15.迷宮。
前回の出来事: 聖女と魔女の2人と臨時パーティーを組んで迷宮に潜ることになった。
聖女率いる臨時パーティーの目的は大きく2つ。
生まれたばかりの迷宮にもかかわらず強力な魔物が浅い表層をうろついている理由を探ること。
理由を探るついでに魔物を間引くこと、だ。
通路は出来立ての迷宮らしく、横に2人並ぶ幅しかないし天井も低い。
人間だとしたら、ここは息が詰まるだろうな……
俺はどうかって?
この場所はとても良くないと感じている。
逆にとても居心地が良すぎるのだ。
なんだろう。
もう俺ここに引っ越そうかな。
最近、前の家を追い出されちゃったし。
2人並ぶといっぱいいっぱいな通路を1名ずつ縦になって進む。
並び順はイケメン斥候のヤサ男、乳デカ聖女、老魔女のババア、最後尾を俺だ。
お互いの呼び名を知っておかないとヤリづらいので、一応名乗りあった。
俺は【スライム男】と名乗るワケにもいかないので、適当に、スラオと名乗った。
聖女はレイン、イケメン斥候男はクリエ、老魔女のババアはエルーダ。
……いや、聖女、イケメン斥候、魔女、で良いだろう。
怪人は人間と違って個体の名前を覚えるのが苦手なんだ。
◆
「スライ……オあれから新しい技の開発は進んだかの?」
「いや魔女。まだだな。あんたに無理するなと言われたからな」
「そろそろ無理してもいいさね。チャンスがあればここで試すといい。何かあったらワシがフォローするよ」
「……分かった。頼むぜ」
こそこそと魔女が話しかけてくる。
しかしこのババア、老人のクセに足がしっかりしているな。
かなり早歩きなのにもかかわらず、最後尾の俺に振り返りながら話しかけてくる余裕まである。
ここまで何回か魔物には遭遇しているが俺まで回ってきていない。
全てイケメン斥候と聖女が始末している。
俺の役目は背後から襲ってくる魔物の対応が主だが、今のところは手持ちぶさたの状態だ。
ちなみに、迷宮に出てくる魔物とは、先ほどからちょくちょく意志疎通が出来ている。
(なんでお前そっち側いんの?)
(ちょっとワケありでな。知らんぷりしてくれ)
(りょ)
そんな会話を目だけで、敵対するゴブリンやホブゴブリンたちと交わす俺だった。
コウモリとか敵に紛れたスパイとかはこんな気分なんだろうか。
◆
(すまんな)
(かまわん……)
後ろから襲ってきたホブゴブリンを俺が倒したのだが、とどめを刺す瞬間そのホブゴブと目だけで会話する。
どうも迷宮産の魔物は淡々と攻撃してきては淡々と死んでいく。
あまり生きることに執着を感じられない。
そこが迷宮外の魔物と大きく違う。
半分魔物である怪人の俺ならば普通にもっと必死になると思うし、俺以外の怪人や、その他の迷宮外の魔物であればもっと生きようとするハズだ。
具体的には、死にそうになれば逃げると思うのだ。
それが迷宮産の魔物には見られない。
……不思議ではあるが、そういったものと思うことにしよう。
倒した魔物たちは、しばらく待っていると溶けるように迷宮に沈んでいく。
その場には時おりナイフやら魔石といったアイテムを残していくこともあった。
聖女が「わたしとクリエは国からの報酬で十分だから」とか言って拾わないので、俺と老魔女で独占中である。
「何でコイツら死んだら時々アイテムなんて残すんだろう」
「ひっひっひ。ほんと謎よのう。この謎を解明したら学会から褒賞金でるぞ。世界7大不思議じゃの」
俺の疑問にこたえる魔女も答えは知らないようだ。
それにしても聖女からもらった袋もアイテムでパンパン、そろそろ拾えなくなりそうである。
これなら魔女と2人で分けてもしばらくは持つか……
「それにしても……お前さんの新技は結構エグいの」
「そうか? 自分ではまあまあイケてる技だと思ったんだけどな」
右腕の肘から先を腕の形のままスライム化して相手の顔目掛けて射出し、窒息させる技を見て魔女が引いている。
パッと見は腕の形をした攻撃魔法を飛ばしているように見えるように、肘から先を皮一枚分残すというひと手間をかけたオリジナル技。
右腕のスライム成分が濃くなったことで可能になった技だ。
名付けて《粘液弾》。
前の技名のが強そうなのが玉に瑕だが。
「頼むからワシには使うでないよ?」
ホブゴブを窒息死させたグリーンスライムがゆっくりと俺の元に戻ってくる。
まだ意志疎通とかは出来ないが、なんともかわいいヤツめ……
「(止まれ)」
先頭を行くイケメン斥候が、小声で合図を出す。
「(どうしたの)」と聖女。
「(この先の広場になっているみたいなんだが、そこの入り口の影に強力な魔物がいる)」
「(何がいるんだ?)」
イケメンは勿体をつけるようにそいつの名を口にする。
「地竜だ」
新技のイメージはロケットパンチです。
ロケパンはロマン(*´∀`)
あ、れ、ウソだろ……。
すでに2週サボっていただ……と……!?
すません、ホントすませんッ。
m(__)m





