16.紫目七角。
前回の出来事: イケメン斥候が地竜を発見した。
地竜。
少し広まったその空間には、1匹どころか十数匹の地を這うデカい生き物がいた。
(え、さすがに竜はマズくないか?)
と思ったのだが、あくまで亜竜と呼ばれる種類の存在で、竜ほどの圧倒的な強さはないらしい。
なるほど。たしかに奴らには竜のような偉大さを感じることはできなかった。
しかし、それなりの強さであることは感じる。
俺と聖女なら単独で2、3匹なら問題ないだろうが、それ以外の面子では数人がかりでも1匹も厳しいだろう。
そんなことを俺が思案していた時だった。
魔女が深刻そうな声色でつぶやく。
「……この先で【超基幹迷宮】に繋がっているのかも知れないね」
「「「超基幹迷宮!?」」」
「――ってあの!?」
と、俺も驚いてみたもののまったく分かっていない。
さりげなく魔女に目配せして『説明』をうながす。
魔女も気づいたようで、ニコリと笑みを作ってみせて説明付きで答える。
「ああそうじゃ。この大陸最大の地下迷宮さよ」
「そんな……どうしてそう思うのかしら」
「あの地竜の目の色、それに背中に生えた角が見えるか?」
「……紫、あとは7本の角ね」
「紫目、七角、……この特徴を持った地竜は、今までに超基幹迷宮でしか見つかっておらんよ」
「なる、ほど……」
聖女とイケメン斥候が何やら相談を始めた隙に、こちらもコソコソと魔女に追加で教えを乞う。
「超基幹迷宮とやらに繋がっているとマズいのか?」
「そりゃマズいよ。この迷宮の魔物が、下から超基幹迷宮の魔物に押し上げられてくるワケだからね」
「つまり?」
「近い将来、確実に魔物が外に溢れる」
魔女の予測では、まずはこの迷宮の魔物が外に出てきて、その次には超基幹迷宮のヤバめな魔物も迷宮の外に溢れ出すだろうということだった。
「1番の問題はこの迷宮が生まれたてで超基幹迷宮産の魔物には小さすぎることさね。すぐに飽和状態になっちまうだろう」
「……」
「となると気になるのは、この事態が偶然おきた事故なのか、魔族あたりに引き起こされた攻撃なのかじゃが……」
魔族の引き起こした攻撃とやらに、完全に心当たりあるわ。
これって上司が言ってたヤツじゃねーか。
お、聖女とイケメン斥候がこっちに来た。
「2人で相談したんだけど、あの数はさすがのわたしでもキツいってなった」
「それでどうする?」
「この子――クリエを先に行かせて、地竜を別の場所に誘導してもらうという作戦はどうかしら」
「ここは専門職のボクに任せてくれ」
「ほう……?」
イケメン斥候を見ると、自信があるように頷いてみせる。
だが、【怪人の目】はごまかされない。
俺たち怪人は人間の恐怖心が何よりのご馳走だからな。
実に旨そうな気配がクリエから漂よい始めていた。
よく見ると、浅黒い肌に緊張の発汗もあるようだ。
――ん? 耳が尖ってる?
コイツって闇エルフか。
半の。
しかもこの汗の匂い……男装した女……か。
長い前髪で隠れた顔をよくよく見れば、超ウマそうな半闇エルフ美女じゃねーか。
こりゃ巧く化けたモンだ。
完全に騙されてたわ。
野郎とばかり思っていた。
うん。
半分人間ということは、完全に俺の対象範囲内だ。
つまり俺にとってのご馳走ってことだな。
このままコイツを行かして死なれてしまってはもったいない。
つまり俺が犯ったり殺ったりしたい。
(でも間違えないでくれよ。【怪人】は半分人間でも対象外だからな。特に【ハーピー女】とか【蜘蛛女】とかな!)
「あー。悪くない案だと思うが、ここは俺が行こう」
ハーフダークエルフなのかダークハーフエルフなのか。
中々難しかったです。
(2022.8.18)サブタイトル変更しました。
変更前「16.地竜。」→変更後「16.紫目七角。」