28.育成・強化(ビルド)プラン。
前回の出来事: スライム男とレアスライム達の相性パッチテストを行った。
「スライム男も【全部のせ】したいじゃろ?」
「全部のせ、というのは?」
「全種類制覇、ということさよ」
んん?
何を言ってるんだ魔女。
まさか、だよな?
もしかして、6匹全部を俺に合成するつもりなのか?
他人の体だからってムチャいいやがって。
「いや、さすがにそれはやり過ぎじゃよ」
だろ。
「しかし、あと4匹はイケるとワシはみた!」
「よ、4匹でもムリがあるだろ……」
「まあ聞け。これを見てくれ」
そういって見せられたのは、魔女が色々作成していた図やら表だ。
だから、俺は字が読めないんだって。
……絵だな。
これは俺とグリーンのヤツも含めた7匹のスライムが書かれている。
その7匹のスライムが俺の体の各部位に矢印で結ばれているのか。
火や水、毒の属性みたいな絵も書かれていて分かりやすい。
「前にお前さんとグリーンスライムに聞き取り協力してもらって、スライム全員の希望を聞いたヤツさよ」
なるほどな。
どれどれ……?
何を意味するのか分からない絵もあるな。
「イエロースライムの絵は『速さ』さね。速度を上げる補助魔法が得意なレア種じゃ。グリーンは1番ノーマル種で、特徴は『無し』さよ」
「金色と黒色はまだ種族名が判明してないから、この2匹は今回は保留がいいじゃろ。……希望部位も微妙じゃしの……(ボソッ)」
★スライムの希望部位ヒアリング by 魔女&グリーン
グリーン(特に無し) → 右腕(確定)
レッド(火)、ブルー(水、治癒) → 左腕
イエロー(速)、パープル(毒、解毒) → どこでもいい(左足か右足がいいのでは by 魔女)
金色(不明)(?) → 体、内蔵
黒色(不明)(?) → 頭、脳
なるほど。
明らかにオカシイところがあるな。
「とりあえず、金色と黒色は気にしなくていいんだよな?」
「【今回は】そうじゃな」
「じゃあ質問なんだが、左腕に2匹になってるが」
「気づいたか」
「さすがに気づくだろ」
「それは2匹とも左腕を希望してるということじゃ」
「ふーん……」
「あと、レッドはグリーンと相性悪いって話だったよな。ということは左腕はブルーになるということか? それに、左腕に2匹は無理だよな?」
「先に整理すると、そもそもレッド(火)はグリーン以上にブルー(水)と相性が悪い。しかし、パッチテストの結果、相性の悪さはレッドとブルーを一度に合成しなければ問題ないだろう」
「つまり、レッドかブルーのどっちかを選んで合成ということだな」
「そこでワシは思いついた。時と場合で付け替えればいい」
「……分からんぞ。どういうことだ?」
「聞いて驚け。ワシの妙案を……っ」
自分で妙案とか言うのかよ、と思わず苦笑いが出る。
――魔女によると、つまり、こういうことだった。
1.俺の左腕を魔女が培養して複製する。
2.先にレッドスライムを左腕に合成。
3.複製した左腕に取り替える。
4.次にブルースライムを左腕に合成。
5.相手によって左腕を取り替えて戦う。
※レッドとブルーは前後して良し。
「そんなことが出来るのか?」
「ああ。ワシの考えではいけるさよ。火と水(と治癒)、どちらも捨てるのは惜しいからの。レッドとブルーの同時起用さえ回避すれば問題ないさよ」
魔女のヤツ、中々凄いことを思いつくな。
いきなり戦力が上がりすぎじゃねーか。
戦い方の幅も、かなり広がる気がする。
いや、広がりすぎか?
俺に使いこなせるのか……
「イエロー(速)とパープル(毒、解毒)の2匹の属性は支援的な意味合いが強いからの。下半身、というか両足に合成でも問題ないじゃろ」
イエロー(速)については、ゴブリン男対策でスカウトしたんだよな。
パープル(毒、解毒)はオーク男と蜘蛛女の毒攻撃対策のつもりだ。
「というか、ワシが治療する前の脚力以上に戻せるかもしれないさよ。個体差があるからそこはワシのバランス調整にかかっているの。後は、イエローの特性を使いこなせば、ゴブリン男とのスピード勝負に目が出てくると思うさよ」
なるほど、こうして説明を聞いてみると……最初に目指していた直接的な攻撃力アップはレッドとブルーにかかってるのか。
その他の2匹は間接的、補助的な戦力アップという感じだな。
「それでも、グリーン1体の時よりは段違いに強くなるはずさよ」
魔女の計算ではグリーンとイエローの2匹でゴブリン男、
加えてパープルの3匹でオーク男、
最後にブルーかレッドを加えた4匹で蜘蛛女とハーピー女。
……という具合らしい。
確かに、これならあの怪物どもと勝負できるかもしれんな……
「聖女までイケるかは戦い方を工夫しないといけんじゃろな」
じゃあ、最初の合成はブルーか、それともイエロー、どっちだ?
「下半身のバランスの関係で、イエローとパープルは同時に後でがいいと思うさよ。おすすめは手っ取り早く攻撃力アップのレッドスライムじゃ。左腕の培養には時間かかるから、レッド→イエロー&パープル→ブルーの順でどうじゃ」
金色と黒色はまだまだ種族名が分かってないし、希望部位が頭と内臓でヤバい。
左腕をさらに培養して、そっちの方で妥協してもらうことも考えた方が良いだろうと魔女と話し合った。
合成無しで使役できたらそれが楽な気もするんだが、この2匹絶対に俺の言う事なんかきかないだろうな……
まあ、そのまま元の住処に帰ってもらってもいい気がしている。
よし、魔女のプランで行こう。
最弱怪人の俺がリベンジする時は、もうすぐだ。
しかし、強くなるのを敵は大人しく待ってはくれないのだと、俺はすぐに思い知ることになる。





