13.閉じ込められていないなら、どうして
クッキーが空を飛んだ後(ファンタジー感がすごい)、ミッドライトは小さくお礼を言ってくれた。
「ありがとう、チヨ。おいしくいただくよ。」
「マリアと一緒に使ったので安心してくださいね!」
私1人だと不安だと思うが、マリアと一緒なら安心して食べれるよね!!
「…マリアとも交流があるの?」
おっと、これは、グレーのやつですかね!?
マリアはミィルフィーヌ付きのメイドさんだから、アルベルトさんの孫のチヨと交流があるのは変だよね!!
私はまた冷や汗をかきながら何とかそれっぽい回答を捻り出した。
「あの…マリア…さんが!優しい人だったので、迷ってる時に助けてくれてそれで…!」
「そうか、彼女は確かに優しい。」
ミッドライトの納得したような声が聞こえて、私は胸を撫で下ろした。身バレセーフ!!
「…何度も言ったけれど、チヨ。もうここには近付いてはいけないよ。」
しばらくだけ黙った後に、彼はそう言った。
私はいつもと同じように答えた。
「イヤです!また次も来ますし、私はあなたに会いたいです!こうやって話すのもいいですが、会って一緒にクッキーを食べたいんです!」
「…僕は望んでここにいる。誰かに閉じ込められている訳ではないよ。」
静かに聞こえた声は、何かをあきらめたような響きがある気がした。
本心から言っているのかどうかわからないけど…閉じ込められているわけじゃないの?
「…それならなおさら、会いたいです。」
本人が望んでいるのなら、こんなことを言っていいか分からない、でも。
「閉じ込められていないなら、なおさら会いたいです!今日もお天気がすごくいいです!庭はアルベルトさんが整えてくれているからお散歩にぴったりです!」
私は叫びながらハッとした。
「アルベルトお祖父さんがやっている庭です!」
孫設定、忘れてしまいがち!!
「マリア…さんが、煎れてくれる紅茶はとってもおいしいので、一緒に飲みたいです。ヨウギョク国の話ももっといっぱい聞いてほしいです。だから、会いたいし、その塔を出て欲しいです!」
私の声に返事はなかった。
「庭に花が咲いてました…。だから、一緒に見たいです…。」
だんだんと声が小さくなってしまう。
これはお節介なのかな…。
ミィルフィーヌの両親に閉じ込められているわけじゃないなら、どうして塔にいることを望んでいるのか分からない。
ゲームの青年になったミッドライトは、特にそういった描写はなかったはずなのに。
私は胸元で祈るように手を組み、うつむいて彼からの返事を待ったが、やはり返ってくることはなかった。
「…また来ますね。またお話してください。」
今日は昨日よりたくさん話せて嬉しかったし、クッキーも貰ってくれた。
本当はもっと、もっと何かしてあげたいが、話してもらえないなら、一旦帰ろうと思う。
私が塔に背を向けて進みだすと、小さく声が聞こえた気がした。
「僕をここから出すことを望まないで。誰にも言ってはいけないよ。」
「嫌ですからね!!!」
私は振り返り上に向かって叫んだ後、会釈をしてその場を後にした。