26.金色と黒色。
前回の出来事: 四天王ミリアに遭遇した。
絶望から一転、このスッキリとしたような感覚はなんだろう……
――――そうだ、安堵感だ。
思いがけず再就職先候補が見つかったことを密かに喜ぶ。
(全部終わった後は、四天王ミリア様に拾ってえるように交渉しよう)
「……」フル
「……」ふる
「……」フルフル
おっと、そうだった。
ここに来た本来の目的を忘れていた。
グリーンのヤツの友だちに会いに来たんだったな。
別に勧誘しに来たワケではないので、少し離れた場所でスライムの交流を見守る。
明らかに只者ではない雰囲気の2体のスライム。
どっちが友だちだ?
あ、灰色の方ですか。
確かに金属っぽいな。
以心伝心でグリーンに教えてもらう。
黒い方は……灰色さんの友だちなのか。
友だちの友だちは友だちってか。
どちらの種族名も、魔女に仮面での会話が繋がってないので不明。
まあ、2体とも明らかに俺より格上だから従魔は無理だろう。
「何だ?」
何故か呼ばれたので近くによる。
「いま金貨持ってるか、だと?」
グリーンスライムに、友だちに金貨をあげてほしいと頼まれる。
「5枚?」
聖女にもらった報酬の3分の1か。
人間にとっては結構な価値があるし、「金貨5枚は簡単に他人(?)にあげてしまってはもったいない」と俺の中のかつての人間だった時の俺が叫ぶ。
王国金貨1枚は約銀貨100枚の価値で、俺が冒険者のときの稼ぎは1日銀貨2、3枚程度だったからな。
金貨1枚は当時の稼ぎ3ヶ月分に相当するし、5枚は1年分超えだ。
だが怪人の俺にとっては、今のところほとんど必要としていなからな。
「別にいいか」という感じでグリーンに金貨5枚を渡してやる。
スライムが金貨なんてどうするんだ?
「……」プルッ
「……」ぷるっ
灰色スライムが金貨をその体の中に取り込んだ。
次々に飲み込んでいく。
金貨が、俺の人間だったときの1年分の稼ぎが、次々と溶けて無くなっていく。
「……」ぷるぷるぷるぷるっ
灰色スライムが金貨5枚を全部消化しちまった。
めちゃくちゃ上機嫌になってる気がする。
ん?
さっき灰色だったよな。
きん……いろ……?
ゴールデンスライム?
灰色だったはずなのに、どう見ても金色になってる。
スライムって、食べたもので直に色変わるもんなのか?
それに、心なしか金貨を食べる前より小さくなってる気がするな。
知らんけど。
「……」プルプルプル
「えっ、金色も着いてきたいって?」
「……」プルルっ
「なっ、黒いのも??」
この2体のスライム、絶対に只者じゃない感じなんだよなー。
怪人の本能が、怪人の俺より確実に格上と判断している。
スライム最弱説どこに行った。
まあ、別にいいか。
久しぶりの友だちとの交流で、離れ辛くなったのかもしらん。
従魔したのかしてないのか曖昧なまま、格上のスライム2体を専用アイテムバッグにお迎えする。
丁度、持ってきたアイテムバッグも満員だ。
よし、魔女の家に戻ろう。





