20.VSゴブリン男。
前回の出来事: コボルト男(新人)と戦った。
「そこの人間、何してるっすか」
ゴブリン男に見つかってしまった。
左手は小剣の鞘に添え、いつでも小剣を抜ける体勢を取り、ゆっくりと振り向く。
この位置ならゴブリン男にはコボルト男は見えていないはずだ。
どうする……
ゴブリン男は振り返った俺の顔を見て、首をかしげる。
「派手な仮面っすね」
「……」
人化した俺と一度は戦いはしたが覚えられてはいないようだ。
……先手を打つか?
だがゴブリン男は知ってか知らずか《粘液弾》の間合いに入ってこない。
まあどちらにしても博打要素が強い技だからな。
それとゴブリン男に使えば俺が【スライム男】とバレる危険性が高まる。
「だんまりっすか。ならこっちから行くっすよ――!」
ガキン――ッ「――ぐぅっッ!?」
瞬時にして近づいていたゴブリン男の小刀を必死で受け止める。
「お? なかなかやるっすね……この前の人間の男と同じくらい――ん?」
ゴブリン男は俺の顔をじーーーっと覗き込んだかと思うとニヤリと笑みを作ってみせた。
――――何かに気づかれたか。
「この前の人間じゃないっすか。新しい仮面、なかなかお似合いっすよ」
「……」
それぐらいはバレてもいいが、普通に会話したら俺の本当の正体がバレる可能性が(略)。
あ゛あ゛――――! アレもダメ、コレもダメというのがかなりストレスだ。
とにかく、ここからは聖女たちがここに来るまで粘るしかない。
何しろ、戦闘能力が「聖女 >> ゴブリン男 > スライム男」だからな。
さらに小刀を抜き二刀になるゴブリン男。
「しゃべらないのがカッコいいつもりっすか。勘違いヤロウは勘違いしたまま――死んでいくっすよ!」
ガキガキン――ッ「! ……ぐッ、……がッ」
その二刀を必死に受ける俺。
すると攻撃していた方のゴブリン男が、なぜか俺から距離を取った。
――――何か技を出すのか?
「――《淫らな足音》!」
これは、分身技か――
2つに分かれたゴブリン男が左右から斬りかかる。
これは――避けられない――――!
◆
俺はとっさに左手に小剣を持ち替え、左側の小刀を小剣で受ける。
そして右側の攻撃をそのまま右腕で喰らってしまう。
ザシュッ―ー!
右のゴブリン男の小刀は俺の右腕の手のひらから肘付近まで縦に竹割りのように真っ二つにして、ようやく止まった。
「ははっ。右腕もらいっす――ん?」
右腕を硬化させ、小刀を抜けないようにする。
ふと気づくと、ゴブリン男は一体に戻っていた。
――今だ。
この超近距離なら出せる。
この時俺はゴブリン男――元同僚を殺すつもりだった。
「《粘液――
「《卑怯な足音》!」
――窒息》――!?」
「――意外と強力な技を持ってるっすね。危なかったっす」
不意打ち且つ、渾身の必殺技が、あっさりと避けられた。
スライムの右腕で使えなくしていた方の小刀も、《粘液窒息》を発動した瞬間に取り戻されてしまっている――
(もうダメか)
そう諦めかけたその時、
「そこのゴブリン男! 仮面男――スラオから、離れなさい――――ッ!」
遠くから聞こえてきたのは、聖女の声だった。
◆
「うげぇっ、聖女!?」
聖女はまだかなり遠くにいるのにも関わらずに、明らかに及び腰になるゴブリン男。
「ゴブ。聖女が来たから逃げるよー」
「! イルビ様、了解っす!」
「……ワフ」
おっと。
上司の見た目は超美少女、実は男の子のイルビ様がいつの間にか近くから見られていた。
そして、知らぬ間にコボルト男を助け出されてしまっていた。
俺も無理に追うことはしない。
【超基幹迷宮】の方に逃走していく……。
元・上司と元・同僚たちを見送っていると、ようやく聖女たちが到着した。
「ごめん、スラオ、遅くなって」と肩で息をしながら聖女が謝る。
「――スラオさん、無事でしたか?」これは半闇エルフ。
「ひぃふぅはぁ……ワシ疲れた」……魔女。
「ああ、何とかな」
「……って、何とかなってないじゃない、スラオその右腕――っッ!?」
「――いや、大丈夫だ」
聖女たちが来る前に腕は元通り戻しておいたからな。
スライムで出来た腕には傷ひとつ付いてないはずだ。
「その右腕の色は何――――!?」
あ。
バトル回は難しいです><
少し涼しくなってきましたね~。