4.故郷。
前回の出来事: 自分の生まれ故郷を思い出した。
これから襲う村を仲間と見下ろす――――
「アサナ村……」
村の名前が俺の口から自然と零れる。
「えっ、何か言ったかスライム男?」
「いや、何でもない」
人間だった頃の事は全て完全に忘れていると思っていた。
しかし覚えていることも、どうやらあったようだ。
「今日も楽しくシゴトするぜぇ」
「腕が、いや足が鳴るっす」
「アタイの糸が誰一人として逃がさないよー」
「アタクシのー、スーパーハーピーアイっッ」
「……あっ、アイテテテ」
俺は腹が痛くなったフリをする。
「どうしたの大丈夫? アタイの膝を貸そうか?」
「あはっ蜘蛛女に膝なんかないでしょう、笑える」
「頭空っぽの鳥頭女~」
「失礼なっ。鳥なのは頭以外だしっ」
「スライム男、大丈夫~?」
「あー、アタクシもちょっと体調が」
「ウソつけハーピー女、さっきまで元気一杯飛んでいたじゃねーか」
「さすがスライム男、最弱っすねー」
「……スマン、ちょっと遅れていくわ」
「……行ったか」
仲間が先に行ったのを確認して、俺は地元民しか知らない獣道を怪人の力とスピードを活かして超速で先回りにかかる。
(俺は一体何をしようとしているのか?)
――自問する。
◇
超裏道を近道とショートカットを繰り返し、あっという間に村に先回りすることに成功した俺。
そこで俺は、ふと「顔を隠さなくては」と思い付く。
(昔住んでいた俺の家に、しまっていた【お面】があったな……)
記憶を頼りに、村の外れの自分の家に向かう。
家は――あった。
(そういえば、人間の俺には弟がいたな……)
弟と鉢合わせしたらどうする……殺すか?
そんなことを考えながら自分の家に着いた。
村なので戸締まりはされていないので簡単に侵入できる。
お面を見つけた。
子どもっぽい古い人間の英雄のお面。
しかし――
(なぜ俺は顔を隠そうとしている?)
お面を付けながら、顔を隠す理由がまだ良く分かっていない俺。
(やはり、仲間に俺だとバレたらマズいからな)
(それに、アサナ村の皆に久しぶりで合わせる顔がないしな)
理由はこんなところかもしれない。
考えるのがそれほど得意じゃない俺は、これ以上理由を考えるのが面倒になった。
ついでに、人間に化けようと思った。
怪人の姿は人間からしたらほとんど裸同然だからな。
なぜ顔を隠すより服のことを先に思い付かないのか。
やはり俺は考えるのが苦手ということか。
飛び出したばかりの自分の家に戻り服を物色する。
あった。
弟のやつ俺の服を処分してはいなかったようだ。
偉いぞ。
殺すのはやめてやるか。
服を着ただけだと肌の色が怪人のままだな……。
ちなみに、元・人間の怪人は全員が人間の姿に化ける変身能力が備わっている。
使うことなどないと思っていた能力だが、今この為に使わずとしてどうする。
俺は大嫌いな人間に一瞬で化けていく――。
化けたとしても、顔は俺のままだからな。
お面は外せない。
瞬時に準備を終え、再び家を飛び出す。
今度は村の中央に向かう。
俺はどこに向かおうというのか。
一体何のために先回りしているのか。
そうさ――――
(ライザ……)
俺は、幼なじみの人間の女を、ライザを逃がさなくてはいけない――――
やっとヒロインの影が……・゜・(つД`)・゜・