第十界—2 『理想ノ糧』
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——
「んー……んんんん!」
「何踏ん張ってんだ」
「言い方汚ったないね……そしてバレてるよ」
「……汚いのは言い方だけじゃなく——いやなんでもない」
「そごで言ったなら言い切りなよ」
街全体を見下ろせる展望台。そのベンチにて、白波は自身のノートと睨めっこをしながら唸り声を上げる。
俺は……かつての朝日はさり気なく、隙を見計らいながらノートの中を覗こうとする……が、その中身を確認する前に白波の肘に隠されてしまった。
「で……その唸り声出してるって事はまた詰まったんだよな?」
「まぁそうだね……今回はストーリーの方」
「システムならいいけどストーリーはなーんにも情報知らないから助言も何も出来ないな」
白波はゲーム作りのアドバイスを俺と啓示に求めるくせに一切の詳しい情報を教えてこない。システムとかは教えてくれるのだがお話だとか能力だとかは全て秘密にしている。
「いやなんか……主人公ピンチにし過ぎてこっからどうすればいいか分からなくてさ」
「なんかこう……能力を応用したり要素拾ったりしてやるしかないんじゃないか?」
「そういうの含めて思い付けないから困ってるんだよ……」
そう言ってわざとらしく困った様な顔を向けてくれる……けど、そんな顔を見せられた所で俺は何も知らない、だから何も答えられない。
「……けどまぁ、そうなったら悪足掻きしかないだろうな」
「悪足掻き……?」
「そう、何も出来なくても足掻いてりゃ何か起こるだろ」
悪足掻き。
何が出来る訳でなくとも、何かし続ければその何かにより新たな道筋が現れるかもしれない——だから。
「だからッ……悪足掻きを……!」
「あー……懐かしいね」
アーマードナイトは……その中の朝日 昇流走馬灯の中の自分自身を信じ、そして残された僅かな力を振り絞り、周囲のチェーンを両手で掴み取る。
「けど悪足掻きをし続けるとはいってもそれ以上何を出来るの? 確かに何かをし続けさえすれば道は切り開けるかもしれない——けど何かを続ける事も出来ないのなら道筋なんて現れないよ」
抗い続ければ何かが起こる。
それはつまり続ける事が出来なければ何も起こらないという事になる——
「ぜ……ぁぁあ……! ナイト……この拳から残りの全部をぶっぱなッ——」
チェーンを握る手に力を掛ける……その力、というのは筋肉を強ばらせるだとかそういったモノではなく、アーマードナイトとしてのエネルギー……電子機器にとっての電気、車にとってのガソリンの事であった。
そして、チェーンを掴んだままそのエネルギーを放出するという事はつまり——
「せ!!!」
「耐えろよ朝日!!!」
「ッ……!?」
両手は赤い閃光を放ち、そしてその光は電線を走る電気の如くチェーンを通り……その道筋を赤く染め上げながらアーマードハデスに迫り、その全身を赤い光が覆う。
「づぁぁぁあ!? ぎっ……!」
「ぜァァァァァ……!」
アーマードハデスの鎧は灼熱に包まれたかの様に溶解し、どんどんと形を歪ませ地面の方へ落ちていく。
それに対し、アーマードナイトのバイザーは黄色の輝きを少しづつ失い、白く染まっていった。
「しるぁっ……」
「ぜァァァ……」
やがてメイルサイクラーも無数のチェーンも赤い閃光も消え去り……墓場には膝から崩れ落ち、倒れる2人の鎧の姿があった。
「相打ち……かなぁ?」
「いやッ……まだ終わらせない……俺が死ぬのはもっと……最後の最後のッ——最期まで抗わなければならない!」
「まぁ私もそのつもりだけどさァ……!」
その2人は言い合いながら、ゆっくりと……互いに壊れかけの鎧を纏ったまま立ち上がる。
「ははッ……朝日、意外と生きようとするね?」
アーマードハデスはすぐに戦闘を再開しようとはせず、世間話の様なモノをする。その声は問いかけの様であり、朝日の行動に疑問を抱いている様であった。
「なんだそれ……生きようとするのは普通だろ」
「だったら私の朝日への殺意は消えるはずなのになぁ」
と、そうアーマードハデスは呆れた様に、少し苛立った様に言う。
自分の殺意を人のせいに……しかもその殺意の対象に責任を押し付けようとしているのだろうか。そう思うとなんだか……こっちも腹立ってくる。
「ッ……人のせいにするなよ」
「朝日のせい。それは事実だよ? 私がやりたくて朝日を殺そうとしていると思う……?」
アーマードハデスはそう問いかけてる——が、正直そうとしか思えない。なぜなら……
「いや……思う」
「……」
「だってお前……戦う時異様に楽しそうじゃないか? 戦いというか……殺す事に快楽を覚えてそうなテンションだからさ」
「……シーワールデスから何を学んだのかな」
「ッ?」
俺が彼女の戦闘の際の陽気な様を指摘した途端、いきなりアーマードハデスの声のトーンは下げられた。
「本当は一緒にッ……普通に仲良くしてたいよ……!? でも無理だから……だから自分を騙さなきゃ心壊れちゃうでしょ!?」
「なっ……いや……今のは悪かったから少し落ち着け……というか事情を話しッ——」
「話しても意味なんて無い!」
アーマードハデスは情緒を乱し、狂乱し始める。
とりあえず宥めようとする……が、言い切る前に拒絶された。
「私は朝日の理想を叶えなきゃいけない! だって朝日の理想の為の生贄だからッ……理想の糧だから!」
「理想——まさかッ……」
理想。
アーマードハデスの言葉には……言い方には聞き覚えがあった。
心の世界……あの本来の世界の様で有り得ない物語を描こうとしていた世界。その中で模造品の白波が叫んでいた事と同じモノである。
「そうだよあの時の私は私だよ……! はは……あの時の朝日は気持ち悪るかったかなァ!」
「ッ……」
おそらく告白するかどうかの選択を胸で決めた事だろう。あの時なんであんな事をしたかは今でも分からない。
「まぁあれも私と朝日が恋人になるっていう筋書きに行く為の強制力によるモノだから仕方ないけどさ……私の告白ムードへの持っていき方も奇妙だったしね……!」
「そうか……」
「あ……朝日は確かハートワールデスに言われたよね? 最期に忠告されたよね!?」
「忠告……?」
ハートワールデスが死ぬ直前、俺に殺される直前言っていた事と言うと——
「人の心を決めつけるな——か?」
「覚えてたんだ」
「まぁ……心当たりもあったしな」
「ッ……!」
「?」
その言葉を聞いた瞬間、アーマードハデスは絶句した様に息を呑み……そして膝から崩れ落ちる。
「ほんとにッ……さぁぁぁぁぁぁあ!」
地面を握り、抉り……絶望——失望した風に絶叫する。
その声はこれまでの楽しげなモノとは明らかに違う……異質のモノであった。
「もうやめてよ……ほんとに殺したくッ——」
「ッ……!」
アーマードハデスは突然、言葉の途中で姿を消す。
緑の煙となり前兆を見せる事無く——
「けど流石に分かるッ……!」
背後に物音が……何かが地面に落ちた、着地音の様なモノが聞こえた瞬間に振り返り、拳を放とうとした——だが、そこに存在していたのは——
「な!?」
アーマードハデスの下半身だけであり……そして、その欠けている部分——上半身が存在していたのは……
「こっちだよッ……!」
上……空中である。
アーマードハデスの上半身はハデスサイクラーを振り上げながらこちらに向かい降下しているのであった。
もう既にその刃はすんでのところまで迫っており……下半身という囮に反応してしまった事で上半身への対処なんてモノは出来なくなっていた——
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