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7.落下。

前回の出来事: 怪人と戦って村を守った。

 

「うっ……」

「動かないで。今《治癒魔法》かけているところだから」



 気がつくと、俺は地面に寝かされたまま聖女に治療されていた。

 あれ、怪人の俺は聖女の《聖魔法》を受けても平気なのか?


 慌てて飛び起きようとするが、聖女に押さえつけられる。


 ――なんという怪力だ。びくともしない。



 どうやらヒドい傷を負ったようだ。

 上半身右側の感覚がほとんど無い。

 血もだいぶ失っている。



(あのクソ豚人間(オーク男)め……)



「……村は、どうなった」

「安心して。あなたのおかげで村は守られたわ」

「死人は出たか?」

「命を落とした者は村人にも冒険者にもいない。負傷者もあなたを含めて数人だけ。奇跡だわ」

「それは良かった」

 


 ということは、ライザは無事なのか。

 ほとんど諦めかけたが、俺にも少しは運があったということか。



「あなた、冒険者? クラスは【A級】? それともまだ公表されていない【S級】だったりして」

「まあ元冒険者だがクラスはもっと低い」



 そういえば人間だった頃、冒険者を志したこともあったな。

 才能なしの【E級】だった。

 ――魔物(モンスター)で例えればスライム級、最弱だ。



「たった1人で怪人から村を守るなんてやるわね」

「いや、アンタ達の到着が少しでも遅れていたら全滅だった」



 それにしても聖女とこんなに話す時が来るとはな。

 もし俺が敵の【スライム男】だとバレたら……。


 ――その時はその時だな。

 今はやりきった満足感でいっぱいだ。


 もしかしたら、普通に死を受け入れてしまうくらいには。



「その怪しい仮面は外せないのかしら? 勝手に外すのは良くないと思ってそのままにしてあるけど」

「……この下は醜い傷があって、あまり見られたくない」



 チラ、と仮面を少しめくって見せると、息を飲む聖女。



「っ。――理解したわ。ごめんなさい。仮面はそのままで大丈夫よ」

「助かる」

「……ねえ、私たちの勇者パーティーに入らない?」



 気まずくなったのか、聖女が妙な勧誘をしてきた。

 おいおい、俺は怪人スライム男なんだが?



「いやいや。俺なんか見ての通り足手まといさ」

「そんなこと無い。でも無理強いはしないけど。一応、国からかなりのお給料貰えるわよ」

「すまん、国とか無理なんだ。ワケアリで」

「そう……ワケアリなら仕方ないわね。残念。……さっきは盾になってくれてありがとう」

「こっちこそ治癒魔法助かったよ。もう大丈夫だ」



 聖女は俺の傷がだいぶ塞がったのを確認して、他の怪我人の元へと去っていった。


 ふう、やばかった。

 危うく手を伸ばすところだったぜ。

 下から見上げると破壊力抜群の果実が2つ実っていて。

 さっきまでむしゃぶり犯り殺したい衝動を抑えるのに実は必死だったのだ。



 さてそろそろこの村を後にして仲間と合流しないと。



「【仮面男】、助かったよ!」

「おい、こっち交じって一緒に食おうぜ。今日の飲み食いは全部村長持ちらしい!」

「見事な受け流し技だったね! アンタ、もしかして【A級】かい?」



 冒険者と村人から声が掛かるが、全て手をヒラヒラと振ってみせてやり過ごす。

 周りと同化するスライムのスキルを発動させ、存在感を消していく――




「兄ちゃん? 兄ちゃんなんだろ? その服……」



 面倒くさいのに捕まってしまった。


 ムータ。

 さっき助けてしまった元弟。

 というか、逃げられないようにずっと見張られていたようだ。


 正体がバレない様に声を低くくする。



「俺は残念ながらお前の兄ちゃんではない。この服はサイズが合うからお前の家から勝手に借りただけだ。後で返そうと思っていたが、結構働いたつもりだ。お前のことも助けたよな。だから貰ってもいいか?」



 ヤマシイことがある俺は、早口で言い訳してしまった。

 これは余計に怪しさが増してしまったか……。



「……いいよ。でもお面を取って見せてよ」

「いいぜ」


(《超・特殊(スライム・)化粧(メイキャップ)》)



 こうなったら顔の造形もメチャクチャにしてやる!



「どうだ?」

「……違う、かも」

「だろ。……じゃあなクソガキ」

「うん……」



 


「行っちまうのかい?」



 おっと。

 かなり存在感を薄めたつもりだったが、支援魔法使いの老魔女に見つかってしまった。



「この村を助けてくれた礼をいうよ。本当にありがとう」

「礼は不要だ。たまたま通りがかっただけだ」



 たまたまこの村にライザがいただけだからな。

 そうでなければ、俺は何を思うことなくこの村の人間を皆殺しにしていたはずだ。

 なんなら、今からでもライザ以外を殺せるし。



「ワケアリなんだろう? ほら、行きな」

「ああ」



 こうして俺はアサナ村を後にした。



 ◇



「畜生、だめか」



 仲間との合流ポイントに向かう途中だが、どうにもたどり着けそうにない。


 右腕の具合が悪い。

 【オーク男】の《汚い爪(ダーティー・クロー)》は少しの傷でも、そこから腐っていくスキルだ。


 聖女に治癒魔法をかけてもらったが――ダメだったか。



 今にも右腕が根元から腐り落ちそうになっている。



 俺の目の前には、幅の無い谷があった。

 谷の下には川の流れる音がする。

 その音はかなり遠く、谷がかなり深いことを意味している。


 まあ、元・地元民の俺には分かりきったことだが。



(来るときには飛び越えれたが……これはムリか)



 谷の下の方をのぞき込んだ俺だったが、急激に目の前が暗くなるのを感じる。



(ここまで……か)



 俺は谷に落ちて行った。





新しい仕事の上司と合わないの!

黒猫虎のライフはもうゼロよっッ・゜・(つД`)・゜・

そして主人公のライフも……




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― 新着の感想 ―
[良い点] お仕事お疲れ様です((* ´ ` )* . .))” ライフゼロの時は無理せず、ごゆっくりお過ごしくださいね。
2022/07/24 01:19 退会済み
管理
[一言] きみはもう充分戦ったよ。ゆっくりお休み……。(ただし死なない)
[一言] 兄ちゃあああん!!!!
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