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17.風の魔法を使います

朝起きて身支度を終えた私は、昨日植えた花の花壇を目指して歩いていた。

作戦を成功させて、ミッドライト、ミィルフィーヌの兄妹が仲良く

暮らせるようになってほしいと思う。

今朝方の夢がよりその思いを強くさせた。


今はミィルフィーヌの中に私が入ってしまったけれど、彼女と一緒に生きていこうと思うから。

とりあえず、私とも仲の良い兄妹になってもらうんだ。

そして最終的には兄妹そろってアカリちゃんのファンクラブ(アカリちゃんを崇め奉る会)に入会するのを目的としたいところである。


花壇の前に着いた私は、スカートを膝の下に入れてしゃがんだ。

昨日魔法で咲かせた花々は、朝露を含み濡れていた。

「うん、きれい…」

私は少しだけ時間を忘れてうっとりしてしまった。

色んな花を見ることも、前世で好きだったことのひとつだったので、こうやって魔法で花を咲かせることが出来ることは、嬉しいことだなと、しみじみ思う。


昨日もらった種は「真珠草」の種とアルベルトさんが言っていた。

『綺麗な花ですよ』と教えてもらった通り、すごく素敵で、サイズは薔薇くらいあり、薄い透き通るような花弁は少し艶を帯びた白色で、八重状に丸く花芯を囲っていて、本当に真珠を花にしたような見た目をしていた。

前世では見たことのない花!異世界不思議発見!かわいい!


一本ずつ花を摘み取り、籠に入れていく。

花を摘むたび、濃い草花の香りがして、私は深く息を吸った。



必要な分の花を摘み取ったので、立ち上がり、いつものように尖塔に向かった。

ミッドライトのいる塔の上の方に、角度的には見えずらいが、窓があるのを確認しているので、そこからお花をばら撒く予定だ。

(そう!フラワーシャワー大作戦!!)

後片付けとか、考えたらちょっと申し訳ないのだけど、なんとかしてもらう事にしよう。ルドルフさんと、ミッドライトのメイドさんすみません!!

でもこれで彼が、塔を出てもいいと思ったら、片付けを手伝いますからね!!

…前に親戚のお姉さんの結婚式に出たことがあるが、その時のフラワーシャワーがとてもきれいで幸せに満ちていた。

(これからの人生への祝福だもんね。)

あの幸せを届けられたらいいなと思う。


いつものようにミッドライトの魔法に頼るわけにいかないので、いい方法がないか昨日先生に聞いておいた。

『こんなのはどうでしょう』と魔法アイテムを貸してくださったのでちゃんと持ってきている。

カゴの中に入ったアイテムを見ながら、私は前世で見たことがあるものを思い出す。

(ドローンのコントローラーにしか見えない…)



『こちらですよ』と昨日先生が見せてくれたのは、どう見てもコントローラーだった。


『こちらの魔法石は風の魔法が込めてあります。風を操るために、こちらのステッキを使っていただければと思います。』

大きめのエメラルドの原石みたいな石と、同じ素材のコントローラーを先生は机に置いた。

ステッキというか、スティックである。

持ち上げてみると、間違いなくコントローラーである。

いや…オーブンがオーパーツの世界で気にしちゃだめだ

私は先生に使い方を教えてもらった。


貴族しか魔法が使えないので、こういった便利グッズは貴族ではない層に販売されて流通しているらしい。

魔法という便利なものを独占してないのはいいことだよね。


とにかく、プランはばっちりなので、後は実行あるのみ!

私は尖塔に向かってズンズン進んだ。


いつもの扉の前まで辿り着き、私は籠を足元に置いた。

朝の気持ち良い風が私の頬を撫でて、つられるように私は上を向いて、今日も変わらない、灰色の塔の窓を見つめる。


あそこに!あそこに目掛けて、風の魔法を!


詰んだ花は、何本かはそのままにして、何本かは花弁を額から取り、花びらにした。

勝負は一回である。

失敗したらサプライズも台無しだし、ただ掃除が増えるだけの、ほんとうに申し訳ない状態になる。

(わたし、頑張って!マリカー、マリカーを思い出して!)

マリカーが役に立つかは疑問だが、コントローラーを握りしめた。こんなことなら、ドローンも操縦出来るようになっておけば良かった…!!

多すぎる、前世でやっておけば良かったことが…。


魔法石も祈りを込めると発動すると、昨日先生が教えてくれた。

(お願いします…!!)

両手に魔法石を挟むと、石が光を帯びた。

光は金の粉のような状態になり、宙に舞った。

(発動できたんだよね?)

石を置いて、それから発せられる金の粉のようなきらきらしたものに花をそっと乗せると、ふわりと花々が浮いた。

なんという不思議状態なのか…!

花々はある一定の範囲に留まって浮いている。

試しにコントローラーのスティックを倒してみたところ、花々が集団で移動した。

(これはやはりドローンなのでは…!?)

スティックを反対に倒すと花の集団も反対方向に移動する。


よし。

私は改めてコントローラーを握りしめて、上を見上げた。

きっとミッドライトは今日も起きている。

切り花もきれいだけど、咲いたばっかりの花もすごく綺麗だったよ。

私はスティックを上に効かせて、花を上昇させた。





(難しい…!!)

そりゃ、そうだ。初めてのドローン(仮)だもん!

コントローラーを握る手に必然と力が入るが、そうすると窓の下辺りで花がホバリングしてしまう。

どうして!?

そうして、今度はもっと上昇してしまって、慌てて高度を下げるの繰り返しである。

(集中、集中、)

頭の中で集中をずっと呟き、私は窓一点を見つめる。

魔法が祈りと想いというなら、是非私に力を貸してください。

コントローラーに話しかけたりもした。


そうしてようやく、窓の外でホバリングすることに成功したのだった!!

ありがとう、ありがとう!!!

全人類に感謝をしたいような気持ちになったが、ゆっくりもしてられない。

コントローラーを握りしめて、彼を呼んだ。


「ミッドライト様!!!」

魔法が祈りと想いなら、どうか届けてほしい。

届いて、ほしい。


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