関羽の野望
趙雲と別れた北斗ちゃん御一行様は、9千程の兵を伴い、江陵に接近する。
北斗ちゃんはまだ膨よか体型 迄は到達していないものの、趙雲の指導が行き届いているせいか、身体の要所には筋肉も付いてきていたので、身体の切れは見違える程良かった。
「(-ω-;)それにしても北斗ちゃんが馬に騎乗してる何て…びっくりしましたよ♪」
「( -_・)ああ…あの赤っ恥のとこ見られたもんね♪お前、生かしておけんな(笑)」
「Σ(-ω-;)にゃ!にゃんですとぅ!!」
「(((*≧艸≦)ププッ♪お前、本当に分かり易いのな!弎坐、心配するな!そんな事しやしないよ♪」
「ε-(-ω-*)ホッ♪全く!やめて下さいよ、あちき心臓強くね~んですから!」
「( -_・)悪い悪い!まぁ、お前さんは仲間だから安心おし♪僕、悪さしなきゃ基本、友好的だからね!」
「(-ω-;)しませんよ!面倒は御免です…」
弎坐は、なるべく軽口を叩かないように気をつけようと、心に誓った。北斗ちゃんはそんな彼を見ていて、少し安心する。
何を言っても彼は宦官なので、癇に触ると不味い…関羽将軍は宦官嫌いで有名だから粗相はさせたくなかった。さすがに太子付きの宦官を容赦無く斬る事は無いだろうが、その場の勢いってもんも有り得る。
これは彼に対する北斗ちゃんなりの優しさなのである。勿論、後でよく言い聞かせるが、反射的な言動は慎ませなければ、ヤバい!特に関羽将軍は抜きの一刀両断が早いので、その瞬間が命取りである。
『Σ(´□`ノ)ノあっ!』と言った瞬間には最早、間に合わない。絶命必死である。
費観は馬を太子様に並び立てて、声を掛ける。
「若君、そろそろ使者を出しませんと、不味いかと!無論、旗は立てましたが、通常手続きを踏みませんと、擬態と勘繰られる可能性が在ります…」
「( -_・)?ああ…そうだったな!頼む!」
「(_ _)ハッ!承知しました!おい♪」
費観の合図で一騎が先行して江陵城に向かった。表向きは兵の引き渡しだから、まだ太子様の存在は知らされる事は無い。それに体型が緩和された北斗ちゃんに関羽将軍が気づくかも、見所のひとつである。
「(;゜0゜)種明かしをしなくて宜しいのですか?」
「( -_・)ん?ああ、構わんよ♪関羽将軍が僕を認識する合言葉があるのだ♪いざとなったらそれ使うから、心配要らん!」
「(;゜0゜)はぁ…それならいいのですが!」
「( -_・)費禕せんせ!慎重と臆病は違うのでしょう?せんせは少しばかり心配症なのでは?まぁ、僕の身を想う余りだとは判ってますけどね!ちぃとばかり理由があるのですよ♪」
「(;゜0゜)それってもしかして、趙将軍の懸念の事ですか?」
「( -_・)ああ…そうだけど、さすがはせんせ!よく憶えておいででしたね!やっぱ気になるからね…諸葛丞相も心配されているので、僕は様子を見たいんですよねぇ~?」
「(;゜0゜)そういう事でしたら…御協力致します!」
「( -_・)ああ…頼む!費観、お前もそのつもりで!」
「ハハッ!」
前年の事、魏領・荊州南陽郡の宛城で反乱が起こった。これはその事実では南陽太守の軍役の重さに反乱した物であったから、首謀者である侯音や衛開は、民のためを想っての事であった。
しかしながら、ここにつけ込む様に、関羽将軍が彼らを誘引して印綬まで与えたから問題は大きくなった。普通に考えれば、策としては悪くないが、この頃、漢中を狙って動いていた本国・蜀の劉備や諸葛亮にとっては面倒事であった。
事が拡大した場合、荊州で再び戦が起きる。もしそうなれば、大軍勢を投入しなくては成らず、予定が大幅に狂う。それに絶対兵力の少ない蜀にとっては、みすみす予定外の兵力を失う事は避けねば成らない。
さらに言えば、蜀からの援軍は山や谷を越え、河を下らねば成らないため、タイミングを間違えば、間に合わず荊州失陥という憂き目に合う可能性もある。また関羽が敗北して逃げ道を絶たれれば、大事だ!最悪、戦死も覚悟せねば成らない。
関羽将軍のこの仕掛けは、彼の独断で在ったから、あわや大惨事になる可能性すらあったのだ。只、幸いな事には、この時の対応に当たった魏の動きが恐ろしく早かったため、樊城から出撃した曹仁と龐徳によって、侯音と衛開は討伐され斬られた。
結果、関羽が彼らに援軍を出す暇も無く、表面上は彼の策の失敗だけで済んだ。但し、元々荊州制覇を狙っている魏に無用の敵愾心を与えた事には成ったのである。
諸葛亮は、結果としては表面上、何も起きなかったのであるから、関羽の民を想う気持ちに免じて不問とした。劉備も義弟の独断専行を義侠心として称えて、漢中王に成った折に、彼を正式に荊州総督、襄陽太守に任じたのであった。
趙雲は語る。彼もまたその際に漢中への出撃に備えていたから、事の重要性は理解していた。そして、陛下や丞相の懸念も彼の心の奥底に深く刺さったのである。
「義兄は懲りていない!あれからも反乱を誘引させる様な策を、度々為されておられるらしい。深遠の策などとほくそ笑んでおられるとか?…心配な事だ( ̄^ ̄;)!」
「( -_・)もしかして趙雲!貴方が着いて来たのはその事が原因なのでは?関羽将軍をお止めに成りたいのでしょう?」
「( ̄^ ̄)…確かにそんな気持ちが少しでも無かったか?と問われれば、在ったかも知れないと答えねば嘘に成ります!けれども私の本来の想いは貴方様を守る事です!」
「( -_・)本当に?」
「( ̄^ ̄*)若君!私をお疑いになるか?貴方を戦場からお救いし、さらには呉に帰る孫婦人からお救いしたのも、この私ですぞ!将に二言は御座らぬ!」
「(; -_・)そうだったな…悪かった!だが疑ってる訳じゃない。関羽将軍を救う気持ちがあるのは大いに結構だ!僕たちにも出来る事があるのならば、協力すると言いたかっただけさ!他意は無いんだ♪」
「( ̄^ ̄)判っております…この話はこれ迄に!」
『( -_・)…あの時の趙将軍は頑なだった!だからこそ何か在るに違いない。せっかくだから内緒で協力しちゃうもんね♪』
そうなのだ♪北斗ちゃんはこの機会を利用して、この荊州で起きている問題を解決しちゃおうと目論んでいたのでした。そのためにはまず現地の状況を把握しておかねば成りません。
当然の事ながら、費観と費禕は協力する気満々です。弎坐は心配しています。
『(-ω-;)止めなくて良いのかなぁ…』
趙将軍には南郡の内定を頼みましたが、事の真相は明かしていません。でも勘の良い彼の事ですから、いずれ気がつくのは時間の問題でしょう。
『(* -_・)…趙将軍は話を切ってしまわれたが、その是非は問われなかった!つまりは無言の承諾と取れなくも無い♪ここは気を利かして独断専行あるのみさ♪』
彼は関羽将軍の独断専行を憂いている立場だろうに、自分の独断専行が火種と成る事にはお構い無しの様である。やはり自我が目覚めてからというもの、父親譲りの利己的な精神が徐々に垣間見える様に為ってきたのかも知れなかった。
『( -_・)ん?何を仰有るウサギさん♪僕は主人公だから良いのだよ♪ワハハハ!』
とか想っているかは本人にしか判らない。けれども、結果的に彼は関羽将軍や魏・呉を相手に回して、『やっちゃろう♪』と燃えていた。それだけは確かな様で在った。
「(* -_・)じゃあ、お二方…あ!御免!お三方!そろそろ、ゆるゆると参りましょうか?」
彼は、格好つけ様として弎坐の存在を危うく漏らす…。
『(-ω-;)まぁいっけどね…』
そこに先行させていた伝令の使者が慌てる様に戻って来る。
「( ;`Д´)大変だぁ~!!」
伝令はかなり泡を食っている。
「( -_・)ん?何だ何だ!どうした慌てて?」
「( ;`Д´)それが大変なんですぅ~!」
「( -_・)馬鹿者!大変じゃ判らん、落ち着け!何が在ったのだ?」
「( ;`Д´)それが!」
「( -_・)どれが?」
「( ;`Д´)ですから!」
「( -_・)何が?」
「( ;`Д´)……」
「( -_・)……?(引っ張るね)」
「( -_・)あれ?お前ひょっとして出番少ないから、ここぞとばかりに目立とうとしてんだろ?いい加減に答えないともう出番やらんぞ♪」
「( ;`Д´)バレましたか?」
「( -_・)当たり気よ♪目立つ事が好きな僕が判らないと想ったのかい?」
「( ;`Д´)スミマセン…」
「( -_・)まぁ、いいや!言ってミソ?」
「( ;`Д´)ハハァ!ちと小競り合いが在ったらしく、関羽将軍が毒矢を受けて、治療中との事です!」
「(; -_・)何ぃ~!!それを早く言え!」
「( ;`Д´)失礼致しました!また懲りずに宜しくでっす♪」
「( -_・)費観ぁん…!教育し直しとけ!!」
「(;><)スイマセ~ン!」
とか何とかという会話が在ったのかは判りませんが、ここ江陵城では今まさに大変な出来事が持ち上がっていたのでした。
「(; -_・)これは急がねば成らんぞ!者ども!この僕に続け~い!!」
「(;><)出発~っ♪」
劉禅こと北斗ちゃんの号令に応え、費観が軍勢を発進させる。北斗ちゃんは風を切って馬を操る。それはもう馴れたもんだ。鐙にもちゃんと足が着いているのだ…当たり前だが(笑)
ドドドドド…軍勢の一気呵成の移動は地響きを立てて、巨大な轟音となる。江陵城では、魏の偵察部隊との小競り合いも既に終わって静けさに支配されていた。
そこに泡を食った様に纏まった軍勢が押し寄せて来たのだから、城壁の上から眺める兵達もぶったまげる。いったい何事かと目を見張った。
すると何の事は無い。味方の蜀の軍旗がたなびいていた。にも拘わらず、それにしては大袈裟なくらいの速度で城に迫って来る。彼らは当然の事ながら、疑心暗鬼に囚われる。
中には念のため、矢をつがえて準備する者さえ出てきた。そんな不穏な空気を押し止めたのが関平である。彼は関羽の養子であり、常に傍に置く程信頼され、愛されている後継者と目されていた。
「辞めよ!あれは先程、伝令の在った援軍だろう!長旅で疲れておろう♪入場の準備をするのだ!」
彼はそう言うと、開門の指示を出した。
『(^。^;)しかし…あの活きの良さは何だ?そんなに父上にアピールしたいのかしら…』
関羽は兵の士気の高さを尊んでいる。だから、士気の有り様には常に注文をつけた。勿論、彼の咆哮で兵はよりいきり立ち、士気を頂点に達する。
しかしながら、元の士気が低い程にその高まりも当然低く止まるので、訓練を重ねる事にもこだわりが在ったのだ。だからこのパフォーマンスが只の阿りで無い事を関平は期待していたのである。
北斗ちゃん指揮下の軍勢は、江陵城の門の前まで猛然と突っ込んで来る!パフォーマーならやがて速度を落とすだろうと観ていた関平は度肝を抜かれた。これでは停まれずに突っ込んでしまう。
『(゜Д゜;)何だ何だ!大丈夫か、あれ?』
関平は目をひん剥いて眺めるほか無かった。
「ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿若君~!速度落として、ヤバいっす!ぶつかります…」と費観。
「(-∀-`; )ギャ~まじ辞めてまじ辞めて!」と費禕。
「(-ω-;)だ・か・ら!誰よ!若に指揮を任せたのは?死んじゃうよ死んじゃうよ!」と弎坐。
「( ̄▽ ̄;)マッジ、ヤッベエ~!どうする?どうする?」と劉禅。
「(;><)若!もう曲がるしか在りません!曲がって!曲がって!」
「( ̄▽ ̄;)ようし!皆、曲がるぞ♪我に続け~い!」
北斗軍はこの掛け声に合わせる様に、城門の直前で辛うじてバナナシュ~トの様にグワンと、それは見事に回ると、そのままの勢いで素通りし、見えなくなってしまった。余りの速度に停まる事が出来ずに、その姿形は完全に視界から消えていた。
「(^∀^;)何だ!ありゃあ…」
関平が絶句したのは言うまでも無い。彼は何も出来ずに、只、唖然としてそれを見送る他無かった。