´*)恩に来ます♪」
「(ღ❛ ᗜ ❛´๑)否、困った時はお互い様だと言ったろう!野郎共行くぞ♪続け!」
こうして秦縁の青柳団の仲間達を従えた田穂は、無事に戻って来た。部屋の前には費禕が待っている。
「費禕殿!(`⌓´٥)若は?」
「あぁ…(⊹^◡^٥)先生と一緒に執刀中だ!失礼ですが、貴方が秦縁様?」
「⁽⁽(❛ ᗜ ❛´๑)そうだ!」
「(⊹^◡^٥)では御案内します♪ 他の方はここでお待ち下さい!デリケートな施術中ですので大きな声や音を出さぬように!必要があれば随時お呼びします♪田穂、君がここの統制を取ってくれ!」
「へい!(*`ᗜ´)੭ ੈわかりやした♪」
「(⊹^◡^*)では秦縁様どうぞ♪」
「⁽⁽(❛ ᗜ ❛´๑)うむ♪」
二人は室内に消えて行った。
さて、室内に入るとあちらこちらに蝋燭の火が灯り、白衣に身を包んだ三人の男達が頭を突き合わせて真険に取り組んでいる。
馬超は腹這いに寝かされていて、意識は失っているものの、寝息は立てているので、どうやら麻酔が良く効いているようだ。
少し間を隔てた隣の寝台には管邈が寝かされており、血管を通じて細い針先から繋がる管が二人を文字通り繋いでいた。
華佗老師の執刀は鮮やかに皮膚を切り割き、神経や血管を傷つけない様に悪腫の出来物を切り取って行く。見ていて正に神の指先と言ったところであろう。
弎坐は常に病人の様子を眺めていて、容態の変化を逐一知らせる。北斗ちゃんは執刀の様子に合わせて、道具を渡したり、身体を押さえたりと、迅速な動きで先生を助けていた。
『(๐•̆ ᗜ •̆๐)やっぱり先生は凄い♪無数に広がる血管をよく切らないものだ…神経組織もほとんど完璧に、紙一重で避けている。これぞ神の業というべきだな!』
その時、先生が声を上げた。
「おい!✧(ㆁω ㆁ ٥)弎坐どうじゃ?管邈の様子は?」
「ꉂꉂ(-ω-٥)先生、そろそろです!口唇の色や顔色が変わって来ました…」
弎坐もすぐにそれに応える。
「秦縁!(* ㆁ ωㆁ)੭ ੈ居るか?」
「えぇ…(❛ ᗜ ❛´๑)老師、ここに♪」
「では交代じゃ!ꉂꉂ(ㆁω ㆁ ٥)費禕♪」
「(⊹^◡^*)੭⁾⁾はい!すぐに♪」
秦縁は慣れているのか、すぐに腕を差し出し、費禕に委ねる。費禕も慣れた手つきで管の針を新たに秦縁の腕の血管に刺す。そして「外します!」というと、馬超の腕から針を外す。そして「刺します!」というと秦縁の管とを繋いだ。
今度は秦縁の血液が馬超の血管に流れ込んで行く。管邈は針を外されるとおもむろに起き上がろうとしたが、秦縁の逆手に抑え込まれた。
「ꉂꉂ(❛ ᗜ ❛´๑)管邈、お前は寝ていろ!俺は平気だからな♪」
秦縁は腰掛けにドカッと座り込むと、もたれ掛かる。腕を平行に保つためである。
「老師!✧(❛ ᗜ ❛´๑)後どれくらいかね?」
「うむ…✧(ㆁω ㆁ ٥)もうひと息だのう、少し辛抱しててくれ!」
「✧(❛ ᗜ ❛´๑)あぁ…気にせんでくれ!時間を掛けて慎重にな♪」
秦縁はそう言うとのんびりと寝転んで眼を瞑る。
暫くして順調に切除の進んでいた華佗の手が止まる。華佗は想わず溜め息混じりに呟く。
『✧(ㆁω ㆁ ٥)こ…これは!』
『✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)先生…』
北斗ちゃんにもその意味が判った。出来物は取り除けたものの、その一部が神経部位に沿っており上手く取り除けそうに無かったのである。
『✧(ㆁω ㆁ ٥)どうするかのぅ…こりゃあ厄介じゃな!』
『✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)…』
「✧(ㆁω ㆁ ٥)斗星…お前ならどうする?一か八かで神経ごと取り除くか?諦めるか?」
「✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)先生…切るのは難しいかと!神経についてはまだその中身が詳しく判っていません。下手に傷つけるとどんな後遺症が出るか判らないのでしょう?」
「✧(ㆁω ㆁ ٥)そうだ!だが命には代えられないだろう?何か他に手は無いかのぅ…」
「✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)先生…彼は生粋の武将です。背筋が壊れると彼のこれからに障ります。如何でしょう?小刀の先を火で炙り、神経を傷着けない様に焼くのです?」
「✧(ㆁω ㆁ ٥)それだ!斗星良いぞ♪それなら儂の繊細な手先が役に立つ!弎坐、すぐに小刀を火で炙り持って来い!」
「(。•ω<。)はぃ!先生♪」
弎坐はすぐに小刀を火にかけて炙る。そして慎重にそれを華佗に渡す。
「✧(ㆁω ㆁ ٥)斗星よ!そちらからしか見えない部位はお前がやるのだ!良いな?」
「✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)はい!先生♪」
北斗ちゃんも弎坐から炙った小刀を受け取り、二人の繊細な作業はしばらく続いた。
「✧(ㆁω ㆁ ٥)やった!終わった♪」
「✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)先生!僕も終わりました♪」
「✧(ㆁω ㆁ ٥)良くやった!斗星よ♪ではこれで部位を閉じ、縫合に入る!」
「✧(๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)はい!先生♪」
華佗は針と糸を丁寧に通して縫合を完了させる。二人は大施術に疲労の色が見えた。
しかしながら、やりきった事、ひとつの命が救われるで在ろう事から、二人の表情には満足そうな笑みが浮かんでいた。
「✧(❛ ᗜ ❛´๑)終わった様だな♪どうだい?助かりそうかい?」
秦縁はいつの間にか、起き上がり、こちらを窺っている。
「|ू•ω•)"⊹^◡^٥)"…」
弎坐も費禕も固唾を飲んで見守っていた。
「✧(ㆁω ㆁ ٥)あぁ…心配無い!後は経過観察が必要じゃが、十中八九助かるじゃろう♡」
「ε- (๐•̆ࡇ •̆ ٥๐)ですね…これも先生のお陰です♪そして皆の協力が在ったればこそです!しばらく絶対安静ですが、ひとつの命が助かったのです…秦縁殿も来て下さり感謝します!有り難う♪」
「✧(ღ❛ ᗜ ❛´๑)なぁに、お安い御用さ!来た甲斐が在ったというものだ。良かったな♪俺もその一助に為ったのならば気分が良いというものだ!」
秦縁はにこやかに微笑む。
「(ღ❛ ᗜ ❛´๑)それはそうと、輸血はもう良いのかな?俺はまだまだ大丈夫なんだが、自由が利かないのはちとな♪」
「ꉂꉂ(ㆁω ㆁ *)ホッホッホ♪もう良いぞ!費禕、外してやりなさい♡」
「(⊹^◡^*)はい!先生♪すぐに!」
こうして馬超の命は助かったのであった。永らく患っていた出来物が完全に取れて、彼はこの先、日に日に回復して行く事に為るのである。
これも荊州行きを決断した本人の強い意志は勿論の事、華佗老師の神の如き業とその弟子のひた向きな尽力のお陰であった。その中に秦縁という大商団の采配の助力が在った事は言うまでも無い。