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6.彼女の腕を掴んで

ミィルフィーヌの自室に戻ると、マリアが迎えてくれたが、ぼさぼさの髪を見て少しお叱りを受けた。

「お嬢様、貴族の令嬢たるものどんな時でも美しく優雅である必要がございます。風が強い日であれば、すぐ私たちを呼んでお申し付けください。」

「ごめんなさい…」

もう外も日が落ち、部屋の中はろうそくの炎の明かりが揺らめき始めていた。


記憶の中のマリアもミィルフィーヌを敬いながらもちゃんと指導してくれるメイドさんで、なんでもミィルフィーヌの言う事を聞いてくれて甘やかすだけの人じゃなかった。それもあってミィルフィーヌは彼女の事が好きだったのかもしれない。

この人が側にいてくれたのに、なんでゲームのミィルフィーヌあんなに嫌な子になってしまったんだろう。


またミィルフィーヌの記憶の中には、ミッドライトがいない。

彼女の覚えている範囲では、屋敷の中で彼と会った事がないのだ。


「ねぇ、マリア。ミッドライトお兄様はどうしてあの塔の中にいらっしゃるの?」

優しく私の髪をとかしてくれていたマリアの手が止まる。

「…どうしてミィルフィーヌ様がミッドライト様をご存知なのですか?」


彼女の声色の中に含まれた感情は読み取れない。

でもマリアは優しい人だ、彼の境遇に対して思うところがあってもおかしくはないと思う。


「今日、塔の近くを散歩したの。それで…」

ミィルフィーヌの記憶の中にいないミッドライトの話をしたのだから、マリアは誰かから話を聞いたのかと考えたんだと思う。私は知識と知っているので、ミッドライトのことを誰かに聞いたわけじゃないけど。

でもその「誰か」が罰を受けたりしても困るので、私は秘儀「語尾伸ばし」でぼかして話した。

続きをあえて言わないことでマリアの想像力に任せる。

そうして、私は彼女の方を向き、話を続けた。

「あそこの鍵は誰が管理をしているの?またお兄様はあの中でどう過ごされているの?ちゃんとご飯は食べれている?…あそこから出て暮らすことはできないの?」


マリアの両腕をそっとつかんで彼女の目を見つめた。

しかし、炎を映し輝く彼女の目は横にそらされて翳った。


「申し訳ございません、お嬢様。」

答えてくれないマリアの腕を少しだけ強く掴む。

彼女だって雇われている人だ。雇用主の望まぬことは何も言えない、わかっている。だけど。

「じゃあ、マリア、お願い。あの塔を、お兄様の世話をしている人を教えて。その人に明日会うわ。」

マリアは少し目を伏せて、何かを悩んだように目を瞑った後、こちらを見てくれた。


「屋敷の家令のルドルフ様でございます。」

「わかったわ、ありがとうマリア。」

掴んだままマリアの腕に額をのせて、彼女に感謝を告げた。




誰もいなくなった部屋の暖かく整えられたベッドで、私は天井に手を伸ばした。

「明日、ルドルフさんに話を聞きに行って。ミィルフィーヌのお母さんやお父さんにも話さなきゃいけないかもしれない。」

昼間に聞いた少年の声を思い出しながら、伸ばした手を胸元に寄せる。

「また明日も会いに行くよ。」

まだ見ぬ新しい私のお兄さんに対して話しかける。

あの少年の未来が美しいものであるように。


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