2.上司。
前回の出来事: 怪人たちは人間の村を襲った。
村を襲い終えた俺たち5人は、上司が待つアジトに戻った。
上司は魔族の皆さん。
何人いるのだろう。
正確な数字はわからない。
全員顔を隠すフードを被っていてあまり顔は見えないが、ほんの少し見える部分だけでも皆相当な美男美女と窺い知れた。
高い位置から俺たちに問いかける。
「首尾はどうだったか」
「全て問題ないっす」
「アタイなんか7人もこの糸でヤッちゃったよ」
「アタクシはひーふーよー……はち! やったアタクシの勝ちですー!」
「こ、の……鳥頭女っ。『みー』が抜けてるだろ」
「……人間の勇者は現れたか?」
「いや、勇者のヤロウ今日は現れなかったすね。な、オーク男」
「ああ。ヤツが来たらぶっ殺したかったんだがな」
「仲間の聖女をぶち犯したかったっすよね。キヒヒ」
「その代わりに村の女はきっちりしときましたよ」
「ああ」
俺以外の仲間がよくしゃべる。
俺は……あまり口を動かすのが得意ではないので、相づちを打つ程度だ。
「そうか……よくやった」
いちばん高い位置にいる上司から労いの言葉を貰い、俺は満足を得た。
◆
俺たちにできるのは人間の村を襲うことぐらいだ。
さあ、今日も楽しく襲撃していくぞ。
「おのれ、魔族ども、強すぎる……」
「お美しい魔族様たちを醜い俺らと一緒にすんじゃねぇ――よ」グチャっ
「ぎゃーーっ」
「勇者様たちはまだ来ないのか……」
「この村はもうダメだ……」
「お前らをさっさと殺して、今日も楽しく狩りタイムっす!」
ゴブリン男が素早く動き、人間の冒険者どもを殺していく。
男の冒険者だけを。
「このゴブリン、普通のゴブリンと違うぞ! めちゃくちゃ強い!」
「しかも人の言葉をしゃべる……!?」
「俺っちは【ゴブリン男】っすからね。半分人間なんす。半分はお前らと一緒なんて、あーいやだいやだ」グシャッ
「ぅ゛ぁ゛あ゛ーーっ!!」ゴキュっ
「やっ、ヤメローーっ、ぅ゛っ゛」グチャ、ゴチャっ
「さぁ、カワイコちゃん達。逃げれるなら逃げてもいいっすよ」
「に、逃げる訳なんてないだろ。村人を置いてプロのオレ達が!」
「ふ、フィリナ、逃げよう? あたし達【Cランク】じゃ絶対勝てない相手だよ。それよりもこの情報をギルドに持ち帰るべきだよ」
「くっ……」
「ほらどうぞ?」
「くそーっ、ここは逃げさせてもらう! いくぞ、カリナ!」
「うんっ」
「じぁあ、そろそろ追っかけるかな……!」
「えっ、ウソ、早い!?」
「い、イヤーー!?」
「や、やめてー、このケダモノ!?!?」ビリビリっ
ゴブリン男の超スピードが、逃げた女冒険者をあっさりと捕まえてしまう。
冒険者の服を毟りとるように脱がしていくゴブリン男。
……というか蜘蛛女の糸で、この村のどこにも逃げ道は無いはずなんだがな。
人間の中では強い個体であろう『冒険者』や『兵士』だが、俺たち怪人にとってはまったく問題のない相手だ。
むしろ反撃してきてくれるので、ただ泣き叫ぶだけの一般村人たちよりも張り合いがある。
つまり、「楽しい」まである。
さて。俺も「楽しいパーティー」に交じってくるとしようかな。
「待て待て待てーー!! そこの怪人ども、ちょっと待てーーー!!!」
「ゴブリン男、今度こそ許さないわよーー!!!」
おっと。ここで「勇者パーティー」のご登場だ。
なんとかライバルたちを登場させるまでいきました><